【旅行記】韓国ソウルでレトロ建築に出会う旅 1日目―仁川空港脱出大作戦
2024年も終わりが見えてきた頃、ふと韓国行きを思い立った。
かの国にはこれまで4度、空路・海路で訪れたことがある。いずれも福岡の対岸・釜山ベースに動いた関係で、首都ソウルとは縁なき旅が続いた。
だからこその思い立ちだ。
ソウルには日本統治時代のレトロ建築や遺構が、数多く残されている。そのいずれもが歴史的価値の高い物件である一方、台湾のそれに比べたら注目される機会は少ない。
ソウル近代化の礎をなした日本人の功績を知るうえで、これらの史跡は重要な生き証人といえる。この目でとくと確かめてみようではないか。
1 今回のプランをお見せしよう!
2 男一人がどこまでも似合わない韓国旅
3 仁川国際空港からソウル駅までが長いのだ
4 ソウルに息づく京城
5 明洞でチャジャン麺を実食してGTX-Aに体験乗車
6 東大門のチムジルバン「SPAREX」で格安仮眠
飛行機でソウルに入り、釜山からフェリーで帰国する、3泊4日の行程を予定している。
初日は到着時間が遅いから、あまり遠出はできないだろう。ソウル中心部の史跡をまわれたら大成功だ。
2日目は北朝鮮に近いというオドゥサン統一展望台に立ち寄ってから、ついで儀王の鉄道博物館へ。午後は仁川旧租界ゆかりの史跡を散策する予定だ。もし余力があれば、朝の時間を活用して、初日まわれなかった史跡を訪ねたい。
3日目は大移動だ。清涼里を6時50分に発車するムグンファ号1601列車でソウルを離れ、数時間かけて中央線を南下。午後は釜山散策や土産物購入に充てたい。
夜出航する釜関フェリー「星希」で帰国の途につき、船内で4日目を迎える。下関港に着いたら、あとは電車で帰宅するだけだ。
韓国といえば、若い女性に人気がある旅行先の筆頭格だ。タレント戦略や美容ビジネスが功を奏したのだろう。おかげで、男一人の韓国旅行はなかなかしっくりこない。
おまけに反日運動が日韓関係に水を差した。今でも韓国旅行を忌避する人はいるし、韓国に行ったというだけで烈火のごとく怒る人もいないわけではない。
そんな中での男一人旅だ。目的地にさえ気をつければ、不快な思いをせずに済むことは、過去4回の釜山旅でよくわかった。行動に気をつけたらいいのだな。
まずは福岡空港国際線ターミナルに向かおう。今回搭乗するEZ642便は10時55分に出発する。60分前の9時55分までにチェックインを済ませておけばいい。余裕をもって9時過ぎに着けるよう、宗像市の自宅を8時前に出発した。
あれだけ転換クロスシートのイメージが強かった813系も、ここ数年の改造でずいぶん変わった。今やロングシートだらけなのだから。
時刻はちょうど朝ラッシュ。大勢の通勤客とともに、博多駅ホームに吐き出された。
空港までの道のりはいつもと変わらない。むしろ、ここで異変でも起きようものなら、たちまち行程に響くだろう。何事も平穏が一番だ。
こうして予定どおり、国際線ターミナルには9時過ぎに到着した。さっそくイースター航空のカウンターを探そう。
どうもおかしい。目的の場所に着いても、目の前にはエアソウルの表示しかない。しばらく周囲の様子をうかがうと、カウンター奥にイースター航空の表示が見えた。なるほど、奥(保安検査場側)に回り込む必要があったのか!
乗客の大半が韓国人だ。日本人は女性グループか夫婦ないしカップルばかりで、男一人は当然ほかにはいない。通路側の席を発券してもらい、これにてチェックインは完了。その足で搭乗口にむけ移動したい。
保安検査場・イミグレーションを抜けた先は、これから帰国する外国人で混雑していた。極端な円安のせいか日本人は少ない。これからの待ち時間を利用して、ペットボトルのお茶を買っていく。これで飲み物にはしばらく困らないだろう。

