【第6話】海のはじまりの本当の真実。水季が出産を決めた本当の理由
恋愛・婚活コラムニストのやまとなでし子さんが、『海のはじまり』(フジテレビ系)を毎週考察&展開予想するコラムです。自分の子どもが7年間生きていることも、これまでをどう生きてきたかも知らなかった夏と、突然自分の人生に現れた海。2人の関係や、亡くなった彼女と娘との“母と子”の関係――。本作はさまざまな形の“親と子”のつながりを通して描かれる愛の物語。
※このコラムは『海のはじまり』6話までのネタバレを含んでいます。
子どものペースに合わせて生きるということ
海(泉谷星奈)の家で夏休みを過ごし、「子どもと暮らす」ということを学び始めた夏(目黒蓮)。
海がテーブルを拭くとなれば、うっかり飲み物を倒してしまわないように飲み物を無言で避ける祖父・翔平(利重剛)の気配りや、靴一つ選ぶにも時間がかかる海の姿など、子どものペースに合わせて生きる、ということを目の当たりにします。
海のために髪を結ってあげようと、夏も三つ編みを練習していったものの、「編み込みがいい!」の一言に撃沈するなど、思い通りにならない子どもの振る舞いにもイライラしたりせず、海のペースに合わせる夏の様子を見て、祖母・朱音(大竹しのぶ)も感心しているよう。
夏のいいところを見つけた朱音と水季
「人のペースに合わせてしまう。自由すぎるのも苦手。ある程度やることが決められている方が楽」という夏に「子育てに向いているのかもね。いいことよ。人に合わせられるってすごいこと」と夏の性格を知れば知るほど、朱音は夏への信頼が増しているよう。
また1話で夏と水季(古川琴音)が出会った時、水季が同じように「人に合わせられるってすごいこと」と褒めていましたが、夏の同じいいところを親子二人で見出しているのもほっこりします。
喧嘩をするけど実はよく似ていて、マイペースな二人だからこそ余計に人に合わせられる夏に感心するのでしょう。
「でも(海と)二人になれば月岡さんでもイライラする時が出てくるかも」と、子育ての現実を伝える朱音に返した「それも練習したいです」という夏の言葉。
子どもを育てる中での「楽しさ」だけでなく、「大変さ」もしっかりと受け入れ、現実を生きていこうという夏の思いが伺えます。
それは、「子どもを育てていく決意」というほどのはっきりとした輪郭のあるものではなく、ありのままの現実を自然体で受け入れていこうとしているような、夏らしさを感じる場面でした。
海の中に見えた、水季の生きていた証
水季が生きていた軌跡を、海と辿る夏。水季と海が一緒に暮らした狭いアパート、水季の歩いた道、色々なものを写真に収めながら、生前の水季を知ろうとします。
そんな中、海の靴紐が解けてしまいます。すると、そのまま海は先に走り、夏へ「ゆっくり歩いてきて!」と道の先から声をかけるのです。
靴紐を結んでいる間、夏を待たせないようにと先に小走りする海の姿は、昔の水季そのまま。景色だけでなく、こんなところにも小さな水季のかけらを発見し、水季がここに生きていた証を見るとともに、海と水季が親子であることを実感します。
夏の知らない「水季と海と津野の日常」
水季の勤めていた図書館を訪れると、まさかの休館日。海の機転で津野(池松壮亮)に鍵を開けてもらい、誰もいない図書館を貸し切りで使えることに。
そこでは、海と津野のさまざまな姿を目の当たりにします。
「貸し切りです!」「大きい声出していいの?」の互いの一言で伝わり、鬼ごっこが始まる海と津野のコミュニケーションや、本を貸し出す時に「(また会えるのを)待ってます」と声をかける水季の姿の真似をする海、手慣れた手つきで海の髪の毛を結う津野。
そこには、夏の知らない「水季と海と津野の日常」が確かにありました。
津野が海の髪を結う際に、「夏がしてくれた三つ編みを解いても大丈夫か?」と目で夏に訴える海の優しい配慮もまた、水季が育ててくれたもので、水季の生きていた証なのでしょう。
ドラマから私たちへのメッセージ
ビールを飲みながら語らう津野と夏。水季はワンオペの子育てで時間もお金もなく、時間とお金ができたらまた子どもに使う生活のループで、自分のこともままならなかったよう。検診も受けたことがなく、気づけば子宮頸がんにかかっていた水季。
津野に水季の最後を聞くものの、「思い出したくないです」の一言で、全てを察するしかありませんでした。
実家の助けも断り、最初から一人でなんとかしようとしていた水季ですが、もし夏が隣にいたら、実家の助けを借りていたら、水季の時間が生まれ、美容院も検診も行く事ができ、未来も変わっていたのでしょうか。
弥生(有村架純)も後輩に伝えていましたが、がん検診は自分達のために私たちも行くべきなのだとはっきりとメッセージを送ってくれているようでした。
水季が出産を決めた本当の理由
堕ろすことを決めていたはずの水季が、やっぱり産むことに決めた本当の理由が今回明らかになりました。それは産院に置いてあったノート。出産の喜びがたくさん綴られる中に一つ、中絶に関わる内容が。それは数日前に中絶をした弥生が書いたものでした。
「(中絶に対し)まるで自分が望むように振る舞っていただけで、実際は他人に全てを委ねていました。人に与えられたものを欲しかったものだと思い込むことが私は得意すぎました。でも後悔とは少し違う。でも同じ状況の人に同じ気持ちになってほしくありません。他人に優しくなりすぎず、物分かりのいい人間を演じず、ちょっとズルをしてでも自分で決めてください。どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。あなたの幸せを願います。」
中絶を選ぶことも、出産を選ぶことも、どちらも正解。
自分の気持ちに従って、自分で決断したことが、自分の幸せにつながるのだと、誰も否定することなく、寄り添う弥生らしいメッセージ。弥生の後悔と苦悩を他の誰にも味わせたくないという、優しさが詰まっていました。
それを受けて自分の気持ちに従い「海を出産した水季」。そして「海の父親である夏」と弥生が付き合い、二人で海に向き合っている……なんという運命の悪戯なのでしょう。これは偶然か必然か。
海のはじまりの始まりの真実
人の意見に影響をされたり、流されたりすることのない水季に影響を与えた弥生という存在の大きさと言葉の力。海の件でずっと外野だと思っていた弥生は、外野なんかじゃなく、むしろ海のはじまりに一番関わっていた人物だったのです。弥生がいなかったら海はこの世にいなかったのですから。
第6話では海の本当のはじまりのエピソードが明らかになりました。水季も産婦人科で「この人が来たら、伝えてもらっていいですか?」と何かを託していましたが、それがなんだったのか、弥生にはそのメッセージがしっかり伝わったのかが、これから明らかになるのでしょうか。
思わぬところで間接的に交流を持っていた二人。
海のはじまりの真実が、弥生に伝わり、外野ではないことを知る日がいつか来てほしいものです。また次回。
(やまとなでし子)
※この記事は2024年08月12日に公開されたものです