「おじさんは家族や他者の声を意識して共生することが大事」 映画『MONDAYS』出演のマキタスポーツさん | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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「おじさんは家族や他者の声を意識して共生することが大事」 映画『MONDAYS』出演のマキタスポーツさん

マキタスポーツさん/花田龍之介撮影

月曜の朝、1週間が始まり憂鬱(ゆううつ)に感じる人も多いはず。もしその月曜が先週と同じだったら……。同じ1週間を繰り返し続ける、新感覚オフィス・タイムループ・ムービー『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』が公開される。チャーミングなおじさん部長の永久役を演じたのがマキタスポーツさん。役柄や自身が考えるおじさんのあり方などについて話を聞いた。

また、マキタスポーツさんは、3月に小説『雌伏三十年』(文藝春秋)を上梓(じょうし)した。俳優や芸人のみならず、文筆家としても活動の幅を広げる今、その仕事観についても語ってもらった。

タイムループは、生活を疑いなく生きていることの象徴

「この部長、昔は熱いものがあったんでしょうが、今は平々凡々とルーティンをこなしていけばいいと思っているタイプ。保守的な中年おじさんだから、毎回新鮮な気持ちで同じダジャレを言ってしまうんですね。仕事帰りに行くお店も同じだし、注文するメニューも決まっていそうですよね」

「おじさんは家族や他者の声を意識して共生することが大事」 映画『MONDAYS』出演のマキタスポーツさん
映画でキーパーソンの部長役を演じたマキタスポーツさん (c)CHOCOLATE Inc.

映画はとある小さな広告代理店が舞台。主人公の吉川は、大手広告代理店に転職する野心を抱きながら仕事をしている。ある朝出勤すると、後輩2人から「僕たち、同じ1週間を繰り返しています」と告げられる。このループから抜け出すためには、部長の永久にそれを気づかせないといけないと気づく。吉川と後輩は、あらゆる作戦を考え、このタイムループから抜け出そうとする。

「とはいえ日常を安定させるためには、ルーティンがあった方がいいじゃないですか。映画のタイムループは生活を疑いなく生きていることの象徴だと思うんですけど、この部長や僕もそうですが、家庭を持つようになるとイレギュラーなことが起こってほしくないと思う気持ちもあります。部長と僕は年齢的に同じくらいのおじさん。なので、リアルな実像だったり、同年代が陥りやすいものを思い浮かべたりしながら演じていました」

「主人公の吉川は、転職や彼氏といった自分の利得を考えて生きている。それはみんな同じで、大義名分だけで生きていないところが嘘がなくていいですよね。最終的には、みんなでまとまって“ループから抜け出すんだ”と一致団結するところにも共感できます」

ふだんの生活がタイムループのように繰り返されているとしたら、非日常を味わいたいと思うのも人の常。そんな感情を演じながら感じていたと振り返る。

「おじさんは家族や他者の声を意識して共生することが大事」 映画『MONDAYS』出演のマキタスポーツさん
(c)CHOCOLATE Inc.

「タイムループのようなレギュラーを固めると、一方でイレギュラーを欲する気持ちも生まれてきます。それを天秤(てんびん)に掛けて葛藤する気持ちもある。今(取材時)旅公演で地方に出ているんですけど、その瞬間はループの輪から出ている感じがしていいですね。でも良いことばかりじゃなく、別の問題もあるんですよ。ループから出てしまうことで忘れ物が増えてしまうんです(笑)。ふわふわしちゃってね」

繰り返される1週間をたどるうちに、部長の知られざる過去が判明する。過去のあることを達成することが、タイムループから抜け出すきっかけになるのではないかと考え、それを叶(かな)えようと奮闘する社員たち。この部長と同じように、マキタスポーツさんも叶えられなかった夢、いつか実現したい夢があると言う。

生まれ故郷の山梨に銅像を建てたい

「生まれ故郷の山梨に銅像を建てたいです。ブロンズ像、胸像でもいい。自分で言うのも恥ずかしいんですが、あえてこの夢は言うようにしてるんです。銅像って、ある意味不必要じゃないですか。銅像が建つ人って、鉄道を通したとか街を作ったとか、そういうレベルなんです」

「でも今は、そういう時代でもない。一つの皮肉というか象徴的なジョークとして言っている部分もあります。一番は、山梨に貢献したいという気持ちですね。上京した頃は、東京で一旗揚げてやるぞという思いから否定した場所でもあるんですけど、今は山梨を面白くしたい。だんだん山梨が可愛く思えてきたというのもあります」

「おじさんは家族や他者の声を意識して共生することが大事」 映画『MONDAYS』出演のマキタスポーツさん
花田龍之介撮影

上京する若者が感じている「田舎にいたらダメだ」「成功するまで帰らない」という気持ち。東京で経験と年齢を重ねてきた今だからこそたどり着いた、地元愛や郷土愛。これからは地元の魅力を発信したいという使命感も感じている。

「山梨の人たちのマインドを変えたいんです。世の中全体に都市化や文明化が進み、『地元でどうやって暮らせばいいのか』『暮らし方が分からない』と言っている人に、そのままでいいじゃん、と言ってあげたい。今ある暮らしを受け入れながら、充実した暮らしができるということに気づいてほしいんですよね。経済中心の世の中に対して、それと違う指標を示したいというのもあります」

「自信がないから『何もないのに山梨に来てくれてありがとう』とか言う。そのメンタリティを変えたいんですよ。この問題って、山梨だけじゃなく日本全体の問題でもあります。経済や合理性だけではなく、オルタナティブな何かを示したいんです」

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