▲福岡空港にて
いつも通り、飛行機を撮りながら余った時間をつぶす。飛行機撮りにも飽きてきた頃、ようやくEZ642便の搭乗時間になった。ところが、一向に搭乗が始まらないではないか。機材運用の関係で出発が30分ほど遅れるとのこと。LCCに遅れはつきものだが、そうは言うものの毎度じれったくなるものだ。
おとなしくベンチに座って待つこと30分。ようやくEZ642便の搭乗がスタートした。通路側の席につく以上、あわてて列に並ぶ必要はない。行列がある程度はけたところで、搭乗ゲートを通過した。

これから仁川国際空港までの道中、やることはほぼない。まず安全のしおりを見たら、あとは着陸までおとなしく座っておこう。東南アジア方面のように長く乗る必要がないため、暇つぶしの本を持参しなくてもどうにかなる。13時ごろ、仁川国際空港に到着。
これから巨大な仁川空港を移動して、ソウルに向かわなければならない。ソウル駅には空が明るいうちに到着しておきたい。飛行機を降りたら寄り道せずに歩こう。
あ、サンハチマル!!
ふと滑走路の様子に目がいった。あの4発エンジンとズッシリした外観は間違いない!アシアナ航空のエアバスA380だ。福岡のような田舎空港では見られない姿に、思わずシャッターをきりたくなったが、韓国の空港といえば「撮影禁止」のケースが多いことを忘れてはいけない。とくに貼り紙はないものの、嫌な思いをしては旅行が台無しになると、泣く泣くその場を離れた。
到着したのはターミナル本体からやや離れたサテライト。長い通路を歩きとおした先には、ゴムタイヤ式電車のホームがあった。タッチ差で乗り遅れてしまい、ここで5分待つ羽目になった。
ここのゴムタイヤ式電車は、日本の新交通システムと同じ「AGT」を採用している。見た目も車内もまんま「新交通然」としていた。終始トンネル内をゆっくりとした速度で走り、3分かけてターミナル本体に到着した。
これから入国審査が待っている。列の長さ次第では30分で通過できるだろうし、1時間以上かかる可能性もある。到着便が集中したのか、あいにく長めの列ができていた。さっと入国カードを記入して審査の列に並ぼう。

▲仁川国際空港にて
結局、飛行機を降りてから入国審査を通過するまで1時間を要した。これでようやく空港から脱出できる!2000円分だけ両替して空港連絡鉄道「A'REX」乗り場に向かった。

▲A'REXのマスコット(スピとナル)
空港とソウル駅を結ぶA'REXでは、速達列車と各駅停車の2種別が運行されている。各駅停車の所要時間はおよそ1時間。今回は時間を節約するため、やや値は張るが速達列車を利用することにした。
速達列車は座席指定制になっており、事前予約だけでなく自販機でのチケット購入も可能だ。あと5分でソウル行きが発車するというので、いそいで購入しようとしたが、操作中に販売が終わってしまった。

▲A'REX仁川国際空港第1ターミナル駅
なかなか空港から出られない。なんとか気を取り直し、1本後のチケットをとって列車をまとう。出発30分前にならなければ改札を通過できない。それまでの間、空港ターミナルを散策して時間をつぶそう。今後、仁川から帰国するときの予習をかねて。
これからソウル近郊の電車を活用しながら、数日間を過ごすことになる。そんなときは現地のIC乗車券「T-money」が大いに役立つ。改札横にある自販機でカードを購入してチャージを済ませておこう。

▲さあA'REXに乗るぞ!
これでソウル駅に向かう準備は整った。あとは改札を通ってホームに下り、速達列車に乗るだけだ。14時45分、空港からようやく離れることができた。これから40分近い道のりをへてソウル駅を目指す。ああ、はやくソウルに着きたい!
仁川国際空港に到着してから2時間半。ついにソウル駅へとやってきた。これから徒歩で南大門にある両替所に行きたい。そのあとは南山に残る朝鮮神宮跡地の散策が待っている。

