自民は247議席から50議席以上減らし、公明も32議席から8議席減らした。石破茂首相(自民総裁)は与党過半数を勝敗ラインに位置付けていた。
石破首相は27日のテレビ番組で、政治とカネの問題が響いたとの認識を示し、「外交、安全保障、社会保障、農業政策など、個々の論点に議論がいかなかった」と述べた。
与党が過半数を下回り、今後、無所属候補を取り込む動きが見込まれる。国民民主党や日本維新の会との連立を模索する形も想定されるが、両党は連立を否定している。
一方の野党は、立憲民主党が公示前の98議席から50議席積み増した。野党間の候補者調整が不発に終わり、政権批判票が分散するとみられたが、一定の受け皿となった。
その他、国民は公示前の7議席から4倍の28議席となり、大幅に躍進した。維新は38議席と6議席減らし、共産党も2議席減らして8議席となり、野党でも明暗が分かれた。
農林議員では自民の森山裕幹事長や江藤拓総合農林政策調査会長、小野寺五典政調会長、坂本哲志国会対策委員長、林芳正官房長官らが早々に当選を確実にした。一方、小里泰弘農相が落選するなど、農業地帯を含め与党の苦戦も目立った。
選挙戦で自民は農業予算の「十分な増額」を公約。生産費を考慮した農畜産物の価格形成の法制化を訴えた。公明も合理的な価格形成を掲げた。立民など野党の多くは新たな直接支払制度を主張し、対決姿勢を強めた。
農政は改正食料・農業・農村基本法を踏まえた予算編成や基本計画改定、価格形成を巡る法制化、米政策見直しなど課題が山積。これらを控える中、与党の議席減少で政治情勢は不安定となる。石破首相の責任を問う声が強まる可能性もある。
衆院選は15日公示。1344人が立候補し小選挙区289、比例代表176の計465議席を争った。小選挙区定数「10増10減」を反映した新たな区割りでの選挙となった。
自民党派閥の政治資金問題に、国民は厳しい審判を下した。選挙戦では党幹部らが謝罪と釈明に追われ、与野党の政策論戦は深まりを欠いた。農政を含め、今後の政局は波乱含みの展開が予想される。
戦後最短となった選挙戦。内閣発足の勢いに乗ろうとした与党の思惑は外れた。都市だけでなく、北海道や東北、信越などの地方でも劣勢に立たされた。
小里泰弘農相ら現職閣僚も苦杯をなめた。農政を含め政権の方針がはっきりせず、石破首相が掲げる「日本創生」の思いは有権者に届かなかった。
国会は与野党が伯仲し、自民党内では執行部の責任を問う声が上がる。来夏に参院選を控え、政権運営は難航必至だ。
こうした中、来年3月には、農政の中長期指針となる食料・農業・農村基本計画の改定が予定される。世界で食料争奪が激化し、国内農業は資材高や人口減に直面。水田政策の見直しや農産物の価格形成など難題が山積する。農政の停滞は許されない。
選挙戦では、与野党とも農業予算の増額を訴えた。野党は勢力を伸ばしたが、敵失によるところが大きい。農政でもより責任ある対応が求められる。
今後の農政の試金石となるのが、物価高や能登半島地震への対応を盛り込む経済対策だ。財源の裏付けとなる補正予算の編成を含め、党利党略を超えて実効ある対策をまとめられるかが問われる。