あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1) | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
クリックディープ旅
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あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

旅行作家・下川裕治さんが、これまで訪れたアジア各地の街。コロナ禍前の街を振り返りながら、現地の方に伝えてもらった今の様子も紹介します。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

クリックディープ旅で訪ねた街はいま1

2020年初頭から、世界規模で感染が広がった新型コロナウイルス。その勢いはまだ収まっていない。次々に生まれる変異株が、感染をさらに広めている。世界各国は感染拡大を防ぐために水際対策をとる。厳しい入国制限である。

クリックディープ旅のフィールドは主に海外だった。2020年3月ごろから、世界の多くの国に渡航することができなくなってしまった。

クリックディープ旅で僕らが歩いた街は、いまどうなっているんだろう。それを見ようとしても、現地に出向くことが難しい。そこで現地在住の知人に写真を送ってもらった。

「ここがあの通り?」

1年8カ月ほどで、世界、とくにアジアの街は大きく変わってしまった。 1回目はバンコク、カンボジアのプノンペンとシェムリアップ、そしてバングラデシュのコックスバザールの「昔といま」。

短編動画

クリックディープ旅で訪ねたときの動画をオムニバス的に紹介していきます。いま、現地の人が見たら、少し戸惑ってしまうほどのにぎやかさ。新型コロナウイルス蔓延(まんえん)前はこんな世界だったのです。

クリックディープ旅で訪ねた街はいま 「旅のフォト物語」

Scene01

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

バンコクはクリックディープ旅の拠点の街。東南アジアのマイナーな国境を越え、東南アジアをぐるりとまわる旅もバンコクからはじまり、バンコクで終わった。当時のタイは赤シャツ派と黄シャツ派に国民がわかれる政治対立の時代。バンコクでは中心街の占拠が続いていた(2014年)。いまは学生を中心にした政府への抗議活動が激しい。

Scene02

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

「週末にアジアディープ旅」というシリーズでもバンコクに。この街はアジアで働く日本人の拠点でもある。当然、日本人向けの歓楽街も誕生する。そこが日本語看板で埋まったこのタニヤ通り(2016年)。しかし厳しいロックダウンで、ここも多くの店が閉まっているという。この街が消えてしまうのでは……といううわさも。

Scene03

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

プミポン国王が亡くなられた年にもバンコクを訪ねている(2016年)。タイ人にとって精神的な支えでもあった国王の死だった。プミポン国王はラーマ9世とも呼ばれた。「9」をデザインしたTシャツを着る国民も多かった。その後、息子のワチラロンコンが国王になったが、若者を中心に王室改革の声もあがってきている。

Scene04

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

いまのバンコクはどうなっている? バンコク在住の山内茂一さんに撮ってもらった。ここはバンコクを代表する歓楽街のひとつ、ソイ・ナナ。主に欧米人やアラブ系の男性の遊び場として知られていた。しかしバンコクに直接行こうとすると、入国時の2週間の強制隔離という水際対策。やってくる観光客の姿はない。閉まった店が続く通りは歩く人も少ない。

Scene05

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

「アジアのマイナー国境を越えていく旅」は、タイからカンボジアへと進んだ。タイとカンボジア国境は長く閉ざされていた。東西冷戦、ポル・ポト派……そんな時代を経て、ようやく国境の開放。ここは首都のプノンペンのワンタン屋(2013年)。このにぎわいはやっと手にした平和のにおいがする。しかしこの国境もコロナ禍で再び閉鎖されてしまった。

Scene06

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

国境を越えていく旅はカンボジアからベトナムへ。プノンペンから船でメコン川をくだり、ベトナム側のチャドックに入国するルートだった。メコン川の船旅は観光客に人気で、プノンペンの船着き場のレストランでは、カンボジアの民族舞踊も見ることができた。しかしいまは観光客はゼロ。メコン川を航行する観光船も係留されたままだという。

Scene07

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

プノンペンのいまはどう? 西村清志郎さんが写真を送ってくれた。プノンペンのレストランのなかには、マスクを無料で配るところもあったという。カンボジアは新型コロナウイルスを抑え込んでいるかに見えたが、デルタ株が広がるころから感染者が急増。厳しいロックダウンに国民は耐えることになった。

