海底遺跡やハンマーヘッドシャークの群れ 日本最西端の与那国島
日本の最西端に位置する、沖縄県の八重山諸島のひとつ、与那国島。台湾までわずか約111キロ。「日本最西端の地碑」近くの断崖に立ち、水平線をじっと凝視していると、台湾が見えてくる気がします。実際、年に数回、台湾の山並みが見えるそうです。
(トップ写真はハンマーヘッドシャークの群れ ©ダイビングサービス・マーリン)
日本でいちばん最後にサンセットを迎える最西端の与那国島。それ以外にも訪れたい理由はたくさん、あります。この島オンリーの、不思議なものの宝庫なのです。
自然の造形か人工物か「海底遺跡」
たとえば、水面下に隠された「海底遺跡」と呼ばれるスポット。メインの部分は長さ約100メートル、幅約60メートル、高さ約25メートルの巨大な岩盤で、ダイバーが通るのがやっとの細い通路や、定規で測ったように垂直な岩場、円形のテラス状の場所、巨大な階段状の切れ込みなどがあります。
人為的なものなのか、自然が作り出したものなのか。わからないことだらけですが、水中風景としては確かに異様な感じがします。そして気のせいか、このエリアだけ魚の量が少なく感じ、シーンと静まった気配が漂っているのです。
ダイバーなら巨大神殿のような岩盤を、中性浮力を生かして飛ぶ感覚で見て回ることができます。シュノーケリングでは俯瞰(ふかん)することができます。そしてたとえ泳げなくてもグラスボトムボートから、服を着たまま海中をのぞき込むことができます。
ハンマーヘッドシャークの大群泳
また、与那国の名物といえば、サメの仲間であるハンマーヘッドシャークの大群泳。左右に突き出した頭部が鐘をたたく撞木(しゅもく)に似ていることから、日本ではシュモクザメと呼ばれます。11月下旬から5月中旬にかけて、島西部の西崎(いりざき)の「ハンマーヘッドロック」や「ハンマーウェイ」に、大群が現れます。
獰猛(どうもう)なホオジロザメやイタチザメに比べれば、ハンマーヘッドシャークは臆病とされています。とはいえ、ダイビングガイドの指示に従って前に出すぎないなど、距離を保って刺激を与えないようにウォッチングすることが肝要です。サメを注視しすぎて、自分がいる水深が下がりすぎないよう気を付けることも大切です。
西崎は黒潮のせいなのか、太陽光のせいなのか、海の色がやや墨がにじんだように濃いことも、迫力を増大させます。高層ビルのような岩盤状の根がドカン、ドカンと立ち上がった地形も、威圧感があります。そして、激しい潮流。潮流に顔を向けていればいいけれど、少しでも横を向くと、マスクが持っていかれそう。
何度か、このダイビングスポットには入ったことがあり、ハンマーヘッドシャークが2~3匹の時もあれば、100匹以上が頭上いっぱい、視界いっぱいという大群に出くわしたことも。自分よりも大きな生き物が、こちらなど眼中になく、威風堂々と進んでいく光景に、思わず身震いしてしまうほど。
ちなみに、かつては与那国島のハンマーヘッドシャークの群れはメスのみという説がありました。その後、雌雄の区別がつきにくく、オスも混じっているらしいとの説や、産卵で外敵から身を守るために群れているのではないかとする説も出てきたそうです。わからないことが多いようです。
ヨナグニウマなどユニークな生き物も
与那国島にはユニークな生き物もいます。足が短く小柄なヨナグニウマや、羽を広げると30センチにもなる日本最大のガ、ヨナグニサン。ヨナグニサンは見たことがないけれど、ヨナグニウマは東崎(あがりざき)に行けば、のんびり草を食べている姿を目にすることができます。
日本の最西端ということは、外国とのボーダーでもあります。たとえば、「日本国最西端之地」碑へ向かう坂道の途中のやぶにいくつかのカゴがつるされているのを目にします。これは外来種の害虫ウリミバエが飛来してきた場合、繁殖を防ぎ駆除するため、生殖能力のない不妊虫を放飼するためのもの。道路や森林にもカゴは仕掛けられ、水際対策が行われています。
ドラマ「Dr.コトー診療所」のセットも
比川浜には、テレビドラマ「Dr.コトー診療所」のオープンセットがあります。
また、島の浜辺には、海流に乗って外国の文字が印刷されたペットボトルやビニール袋なども流れ着きます。特に冬は大量のごみの山。年に数回、島民のみなさんがビーチクリーン作戦を行い、海をきれいに保っています。
不思議な最西端の島は、島の人々の努力によって、美しく保たれているのです。
【取材協力】
ダイビングサービス・マーリン
https://yonagunidiving.com/index.html
与那国町観光協会
http://welcome-yonaguni.jp/