香港の文化と自然が融合! エコツーリストの注目集める「荔枝窩」
森に囲まれた、絵のように美しい歴史的農村――。世界的な金融経済都市・香港にも、そんな場所があるのです。荔枝窩(Lai Chi Wo/ライチーウォ)。文化と自然を融合させながらサステナビリティー(持続可能性)に取り組むこの地域は、香港ユネスコ世界ジオパーク(Hong Kong UNESCO Global Geopark)の一部として、ハイカーやエコツーリストの熱い視線を集めています。今は香港への渡航がかないませんが、報道関係者向けに開催した「オンラインツアー@荔枝窩(Lai Chi Wo)」でオンライン取材ができましたので、今回は荔枝窩の魅力をお伝えします。
300年以上の歴史持つ客家の村
荔枝窩は、新界(New Territories)北東部の海岸近くにある客家(ハッカ)の村です。築300年を超える200軒以上の家、畑、木々に囲まれたトレイル、鬱蒼(うっそう)とした森、マングローブといった、香港の文化と自然がとけあった場所です。文化遺産の保護を推進したことで、ユネスコの「2020年 持続可能な開発が評価される特別表彰」(2020 Special Recognition for Sustainable Development award)を受けました。
長い歴史を持つ建物は店舗やビジターセンターとして再生し、週末や祝日には、村の商店や屋台で、豚の角煮、保存された大根を使ったオムレツ、餃子(ギョーザ)や鶏のおかゆなど、客家の食べ物や料理を買ったり食べたりできます。
今回のオンライン取材では、現地から生態学者のライアン・リョンさんと、ツアーガイドのオリヴィア・タンさんが案内を進めてくれました。
「小瀛故事館」(Siu Ying Story Room)では、かつてこの地域の七つの村が「慶春約」(Hing Chun Alliance)という同盟を結び、交易を通じて結びつきを強めた歴史が展示されています。
客家の伝統的な家の屋根には透明な部分があるのですが、これは「自然光を採り入れるため」との説明がありました。
いったん村を離れ、戻ってきた住民も
荔枝窩の家屋は、規則正しく配置されています。20世紀初頭にはここは豊かな村で、1000人以上いた住民は1960年代に激減したのですが、最近は村に戻ってくる人もいて、地域の活性化に貢献しているそうです。
そんな帰村者の一人、1966年に村を離れ2014年に戻ってきた女性、クワン・イン(Kwan Ying)さんが経緯を語りました。「ここは豊かな農地でしたが、中国本土との競争に敗れて農業がすたれました。近年は活性化が進み、さまざまな果物や野菜が栽培されています。私は両親の面倒を見るために戻ってきたのですが、そのころここで農業を再開した人たちから、昔の村を知る私にはここにいてほしいと頼まれ、住むことにしたのです」
白花魚藤木歩道のマングローブは生き物の宝庫
次にご紹介したいスポットが白花魚藤木歩道(White-Flowered Derris Boardwalk)。この歩道沿いから、原始的な海岸沿いの森をじっくり見ることができます。荔枝窩の人々が何世代にもわたって育んだもので、特に台風シーズンの高潮から村を守ってきたとのことです。
この場所で見られるのは、マングローブとしては香港最大の種であるヘリティエラ(サキシマスオウノキ)で、高さは15メートルにも達します。そのヘリティエラによじ登るようにからみつくのが、この遊歩道の名前にもなった、白い花を咲かせるツル性植物のデリス。生態学者のライアンさんによると、何百年もの間放置されたために、ツルの直径は30センチにもなっており、両者があいまって香港のほかの場所では見られない独特の景観を作り出しているとのこと。またマングローブの森は、魚やエビ、カニのような水辺の生き物の繁殖地にもなっているそうです。
ちなみに、荔枝窩周辺には、水生昆虫が112種類生息していると推定されています。絶滅危惧種の鳥シマアオジ(Yellow-Breasted Bunting songbird)や希少なチョウのシロスソビキアゲハ(White Dragontail butterfly)など、さまざまな珍しい生き物のすみかでもあるのです。
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