▲ソウル駅の自由通路
長いエスカレーターを抜けた先は、ソウル駅の「裏口」だった。兵役中の若者が行きかう中、ソウル駅の自由通路を抜けて「表側」を目指す。そうだ!せっかくだからソウル駅ホームを覗いてみよう。階段を降りた先には、ムグンファ号と新型電車ITX-マウムが停車していた。大陸味あふれる低床ホームが旅情を誘う。

▲ソウル駅旧駅舎(朝鮮総督府鉄道京城駅)
西日が差すなか、ようやくソウル駅の旧駅舎を見ることができた。清潔感ある東京駅とは対照的に、周辺はホームレスのたまり場になっており悪臭がただよう。今でこそゴチャゴチャしたソウル駅にはかつて、どんな光景が広がっていたのだろうか。旧京城駅舎を見ただけではなかなかイメージできない。

▲崇礼門(南大門)

▲南大門そばにあるミウ両替所
数か所のアングルからレトロ駅舎を撮ったのち、いよいよ南大門に向かう。両者はそれほど離れておらず、徒歩5分程度で到達してしまった。ここから少し路地に入り、日本人旅行者にはおなじみの「ミウ両替所」でまとまった金額を両替しておく。軍資金を得たところで、いよいよ本格的なソウル散策を始めたい。

▲波乱の時代を見届けた朝鮮神宮玉垣
南大門からかつての朝鮮神宮参道を進むと、古めかしい石造の欄干が見えてきた。朝鮮神宮跡にのこる数少ない遺構の一つ「玉垣」だ。敗戦直後の日本人迫害や朝鮮戦争といった災難を乗り越え、この地にかつて神社があったことを今に伝えている。
玉垣のある坂道をしばらく進むと、正面に青々とした斜面が見えてきた。参道石段が一直線に伸びていたのも今は昔。参道が跡形もなくえぐり取られたのち、近年新たに散策路が整備された。真正面に伸びている散策路は、一見すると参道跡に見えるが無関係だ。

▲朝鮮神宮跡地
西日が差す中、かつての朝鮮神宮跡地「南山公園」を進んでいく。境内跡地は「過酷な植民地的収奪への断罪」を意味する反日プロパガンダ施設になっており、日本人への強盗殺人を働いたのち抗日運動に関わった金九の銅像や、安重根顕彰施設が設置されている。ちょっと豪華な「少女像」も鎮座していた。
旧境内の最奥部は、古い城郭遺構の展示施設になっている。日本人なら朝鮮神宮の拝殿遺構は必見だ。神社破却後は埋設され、完全に破壊されることなく今日まで生きながらえてきた。
それだけではない。本殿跡の背後には、御神体を疎開させるための防空壕まで現存している。朝鮮神宮遺構は徹底的に破壊されつくしたと思っていたが、意外にもしぶとく残っているではないか。いいものを見ることができた。元来た道をもどり、レトロ建築を見ながら明洞に行ってみよう。
南大門周辺は京城時代から商業地域として栄えており、それだけにレトロ建築が多い。残念ながら外観整備のため、旧三越京城支店(新世界百貨店本館)を外から見ることは叶わなかったが、それでも満足のいく散策となった。
移動に集中するあまり、つい昼食を飛ばしてしまった。これから明洞で何か食べておこう。今回は韓国式中華の定番「チャジャン麺」をぜひ食べておきたい。短時間滞在ばかりだった過去4回とは異なり、今回は滞在時間に余裕がある。いろんな店でチャジャン麺を食べ比べしてみよう。
まずやってきたのは明洞の「杏花村」。すぐお隣の「開花」がやや混雑していたので、代わりにここでチャジャン麺をいただく。思った以上にモッチリした麺と、あっさり味の肉みそをしっかり混ぜ合わせていざ実食!人生初のチャジャン麺なだけに、感慨深い一時だった。

▲清渓川の夜景
夕食を終えて時計を見ると、18時30分を指していた。外はまだ明るい。何か暇つぶしできないか策をめぐらしていると、「GTX」の3文字が頭をよぎった。よしきた!少し前に開業したばかりの高速通勤鉄道「GTX-A」に試乗してみよう。

