〈232〉ゆったりと健やかに。都心で暮らしても自然を感じる住まい
Iさんご家族(夫34歳、妻33歳、長女6歳、次女1歳)
東京都目黒区 / 102.95㎡ / 築15年
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カナダ・トロントに数年前まで暮らしていたIさんご一家。トロントは、カナダ経済の中心地でありながら、オンタリオ湖が近くにある自然が豊かな街です。日本に戻り、次女が生まれたことをきっかけに、都心に所有していたマンションをリノベーションすることにしました。
トロントでの暮らしがお気に入りで、今回のリノベーションでも「自然を感じ、家族がゆったりとくつろげる家にしたい」と希望されました。
リノベーション前は、3LDKと部屋が細分化されゆったり感が少なく、また、ルーフバルコニーに沿って連続した窓があるのに、壁で遮られて部屋からの眺望を楽しむことができませんでした。
そこで、壁で区切るのは最小限にし、広めのLDKをメインに個室は寝室だけ、さらに、余裕のあるサニタリーを提案しました。間取りは1LDKになりましたが、それぞれのスペースが広くなり、ゆったりと暮らせるプランです。
ポイントは、L字形にしたLDKです。キッチン、リビング、ダイニングは、それぞれ個室になるくらいの広さを確保。さらに、隣接していた個室の壁を取り、畳の小上がりをつくりました。
スペースが広々したのはもちろん、壁を最小限にしたことで、ルーフバルコニー越しの眺めも楽しむことができるようになりました。空や緑が見えることで、都心に住みながらも自然を感じられる空間になりました。
また、床の素材はメープル、壁の色はブルーグレーにするなど、水辺の自然をイメージできるような素材や色を選んでいます。
「壁を取り払い、LDKが一体空間になったことで感じる気持ち良さは、想像以上でした」とIさん。
「子どもたちと一緒に料理をしたい」という奥様の希望をかなえたキッチンは、左右から出入りができるアイランド型。作業しやすい広い調理台も特徴です。背面の壁には、トロントで購入した湖の絵と船のパドルを飾りました。「お気に入りのものを、新しい家に飾りたい」という思いがあったので、フォーカルポイントになる場所に。湖の絵とパドルが際立つように、他の部分のデザインはシンプルに仕上げました。
寝室は、今は家族4人で寝ていますが、子どもたちが成長して個室が必要になったときには、子ども部屋に変更予定です。ドアやコンセントを左右対称に二つ設け、将来、真ん中に間仕切り壁をつくって仕切ることを可能にしています。
また、壁にはガラスをはめ込んだ室内窓をつくり、リビングにいても子どもたちの気配を感じられる工夫も施しました。子どもたちの成長を見守りたい、Iさんご夫婦の思いが感じられます。
コロナウイルスの影響で、家の中で過ごす時間が長くなりました。それによって、多くの人は物質的ではなく、精神的な豊かさを大切に暮らしたいと感じています。ゆったり健やかに自然体に、Iさん一家の暮らしにはそのヒントがありました。
間取りとリノベーションの写真のつづき(写真をクリックすると、各部屋をご覧いただけます)
Iさんご夫妻に聞く
リノベーションQ&A
Q1 リノベーションをして生活が変わりましたか?
以前より、家の中でリラックスする時間が増えました。畳の小上がりで横になり、天井のデザインを見ながらゆっくりしたり、キッチンのカウンターに座って夫婦で話したりすることがお気に入りの時間です。リビングいっぱいに、子どもたちがおもちゃを広げて遊んでいるのを見るのも楽しいですね。
オープンな間取りにしたので、家族がどこで何をしているかすぐ分かり、どこにいても話せるようになりました。それに、掃除がしやすくなって掃除が好きになりました。
Q2 一番の気に入っている場所はどこですか?
ダイニングエリアです。ブルースタジオさんから「家の中で一番良い場所を家族が集まるスペースにしませんか?」というアイデアをいただき、窓からの景色が一望できるスペースにダイニングテーブルを置きました。毎日、ごはんを食べたり、くつろいだり、家族で気持ち良く過ごせています(Iさん)。
思い描いていた通りのキッチンになりました。料理することはもちろん、キッチンからリビングにいる家族の様子を見たり、外の景色を眺めたりすることも好きです(奥様)。
Q3 リノベーションのプロセスで大変なことはありましたか?
仕事・育児をしながら、リノベーションに関する家族内検討の時間、ブルースタジオさんとの打ち合わせの時間を捻出することが難しかったです。また、マンションのリノベーションなので、マンションの規定・ルールと照らし合わせながら施行管理を進めなければならなかったこと、希望と予算のバランスを自分の中で折り合いをつけ、優先順位を考えて決定していくことも、それぞれ大変な作業でした。でも、そんなプロセスを乗り越えて、理想の家になりました。
構成・大橋史子