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2024.05.30
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【日本文学科】国立リュブリャーナ大学日本研究専攻の学生との協働授業を開催
2024年度「日本文学演習Ⅰ[1]」(小松靖彦教授担当)にて、4月21日と5月26日に、青山学院大学文学部日本文学科の学生と、国立リュブリャーナ大学文学部アジア研究学科日本専攻の学生による協働授業をオンラインで開催しました(時差があるため、日本時間の日曜日の午後開催となりました)。
青山学院大学日本文学科からは16名(国立リュブリャーナ大学からの交換留学生1名を含む)、国立リュブリャーナ大学からは11名の学生が参加しました。ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に沿って、協働授業の使用言語は自由としましたが、実際には日本語が中心となりました。
この協働授業では、両大学の学生が7グループを作り、「秋」「子ども」「動物」「龍」「戦争」「推理小説」「旅」をそれぞれテーマに、日本文学・韓国文学・スロベニア文学・セルビア文学・トルコ文学・フランス文学の比較研究を行いました(青山学院大学には韓国からの留学生、国立リュブリャーナ大学側にはセルビア、トルコからの留学生がおり、またフランス文学についてはぜひ研究したいという強い要望があったため)。
事前準備として、パワーポイント1スライド分の自己紹介文を作成して、それをGoogle driveで共有しました。第1回では、自己紹介文を基に互いの関心を確認したのち、第2回でのグループ発表のための準備を行いました。第2回までの間の授業で、小松教授がスロベニアの歴史と文学について簡単に紹介しました(スロベニアを代表する作家イヴァン・ツァンカル「一杯のコーヒー」の日本語訳も紹介)。学生たちも、SNSで連絡を取り合いながら、調査研究とプレゼンテーションの資料作成を進めました。
第2回では、①秋という季節がセルビア文学・スロベニア文学・日本文学でも美・愛・死を関わりつつ時の流れを象徴するものとなっていること、②日本とトルコにはそれぞれ一休さんとナスレッディン・ホジャさんという、裏をかくことが得意な「とんち」の名手がいること、③日本文学・スロベニア文学では鳥の役割に違いがあることや、トルコ神話では灰色狼、韓国神話では虎が王家の始祖となっているという共通性があることが指摘されました。
また、④日本文学とヨーロッパ文学でも龍が善悪の二面性を持っていること、⑤第一次世界大戦のイゾンツォ戦線をスロベニアの作家プレジホフ・ヴォランツとアメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイが描いていることや、日本とスロベニアでは軍歌で強調されるポイントが異なること、➅フランスの推理小説・ジャン・クリストフ・グランジェの『黒い血』、日本の推理小説・湊かなえの『母性』、東野圭吾の『容疑者Xの献身』が犯人捜しではなく犯行に至る感情を描き、単純な「善/悪」二項対立となっていないこと、⑦日本文学・スロベニア文学の旅行記では自然描写の機能に違いがあることや、西洋を訪ねた森鷗外が日本文学に、日本を訪ねたアルマ・カルリンがスロベニア文化に大きな影響を与えたことが論じられました。
青山学院大学の学生がスロベニア文学に踏み込んだり、国立リュブリャーナ大学の学生が日本文学についての深い洞察を示したりするグループもありました。どのグループも8分という制限時間を超える熱気あふれるプレゼンテーションを行いました。
青山学院大学文学部日本文学科は国立リュブリャーナ大学文学部アジア研究学科と2017年2月に学術協定を締結しました。2018年12月にはアジア研究学科日本研究専攻の教員・大学院生・学部生を招いて、「ことばの身体性」をテーマとする交流行事「コソヴェル・プロジェクト」(コソヴェルはスロベニアを代表する近代詩人)を開催しました(詳細は青山学院大学日本文学会「会報」第53号参照)。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大のため、その後に予定されていた、青山学院大学日本文学科の教員・大学院生・学部生が国立リュブリャーナ大学を訪問する交流行事は中止となり、交流は途絶えてしまいました。今回の協働授業は、国立リュブリャーナ大学との学術交流・学生交流の再起動の第一歩です。日本語・日本文学・日本文化に関心が高く、気候・風土においても日本と共通する点が多いスロベニアとの交流を今後ますます活発にしてゆきたいと思います。
協働授業の企画・運営について、国立リュブリャーナ大学文学部アジア研究学科日本研究専攻の守時なぎさ先生に格別のご助力を賜りました。また、同大学大学院修士課程の学生で交換留学生として青山学院大学に在籍しているサブリナ・マリヤ・ヤペリさん、青山学院大学院文学研究科日本文学・日本語専攻の学生・新田杏奈さんと藤本まどかさのサポートもありました。記して謝意を表します。