(20) 光の中から現れた3人 永瀬正敏が撮ったセントラルパーク
国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回はニューヨークのセントラルパークです。光の中から現れたこの3人の写真で、写しとったものとは。
ニューヨークのセントラルパークは、穏やかな晴天だった。公園に満ちた光の中から、次々に人が現れてくる。思い思いの服装をして、それぞれの目的で。その雰囲気がすごくよくて、僕自身もその暖かさにひたりながら、足の向くまま気の向くまま、シャッターを切り続けた。
ジム・ジャームッシュ監督の映画「パターソン」の撮影で、米国入りした日のことだった。日曜日だったと記憶している。僕が撮影前の準備に参加するのは翌日からだったので、ホテルに荷物を置いて、近くにあるセントラルパークに、散歩がてら、カメラを手に出かけてみた。長時間のフライトの後で、少し開放感を味わいたい気持ちもあった。
そんな中、向こうから登場したのが、この3人の女性だった。友達同士だろうか、ウォーキングを楽しんでいる。少し逆光気味の状態で撮った、まさに歩いているところ、という彼女らの姿からは、気分や関係性まで伝わってくる。伸びてくる3人の影と木の影がとけあい、光といいコントラストをなしていた。
セントラルパークは広いので、この人たちが僕のところに近づいてくるまで、かなり時間があった。ジョギングではなくウォーキングだから、と言えばそれまでだけれど、彼女らと僕がともにいた、光に包まれた緩やかな時間をも写しだしている気がする。