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【カズ中西のもりまち安全運転研究所】4 世の中そんなに甘くない。路面の見極め
2023.02.28 乗る見る

三寒四温で徐々に暖かくなり、バイクで出かけたくなる季節です。しかし、路面凍結の危険性はまだまだあります。走りながら路面状況を的確に見極められれば良いのですが、人類の能力では無理なのかな?とも思います。滑って転ぶ前に対処するのが吉。

1.GW前までは凍結に注意

スマートフォンのアプリ等で、出先の天気や路面状況を確認しやすい時代になりました。一昔前では考えられないほどの技術的な進歩で、上手く活用すれば快適なツーリングを楽しめます。しかし、デジタルの世界から得られる情報のみでは走り切れないのが、オートバイという乗り物。走って走って、経験したことが、のちに活かされていきます。僕のライダー経験なんて、たったの40年ほどですが、それでもデジタル情報を上回る知識や技、経験がモノをいう場面を日々経験しています。乗るたびにアップデートですね。

 

3月になれば路面凍結の心配はなくなる…これはある意味で正解!しかし、間違いでもあります。伊豆半島という全国レベルからすれば小さい範囲でも、海沿いこそ路面凍結の危険性は低くなりますがゼロではない。それには山と風、空気の流れが影響していて、早朝夕方、もちろん夜間でも、山の北斜面側にある日陰の道路は、凍結していた…という事実が何度もありました。伊豆スカイラインや西伊豆スカイライン、天城高原道路等々、山越えになるルートはさらに危険性大。過去20年くらいは見かけなくなりましたが、それ以前は4月でも樹氷ができたほど山々は冷え込み、路面は凍結します。

 

これまでの経験で驚いたのは、GW中のツーリングで残雪と路面凍結に遭遇したこと。山梨県から長野県へ抜ける山越えのルートだったのですが、ブラインドカーブを抜けた瞬間、目の前に雪道が!同行したフルカウルの1100ccクラスのバイクたちは、雪に埋まって動けなくなってしまいました。こんな現実、スマホから得られる情報で走りえないですもんね。ツーリングルートに山越えを組む場合は、要注意です。

表示板

ツーリング先でよく見かける道路情報の案内掲示板。降雪の数日後まで、本当にアテになる情報です。ナメてかかって痛い目を見たことが、実は何度もあります。

残雪

除雪された道路。晴れていればおおよそ難なく走れますが、日陰となっている部分は路面凍結の危険性アリです。

凍結、雪がやんで晴れた直後

一見して晴れている箱根大観山ですが、直前はこのような感じにバッチリ路面凍結でした。当日は下りて押したりしながら何とか辿り着きましたが、できれば経験したくない現実でもあります。

降雪

これもこの時期によくある突然の降雪。天気予報では晴れだったのに~と文句を言いたくなりますが、山間部では天気が急変することがよくあるので、誰のせいにもできません。そこに愛車で行った自分自身が悪いのさ~って感じです。

2.100%の見極めは不可能

走りながら路面状況を見極められれば…そんな話もありますが、おそらくニュータイプとか超サイヤ人とか、スタンド使いでもない限り、不可能だと思います。以前もお話ししたかと思いますが、目に見えた景色は1秒後には変わっています。何故ならオートバイは、1秒分だけ前に進んでいるからです。よって、スピードが高めならば「あっ路面凍結」と気づいた1秒後には、オートバイが凍結路面に乗っていて、転ぶか否かは運任せになります。トラクションコントロールも、タイヤが僅かでもグリップする状況だからこそ機能するもので、凍結路面では全く役に立ちません。僕の経験でいえば、広瀬ダム(山梨県)近くのトンネルを抜けた瞬間、目の前に全面路面凍結が現れ、運を天に任せて車体をまっすぐに立てて通過することに集中。結果としては、のり面にぶつかる程度で済みましたが、直前のスピードが出過ぎていれば、即死していたかもしれません。

 

ならば、路面凍結はどうやって見極められれば良いのか?答えは実にシンプル、意外に簡単です。直前でオートバイを停めてその場所まで歩いていき、自らの足で確かめればよいです。よく安全運転の講習や講話で、「いつでも止まれる速度」を意識しましょう!と聞きますが、危険回避にはテクニックよりもその意識が役立ちます。ブラインドカーブの多いところや標高の高いところを走る際は、「いつでも停まれる速度」「前方の安全を確認してから進む」という運転の基本を忘れないようにすると良いです。

融雪

雨や雪の翌日、よく遭遇する路面状況です。除雪された雪が溶けて流水となるパターン。これが実に厄介で、見た目には水だから大丈夫!なのですが、時と場所によっては凍っていたりします。水なのか氷なのか、手前でオートバイを停めて、歩きで確認するしかないです。