▲GTX-A関連の展示施設
地下鉄1号線で清涼里に出たのち、KORAIL盆唐線で水西へ。GTX-Aで水西~東灘を往復すれば、いい暇つぶしになるだろう。T-moneyだけで乗車できて、おまけに新幹線のような割高運賃ではないため、気軽に試乗できるのが嬉しい。
GTXで使われる電車は、一般的な通勤電車とおなじ硬いロングシートだが、扉は片開きだし床にはマットが張られ、おまけに時速170キロまで加速するなど、独自性も見え隠れしている。運行密度の高い新幹線ではとても再現できない、異国情緒あふれる乗り物を体験することができた。
GTX-Aを体験したところで、この日の活動は終了。盆頭線と地下鉄を乗り継いで、東大門駅に向かった。今回は一切ホテルをとっていない。節約旅行者の味方、韓国式銭湯「チムジルバン」を活用しつつ一晩過ごそうではないか。

▲ライトアップされた東大門
最後にダメ押しで夜食タイムに入った。入店したのは「香港飯店0410」。またチャジャン麺を食べて腹を膨らませた。

▲ライトアップされた清渓川

▲五間水橋
東大門駅から歩くこと10分、今晩の寝床「SPAREX」に到着した。入居しているショッピングモールはすでに営業を終えているが、ここでひるんではいけない!一か所だけ開いている入口からエレベーターで地下におりると、SPAREXのフロントに行ける。

▲エレベーターを下ってSPAREXへ!
フロントで夜間料金15000ウォンを支払い、館内着とタオル・ロッカーのカギを受け取れば、あとは好きなだけ過ごせる。大浴場でスッキリするもよし、汗蒸幕で汗を流すもよし、仮眠するもよし。1600円程度でお風呂に入って仮眠できるとは、じつにありがたい!
大浴場で汗を流したのち、仮眠場に直行して1日目を終えた。
撮影日:2024年9月30日
かの国にはこれまで4度、空路・海路で訪れたことがある。いずれも福岡の対岸・釜山ベースに動いた関係で、首都ソウルとは縁なき旅が続いた。
だからこその思い立ちだ。
ソウルには日本統治時代のレトロ建築や遺構が、数多く残されている。そのいずれもが歴史的価値の高い物件である一方、台湾のそれに比べたら注目される機会は少ない。
ソウル近代化の礎をなした日本人の功績を知るうえで、これらの史跡は重要な生き証人といえる。この目でとくと確かめてみようではないか。
目次
1 今回のプランをお見せしよう!
2 男一人がどこまでも似合わない韓国旅
3 仁川国際空港からソウル駅までが長いのだ
4 ソウルに息づく京城
5 明洞でチャジャン麺を実食してGTX-Aに体験乗車
6 東大門のチムジルバン「SPAREX」で格安仮眠
今回のプランをお見せしよう!
飛行機でソウルに入り、釜山からフェリーで帰国する、3泊4日の行程を予定している。
初日は到着時間が遅いから、あまり遠出はできないだろう。ソウル中心部の史跡をまわれたら大成功だ。
2日目は北朝鮮に近いというオドゥサン統一展望台に立ち寄ってから、ついで儀王の鉄道博物館へ。午後は仁川旧租界ゆかりの史跡を散策する予定だ。もし余力があれば、朝の時間を活用して、初日まわれなかった史跡を訪ねたい。
3日目は大移動だ。清涼里を6時50分に発車するムグンファ号1601列車でソウルを離れ、数時間かけて中央線を南下。午後は釜山散策や土産物購入に充てたい。
夜出航する釜関フェリー「星希」で帰国の途につき、船内で4日目を迎える。下関港に着いたら、あとは電車で帰宅するだけだ。
男一人がどこまでも似合わない韓国旅
韓国といえば、若い女性に人気がある旅行先の筆頭格だ。タレント戦略や美容ビジネスが功を奏したのだろう。おかげで、男一人の韓国旅行はなかなかしっくりこない。
おまけに反日運動が日韓関係に水を差した。今でも韓国旅行を忌避する人はいるし、韓国に行ったというだけで烈火のごとく怒る人もいないわけではない。
そんな中での男一人旅だ。目的地にさえ気をつければ、不快な思いをせずに済むことは、過去4回の釜山旅でよくわかった。行動に気をつけたらいいのだな。
まずは福岡空港国際線ターミナルに向かおう。今回搭乗するEZ642便は10時55分に出発する。60分前の9時55分までにチェックインを済ませておけばいい。余裕をもって9時過ぎに着けるよう、宗像市の自宅を8時前に出発した。
あれだけ転換クロスシートのイメージが強かった813系も、ここ数年の改造でずいぶん変わった。今やロングシートだらけなのだから。
時刻はちょうど朝ラッシュ。大勢の通勤客とともに、博多駅ホームに吐き出された。
空港までの道のりはいつもと変わらない。むしろ、ここで異変でも起きようものなら、たちまち行程に響くだろう。何事も平穏が一番だ。
こうして予定どおり、国際線ターミナルには9時過ぎに到着した。さっそくイースター航空のカウンターを探そう。
どうもおかしい。目的の場所に着いても、目の前にはエアソウルの表示しかない。しばらく周囲の様子をうかがうと、カウンター奥にイースター航空の表示が見えた。なるほど、奥(保安検査場側)に回り込む必要があったのか!
乗客の大半が韓国人だ。日本人は女性グループか夫婦ないしカップルばかりで、男一人は当然ほかにはいない。通路側の席を発券してもらい、これにてチェックインは完了。その足で搭乗口にむけ移動したい。
仁川国際空港からソウル駅までが長いのだ
保安検査場・イミグレーションを抜けた先は、これから帰国する外国人で混雑していた。極端な円安のせいか日本人は少ない。これからの待ち時間を利用して、ペットボトルのお茶を買っていく。これで飲み物にはしばらく困らないだろう。

