表現して伝えること。デビュー盤リリース、演奏家Cocomiが描く夢
2020年にモデルデビュー。インスタグラムのアカウントは189万フォロワーを数えるなど強力なインフルエンサーでもあるCocomiさんが、フルート奏者として4月29日にデビューアルバム『de l’amour』をリリースし、演奏家としての本格的な活動をスタートする。日本語で「愛の」を意味するタイトルのデビュー盤に、Cocomiさんが込めた思いとは。
音楽との出会いは“一目惚れ”
「惚(ほ)れてしまったのです!」
Cocomiさんの無邪気な笑顔が弾けた。音楽のルーツは? と聞いたときのことだ。
スタジオジブリ制作のアニメ「耳をすませば」。主人公の中学生の少女が恋するヴァイオリン職人を目指す少年が、仲間たちと演奏するシーンに、3歳だったCocomiさんの心が躍った。
「なんて楽しそうなんだろう。そして何かに夢中になるってすごくかっこいい!……と、惚れてしまったのです」
親に頼み、音楽教室でヴァイオリンを学ぶように。11歳のとき、隣の部屋で女の子が吹いていたフルートの音色を耳にし、心が震えた。
「なんて優美でなめらかな音色なんだろうと、心を奪われました」
フルートは歌うように奏でる楽器
ヴァイオリン、ピアノと並行しレッスンを始めたフルート。オーケストラの中でも高音域で、多彩な音色を響かせるのが魅力だ。「フルートには『魔力』があると言われていて。いろんな作曲家が魔術などを描きたい場面でフルートを用いているのです」とCocomiさん。演奏する立場としては「歌を歌うように奏でる楽器」と表する。
「吹き込んだ息が直接音になる。自分の中から音を発している感覚で、声楽に近いと感じます。同じ1本のフルートを3人のフルーティストが奏でるとまったく異なる音色になると言われるほど、奏者の個性や表現力が出る。それがフルートの大きな魅力です」
もっと音楽を学びたい、音楽中心の生活を送りたい――。そんな思いを胸に、高校は音楽専門の学校へ。
「みんな『いい音楽を奏でたい』という同じ志を持っていて、音楽について深く語り合える友達ができました。今は大学のディプロマコースに通っていますが、そこで出会った友人とも互いを高め合い鍛錬する関係。音楽を通じてめぐり合った仲間たちの存在は、私にとってかけがえのない宝です」
モデルも音楽も同じ意識で向き合う
一歩一歩、音楽家としての研鑽(けんさん)を重ねていたCocomiさん。その存在を世に知らしめたのは、しかし音楽とは異なるフィールドだった。2020年、Diorのアンバサダーに任命され、モデルとしてデビューする。
「モデルは見られる仕事。健康状態や肌のコンディションなど、自分で自分を管理しなければと大きく意識が変わりました」。そう話しながら、「でも」と続ける。
「モデルとして洋服やコスメの魅力をどう伝えるか。それは、音楽家としてその曲の魅力や作曲家の思いを私の演奏とどう融合させて表現するか、に通じます。『表現し伝える』という点では、モデルも音楽も同じ意識で向き合っています」
それぞれの活動が共鳴することでCocomiさんならではのスタイルを形作る。たとえばモデルとしてカメラの前に立つときは「音楽からイメージを膨らませていく」。撮影のイメージに合う楽曲を自らのプレイリストから選曲し、曲を聴きながら表情やポーズを作っていく。ちなみに今回は、ジャスティン・ティンバーレイクの「Suit&Tie」をセレクト。
「20歳の、女の子じゃなくて女性、のイメージ。今日の衣装は大きなリボンが魅力なのですが、『Suit&Tie』のタイをちょっと緩めた気分で、初々しさと色っぽさが表現できたらな……って」
曲中の人物を演じるイメージで
一方、音楽家としてステージに立つときは「イメージを作り上げてから音楽に向き合う」。「大好きなプーランクの『愛の小径』を奏でるならば、過去の甘い恋愛に思いをはせる大人の女性を思い描く。そして、私はその人物を演じるイメージで曲に取り組んでいきます」
フルート奏者としてのデビューアルバム『de l’amour』のタイトルも、この「愛の小径」の原詩からインスピレーションを受けて付けられたものだ。Cocomiさん自身が大好きな曲と思い入れのある曲をコンセプトに選んだという10曲は、クラシックに詳しくない筆者でも聞き覚えのある曲ばかり。有名なピアニストやヴァイオリニストと競演し、多彩なアレンジで演奏している。
「レコーディングでは、曲のイメージをどう展開していくかをディスカッションしながらセッションしていきました。一緒に物語を紡いでいくような素晴らしい経験でした」とCocomiさん。「アレンジによって、また、演奏にフルートが入ることによって、知っている曲が新鮮に感じられるかも。そんなところもぜひ堪能していただきたいですね」
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