仕事も子育ても楽しむ「エンジョイキャリ」。象印マホービン株式会社 プロダクトデザイナー・内藤彩佳さんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:稲垣佑季
編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部
私たちのキャリアって、なかなか「今のラクさや楽しさ」だけでは判断できないもの。
もし、いつか結婚したら? それに、子どもが生まれたら? ずっと今住んでいる場所で、仕事を続けるとは限らないけれど、じゃあどうやってキャリアを考えていけばいいのでしょう。
誰もが知る家庭用品メーカー象印マホービンでプロダクトデザイナーとして働く内藤彩佳さんも、結婚・出産を機に自身のライフスタイルを考え直し、地元である関西で象印マホービン株式会社へ転職。
誰もが触れる機会のあるオーディオ機器を作るクリエイターの一人として、東京でキラキラ働いていた内藤さんだけど、三人のお子さんを育てる彼女は今、大阪での生活を満喫しています。
上京した女性からすると、なかなかポジティブに捉えられない”地元で働く”という選択肢。でも内藤さんにとっては、自身のキャリアとライフスタイルを安定させる選択肢だったようです。
自分らしく働きながら、デザイナーとしても成長し、子ども向け水筒「ステンレスクールボトル SD-HA10.15」のデザインで2022年度グッドデザイン賞も受賞した内藤さん。子育てと仕事、どちらもがんばる先輩ワーママに、自分らしく働くコツを聞いてみました。
東京での子育てに疲れていた時。Uターン転職が魅力的に見えた
2012年に子どもが生まれてから、夫と協力しながら子育てしてきましたが、目まぐるしくはありましたね(笑)。同じデザイナー職の友人たちの中には、PC一台でフリーランスとして働く人もいました。
リモートなら子育てがラクになるなとも思ったのですが、プロダクトデザインはフリーランスやリモートワークとは相性が良くない職種で、当時は諦めていました。
試作品の確認は会社でしないといけませんし、重いデータは家だと作業効率も悪くなりますからね。
でもある時、子どもに習い事をさせたくて話を聞きに行ったんです。すると「土日は数百人が入会待ちで、平日も午後3時には送り迎えが必要」と言われて……その時ちょっと無理だなと心が折れたのは心に残っていますね。
だからこそ、地元で実家の力を借りる選択肢が魅力的に思えたのかもしれません。
風通しのいい会社で自身の思いもアウトプット。デザイン賞も受賞
実家の近くに住むならやりたい仕事を優先したいと考え、これまで続けてきたプロダクトデザインを活かせる会社を探しました。
私の場合は自分で手に取れるもの、身近に使えるものをデザインすることにやりがいを感じていたので、ライフスタイルに関わるものづくりをする会社を軸に探したところ、象印マホービンに出会いました。
知名度はあるけれど、社員数も600名ほどと中規模です。でも、作っているものはまさに私の興味のある分野でしたし、会社が掲げている「日常生活発想」という当時のスローガンにも惹かれました。
生活者の視点に立ち、生活実感を大切に考える……自分がデザインで大事にしてきたポリシーそのものでもありました。
前職も楽しかったけれど、今のほうがより仕事を楽しめています。風通しが良いので、やりたいと思ったことは積極的に挑戦できる空気感がありますね。
入社してすぐ、象印が創立100周年を記念して「STAN.シリーズ」という暮らしになじむシームレスな家電ラインを作ることが決定したんです。自分から手を挙げましたが、社歴が短くても快くチームに迎え入れてもらえました。
その一方で、私が子持ちであるということもあって、子ども用水筒のプロジェクトにも参加させてもらっていて、「ステンレスクールボトル SD-HA10.15」では2022年度グッドデザイン賞も受賞させていただきました。
興味のある仕事も、向いている仕事も、どちらもさせてもらえていることがうれしいですね。
私自身母でもあるので「子ども向けの水筒がもっとこうだったらいいのに」という思いはいろいろありました。塗装剥げが目立つと嫌だなとか、洗うパーツが多くて面倒だなとか。水筒のポーチも、外で遊んで帰ってくる時にはいつも泥がついています。
だから、母が思う「嫌だな」を全部なくしたんです。保冷ケースをなくして、パーツは最小限にして……あとは、量販店の売り場で子どもが見た時に「かっこいい!」って思えるデザインを目指しました。
昔から好きなデザイナーさんのSNSをチェックしたり、本を読んだり展示会に行ったりはしていたのですが、地元でも変わらずやっていますね。
今はアート的な情報だけじゃなくて、店舗視察に行くことも多いかもしれません。生活雑貨を扱うお店を巡って、みんながどんな商品に魅力を感じるのかとか、密かに人間観察しています。
子育てと仕事、両立のコツは「楽しむこと」と「環境づくり」
都心で働いていた時と比べるとかなり働きやすくなりました! 子どもが保育園で急に熱を出しても、両親たちに頼むこともできますし、フレックス制なので融通がきくのもありがたいです。
子どもの送り迎えは夫と交代制にしているのですが、自分が担当する日はリモートワークにして、事務作業を進めるなど、生活に合わせて仕事を調整できています。
私の場合は好きな仕事をしているので、仕事が忙しい時や、休日に店舗視察することなどにストレスを感じていなくて、むしろ楽しめていることが大きいのかもしれません。
子育ても同じで、楽しいと思えるからできているのかも。子育てと仕事、どちらかでつらいなと思う時は、もう一方に救われています。
あとは大前提として、家族に頼るという選択肢が持てることも心の余裕を作ってくれていると思います。楽しむモチベーションも大事だけど、環境づくりも大切だと思います。
人それぞれ、心地いい環境は違うと思いますが、私は地元企業に転職して良かったなと思っています。
※この記事は2023年02月17日に公開されたものです