植物の香りが
息子の笑顔を取り戻した
アロマテラピーを学ぶきっかけは、東日本大震災でした。震災直後の映像や閉塞した空気に反応したのでしょう、当時5歳だった息子が突然、夜眠れなくなりました。親として何かできないかと思い悩んでいたとき、アロマショップの前を通りかかると、「パパ、これすごくいい香り」と息子がイキイキと話し始めたんです。それで学生時代に薬学部で学んだ植物療法を思い出し、植物の香りで身体機能を刺激したり、心のバランスを取り戻すことで息子の不調も改善するかもしれないと思いました。それからアロマテラピーについて調べ始め、正しく精油を扱うためにアロマテラピー検定を取得しました。
薬局から発信できる
さまざまなヘルスケアのかたち
調剤薬局を営むなかで患者さんに服薬指導をしますが、薬剤師の勉強では症状が現れた部分を治すという考え方が一般的で、必ずしも根本的な解決にならないところに課題を持っていました。そうした課題の解消に向け、アロマテラピーインストラクター、アロマセラピストとさらに学んだことで、身体全体を通してよりよい治療法を探していくというホリスティックな視点が身に付き、患者さんへのアドバイスの幅が広がったと思っています。まずは病院の処方箋に従い薬をお出ししますが、薬を飲んでも症状が改善せず相談に来られる患者さんには、ご自身の納得のいく方法で不調に向き合っていただけるように、今ではアロマテラピーも含めたさまざまな可能性を一緒に考えられるようになりました。
地域に根付いた
健康アドバイザーとして
薬のやりとりだけではない、地域の患者さんひとりひとりと向き合う薬局でありたいと思っています。そのために必要な患者さんとのコミュニケーションに、アロマセラピストの資格取得過程で得た学びがとても役立っています。患者さんと接する際のカウンセリングテクニックは薬学部でも勉強しましたが、アロマセラピストの場合、お客さまの好みや悩みに合わせて精油の組み合わせを考えるため、より具体的で深い情報が求められます。設問の作り方、自覚症状だけでなく抱えているストレスや生活習慣を聞き出す方法など、患者さんとしっかり向き合うための技術が身に付いたと感じています。日々の会話で患者さんとの信頼関係をつくり、地域に根付いた健康のアドバイザーとして役立てれば、と思っています。
介護施設の方と二人三脚で
医療の質の向上に取り組んでいます
地域の医師や医療従事者が集まる会合では、地域の医療の質をどう高めていくかということを皆で話し合います。認知症の方へのケアや介護施設への取り組みがテーマのときには、アロマテラピーの可能性についてお話しすることもあります。そうした際は、資格を持っているからこそ耳を傾けてもらえるのではないかと感じます。いま、昼間だけ施設を利用する認知症患者の方に対して、ローズマリーとレモンの精油を用いた芳香浴を行っています。数値的な目標を立てて経過を可視化し、実績を出せれば地域全体に貢献できる事例になるかもしれません。介護施設の方やご家族と一緒になって、この地域の医療の質を高めていければと考えています。