▲福岡空港にて
いつも通り、飛行機を撮りながら余った時間をつぶす。飛行機撮りにも飽きてきた頃、ようやくEZ642便の搭乗時間になった。ところが、一向に搭乗が始まらないではないか。機材運用の関係で出発が30分ほど遅れるとのこと。LCCに遅れはつきものだが、そうは言うものの毎度じれったくなるものだ。
おとなしくベンチに座って待つこと30分。ようやくEZ642便の搭乗がスタートした。通路側の席につく以上、あわてて列に並ぶ必要はない。行列がある程度はけたところで、搭乗ゲートを通過した。

これから仁川国際空港までの道中、やることはほぼない。まず安全のしおりを見たら、あとは着陸までおとなしく座っておこう。東南アジア方面のように長く乗る必要がないため、暇つぶしの本を持参しなくてもどうにかなる。13時ごろ、仁川国際空港に到着。
これから巨大な仁川空港を移動して、ソウルに向かわなければならない。ソウル駅には空が明るいうちに到着しておきたい。飛行機を降りたら寄り道せずに歩こう。
あ、サンハチマル!!
ふと滑走路の様子に目がいった。あの4発エンジンとズッシリした外観は間違いない!アシアナ航空のエアバスA380だ。福岡のような田舎空港では見られない姿に、思わずシャッターをきりたくなったが、韓国の空港といえば「撮影禁止」のケースが多いことを忘れてはいけない。とくに貼り紙はないものの、嫌な思いをしては旅行が台無しになると、泣く泣くその場を離れた。
到着したのはターミナル本体からやや離れたサテライト。長い通路を歩きとおした先には、ゴムタイヤ式電車のホームがあった。タッチ差で乗り遅れてしまい、ここで5分待つ羽目になった。
ここのゴムタイヤ式電車は、日本の新交通システムと同じ「AGT」を採用している。見た目も車内もまんま「新交通然」としていた。終始トンネル内をゆっくりとした速度で走り、3分かけてターミナル本体に到着した。
これから入国審査が待っている。列の長さ次第では30分で通過できるだろうし、1時間以上かかる可能性もある。到着便が集中したのか、あいにく長めの列ができていた。さっと入国カードを記入して審査の列に並ぼう。

▲仁川国際空港にて
結局、飛行機を降りてから入国審査を通過するまで1時間を要した。これでようやく空港から脱出できる!2000円分だけ両替して空港連絡鉄道「A'REX」乗り場に向かった。

