The Catcher in the Rye(ライ麦畑で捕まえて)
サリンジャーと聞いてまず思い浮かぶのは
この小説。
【サリンジャー】
アメリカの小説家。
1919~2010
作家の名前も小説名も
既知ではあったけれど
なかなか読む機会がないままに過ぎていた。
彼の半生を描いたこの映画を見て
いつかは読みたいと思いながらも
その機にはなかなかたどり着かなかった。
こちらの映画にも
サリンジャーが声と後ろ姿だけ
登場します。
洋画 マイ・ニューヨーク・ダイアリー - ♛Queens lab.
アメリカ文学界におけるライ麦畑
この長編小説が発表された時、
文壇の評価は賛否両論で
保守的、道徳的立場の人たちからは
酷評され
主人公ホールデンと同世代からは
圧倒的な指示を受けました。
ホールデンの言葉遣いや態度は
カリフォルニア州の教育委員会からも
不評を買い禁書になり
学校や図書室から追放された。
現代でもアメリカ国内では
問題視されている部分も有るようです。
個人的には時代背景を踏まえての
反応のような気がします。
ホールデンはサリンジャー?
主人公の高校生、
17歳のホールデンはサリンジャー自身?
自伝とまでは言いませんが
サリンジャーの心模様とリンクしている部分が
多いような気がします。
作中のホールデンの兄DBは
小説家という設定。
兄について多くは触れられていませんが
兄についてもサリンジャー自身のような
気がします。
以前サリンジャーの作品が
映画化された時、
彼はそのひどさに激怒し
The Catcher in the Ryeの映画化を
断固として断ったそうです。
もし映画化するなら、
ホールデンを演じられるのは
自分しかいないから。
勿論年齢的にも無理だし
演技力はどうだったのでしょう?
最後のページに訳者の村上春樹氏が
こんな風に書いています。
本書には訳者の解説が
加えられる予定でしたが
原作者の要請により、
また契約の条項に基づき
それが不可能になりました。
残念ですが、ご理解いただければ
幸甚です。
(原文のまま)
翻訳本の発行が2003年。
サリンジャーが存命の頃です。
彼が作家としての村上春樹氏を
どの程度知っていたのかはわかりませんが
訳者として、作家として
彼をどのように評価していたかではなく
ホールデンを演じられるのは
自分しかいないという考え方と同じ意味で
解説を加えることを
望まなかったのだと思います。
気になったフレーズなど
ホールデンは周りの友人先輩たちを
批判的な目で見ています。
間抜けの親玉
羊羹のような脳みそ
面白い表現なのですが
羊羹は原作では何だったのか気になります。
プディングだったのか
シフォンケーキだったのか
お菓子ではない別の物だったのか。
日本には無いもので
わかりにくいからあえて村上氏は
羊羹に例えたのだろうか。
寝食を共にする。
私の中ではこの表現が多いのですが
起居を共にすると言う言い方、
ちょっと新鮮でした。
大人に対しては
インチキと形容する場面が多々あって
大人に対する思いが
凝縮されている感じなのですが
ホールデン自身も長身で白髪交じりなので
22歳と言い(実際は17歳)
偽名を名乗り、よく嘘をつく。
混じりけの無い本気
これは本気の最上級な気がします。
ライ麦畑は登場しません
タイトルからは
金色に輝く広大なライ麦畑に
イナゴが飛び交う。
そんなイメージなのですが
舞台は大都会のNY.
実際のライ麦畑は登場しません。
子供がこんな歌を歌っているのを
耳にします。
if a day catch a body coming
through the rye
ライ麦畑からやってくる
誰かさんが誰かさんを捕まえたら
これは実際はちょっと違っています。
ホールデンの妹フィービーが知っていました。
ロバートパーソンズの詩
Comin Thro' The Rye(ライ麦畑で出会ったら)の
一説なんです。
誰かさんと誰かさんが
ライ麦畑で出会ったら・・・
詩の内容はこうなっています。
妹フィービーに、いったい何になりたいの?
そう聞かれたとき彼が答えます。
だだっ広いライ麦畑のようなところに
小さい子が沢山いて何かのゲームをしている。
ちゃんとした大人はひとりもいない。
僕は崖っぷちに立ち
崖から落ちそうな子供がいると
片っ端から捕まえる。
前を見ずに崖の方まで
走っていく子供がいたら
どこからともなく現れその子をキャッチする。
ライ麦畑のキャッチャー
僕が心からなりたいと思うのは
それくらいだよ。
(原文を要約しています)
ライ麦畑で無防備に走り回る子供。
バーに行ったり、娼婦を呼んだり
深夜に街を徘徊したり
一見大人のような行動も
何者でもない自分を模索する、
ホールデン自身の事ではないでしょうか。
353ページ読破
作家という職業の人はなぜ
ほんの一言で説明できるような事を
こんなにも多くのページをさき
こんなにも読者の時間を費やさせ
表現するのでしょう?
そういう職業だからなのでしょうか?
そして作家という職業の人が
翻訳しているというのも
興味深いものが有ります。
別の翻訳者のものと
言葉のチョイスなどを比較するのも
興味深いと思います。
英語版と比べるのも一興。
ひとつ気になった事、
身長などが全部フィートで書いてあります。
メートル法に換算していないのも
あえてかもしれませんが
イメージがわきにくいのが残念。