こんにちは、わたなべです。
僕は1986年生まれで、この記事を書いている現在は37歳です。軽度ではあるものの大人の発達障害で、診療内科で診断されたのが35歳の時でした。
そんな僕が新卒で入社したのは自動車販売会社でした。社会人のスタートは営業職でしたが、対人スキルや正確な事務処理能力、売れない時期のストレス耐性など必要な適性が多岐に渡るため、人によって向き不向きが大きい仕事です。
まして、できることとできないことの差が激しい発達障害の方にとっては、環境や仕事内容によってはものすごい成果を出すこともあるかもしれない一方で、少なからず地獄を見るような経験をしてしまう可能性も結構高いです。
僕は、何とか病むことなく9年間勤めることができましたが、それはもう人間関係には苦労しましたし、お客様や上司には怒られ続けました。その時の記憶は深く刻まれているらしく、現在でも結構な頻度で夢に出てきては焦る、というのを繰り返しています。
そんな営業の仕事ですが、発達障害を持っている方の中でも、人と話すのが好きであったり、お客様が良くなるように提案していくような業務に興味を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、発達障害の特性を持つ僕が、自動車営業マンに就職した結果どうなったのかについて紹介した後、営業職の中でもどのような仕事であれば消耗しづらいかについて解説します。
特に以下のような方の役に立てるよう、記事を作成しています。
- 発達障害者が営業職に就くとどうなるのか知りたい方
- 営業職でも消耗しないためにどのような環境を選ぶべきか知りたい方
- 発達障害を持っていても活躍できる場所を見つけたいと感じている方
- 大人の発達障害の僕が自動車営業マンに就職した結果
- 消耗しない営業職の2つの特徴
- どんな職場でも自然体でいられる環境を目指すべき
大人の発達障害の僕が自動車営業マンに就職した結果
大人の発達障害と言っても症状は様々です。僕の特性については過去記事で触れているので一応リンクを貼りますが、手帳も持ってませんし薬も飲んでません。いわゆるグレーゾーンです。
■関連記事>>車の運転に向いてないADHDの僕が軽貨物ドライバーを2年継続できた理由
では本題です。僕が自動車営業マンに就職した結果、成果を上げる瞬間の勢いは凄まじいものがあるも、失敗する時はとことん派手にやらかしてきました。ここでは成功と失敗の両方を挙げます。
自動車営業での3つの成功体験
まずは結論から。これは成功したと割と自信を持って言えるものは以下の通り。
- 新車販売台数でメーカー新人賞受賞
- 独立行政法人の入札で1契約5000万円超達成
- 自動車保険獲得件数でメーカー表彰
それぞれ解説します。
新車販売台数でメーカー新人賞受賞
僕は営業成績が良かったのかというと全くそんなことはなく、駆け出しの時は売れなすぎて、いつ辞めようかタイミングを探しているようなタイプでした。しかし、入社4年目にして、新車販売台数で新人賞という形で、メーカーから表彰されることになりました。
この時の詳細は別の記事にしてあるので、ご興味ある方は以下からどうぞ。
■関連記事>>ダメ営業マンが全国表彰を受けるまでの軌跡【たった1つの武器でも戦える】
このような結果を出すことができたのは、僕の以下のような2つの特性が良い方向に働いたからだと思っています。
- 決められたルールを守ろうとする性格であること
- 動き回るのが苦ではなかったこと
僕が勤務していた販売会社は、店舗で待っているのではなく、自分から顧客に会いに行くように言われていました。その上、3ヶ月に1回は必ず訪問するようなルールが敷かれていました。僕は営業なんて右も左もわからなかったので、とりあえずそのサイクルを守っていました。
すぐには結果に現れませんでしたけどね。ある年に『エコカーに乗り換えると下取り車に10万円程度の補助金が出る』みたいな政策が打たれるのをきっかけに、僕が担当していたお客様が次々声をかけてくれるようになり、まとめて新車注文が入った期間がありました。
それが入社4年目でした。コツは特にありません。言われた通りに、既存顧客のお宅をとにかく回り続けただけなので。でもそれが結果に繋がりました。
このように、何も考えずとにかくルール通り訪問する、というルーティーンにしてしまえば、発達障害を持っていても、それが新規開拓を任される営業職であっても、活躍できる可能性があります。
独立行政法人の入札で1契約5000万円超達成
こちらも僕が4年目の時の話です。
ある時、「役所から入札の案件来てるから、お前これやっとけ」と拠点長から書類を渡されました。内容を見てみると、とある独立行政法人の文字。市とか県レベルかと思いましたが、なんと国レベルでした。