Scene08

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アンコールワットのあるシェムリアップ。クリックディープ旅では2回訪ねた。これは2013年のアンコールワット。世界中からの観光客であふれていた。しかし感染を防ぐために、海外からやってくる人は厳しく制限している。観光客はゼロに近い。いまは怖いほど静かだという。街の人の多くは観光業に携わっていた。無収入が1年以上。限界に近いという。

Scene09

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

2017年にはアンコールワットに近い「伝統の森」も訪ねている。ここは森本喜久男氏がつくった村。ここでカンボジアの伝統的な絹織物がよみがえった。その織物は高い評価を受け、カンボジアの貧しい村も再生していった。しかし森本氏がこの年に死去。村の人々はその後に不安を募らせていた。コロナ禍のなかでも村の人々は頑張って絹織物をつくっている。

Scene10

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

アンコールワットがあるシェムリアップには、世界から観光客が集まっていた。彼らが夜、やってきたのが、パブストリートかいわい。カンボジア料理のレストランやパブがひしめいていた。2017年の様子。中国からの観光客も多く、その後新しいシェムリアップ空港も中国の援助で建設がはじまった。そこに新型コロナウイルスが襲ってしまう。いまは次の写真で。

Scene11

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

シェムリアップ在住の今永健太さんから送られてきた写真に目を疑った。これがパブストリート。コロナ禍でこんなことに? 「いま街の主要道路の改修が進んでいるんです。パブストリートも改修中」と聞いて胸をなでおろした。この工事が終わり、観光客が戻ってくる日はいつだろう。

Scene12

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

アジアの村で暮らす……その企画でバングラデシュ南部のコックスバザールを訪ねた。ここには世界でいちばん長いといわれるビーチがある。いつも多くの人でにぎわっていた。観光客の大半はイスラム教徒。女性は肌を隠すため水着姿はゼロ。男性もTシャツ姿が大半。でも、ビーチは開放的。笑顔が弾けていた。(2019年)

Scene13

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

コックスバザールには、ラカイン人という少数民族も暮らしている。仏教徒の彼らの結婚式に遭遇した。イスラム教徒が多い社会で、その存在を主張するかのような衣装がまぶしかった。コックスバザールの南には、ミャンマーから逃れたロヒンギャ難民の巨大なキャンプもある。民族と宗教が錯綜(さくそう)する一帯だ。(2019年)

Scene14

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バングラデシュは好景気が続いている。街は一気に人口が増え、インフラが追いつかない。コックスバザールも激しいスコールに見舞われると、道がこんな状態に。川に捨てられたゴミが詰まり、年を追って水没する道路が多くなってきた。この道もいまは排水路の工事が進んでいるというが。(2019年)

Scene15

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

現地に住むHlakyaw Rakhineさんにビーチの写真を送ってもらった。バングラデシュも新型コロナ感染者が多く、何回か厳しいロックダウン状態になった。学校の休校も昨年の3月から続いている。Scene12で紹介したビーチもこんな状態に。やってくるのは地元の人たちだけだという。

【次号予告】クリックディープ旅で訪ねた街の「いま」2回目。紹介するのは、ソウル、マニラ、ホーチミンシティー、ヤンゴン。

あの頃のにぎわいはいま…… アジアの街を思う(1)

2019年に連載された台湾の秘境温泉の旅が本になりました。

台湾の秘湯迷走旅(双葉文庫)

温泉大国の台湾。日本人観光客にも人気が高い有名温泉のほか、地元の人でにぎわうローカル温泉、河原の野渓温泉、冷泉など種類も豊か。さらに超のつくような秘湯が谷底や山奥に隠れるようにある。著者は、水先案内人である台湾在住の温泉通と、日本から同行したカメラマンとともに、車で超秘湯をめざすことに。ところがそれは想像以上に過酷な温泉旅だった……。台湾の秘湯を巡る男三人の迷走旅、果たしてどうなるのか。体験紀行とともに、温泉案内「台湾百迷湯」収録。

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