Aging Gracefullyカフェ
お灸でセルフメンテナンスしよう!〈京都〉
AG世代の「学びとネットワーキングの場」として定期的に行っているAGカフェ。15回目の9月17日は「わたしメンテナンス~お灸編~」と題して、京都市中京区の誓願寺で開催しました。
2年半以上続くコロナ禍のストレスや、年齢による体調の変化などをすっきりさせようと企画したもので、午前の部と午後の部、計40名の方にご参加いただきました。また、会場では、消毒や換気など新型コロナの感染予防対策を施して行いました。
講師は、せんねん灸セルフケアサポーターで鍼灸師の川口美佐世さん。京都に生まれ育ち、「しんどいけど、病院に行くようなはっきりした症状じゃない。ほな、どこに行ったらいいの?」というご自身の体験から東洋医学に興味を持たれたそうです。
川口さんは、お灸には温熱のレベル、煙の有無、香りの違いなど、様々なタイプがあることを紹介し、「初めての方は、温熱レベルの低いもの、熱すぎないものを使ってください。熱くないと効果がないと思っている方もいるようですが、そんなことはありません」と説明しました。
ちなみに、お灸の原料である「もぐさ」は、「よもぎ」の葉の裏の綿毛だけを集めたものです。よもぎはもともと、世界各地で薬草として使われてきました。乾燥させたよもぎをくだいて、葉や茎を取り除く作業を繰り返すと、綿毛だけが残ります。その量は全体の200分の1という、大変貴重なものです。
お灸はツボに据えます。ツボは、私たちの体をめぐるエネルギーの通路である「経絡(けいらく)」の上にあり、体の変化を示すポイントです。
この日は、AG世代が知っておきたい三つのツボを取り上げました。
手の甲にある 「合谷(ごうこく)」、ひじに近い 「手三里(てさんり)」、くるぶしの上の 「三陰交(さんいんこう)」です。
ツボを探すコツは、肌を優しく押すことだそうです。
「手の指を肌に沿わせて、 少しへこんでいるところを探します。優しく押して、『痛気持ちいい』場所がツボです。日によって体調が変わるので、ツボも少しずつ場所が変わります」と川口さん。
続いて、お灸に挑戦しました。
最初のツボは「合谷」。手の甲側の親指と人さし指の間にあるくぼみです。
お灸の台座の裏のシールをはがして指にのせ、もぐさ部分にライターで着火します。ライターは火を真っすぐ上に向けて持ったまま、お灸を横から近づけると火をつけやすくなります。
そして、火のついたお灸の台座部分を横から持って「合谷」のツボにのせると、徐々に温まります。
熱く感じたり、肌がちりちり、ぴりぴりしてきたりしたら、すぐに外しましょう。
「お灸を据えるときは、できるだけほかのことはせず、お灸と向き合う時間にしてください。いっぺんにたくさん据えるとどこが熱いかわからなくなるので、一度に据えるのは1個にしましょう。熱いと感じたら、据えた時間が短くても必ず外してください。やけどをする恐れがあります。皮膚の薄いところは特に注意して、我慢しないでください」と川口さん。
台座を横から持ってひねると、外しやすいです。外したお灸は、水を張ったコップなどに入れ、火を完全に消してから捨てます。
2カ所目のツボは、「手三里」。ひじを曲げたときにできるしわから手首の方に指3本分の辺りを、優しく押すとへこみがあります。
川口さんは、「体が冷えているとき、特に下半身が冷えていると、なかなか熱さを感じられないことがあります。また、体の左右両方のツボにお灸を据えても、片方だけ熱く感じないこともあります。その日の体調にもよるので、規定の時間で熱さを感じられないときは、同じ場所に連続で3回まで据えても大丈夫です。それでも熱さを感じないときは、次の日に同じ場所でまた試してみてください」と説明しました。
最後のツボは、内くるぶしの上にある「三陰交」です。例えば左足の内くるぶしに右手の小指を当てると、人さし指の位置にあります。「女性のツボ」とも呼ばれています。
なお、お灸には避けるべき時間帯があるそうです。「入浴の前後や食事の後1時間ほど、及び、発熱時や飲酒時など体温が上がっているときは、お灸は避けてください」と川口さん。
そして、「毎朝、あるいは毎晩寝る前など一日に10分間、自分の体のことを考えて、自分自身と向き合う時間を持つことをおすすめします。リラックスのお供に、お灸を取り入れてみてください。お灸も積み重ねが大事なので、道具をまとめて、普段見えるところ、手が届くところに置いておくと、手軽に続けられると思います」と話しました。
午前の部は10時半、午後の部は14時半から、それぞれ約1時間。午前の部はお灸初心者がほとんどでしたが、午後は半数近くが経験者でした。誓願寺の庭が見える部屋で、参加者たちはメモを取りながら、熱心に聴き入っていました。
参加者アンケートでは、「思っていたより使い方が簡単でした」「お灸には古くて難しいものというイメージがありましたが、身近なメンテナンスの道具として生活に取り入れられそう」「1日10分でセルフケアできるなら続けてやってみたい」といった感想が寄せられました。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
取材&文=朝日新聞社 Aging Gracefully プロジェクトリーダー/編集長 坂本真子
写真=朝日新聞社 井上雄一郎、坂本撮影