10代も60代も一緒に楽しむパデル 「壁を使い、頭も使うのが面白い」 AG世代がいちばん話したいこと | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
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10代も60代も一緒に楽しむパデル
「壁を使い、頭も使うのが面白い」
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「パデル」というスポーツをご存じですか? 1970年代にスペインで生まれた、テニスとスカッシュの要素をあわせもつラケットスポーツで、コートの周りを強化ガラスと金網の壁で囲まれているのが特徴です。世界90カ国以上で約1800万人に親しまれていて、日本の競技人口は約2万5千人。東京都内に住む歯科衛生士の谷口桃子さん(50)もパデルにハマった一人です。テニスとは違う面白さがあるという、パデルの魅力について聞きました。

――パデルを始めたきっかけを教えてください。

私は社会人になってからずっと、住んでいる区のテニスサークルに入っていて、区の試合に出たり、区のチームで団体戦に出たりしていました。数年前に近くのテニスクラブにパデルのコートが2面できて、友達から「面白そうなスポーツがあるから行ってみない?」と誘われたのが始まりです。

最初は体験レッスンに参加しました。長くテニスをやっていたので、ある程度打つことはできるんですけど、壁というテニスにはない魅力にハマってしまったんです。

パデルでは、一度壁に当たって跳ね返ったボールを打ちます。このショットを「レボテ」と呼びます。絶対に壁に当てる必要があるわけではなく、テニスと同じように直接打っても構わないですし、横の壁に当たってから後ろの壁に当たって跳ね返った球を打つこともできます。壁に2回当たった球を打ち返すショットを「ドブレパレット」と呼びます。

例えばスマッシュを打つと、テニスではたいてい1発で決まって終わりますが、パデルは壁に当たったものを返せるのが面白いし、1発で決まらないんですよ。打った球が壁に直接当たるとアウトですが、ワンバウンドで壁に当たればいいので、それを打ち返せばいい。テニスにはない面白さです。

必ずしも腕力がある人が強いわけではなく、プロは壁をうまく使うんです。壁を使う方が有利な場合とか、いろいろな戦略があって、とにかく頭を使います。プロの試合は長いラリーが延々と続くので、見ている方も面白いですよ。 うまくなりたいと強く思った一番の理由は、壁の魅力です。

テニスとの違いは壁だけではなく、パデルは必ずダブルスで戦います。それも面白くて、ハマった理由の一つです。ダブルスを組む相手は、今回だけ一緒に、という人もいるし、固定して頑張る人もいて、それぞれです。ペアを決めるときは、相性ももちろんありますが、左右どちらのサイドなのか、また、2人のレベルに差があると弱い人が狙われたりするので、いろいろ考えてペアを探すのが難しいですね。

コートもテニスより狭いです。ダブルスのテニスコートは縦23.77メートル、横10.97メートルですが、パデルのコートは縦20メートル、横10メートルしかありません。

「もっともっとやりたくなって」

――どれぐらい練習をしていますか?

始めた頃は少しでもうまくなりたくて、半日の有給休暇を取って単発レッスンに参加してから出勤したりしていました。半年ぐらい頑張ったら、もっともっとやりたくなって、土日の夜の会員になったんです。家がコートにわりと近いこともあって、そこからはパデル一筋。何十年も続けていたテニスは、今は全くやっていません。

公式のパデルの試合にも少しずつ出るようになって、出ると今度は勝ちたいと思うじゃないですか。パデルの大会は「オープン」「チャレンジ」「フューチャー」とレベルごとに分かれていて、フューチャーが一番下、次がチャレンジ、そしてオープン。オープンには日本代表の選手も出ています。私が始めた頃は選手が少なかったので、オープンに出て勝てることもあったんですけど、だんだん若い子が増えてきて、最近はテニスをやっていた若い子が日本代表になることが多いですね。

日本パデル協会には「パデルプレイヤーズシステム」という男女別のランキングがあって、勝つとポイントがつくんです。トーナメントやリーグ戦があって、ポイントを取りたい人は遠征もしています。京都に行って、大阪に行って、ポイントを稼いで上にいく、みたいな感じで、そのために練習している若い子たちもいます。

私はそこまではできないので、近隣で行われる試合に出つつ、楽しんでいます。平日は働いていますが、「夜8時からコートが取れたよ」と言われて参加することもたまにあります。家に帰って、ご飯の支度を済ませてから来られる近さなので。1カ月に1回あるかな、というぐらいですけどね。

パデルのほかに週1回、ピラティスで体幹、インナーマッスルを鍛えています。パデルでは低い球を打ち返すことが多いので、下半身も鍛えることが必要です。私は、壁で跳ね返って下に落ちたボールを打つときに、「ひざが曲がっていない」とコーチによく言われました。ランキング上位の方々はみなさんもっと体幹を鍛えていますが、私は育児や仕事があるので、これ以上はちょっと無理です。

夫は以前、私と同じテニスサークルにいましたが、今は同じくパデルにハマり、平日夜のパデルスクールに通っています。子どもがいるので、どちらかが家にいられるように、私は土日の夜の会員です。この土日夜の会員のことを「Padel lover’s~パデラバ~」と呼んでいて、10代から60代まで幅広い年齢層の人がいます。会員で最も若い人は中1の男の子で、彼はテニスの経験がなくパデルにハマり、ジュニアで今ものすごく頑張っています。こんなに幅広い年代のみなさんと一緒に楽しめるスポーツは、ほかにはないと思っています。

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2022年6月5日、パデル東京で行われたミックスダブルスのイベントで。後列右から4人目が谷口桃子さん

大きな大会で優勝も

――ダブルスのペアの相手はどうやって探すんですか?

