プロフィール

村田 幸久

村田 幸久

MURATA Takahisa

専攻 獣医学専攻 Department of Veterinary Medical Sciences
研究室 獣医薬理学研究室/放射線動物科学研究室 Veterinary Pharmacology / Animal Radiology / Food and Animal Systemics
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

アレルギーやがん、腸炎の診断・予防・治療技術を開発する。

 食を含む生活習慣や環境の変化を主な原因として、近年増加している人と動物の慢性的な疾患や体調不良を21世紀病と呼びます。私は21世紀病に含まれる、食物アレルギーやアトピー、腸炎、がんの発症や悪化のメカニズムを明らかにし、予防や治療方法を開発することを目標に研究を進めています。特に、腸内細菌の変化や、食に多く含まれる脂肪酸とその代謝の変化に注目し、薬のみならず食に含まれる脂質代謝物や菌代謝物(プロバイオティクスなど)を用いた治療法を開発しています。

 また、これらの病気は慢性かつ緩徐な病態を示すため、病状を正確に評価して、正しく診断することが難しいです。私は、これらの疾患のメカニズム解明に必要な、新しい動物モデルや人工知能を用いた評価系、尿や便を用いた診断技術の開発も進めています。いずれの研究も社会実装を常に意識した応用研究になります。

 以下にこれまでに行ってきた研究の内容を記述します。

  1. 脂質代謝に注目した食物アレルギーやアトピーの発症機構の解明と治療法の提案
  2. 免疫の制御におるがんの増殖抑制手法の開発、抗がん剤耐性の解除法の開発
  3. 尿を用いた食物アレルギー、アトピー、花粉症の診断技術開発
  4. 「食べて直す」を実現する技術の開発。かゆみや痛み、腸炎の症状を抑える食品成分の発見と応用
  5. 人工知能を用いた動物行動解析システムの開発と研究応用。

今後もこれらの研究を加速して、21世紀病の診断・予防・治療方法の開発に努め、人と動物のQOLの向上に貢献していきます。

教育内容

実用化や社会実装を意識し、それを実現できる研究者を育てたい。

教育活動
 

獣医学専修の獣医薬理学や獣医毒性学、動物生命システム科学専修の放射線動物科学などの講義や実習に加え、農学現象の数学的理解やアレルギー学や癌免疫学に関する講義を大学院で担当しています。研究室では、製薬企業、食品関連企業、化粧品企業、IT企業、病院、動物病院との共同を非常に多く進めています。研究室に所属する学生さんも研究活動を進める早い段階で、これらの企業との共同研究に関わり、経験してもらうことが多いです。また、様々な学会での発表を、早い段階から経験してもらいたいと思っています。

人材育成の目標
 

皆さんがお持ちの高い能力を活かし、様々なプロジェクトの主語になってやり切り、社会貢献ができる研究者の育成を目標としています。また真剣にアレルギーやがんを直す、が実現できる研究者を育てます。研究室では、いかに病気を治すのか、患者や患畜を救うのか、社会実装していくのかを常に意識しながら研究を進めてもらいたいです。

人材輩出の実績
 

過去約10年27名の卒業生の主な就職先として、大学などのアカデミアへの就職が3名、製薬企業が11名、食品や化粧品、検査関係企業が4名、商社が2名、公務員が2名となっています。

