東京を見るもうひとつの視点。違和感の先にとらえたもの 写真家・本城直季さん個展
&wの連載「東京の台所2」で生活感とリアリティーにあふれる写真を手掛ける写真家・本城直季さんの個展「本城直季 (un)real utopia」が、東京都写真美術館で開かれている。
本城さんは、大判カメラの「アオリ」という手法を応用して、都市や自然の遠景をまるでミニチュア模型のように写す独特の表現で知られている。被写体が本物かミニチュアか判断がつかず、思わずのぞき込んでしまいたくなる作品も多い。
本城さんがレンズを向けるのは「都市の違和感を感じる場所」だという。
東京・目白で生まれ育ったが、小さい頃から自分が暮らす東京という街に対して、不思議な違和感を持っていたという本城さん。
住宅街が広がり、ビルが迫る東京。子どもが外で自由に遊ぶ場所は限られ、本城さん自身も家の中でゲームをして過ごすことが多かった。そんなとき千葉県の房総半島を旅行すると、海と田んぼが広がる中で、解放されるような感覚を味わったという。同時に、都市に住むという行為に対して違和感を覚えていった。
写真を始めると、必然的にレンズはそんな違和感の先に向かった。都心の夜景の中にも、高層ビルと昔ながらの住宅街が隣接する。ふと見上げる高層ビル群が、バーチャル世界のように感じられ、自分がテーマパークに入り込んだような感覚になることもある。東京という街を俯瞰(ふかん)したい、という思いで撮影を続けてきた。
本城さんは、「連載『東京の台所2』では、東京という街に住むひとりひとりに驚くほど物語があることがわかる。展覧会では、連載でのピンポイントな視点とはまた違い、一歩引いて街を見てもらえると思います。普段は生活に追われ、自分の街を俯瞰して見て、考えてみることはなかなかないと思うので、そういう機会にしてもらえればと思います」と話す。
会期は5月15日まで。木村伊兵衛写真賞を受賞した「small planet」シリーズを始め、東日本大震災直後の東北を写した「tohoku 311」、サバンナの雄大な自然を捉えた「kenya」、街灯の明かりをたよりに長時間露光で住宅街の路地裏を写した「LIGHT HOUSE」のほか、2021年、オリンピックイヤーの東京を被写体として撮り下ろした作品など、未公開作を含む約200点が展示されている。
1978年東京都生まれ。2004年、東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了。『small planet』(リトルモア、2006年)で第32回木村伊兵衛写真賞を受賞。作品制作を続けるかたわら、ANA機内誌『翼の王国』で連載するなど、幅広く活動している。作品はメトロポリタン美術館やヒューストン美術館にパーマネントコレクションとして収蔵されている。
会期:2022年3月19日(土)~5⽉15⽇(⽇)
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
開館時間:10:00~18:00(木・金は20:00まで)※入館は閉館時間30分前まで
休館日:毎週月曜日(ただし5月2日は開館)
料金:⼀般1100円、学生900円、中高生・65歳以上550円
展覧会公式サイト