▲A'REXのマスコット(スピとナル)
空港とソウル駅を結ぶA'REXでは、速達列車と各駅停車の2種別が運行されている。各駅停車の所要時間はおよそ1時間。今回は時間を節約するため、やや値は張るが速達列車を利用することにした。
速達列車は座席指定制になっており、事前予約だけでなく自販機でのチケット購入も可能だ。あと5分でソウル行きが発車するというので、いそいで購入しようとしたが、操作中に販売が終わってしまった。

▲A'REX仁川国際空港第1ターミナル駅
なかなか空港から出られない。なんとか気を取り直し、1本後のチケットをとって列車をまとう。出発30分前にならなければ改札を通過できない。それまでの間、空港ターミナルを散策して時間をつぶそう。今後、仁川から帰国するときの予習をかねて。
これからソウル近郊の電車を活用しながら、数日間を過ごすことになる。そんなときは現地のIC乗車券「T-money」が大いに役立つ。改札横にある自販機でカードを購入してチャージを済ませておこう。

▲さあA'REXに乗るぞ!
これでソウル駅に向かう準備は整った。あとは改札を通ってホームに下り、速達列車に乗るだけだ。14時45分、空港からようやく離れることができた。これから40分近い道のりをへてソウル駅を目指す。ああ、はやくソウルに着きたい!
ソウルに息づく京城
仁川国際空港に到着してから2時間半。ついにソウル駅へとやってきた。これから徒歩で南大門にある両替所に行きたい。そのあとは南山に残る朝鮮神宮跡地の散策が待っている。

▲ソウル駅の自由通路
長いエスカレーターを抜けた先は、ソウル駅の「裏口」だった。兵役中の若者が行きかう中、ソウル駅の自由通路を抜けて「表側」を目指す。そうだ!せっかくだからソウル駅ホームを覗いてみよう。階段を降りた先には、ムグンファ号と新型電車ITX-マウムが停車していた。大陸味あふれる低床ホームが旅情を誘う。

▲ソウル駅旧駅舎(朝鮮総督府鉄道京城駅)
西日が差すなか、ようやくソウル駅の旧駅舎を見ることができた。清潔感ある東京駅とは対照的に、周辺はホームレスのたまり場になっており悪臭がただよう。今でこそゴチャゴチャしたソウル駅にはかつて、どんな光景が広がっていたのだろうか。旧京城駅舎を見ただけではなかなかイメージできない。

▲崇礼門(南大門)

▲南大門そばにあるミウ両替所
数か所のアングルからレトロ駅舎を撮ったのち、いよいよ南大門に向かう。両者はそれほど離れておらず、徒歩5分程度で到達してしまった。ここから少し路地に入り、日本人旅行者にはおなじみの「ミウ両替所」でまとまった金額を両替しておく。軍資金を得たところで、いよいよ本格的なソウル散策を始めたい。

▲波乱の時代を見届けた朝鮮神宮玉垣
南大門からかつての朝鮮神宮参道を進むと、古めかしい石造の欄干が見えてきた。朝鮮神宮跡にのこる数少ない遺構の一つ「玉垣」だ。敗戦直後の日本人迫害や朝鮮戦争といった災難を乗り越え、この地にかつて神社があったことを今に伝えている。
玉垣のある坂道をしばらく進むと、正面に青々とした斜面が見えてきた。参道石段が一直線に伸びていたのも今は昔。参道が跡形もなくえぐり取られたのち、近年新たに散策路が整備された。真正面に伸びている散策路は、一見すると参道跡に見えるが無関係だ。