共同研究や産学連携への展望

生理活性脂質を疾患診断や治療へ応用する。人工知能をもちいて薬理・毒性試験を革新する。

 共同研究や産学連携の対象となるの野は医療・獣医療関係企業、製薬、検査、食品、化粧品関連のアカデミアや企業になります。

◇取り組んでいる社会課題と解決のアプローチ

  1. 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の診断と治療:尿中のバイオマーカーを見つけ、症状の有無のみならず、免疫療法や薬物療法にたいする反応性を評価できる検査キットを開発している。
  2. 薬を使わず食べて予防する、直す技術の開発:食に含まれ、かつ腸内細菌が代謝産生する生理活性脂質の中から、炎症反応や痛み、かゆみを抑える物質を発見した。現在応用を目指し、この脂質の産生・抽出・効果測定を進めている。
  3. 抗がん剤耐性解除方法の開発;がんの薬物治療において、薬物耐性は大きな課題です。私はがん内の血管の薬物排泄能に注目し、薬物投与に伴って上昇する排泄能を解除する技術の開発を進めています。
  4. 癌免疫療法補助剤の開発:PD-1シグナルを対象としたがん免疫療法は抗がん治療に大きなインパクトを与えました。しかし、この治療が効果を発揮しない患者さんもいらっしゃいます。私はがん微小環境の免疫極性を制御することで、がん免疫療法に対する感受性を上昇させる方法を開発しています。
  5. 犬や猫の診断技術の開発;口がきけない動物の病気を診断するのは非常に難しい。採血することなく採取しやすい尿を含む体液を用いた、犬猫のがん、アレルギー性疾患、膀胱炎、てんかんなどの診断技術を開発しています。
  6. 人工知能を用いた薬理・毒性試験の自動化:これまでの薬理・毒性試験の一部では、人が実験動物の行動を観察して数値化し、評価を行ってきました。これには、再現性、客観性、人への外挿性、スループット性といった点で大きな課題がありました。私は画像や人工知能をもちいることで、これらの薬理・毒性試験の自動化や新しいモデルの評価系開発を行っています。

◇特許情報:以下に各分野の特許情報を記述します。

◎体液を用いた検査

  • 抗tetranor-PGDMモノクローナル抗体及びその用途: 特願2021- 26290 2021年
  • ネコ科動物の炎症状態の評価方法: PCT/JP2020/41434 2020年
  • アトピー性皮膚炎の検出方法: PCT/JP2020/37645 2020年
  • ネコの尿中炎症マーカー:62/930714 2019年
  • アレルギー性鼻炎の検出方法:特願2018-43404 2018年
  • 食物アレルギーのバイオマーカー、検査方法、尿検体検査用キット及び尿検体検査用スティック: PCT/JP2017/002919 2017年
  • 食物アレルギーの検査方法及び検査用キット: PCT/JP2015/072421 2015年

◎動物行動解析システム

  • 情報処理装置、情報処理方法及びプログラム: 特願2020-211853/特願2020-211852 2020年

◎食べて直す技術と治療薬の開発

  • 炎症性疾患およびアレルギー性疾患の治療、予防または改善剤: PCT/JP2019/49500 2019年
  • 炎症性疾患の治療、予防または改善剤: 特願2018-235139 2018年
  • がん転移抑制剤: PCT/JP2017/20569 特願2018-521010 2017年
  • 食物アレルギー治療薬: PCT/JP2016/87326 特願2017-556113 2016年
  • アレルギー抑制剤: 特願61/772689 2013年
  • 血管新生促進剤: 特願2009-247492 村田幸久他 2009年10月28日

研究概要ポスター(PDF)

最近のプレスリリース

動画から動物の探索行動を自動で検出するシステムの開発
子宮内の脂質代謝をみることで乳牛の子宮内膜炎を検出する技術の開発に成功
アレルギー性鼻炎患者の鼻水に 鼻閉(鼻づまり)を悪化させる物質を発見
腸管バリアを強化する脂質を発見
花粉によるアレルギー症状を抑える脂質の成分を発見 ――EPA代謝物がアレルギー性結膜炎を抑制――

研究内容紹介

キーワード

キーワード1  :  アレルギー、がん、腸炎、アトピー、食物アレルギー、免疫、動物、薬、予防、診断、治療、人工知能、AI、数理解析、環境、食、脂質、質量分析、オミクス、メタボローム、動物行動、獣医、バイオマーカー
キーワード2  :  アレルギー、がん、フードロス、食糧問題、生活習慣病、デジタルトランスフォーメーション、SDGs、薬剤耐性、がん免疫療法、