【File35】自身の選択を大切にする漢方ライフスタイルブランド経営者の場合
いつも輝くあの人は、仕事でどんなバッグを使っているんだろう? バッグとその中身は、仕事への姿勢や価値観を映す鏡。企業で働くマイナビウーマン世代の女性をインタビューし、彼女たちの仕事バッグをのぞく連載です。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:三浦晃一
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部
普段口にするお茶、普段使うしごとバッグ。なんでもないものでもいいのかもしれないけれど、そこに「自分らしい選択の理由」があると、愛着が湧くと同時に自信を持てる。
世の中、どれだけのことに自身の決定権があるのかを考えると、それほど多くないような気もする。会社、社会……自分の力だけでは変えにくい環境も多いからこそ、身の回りの選択を大切にしたい。
食べるお茶「EAT BEAU-TEA」 で話題になり、今多くの女性に注目されている漢方ライフスタイルブランド『DAYLILY』を立ち上げた、共同創業者の小林百絵さんも、そんな「自分らしい選択」を大切にしている人。
若干26歳で『DAYLILY』を立ち上げた彼女は、もともと大手広告代理店で働いていた。でも「もっとヘルシーに働きたい、大企業で自分の本当につくりたいものをつくるのは難しい」ということに気づいて、起業しちゃったんだとか。
そんな小林さんのしごとバッグは、自身のブランドである『DAYLILY』のトートバッグ。バッグには、台湾の九份の風景がプリントされている。小林さんのしごとバッグを見せてもらったら、小林さんの「自分らしい選択」がたくさん詰まっていた。
小林 百絵さん
北海道出身。慶應義塾大学大学院終了後、株式会社電通に入社。その後退社し、大学院で知り合った台湾人のeriと台湾発の漢方のライフスタイルブランドを起ち上げる。現在は、国内に6店舗、台北に1店舗を構える。Instagram: @mooee.tw
「起業家は革の重たそうなカバンを下げているイメージがある、とよく言われるのですが、私はいつでもラフでいたいので、仕事の時もほとんどトートバッグひとつです(笑)。トートバッグっていいですよね、重くないし、物もたくさん入るし」
学生時代は使いやすさからトートバッグを使っていたけれど、大人になるにつれてトートバッグではなく、革のハンドバッグを使うようになった……という人も多いかもしれない。社会人として、という気持ちでトートバッグから離れてはいたけれど、その軽さやラフさ、使いやすさはやっぱりナンバーワン。
●バッグの中身
1 MacBook 12インチ
2 エリクシール つや玉ミスト
3 YUICHI TOYAMAのメガネ
4 KATE リップモンスター
5 Maison Louis Marie No.10
6 less isの財布&キーケース
7 DAYLILIY TIGERLILY CARAMEL(缶を名刺入れに)
8 uka hair oil mist Girls on the beach
9 台湾こころ美茶
10 ノート、ペン
11 DAYLILIY JUJUBE 棗
12 DAYLILIY メイクポーチ
「ラフ&ヘルシー」をモットーにしているという小林さんのしごとバッグの中身は、そのモットーに沿って中身もすっきりめ。荷物が重くてコンディションが下がることがないように、いつも必要最低限の荷物を持ち歩くのだそう。
「この缶は『DAYLILY』で販売している『TIGERLILY CARAMEL』というのど飴のパッケージ。会話のきっかけになるといいなと思って名刺入れにしています。ビジネスバッグに自社のトートバッグを選んでいるのも、使っている理由を聞いてもらえると、自分のことや『DAYLILY』の商品を知ってもらえるきっかけになるからでもあります。
あとは、ジャーナリング用のノートを持ち歩いています。ジャーナリングは瞑想の一種で、もやもやした時に頭の中にある情報や気持ちを吐き出すために使うんです」
イメージを裏切る使い方をしているものがあると、他人との会話のきっかけになる。しかも周りはやっていないことだと、なんだか自分だけが発見したかのような特別感も。
「香りものが好きなのでヘアオイルや香水は持ち歩いています。メイクはナチュラル派なので、メイク直しの道具は最低限にとどめ、清潔感を保つ程度に」
ポーチも、『DAYLILY』で販売されているもの。小林さんがナチュラルカラーが好きということもあり、ブランドの商品も落ち着いたカラーリングのものが多いのだとか。