私と同じテニスサークルでペアを組んでいた人や、パデルにハマって一生懸命に練習している人など、いろいろな人たちとペアを組んでいます。今は特に固定のペアはいませんが、私は子どもがいて何かあったらそちらを優先するので、いろいろな状況をわかってくれる方と、出られる試合だけ出て、楽しんでいます。

男女混合のミックスダブルスで戦うイベントもあります。参加者の中でスペイン人の男性と組んだり、20歳ぐらいの男の子から「今度ミックス出ませんか」と誘われたり。テニスでそういうことはなかったので、うれしいですね。試合に出られるときはお断りせず出場します。いろいろな人と仲良くできることもパデルの魅力です。

コロナ禍の前は、バーベキューをしながらパデルを楽しむイベントがよくありました。最近少しずつ復活してきたみたいで、これは参加するだけでも楽しめるし、友達も連れて来やすいし、初心者もレベルに関係なく楽しめるので、ぜひ家族連れで参加してほしいですね。みんなにパデルというスポーツを知ってもらって、広めていきたいです。

――最近も大会に出場を?

今年5月に第1回全国ベテランパデル大会があって、私は45歳の部で優勝して賞品にラケットをいただきました。来年はその大会で優勝すると世界大会に行けるらしいです。今年は世界大会がなかったので、出る人が少なかったのかもしれませんが、エントリー数が少ない分、勝たないといけない試合だったので、優勝できてうれしかったです。

3年前の2019年9月には、夏休みを10日間使ってパデル発祥の地のスペインへ行きました。20代、30代の人たちと一緒に、ワールドパデルツアーという大会を見て、パデルの有名なコーチに教わって、超有名なプロと試合もしました。ヨーロッパでパデルはメジャーなスポーツなんです。それから数カ月でコロナ禍になったので、本当に行けてよかったと思いました。

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2022年5月、第1回全国ベテランパデル大会の45歳の部で優勝したときの谷口桃子さん(左)=谷口さん提供

長く続けたテニス「スパッと」

――テニスを始めたのはいつですか?

親がテニスをしていて、私も10歳ぐらいのときに親に言われて始めたんです。ジュニアのクラブに入って本格的に練習しました。当時一緒に組んだ子は全国大会で優勝して、その後テニスのコーチになったんですけど、私はそこまでのガッツもなかったので、短大を出て社会人になって、テニスから離れた時期もありました。

そんなある日、ジュニアのときの仲間で集まったら、テニスを続けていないのは私ともう一人だけ。みんなと一緒にプレーしたら全然打てなくて、これはやばいと思って、もう一度スクールに入り直しました。23歳ぐらいのときですね。それからずっと続けて、土日はほとんどテニス。大会にも出て、かなり本格的にやっていました。それほどうまくはないんですけど、テニス歴は長いです。

――そこまで打ち込んできたテニスを、パデルは上回ったということですか?

そうですね。こんなにやっていたのに、スパッと。今、テニスは全くやっていません。

――パデルの魅力はズバリ何でしょう?

壁が使えること。壁を使って頭を使うこと、です。壁があるので、ショットが決まったと思っても決まらず、長いラリーがあって、頭も使います。若い人からベテランまで仲良くできて、コミュニティーも楽しい。やるのも見るのも面白いです。パデルが楽しくて、汗をかいて、運動不足を解消できるし、疲れてぐっすり眠れます。いわゆる更年期世代ですが、不調を感じたことは全くありません。

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試合中の谷口桃子さん=2022年6月5日、パデル東京

――これからパデルを始める人に、何かアドバイスはありますか?

テニスとパデルでは、ラケットの長さが違うし、打ち方も違います。パデルラケットはテニスより短くて、ガットもありません。ちょっと重たいけど、短い分、球が当たりやすいというか、距離感がわかりやすいので、テニスの経験がない人、初心者でも入りやすいスポーツだと思います。

最初はレッスンを受けてください。打ち方は、コーチに教わらないとわからないですから。基本のショットもいろいろあるので、YouTubeの動画を見るとわかりやすいと思います。ワンポイントアドバイスをするとしたら、とにかく壁とお友達になって、壁を使うことです!

――谷口さん自身の目標は?

今年度はもう少し試合に出て、全日本をめざします。そして、来年の全国ベテランパデル大会でまた優勝して、世界大会に行くことが目標です。今日(取材当日)のイベントにはいつも一緒に練習している65歳のご夫婦が参加していますが、私もできる限り長くパデルを続けたいですね。

取材&文&写真=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクトリーダー/編集長 坂本真子

40代と50代、Aging Gracefully(=AG)世代の日本の女性たちの生き方は、どんどん多様化しています。最も多いライフコースは「専業主婦」だという調査結果がありますが、それでも4割に満たず、家族の形も働き方もさまざまです。
「AG世代がいちばん話したいこと」は、そんなAG世代の女性たちが、いま最も伝えたいこと、生の声をお届けします。

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