「何でこんな片田舎のディーラーに話が来るんだろう…?」と思いましたし、入札なんかやったことないのでどうしようと思いましたが、やれと言われたのでとりあえずやることに(こういうところ素直です)。
■一般競争入札とは
官公庁が一般企業から自動車のような備品を調達する場合の契約には、大きく分けて随意契約と一般競争入札の2パターンが存在します。
随意契約の場合は、複数業者が競争することなく、役所が特定の業者を1社指名して行う契約であり、小さいディーラーがこれに該当することは稀です。
一方で、一般競争入札は2社以上の業者が見積書を提出します。自動車業界の場合、仕様書に合致している自動車を用意することができ、最も安い金額を提示できれば契約業者に選定されるため、会社の規模は問われません。
仕様書に書かれた通りに見積書を作ってみると、その金額が5000万円超…17台まとめての契約だったので、さすがに見たことない金額でした。
入札当日は、都内某所に集合する必要がありました。行ってみると、10社近くの業者が来ていました。僕はその瞬間、「あ、これもう無理じゃん」と半ば諦めモードに。どうせどこかの業者が取るんだろうと、見積書を提出してボーッとしていると、読み上げられたのは聞いたことのある金額。そうです、蓋を開けてみたら、僕が出した金額が一番安かったため、入札に通ってしまったのです。
かくして一気に17台を受注し、自分史上1契約の最高金額を達成しました。
この仕事をやってみて思うことは、人の反応を伺う必要がないため僕には向いていたということです。
通常、自動車営業は顧客にセールスします。ご主人や奥様の顔色を伺ったり、値引き交渉などの駆け引きがあったりするのですが、僕はASDかそうでないかくらいのグレーゾーンなので、人の心の動きを読むのが苦手なんですよね。
入札は、仕様書通りに書類を作り、それが通れば受注に繋がりますから、人と交渉する必要がありません。そこが本当に気が楽でした。
この時から入札が得意になり、先輩方を差し置いて入札担当みたいになりました。このように、得意分野でスペシャリストのようになれると、成果を求められる営業会社でも活躍することができます。
自動車保険獲得件数でメーカー表彰
こちらは入社8年目の話なのですが、自動車保険獲得件数でまたもメーカーから表彰を受けます。しかも2回続けて。
余談ですが、本当は7年目の時点で、とある企業様と大口契約を結ぶことに成功していたので、受賞資格はあったようですが、自動車保険での表彰というもの自体がメーカーに存在しておらず、そんなに取れる営業マンがいるなら新設しようという流れになったそうです。
ざっくりですが、僕がやっていた動きをまとめると以下の通り。
- 顧客から事故報告があったら現場に急行する
- 怪我人がいた場合は救急車の手配
- 顧客が加害者の場合は、相手(被害者)の車をいち早くディーラーに搬送する(僕がレッカー搬送し他社に送り届けることもありました)
- 顧客には事故車の修理から、警察や保険会社のやり取りについて全てどうすべきかを説明する
ちなみに、事故対応マニュアルについては以下で全て公開しています。業界関係者の方は是非読んでみてください。
■関連記事>>【ノルマ達成】自動車保険を今より2倍獲得する方法【ディーラー営業向け】
僕がこの方法で全国表彰を受けるまでになれたのは、行動をパターン化できたからです。
細かいノウハウはあるものの、とりあえずこの順で対応するとうまくいくな、というパターンを確立していました。事故現場に行った後のプロセスの大枠がわかっているので、警察が来ていた時はどうするか、相手が怒っている時はどうするか、病院にすぐに行く必要がある時はどうするか、みたいな応用に対応できたのです(しかも、やればやるほどうまくなっていきますし)。
こうした仕事であれば、やはり相手の顔色を読むとか、駆け引きすることがないので問題ありませんでした。たしかに、興奮気味の顧客や事故相手の対応をする必要はあるのですが、それも下手に出たほうがいいのか、相手を気遣ったほうがいいのかなどもパターン化していますから、マニュアル通りに動けば良かったのです。演技力は必要ですけどね。
ですので、複雑な仕事であっても、考えずとも体が勝手に動くくらいになってしまえば、定型発達であろうが発達障害であろうが活躍することができます。
ただ、そこまで熟練するまでには時間がかかりますし根気も必要です。向き不向きもあるので、無理だと思ったらすぐやめることも大事です。
自動車営業での無数の失敗体験
輝かしい成功体験を挙げてきましたが、実は数自体はそんなにありません。むしろ、失敗体験を無数にしてきています。ありすぎて全部は書ききれないので、大きなものを挙げます。
