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あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

人生100年時代とも言われる昨今、健康への関心は低くありません。“楽して健康”よりも“楽しく健康”に。そう考える皆さんに、“運動のある過ごし方”をご提案。今回は、少し難易度の高いアクティビティ「スカイランニング」についてです。

山を駆けるスポーツといえば、トレイルランニングを想像する方が多いかと思います。が、このスカイランニングは、もっと「山」を意識した競技。陸上連盟の管轄であるトレイルランニングとは異なり、スカイランニングは山岳連盟が管轄となっています。さて、その競技は、下記のように定義されています。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

「最高峰の頂へ、谷や海から、街や村から、どれだけ短い時間で登ることができるだろうか。登山者であればもつであろう、自然なロジックから生まれた快速登山が『スカイランニング』というスポーツです」(日本スカイランニング協会)

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

その街のシンボルとなる山に向かって一気に駆け登り(傾斜30%を超える部分が含まれたりするので、まさに空に向かって駆け上るイメージ)、そして、また街に戻ってくる。イタリアの登山家たちが、「村の教会から山頂まで登って下りてくる」を競い合ったのが原点とされています。

最古の記録会とされているのが、1895年にイギリスで開催されたベン・ネビス山でのレース。日本では1913年に静岡県御殿場市で、富士登山競走が行われました。今では世界50の国と地域に競技団体があり、国際的なスポーツとして認知されつつあります。最近ではユース選手権もはじまり、次世代のスカイランナーたちは、国をまたいで交流するようにもなりました。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

スカイランニングで採用されるコースは、整備された道ばかりではありません。選手はスタミナやスピードの強化だけでなく、怪我(けが)をしないよう冷静にレースを見極めないといけません。荷物も必要以上に重ければ体力を削ることになるので軽さも求められます(装備には防寒着などの必需品があります)。

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この5月、長野県上田市で開催されたスカイレース。エリートの部(ノーマルとの2カテゴリで開催)は距離が25kmで、累計標高は3000m。スクランブリング(よじ登り)含む熟達者向けのコースとなっています。また、2019スカイランナージャパンシリーズ第2戦・ISF(国際スカイランニング連盟)公認レースで、世界ランキングの対象となっています。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

地元の神社・大星神社がスタート地点となっており、20人ずつが同じ組となって順番に出走すると、すぐに山道へさしかかります。約1200mの太郎山頂上まで駆け上がり、虚空蔵山までの稜線を楽しんだ後には、いくつかのアップダウンを繰り返し、岩稜地帯「ゴーロ」へ。これを走りきると、もう一度、太郎山を駆け登る。そして、最終的にはスタート地点の大星神社に戻ってゴール。言葉で説明するよりもタフなコースとなっています。

今回のレースでは、男子41人が完走し(18人がリタイア)、女子10人完走(3人がリタイア)しました。完走するのも大変。優勝は男子が近藤敬仁さんで03:54:38。女子が高村貴子さんで04:09:17でした。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

また、ノーマルクラスも実施されており、こちらでは一般の方も参加が可能。とはいえ、「急峻な岩場・ガレ場のある山岳レース」と紹介されており、難易度は中級の設定。距離18kmで累計標高が2000mになります。

エントリー前のHPには「登山経験が乏しい方、高所が苦手な方は、安全のために絶対エントリーしないでください」とあったのが印象的でした。

こちらは、男子は101人が完走(38人がリタイア)、女子20人が完走(6人がリタイア)となりました。男子優勝者の板垣渚さんは02:50:10でゴールし、女子優勝者の稲毛日菜子さんは03:39:37でゴールしました。

スカイレース(ノーマルクラス)に出場してわかったこと

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

フルマラソンサブ4(フルマラソンを4時間以内で走ること)を目標としている筆者が、ノーマルクラスを走ってみました。いざ、レースに参加してみると、すべての行程を駆けているというわけではありません。登りは小刻みにステップを踏んで登ろうとするのですが、なかなかそれも続かず早歩きで登る。周囲を見渡しても、無理をしない参加者も多い。下りは不安定な道ですがスピードアップ。登山道には落ち葉が積もっていて滑りやすかったり、木の根っこが出ていて足を引っかけやすかったりするので、次、足をどこに置こうかを常に考えながら進みます。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

常に心臓と肺をフル稼働させなければいけない、というわけではなく、自分の体力に合わせることができるのがうれしいですね(規定のタイムが設定された箇所があるので、そこをクリアする必要がありますが)。

頂上に着いて後ろを振りかえってみると、上田市の町並みを見渡すことができます。同じように登ってきた参加者と共感し合えるのは、登山のそれと何も変わりません。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

岩稜地帯「ゴーロ」は非常に面白いコースとなっていました。浮石が多い地帯ですので、踏み外すと怪我をする恐れがあり、また、落石で他の参加者を怪我させてしまう可能性もあります。慎重に一歩ずつ足を出し、上半身でバランスをとりながら進みました。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

そんな中、後ろからものすごい勢いで駆けおりる選手が。ちょうど、エリートクラスの選手と合流、この難しいコースを上手に、そしてスピーディーに下っていく姿を見ることができました。こういったトップ選手と一緒に走れるのも嬉しいですね。

他にも、スカイランニングのいいところは、通常なら丸一日かけていくようなコースも、5~6時間で走ってしまうところです。まさに、今回のコースもそうで、道中でいろんな景色を眺めることができました。それも、自分の足で進んできた道を振りかえるので、充実感があります。

あの山の頂上までどれだけ速く登っておりてこられるか。快速登山『スカイランニング』

ゴールする頃にはエリート・ノーマルのどのクラスの参加者もヘトヘトになっているのですが、一つの山の頂上を見てきた達成感があるので、気分が非常にいい。その街にある山の頂上を目指して、また、街に戻ってくる。まるで子供の発想のような競技を、大人が本気でやる。だからこそ、夢中になれるし、また、やみつきになってしまうのではないでしょうか。

ランニングブームの延長で様々なイベント系レースが誕生していますが、街の山を駆け、駆け下ったりする冒険心くすぐるレースに参加してみませんか。

(写真・野呂美帆)

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