意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目  | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
On the New York City! ~現代美術家の目線で楽しむニューヨーク~
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意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 

伊藤知宏

現代美術家・伊藤知宏さんがアーティスト目線でニューヨーク(以下、NY)の街をリポートする連載「On the New York City! 」。コロナパンデミックの影響でしばらくお休みしていましたが、NY州でワクチン接種が進み、徐々に日常が戻りつつあることを受け、伊藤さんが再びアートの現場を巡ってきてくれました。

マンハッタン南部の地区「トライベッカ」のアート事情について、二回にわたってお届けします。

郷愁感をいざなうNYのビル群

トライベッカは、NY市マンハッタンのダウンタウンの西側にある地域で、この名前はTriangle Below Canal Street(=キャナルストリートの下側の三角地帯)の頭字をつなげたものだ(実際には台形に近い)。

1970年代にソーホーの地価が高騰すると、駆け出しの芸術家たちがトライベッカに集まってきた。元商業スペースの空室が多くあるこの地に、安くて広い制作場所を求めてきたのだ。しかし1980年代からは、工業地域から大型の住宅地区に変身した。今では地価が高騰し、芸術家らはブルックリンやクイーンズ、ブロンクスに居をかまえることが多い。

この地域にはギャラリーを始め、映画制作会社の事務所などもある。コロナウイルスの影響で空き物件が増えたものの、NY州と住民の感染症対策とワクチン接種により、徐々にこのエリアにあるカフェやギャラリー、ホテルにも観光客が見られるようになってきた。以前のように戻ったとはとても言えないが、街が少しずつ活気を取り戻し始めているのも実感できる。

意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
僕が住むブルックリンのブッシュウィック地区(上図「B」)からは、地下鉄のLトレインで「14 street – 6AV」駅へ向かい、地下鉄の1トレインに乗り換えた後、南下して「フランクリン」駅(同「T」)で降りる。この駅はトライベッカ地区の中心に位置している

トライベッカや隣のソーホー地区などには、キャスト・アイアン建築(*)群が多く見られる。美しいNYを舞台にしたマーティン・スコセッシ監督の「アフター・アワーズ」(1985)などでもおなじみだ。これらの建築物は、1860年ごろから1900年ごろまでに多く建てられた。

今も残存するこのビル群の近くを歩くだけで、昔のNYにタイムスリップしたような気分になれる。NYが舞台の映画をたくさん見て育った僕にはたまらない場所だ。

*比較的安価で様々な形状を作りやすい鋳鉄(ちゅうてつ)を主に用いる建築法。大きな窓と装飾された柱などがデザイン的な特徴。19世紀に英国より伝わる

意欲的なアート作品が並ぶNYトライベッカのギャラリー 館の建築にも注目 
写真左:トライベッカ地区の東北の地域。NYの天井の高いロフトのある建物がひしめく
写真右:トライベッカの中心から南側に下ると超高層ビル「56LEONARD」 (スイスの建築家ユニット、Herzog & de Meuron設計)が唐突にそびえたっている

この地域の北東エリアは、ギャラリーが多く、すべて見て回ろうとしても、1日ではとても見切れない。

ギャラリーのほとんどは、キャスト・アイアン構造の建築の中にある。建物の階を問わず、天井が高く、スペースの中心には古代ギリシャ様式のデザインの柱が多く見られる。それらをそのまま内装として使用しているギャラリーが多い。

これらの建築様式から垣間見えるのは、NYが欧州などから来た移民やその子孫らの作った街で、彼らが遠く離れた自分たちの生まれ故郷やルーツを懐かしんだり大切にしていたりすることだ。そんな彼らの思いに共鳴して、なんだかロマンティックでセンチメンタルに感じてしまう。NYの移民文化を通してこのような感覚を覚えるのは、決して僕だけではないだろう。

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