- 常務取締役に向かって「◯◯さん」付けで呼ぶ
- 新車の契約書類を覚えるまでに2年かかる
- デスクの上は常に厚さ5cm以上の書類の山
- 顧客の印鑑証明を失くす(半年後に見つかる)
- 前方不注意でガードレールに突っ込み車を大破させる
- 拠点長の言ってることにどうしても納得できず立ち向かうも返り討ちに合う
- 同僚の整備士と喧嘩して退職するまで2年以上口を聞かなくなる(他の社員に迷惑をかける)
- 値引きしすぎて拠点長に怒られ、2回目も同じことをして役員にも怒られる
- 新車の色を間違えて納車する
- 新車納車直前でリヤゲートをぶつける → 謝り方が気に入らないという理由で2回目のクレーム
- お茶出しの際、口を付けるところをガッツリ持ってクレーム
- 顧客とフロントマンの間で出来上がってるところに割って入った結果、話を壊しクレーム
- 顧客回りで初めての挨拶に行く際に違う家に訪問してしまいクレーム
最後の方はクレームばかりですが、全部「拠点長を出せ」と言われるレベルです。
試乗車を擦るとか、車検の引き取り予約を忘れるとかは何回やったかわかりません。始末書は片手以上は書きました(よくそれで済みました)。
こうした事態を引き起こしてしまったのは、僕の以下のような特性が災いしたからです。
- 全て人は対等だと思っている
- 気づいたら無かったことになっているレベルで忘れる
- 納得できないと動けない
- こだわりが強く人との対立も辞さない
- 特性が悪いのであって自分が悪いと思えない
- 初めてやること、初めて行く場所が苦手
僕は軽度のADHDであると同時に、ASDは男性ならギリギリ正常レベル、仮に女性だった場合は軽度のASDと診断されています。こういうところが僕の特性にも表れてしまっていました。
程度によるので一概には言えませんが、商材が丁寧に扱うべき自動車であること、商売相手は生身の人間であること、そして、日中は外にいるにしても社内の人間関係をそれなりに密にする必要があることから、僕は自動車営業マンが発達障害の方に向いている仕事だとは全く思いません。
前述しましたが、もう少しパターン化しやすい仕事に就いた方が、早くから活躍できる可能性が高いです。
ですが、人と話すのが好きとか、顧客と交渉するような仕事に興味がある方も少なくないはずです。そうした方は一回やってみた方がいいと思います。ただ。入社前に職場環境をよくよく吟味することをおすすめします。
消耗しない営業職の2つの特徴
僕は、新規顧客を獲得するのが求められるタイプの営業職をずっとやってきましたが、メンタルを相当消耗したので、もう営業には戻りたくないとまで思っています。
しかし、消耗しにくい営業職というのも存在します。特徴としては以下の2点です。
- ブルーカラーの業界である
- ノルマがない
それぞれ解説します。
ブルーカラーの業界である
僕の経験上、ブルーカラーの業界関係者とはかなりの確率でうまくいっていました。具体的には、運送会社や建設会社の創業社長、その会社の従業員の方、また会社の近くに大きな工場があったのでそこの社員の方などです。
その理由としては以下の通り。
- 元々言葉遣いが荒い環境にいること
- 細かいことを気にしない方が多いこと
- 理屈よりも明るさや元気の良さを業かしてくれる方が多いこと
注文書の明細を詳しく説明するよりも最終的にいくらになるのか結論だけでOKな方だったり、できるのかできないのかはっきりしているのを好む方が多かったです。ポイントだけ伝えて、あとはニコニコしながらハキハキ喋ると大抵気に入ってもらえました。
もちろん十人十色ですが、細かい人は比較的少ない業界なので、こうした方たちを相手にするような営業職なら消耗することは少ないです。
ノルマがない
営業職であっても、メーカーのルート営業などはノルマがないため消耗しにくいと言えます。既存の顧客を回ればOKなので、何度も顔を合わせていると仲良くなりますしね。
僕はずっとノルマしかない営業をやってきたのですが、労働マルチで生協の勧誘をやっていた時に一瞬だけ、ノルマなしを経験したことがあります。問い合わせされた見込み客のところに訪問してサービスの内容説明をし、結果は加入でも加入でなくてもOKみたいな感じです。
その時の感想は、「ノルマがないって最高じゃん!」でした。報酬は(少ないですが)日当制でしたし。それまで完全出来高制だったので、こんなんでいいのかと拍子抜けしたくらいです。
このように、営業は営業でも、ノルマがあるかないかで全く違う仕事になります。
実はこういう仕事、探すと結構あります。よかったらリクナビNEXTから検索してみてください。