「『DAYLILY』のおやつは身体にいいものばかりなので、私もいつも持ち歩いています。特にナツメは食べごたえがあるので、小腹が空いた時におすすめです。
『台湾こころ美茶』は、伊藤園さんとコラボさせていただいて、皆さんに量販店などいろいろなところで手にとっていただきやすくなった商品。台湾の伝統的な自律神経を整えてくれるお茶『安神茶』がベースになっていて、仕事の合間や寝る前に飲んでいます」
ナツメには血液を作る効果があり、女性にとって大切な栄養がふんだんに含まれているのだとか。『DAYLILY』の商品はどれも、台湾の生活に根づいている「食べ物で心身を整える」食文化をベースに、商品が展開されている。
「台湾では漢方が生活に根づいていて、ちょっとした体調不良の時に、自身の食事や飲み物の中から、自分の不調に合うものを選んで養生します。特に女性は生理があるので、月の中で変化していく体調に合わせて、口にするものを選んでいるんです」
漢方というと「薬」というイメージが強いかもしれないけれど、『DAYLILY』では漢方の「医食同源」の考え方をもとに、お茶やおやつなどで気軽に取り入れられるようにしている。だからこそ、何時に何回これを口にしなければいけないということもなく、味の好みやその時の自分に必要と思うものを選んでいいのだそう。
「世の中っていろんなことがコントロールしにくいですよね。周りの環境もそうだし、自分自身のことも。だから、無理にコントロールしようとするのではなく、折り合いをつけていくことが大事だと思っています。
そして、私たちのブランドも商品も、それに寄り添っていって、お守りのような存在でありたいと思っています。私たちは商品を提案はしますけれど、最後はお客さんがその時心地いいと思えるものを買ってもらえたらいいなと思っています。選択するためにがんばらなくていいし、ありのままの自分の気持ちに耳をすましてもらいたいんです」
新卒で広告代理店に入社後、1年半で会社を辞めて『DAYLILY』を作った小林さん。忙しく働いていた頃は体調不良を感じることも多く、そんな時に台湾の漢方文化に心を動かされたのだそう。
「会社員だった頃は自分の気持ちに耳を傾ける時間がありませんでした。そんな時、台湾の方々がナチュラルに無理なく自分自身と対話しながら体調管理する姿を見て、日本にもこんな考え方があったらいいのに、と思ったんです。
漢方と聞くと、長く続けないといけないとか、決まったタイミングで飲まないといけないと思っている方も多いと思うのですが、台湾の方たちはルールに縛られず、自分の体と心に耳を傾けて、自然と漢方の知識を暮らしの知恵として取り入れているんですよ」
『DAYLILY』のラインナップにお茶があるのは「自然と取り入れやすいから」でもあるのだそう。食べるお茶は朝食代わりにもなるので、忙しい毎日にも馴染みやすい。
「食べるお茶シリーズは食べごたえがあるので、おやつにも置き換え食にもなります。種類によって少しずつ効果は違うのですが、味の好みや飲みたいシーンで選んでもらって大丈夫です。効果は気にしすぎなくていいと思っていますが、どの商品を選んでも、女性の健康に貢献してくれる栄養がたっぷり入っています」
その人のライフスタイルに合わせて商品が選べるように、『DAYLILY』ではお茶や食べ物の他に、サプリも展開されている。
「漢方のいいところは、病気ではない“名もない不調”に対して、自然なアプローチができることだと思います。病院に行くのはちょっとおおげさだけど、少しでもポジティブな毎日を過ごせるように。そんな時の選択肢の一つとして、もっと漢方を身近に感じて欲しい……そう思って、『DAYLILY』を作りました。
私もまだ練習中なのですが、世間の基準にまどわされず、自分に合った選択をするのが、現代の女性に必要なことだと思っています。だからこそ私は、自分の選択の理由や、自身のストーリーも大事にしたい。
物があふれている時代だからこそ、確かなストーリーがある人、確かなストーリーがあるブランドこそが、今を生きる人々に愛されていくと思います。でもそのストーリーって、どんなものでもいいと思うんです。過度に装飾するでも、愛されようとするでもなく、共感してくれた人の力になるブランドを作っていきたいです」
自分らしい選択の理由。それが、私たちが物を選ぶ時のストーリーになる。自分が口にするものにもそんなストーリーを持てると、「私らしさ」がちょっとだけ確かになるような、そんな気がした。
※この記事は2023年04月24日に公開されたものです