融雪剤

路面凍結の予防策として、融雪剤が散布されていることがあります。とはいえ、100%路面凍結が無いとは判断できません。また、融雪剤の特性で滑ることもありますから、ある意味で路面凍結より困る場面だと思います。

夜間

当日の様々な事情から、夜間の峠越えをしなければならないこともあります。昼間は良くても夜は凍結しやすいのが山間部で、暗いからこそ前方の状況が良く分からない。大丈夫だろうと高をくくって進んだ結果、全面路面凍結で大転倒…これもよく聞く体験談だったりします。

大雪の数日後によくある倒木。弱っている木が、雪の重みに耐えきれず折れてしまう。幹線道路ではすぐに撤去されますが、山間部の県道や市町村道、林道では倒木の事実を気づかれていない時もあります。気温的に路面凍結の危険性は無くても、ブラインドカーブを抜けたら目の前に倒木が!は、意外に多いですので要注意です。

廃道

先の状況が分からない時、いったんオートバイを停めて自らの足で確認する術ですが、実は僕の経験則からもそれがベターだと思います。僕が20代の頃…30年前くらいの話になりますが、いわゆる林道ではなく使われなくなった廃道を見つけるツーリングが僕の周りで流行っていました。行く先が道なのか、そうでないのかを確認せず、やみくもに突き進んでいくのは自爆へのパスポートみたいなもので、廃道ゆえにクラッシュや大事故を起こしても助けがくるのか否か、そもそも携帯電話が通じるのか?そんな状況に陥ります。この手の遊びは自己完結が鉄則。世間や他人様に迷惑をかけてはいけません。おかげでかなりの山々を、オフロードブーツのまま「歩き」ました(笑)正直言って、修行みたいなものですね。逆に言えば、この時代の経験が、のちのツーリングシーンに活かされています。

3.バイクにまつわる溝問題

晴れてドライ路面のツーリングでも、不安要素はあると思います。その一つに、路面に切られた排水溝問題があります。俗にいうレコード盤ですね。結論から言うと、そこを通過するスピードが速すぎたり、目線が下がりすぎだったり、摩耗限度に近いタイヤを履かせている状態だと、恐怖心を覚えて上手くクリアできないと思います。これも今さら言うまでもないという話ですが、オートバイを走らせる際、周囲の状況をよく確認する意味で、目線は前方に&幅広く!です。凍結路面の早期発見にもつながりますので、特に目線については、癖になるほど意識するのが良いです。

排水溝

峠のワインディングロードなどでよく見かける排水溝。路面に水がたまらないよう、排水性を高めるための施工です。通過スピードが適切ならば、雨でも晴れでも同じように走れます。タイヤのグリップ感が無くて上手く走れないという場合、通過スピードが速すぎると思われます。ゆっくり走っているのにハンドルを取られがちで怖いという場合、目線が下がり過ぎて場当たりに対処しようとしているから、先の状況も分からず恐怖心が先になってハンドルの振られに過敏なのだと思います。僕は目線の高さを強く意識して、控えめな速度で走りますから、恐怖心は1ミリもなく毎度難なくクリアしています。

ツーリングで雨のシーンを走る、よくあることだと思います。気になるのは橋や道路の継ぎ目にある鉄板、そして溝です。3輪ならばまったく不安なく通過できますが、2輪だと少々不安になります。しかし、排水溝の時と同じで、適切なスピードと目線の高さが恐怖心を薄くして、安全に切り抜けられることにつながります。それには、タイヤの残溝も重要。やはり無ければ滑りやすく、大転倒につながります。

タイヤ

タイヤはトレッド面のコンパウンドのみならず、カーカスを含めた全体の構造でグリップ力を出しているのが現代のトレンドです。見た目でまだ溝があるから大丈夫!とはならないのが、今どきのタイヤだとも言えます。グリップ力を生み出すメカニズムについては長くなりますので割愛しますが、現実問題として新品と比較すればこれだけの違いがあり、溝の少ないタイヤは滑りやすいです。

山を見る

路面凍結の確認は自らの足で確認する。これは間違いない方法ですが、走行中でもある程度の予測はできます。前方の山々を見て、残雪量から行く先の状況を予想します。空がグレーで山々に冠雪が多い場合、さらに霧が出ているという状況ならば、ツーリングの計画を見直して引き返すのも安全運転につながります。無事に帰れば、また行くことはできますからね。

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ライターProfile

カズ中西

モーターサイクルジャーナリストを始め、イベントのMCやラジオDJなどマルチに活躍!

伊伝株式会社の広報担当であるとともに伊豆スカ事故ゼロ小隊の中隊長、静岡県二輪車安全運転推進クラブ伊豆地区会長など、積極的に交通安全推進活動を行っている。

※文中に記載の品番/価格は、記事作成時のものです。