“コロナ不安”から抜けるために トレーニング習慣で「忍耐力」を強化する
コロナ禍による運動不足が大きな問題になっています。「運動不足は作業効率の低下にもつながる」と警鐘を鳴らすのは、プロスポーツ選手をはじめ1万人以上のトレーニング指導を行い、モチベーショナルコーチとしても活動するパーソナルトレーナーの中野ひろゆきさん。働き方が変わりつつある今、ビジネスパーソンに求められる力とは? ウィズコロナ時代に必要なカラダづくりを中野さんに教わります。
【連載目次】
vol.1 “対面”コミュニケーションはカラダが資本
vol.2 在宅勤務で“働きすぎ”が増加
vol.3 “コロナ不安”から抜けるために
vol.4 気づかぬうちに“リモート太り”……
忍耐とはポジティブネス
新型コロナウイルスの流行により、私たちは急激な環境の変化にさらされました。変化は良いものであってもストレスが生じると言われています。これから訪れる変化の波を乗り切るためには、忍耐力を強化しましょう。
忍耐力という言葉を耳にすると、苦しくてつらい状況も根性で耐えるようなことを想像してしまうと思いますが、私の考える忍耐力はそこまで過激なことではありません。新しい生活様式に適応していく期間の、もどかしさや葛藤をポジティブに捉える能力だと思ってください。
ストレスは敵なのか、味方なのか
ストレスは悪いもの、というイメージを持っている人は少なくないと思います。確かに、過度のストレスは人を疲弊させ、あらゆる病気のリスクになると様々な研究で実証されています。しかし、私たちの人生にストレスが全くなければ、今以上に幸せに、また健康に生きられるのでしょうか。
ストレスを味方につける超回復理論
トレーニングで身体にストレスを受けた後、適切な休息をとることで以前よりも筋力が向上する現象を「超回復」と言います。これを繰り返すことで、効率よく筋肉を大きくできるというわけです。この理論は肉体改造のみならず、精神的なストレスを克服する場合も同様と言えます。
自ら好んでストレスをためる人はいないでしょう。しかし、逆説的なことに、多少のストレスで動じないためには、ストレスを与えて、ストレスに対して抵抗力をつけなければならないのです。
忍耐力のキャパシティーを上げる
ストレスの感じ方が人それぞれなのは、忍耐力のキャパシティーが違うからです。300㎖のグラスには300㎖の水しか入らず、それ以上はあふれてしまうように、忍耐力のキャパシティーを超える負荷は誰にも耐えられません。忍耐力のキャパシティーを段階的に上げていく必要があるのです。
運動習慣でポジティブネスを養う
ドライバーは、車が険しい道のりで故障しないようにメンテナンスを行い、コースアウトしないように自身のコンディションを整えます。
私たちも人生の変化の波を乗りこなすためには、カラダ・ココロ・マインドを整備し、困難に対処する準備が必要です。それには、定期的な運動でカラダを整え、規則正しい生活習慣でココロを健全に保ち、前向きに物事に対処できるようポジティブなマインドを養うことが大切です。
プログラム:アイソメトリックトレーニング
アイソメトリックトレーニングとは、一定の姿勢をキープして筋肉を伸縮させずに負荷をかける運動です。この方法はけがのリスクが低い上、朝の気温が低下して布団から出たくない季節でも布団の中で行うことができるので運動習慣をつけるメニューとして抜群です。
今回のプログラムでは、6つのポーズをそれぞれ30秒間行います。息を止めずに静かに呼吸をすることに注意してください。
リバースハイパーホールド
プランク
プッシュアッププランク
コブラ
ダウンドッグ
ハイパーストレッチ
【MINI COLUMN】
身体の正常を保つためのストレス
地球上の私たちが24時間365日、絶え間なく感じているストレスは重力です。重力は私たちの身体に引力という負荷をかけ、その引力(負荷)に筋肉と骨が抵抗するように身体活動が行われることで一定の運動力が発生し、身体の機能的正常さを保つことができます。
しかし、宇宙のような無重力下に行くと身体にかかる重力の負荷がなくなり、筋肉も骨も一気に衰え始めます。2018年1月に宇宙飛行士の金井宣茂さんが「実は、宇宙に着いてからの身体計測があったのですが、な、な、なんと、身長が9センチも伸びていたんです! たった3週間でニョキニョキと。こんなの中高生のとき以来です。」とツイートし話題になりました。
この現象は脊髄(せきずい)の椎間板(ついかんばん)が重力から解放されることで身長が伸びたと言われていますが、無重力下に長期間いると身体にかかるストレスが全くなくなり、宇宙飛行士は1日2時間の運動を宇宙で行わないと地球に帰還した際に自力で立てなくなるぐらい筋力と骨が衰えると言われています。
(イラスト:Kotaro Takayanagi、文:中野ひろゆき)