BtoCのような一般消費者が対象の商売だと「新規取ってこい!」という話になってしまうので、あくまで完全にBtoBであることが大事です。僕ももう一回営業やれと言われたら、絶対このメーカー系のルート営業を選択するでしょうね。
どんな職場でも自然体でいられる環境を目指すべき
発達障害とは、できることとできないことの差が激しい凹凸症候群のことです。
ですので、できないことや不得意なことをやり続ける環境に身を置いてしまうと地獄を見てしまいます。しかし、得意なことを波風立たない環境でやっていければ、発達障害を持っていても何も問題になりませんし、むしろ大活躍できる可能性さえあります。
つまり、自分が何に向いていてどういった環境なら活躍できるのか理解できれば、人生イージーモードで過ごせます。これは定型発達の方も同じですけどね。
自然体でいられる環境で、特に何も努力しなくても人より優れていることを仕事にできるのが理想的ですが、大半の方はそうではないですよね。何かしら我慢したり、犠牲にしたりして仕事してるはずです。それでは消耗し続けるだけなので、自分に合った環境を探しましょう。
自分に合った仕事を見つける方法
では、そのためにどうしたら良いかということですが、以下の2つが有効だと感じています。
- 過去に大きな失敗をしたことと類似していることは最初からやらない
- 人に聞きながら自分が向いてそうなことを見つける
それぞれ解説します。
過去に大きな失敗をしたことと類似していることは最初からやらない
大きな失敗をすることってありますよね。
克服できれば得意なことに変わるかもしれないので、もしそうなるならベストです。
ただそれは、あなたにとって本当に苦手なことで、克服するには何年もかかったり、特別な訓練を受けないと直らないことかもしれません。
であるなら、それは無理にやろうとせず、その代わり自分の得意なことに専念した方がいいと思うのです。
例えば、僕にとって苦手なことや環境を挙げると以下の通り。
- 人の気持ちを推し量ること全般
- 初対面の人を含む3人以上の会合
- 上司の監視下に置かれる職場 など
これらが全て揃っている環境で仕事をしていて、35歳の時に適応障害になりました。それまで苦手だと思ってなかったんですけどね。実はダメだったんだと、だいぶ大人になってから気づきました。
それ以来、失敗してきたことや、たぶん失敗するだろうということは一切やらなくなりました。人間関係の薄い配達員をやりながら記事を書く生活を数年続けていますが、おかげさまでストレスフリーで快適に過ごすことができています。
足りないものを補おうとして頑張るのは素晴らしいことですが、全て手放してしまうという選択肢もあることを知ってほしいなと思います。
人に聞きながら自分が向いてそうなことを見つける
自分に向いていることを続けるのが結果を出すための近道ですが、そもそもどんなことが向いてるのかって、なかなかすぐにはわからないですよね。僕がまさにそうなのですが、発達障害を持っている方の中には、自分を客観視(メタ認知)するのが特に難しい人も少なくありません。
ですので、自分で考え込まず、向いてそうなことを人に聞いて教えてもらうという方法がおすすめです。
自分の印象は第三者から聞くのが一番ですし、周りの人は思いもよらないことを求めていたりします。自分が得意だと思っていることが、必ずしも相手のしてほしいことじゃなかったりしますよね。
これができると、それこそ自分が無理せずできることを、相手に十分に提供できるようになります。
この辺りの話については、別記事でまとめています。就活生向けに書いた内容ですが、実は誰にでも当てはまるので、ご興味ある方は以下からどうぞ。
■関連記事>>自分の強みがわからない人のための自己分析【長所を人に聞くだけ】
ちなみに、僕がブログを始めた理由も、他人からの評価がきっかけでした。
営業マン時代に自作のチラシを作って配って回っていたのですが、あるお客様から「営業マンより、こういう(クリエイティブな)仕事の方が向いてるんじゃない?(笑)」と冗談混じりに言われたことがあるのです。
その時は、ありがとうございますと言いつつも、「いやいや俺は営業マンとしてこれからも頑張っていくし」と思っていました。しかし、今は引きこもり気味の生活をしながらこうして記事を書いています。人生何があるかわかりません。
ということで、今回は営業職と発達障害について思うところを書きました。
この記事が、今後のあなたにとって、少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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