コモエスタ赤坂
ぼくのライフワーク的な趣味に「差別用語と表現規制の変遷」があります。映画や小説、アニメや漫画などで、1970年代以降になるとそれまで使えた言葉が差別用語とされ、テレビ放送の際に音声が消されたり、台詞が差し替えになったりした例が多く見られます。よく分かるのが『あしたのジョー』で、オリジナルでは力石が「1分でこの脳たりんをかたわにしてやる!」と言っていた場面が、80年代の版では「この脳たりんを再起不能にしてやる!」に変わり、いまの版では「この脳なしを2度と立てなくしてやる!」になっています。
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最近は「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」でガンリキの佐橋が「現在ではありえない表現を使っているためピー音が入る丹下段平」というネタをやっていたりするので、この分野に興味を持っている人も増えてきたと思います。くわしくはこの辺の本をどうぞ。
封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)
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このテーマで掘っていくときりがない(たぶん一年間毎日書いても足りない)ので、個別のネタを紹介するのはこの辺にして、今日の話題に入ります。
山本弘のSF秘密基地BLOG:「インディアナポリス」は差別語か?
山本弘の参加したアンソロジー『超時間の闇』文中において、登場人物の台詞に「インディアン」という言葉が出てくるのを「アメリカ先住民」に変えてくれ、と版元の編集者からクレームがついたとのこと。
「“インディアン”という言葉を使っちゃいけないってことは、“インディアナポリス”という言葉もダメなんですか? 実在の人物が住んでた実在の場所なんですけど」
「“インディアナポリス”は……難しい問題ですね」
難しくないだろ(笑)。
で、このエントリを、山本氏はこうシメています。
マスコミのみなさん! 「インディアナポリス」も差別語ですか? 使っちゃいけないんですか? 外国作品に「Indianapolis」という単語が出てきたら、「センジュウミナポリス」とか言い換えなきゃいけないんですか?
「Indiana Jones」は「センジュウミナ・ジョーンズ」ですか? 『センジュ・ジョーンズ/最後の聖戦』?
星座の「インディアン座」も「先住民座」に変えるんですか?
あと、「テン・リトル・インディアンズ」が使えなくなったら、クリスティの『そして誰もいなくなった』はどうなっちゃうんですか?
僕も差別には断固反対な立場だけど、歴史的に正しい用法で、しかも差別的意図を含まない表現まで規制しないでほしい。何も考えずに、機械的な言葉の言い替えだけで済ますのは、単に厄介な問題から目をそむけているだけ。それこそ差別だから。
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』は、1939年にイギリスで最初に出版されたときは『Ten Little Niggers』だったのが、アメリカで『And Then There Were None』に改題され(日本語版タイトルはこれを訳したもの)、中身も"Nigger"を"Indian"に差し替えられました。最近は、アメリカでも"Indian"は差別用語だとして、"Ten Little Soldier Boys"に変えられた版もあるそうです。
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- Grim Nursery Rhyme: Ten Little Indians - And Then There Were None (Agatha Christie)
「インディアン」って言葉を使えなくなったら、Anthraxの"Indians"も"Native Americans"に変えなくちゃいけないんですかね。
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あと、織田作之助も愛したという大阪名物、自由軒の「インデアンカレー」はどうなるんでしょうか。あれは「インド風」という意味だからいいのかな。でも実物は全然インドカレーじゃないけど。
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日本では、棚橋静雄ひきいるロス・インディオスが50年という長きにわたって活動していますが、今さらバンド名を変えろってのも酷な話ですよね。
- コモエスタ赤坂 ロス・インディオス
日本のムード歌謡と、ラテン音楽の関係というのも論ずればかなりのボリュームになると思いますが(必殺シリーズのファンファーレとアランフェス協奏曲とか)、もはや最初のテーマと何の関係もなくなってきたので今日はこの辺でお開きにします。
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