▲朝鮮神宮跡地
西日が差す中、かつての朝鮮神宮跡地「南山公園」を進んでいく。境内跡地は「過酷な植民地的収奪への断罪」を意味する反日プロパガンダ施設になっており、日本人への強盗殺人を働いたのち抗日運動に関わった金九の銅像や、安重根顕彰施設が設置されている。ちょっと豪華な「少女像」も鎮座していた。
旧境内の最奥部は、古い城郭遺構の展示施設になっている。日本人なら朝鮮神宮の拝殿遺構は必見だ。神社破却後は埋設され、完全に破壊されることなく今日まで生きながらえてきた。
それだけではない。本殿跡の背後には、御神体を疎開させるための防空壕まで現存している。朝鮮神宮遺構は徹底的に破壊されつくしたと思っていたが、意外にもしぶとく残っているではないか。いいものを見ることができた。元来た道をもどり、レトロ建築を見ながら明洞に行ってみよう。
明洞でチャジャン麺を実食してGTX-Aに体験乗車
南大門周辺は京城時代から商業地域として栄えており、それだけにレトロ建築が多い。残念ながら外観整備のため、旧三越京城支店(新世界百貨店本館)を外から見ることは叶わなかったが、それでも満足のいく散策となった。
移動に集中するあまり、つい昼食を飛ばしてしまった。これから明洞で何か食べておこう。今回は韓国式中華の定番「チャジャン麺」をぜひ食べておきたい。短時間滞在ばかりだった過去4回とは異なり、今回は滞在時間に余裕がある。いろんな店でチャジャン麺を食べ比べしてみよう。
まずやってきたのは明洞の「杏花村」。すぐお隣の「開花」がやや混雑していたので、代わりにここでチャジャン麺をいただく。思った以上にモッチリした麺と、あっさり味の肉みそをしっかり混ぜ合わせていざ実食!人生初のチャジャン麺なだけに、感慨深い一時だった。

▲清渓川の夜景
夕食を終えて時計を見ると、18時30分を指していた。外はまだ明るい。何か暇つぶしできないか策をめぐらしていると、「GTX」の3文字が頭をよぎった。よしきた!少し前に開業したばかりの高速通勤鉄道「GTX-A」に試乗してみよう。

▲GTX-A関連の展示施設
地下鉄1号線で清涼里に出たのち、KORAIL盆唐線で水西へ。GTX-Aで水西~東灘を往復すれば、いい暇つぶしになるだろう。T-moneyだけで乗車できて、おまけに新幹線のような割高運賃ではないため、気軽に試乗できるのが嬉しい。
GTXで使われる電車は、一般的な通勤電車とおなじ硬いロングシートだが、扉は片開きだし床にはマットが張られ、おまけに時速170キロまで加速するなど、独自性も見え隠れしている。運行密度の高い新幹線ではとても再現できない、異国情緒あふれる乗り物を体験することができた。
東大門のチムジルバン「SPAREX」で格安仮眠
GTX-Aを体験したところで、この日の活動は終了。盆頭線と地下鉄を乗り継いで、東大門駅に向かった。今回は一切ホテルをとっていない。節約旅行者の味方、韓国式銭湯「チムジルバン」を活用しつつ一晩過ごそうではないか。

▲ライトアップされた東大門
最後にダメ押しで夜食タイムに入った。入店したのは「香港飯店0410」。またチャジャン麺を食べて腹を膨らませた。

▲ライトアップされた清渓川

▲五間水橋
東大門駅から歩くこと10分、今晩の寝床「SPAREX」に到着した。入居しているショッピングモールはすでに営業を終えているが、ここでひるんではいけない!一か所だけ開いている入口からエレベーターで地下におりると、SPAREXのフロントに行ける。

▲エレベーターを下ってSPAREXへ!
フロントで夜間料金15000ウォンを支払い、館内着とタオル・ロッカーのカギを受け取れば、あとは好きなだけ過ごせる。大浴場でスッキリするもよし、汗蒸幕で汗を流すもよし、仮眠するもよし。1600円程度でお風呂に入って仮眠できるとは、じつにありがたい!
大浴場で汗を流したのち、仮眠場に直行して1日目を終えた。
撮影日:2024年9月30日
- 関連記事
-
-
【旅行記】韓国ソウルでレトロ建築に出会う旅 2日目―北朝鮮は近くて遠すぎた
-
【旅行記】韓国ソウルでレトロ建築に出会う旅 1日目―仁川空港脱出大作戦
-
【旅行記】青春18きっぷでいく夏旅2024 5日目(完)―寄り道ラストは姫路城!
-