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更新日:2022年11月11日
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リビエラ逗子マリーナがワークプレイスチャージング(WPC)とV2Xを導入
リビエラ逗子マリーナ内に2020年3月にオープンした「マリブホテル」にワークプレイスチャージング設備(職場で従業員の通勤用電気自動車(以下EV)を充電するための設備)とV2X(EVに充電した電力を建物で活用するシステム)が導入されました。
導入によりどんな効果があるのか、ご紹介していきます。
なお、導入にあたっては県のワークプレイスチャージング導入事業費補助金が活用されています。
EVは走行するための電力を貯める蓄電池を搭載しており、EVに充電するだけでなく、EVに貯めた電気を家庭で使用する仕組みをV2H(Vehicle to Home)、ビルで使用する仕組みをV2B(Vehicle to Building)と言い、これら「クルマ」から「何か」への電力供給を総称する言い方がV2Xです。
リビエラ逗子マリーナではEV充電のための設備として充放電器を導入したため、EVの充電だけでなく、EVから建物への放電(給電)ができます。
充放電器3台と蓄電池1台、太陽光発電設備を導入。さらに、複数台の充放電器を管理するために、群管理システムを導入しました。
充放電PCS(パワーコンディショナー)外観
業務用電力料金の算定にはデマンド料金制度が採用されており、電力使用ピークを抑えることが電気料金の節約につながります。V2Xを群管理システムで管理することにより、ピークを抑える「スマートチャージ」と「ピークカット」ができます。
また、BCP(事業継続計画)対応として、停電時には自動切り替えで、EVの電気をホテル事務所やロビーで使えるようになります。
計画充電機能を用いて、通勤直後のEV充電の集中を回避し、目標デマンド(目標最大需要電力)を超えないように充電を行います。
電力デマンドを監視し、目標デマンドを超えないように放電することでピークカットを行います。
非常時(停電時)は自立発電に自動的に切り替えることにより、EV・蓄電池からホテル事務所・ロビーの電灯・コンセントに電力を供給します。
東京電力エナジーパートナー(株)や関西電力(株)等の業務用電力料金は、基本料金の算定にあたり「実量制」「デマンド料金制度」を採用しています。
過去1年間(その月と前11か月)の最大需要電力量により、契約電力を決定する制度です。
エアコンやモーターなどのスイッチを入れると、そのたびに使用電力は増えていきます。その刻々と変化する需要電力を計量器が計量し、30分単位で平均値(平均電力)を算出していきます。そのうち月間で最も大きい値がその月の最大需要電力となります。
それぞれの月の契約電力は、過去1年間(その月と前11か月)の最大需要電力のうちで最も大きい値となります。(電気使用開始から1年間については、電気使用開始月からその月までの最大需要電力のうちで最も大きい値となります。)
出典:関西電力ホームページ https://kepco.jp/biz/yakkan/high/charge/
参考:東京電力ホームページ https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/charge_c2/decision03.html
スマートチャージとピークカットにより、電力使用量のピークを抑え、契約電力量を削減することができますが、導入に要した費用はどれくらいで回収できるのでしょうか。
リビエラ逗子マリーナの事例では、充放電器の導入に1台あたり180万円、工事費に180万円程度の費用がかかりました。今回のケースをモデルとして、通勤手当の削減額(※)、契約電力の削減額を試算したところ、約7.3年で導入費用の回収が可能という結果になりました。
※日産リーフを4日に1回充電し、1台の充放電器をEV4台で日ごとにシェアする想定。
(日産リーフの場合、1回の通勤(50㎞)では6kWhの電力しか使用しないため、毎日の充電は必要なく、電池残量が50%以下になったら充電するとすれば、リーフ(40kWh)の場合、4日に1回の充電で良いことになる。)
今回導入した充放電器は3台でしたが、契約電力の基本料金を下げるには、台数の増加が必要です。リビエラ逗子マリーナの過去の電力利用実績から、効果的なピークカットと帰宅時までのEV満充電を両立する充放電器の最適台数を求めると5台でした。
EVの最適台数は、充放電器1台をEV4台でシェアする想定(上記「投資回収」の項参照)の場合、20台となります。
リビエラ逗子マリーナのように、ホテルにワークプレイスチャージングとV2Xシステムを併せて導入する取り組みは、日本初です。先陣を切って、ワークプレイスチャージング及びV2Xシステムを導入したねらいはなんだったのか、導入企業に聞きました。
株式会社リビエラリゾート
代表取締役社長 小林 昭雄
リビエラでは、「エコロジータウンリビエラ逗子マリーナ」を推進してきており、社有車及び従業員の通勤車のEV化に積極的に取り組んでいます。しかし、現実には、EVは高価で利用しづらい、というイメージが残っています。そこで、ワークプレイスチャージングを導入し、従業員がEVを導入しやすい環境を整備しようと考えました。
CO2排出のない脱炭素社会を目指し、社有車と従業員の通勤車をEVに転換していくことにより、環境保全に貢献していきたいと考えています。
また、夏場の電力ピークカットや停電時の非常用電源としての活用、といった実用面にも期待しています。
リビエラの福利厚生として従業員向けにEV購入助成制度を設けたことにより、新たにEVを導入したいという声は上がっています。しかし、この度の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、まだEV導入は進んでいません。
単にラグジュアリーホテルとしてだけではなく、神奈川県のSDGsパートナーとしてゼロエミッション社会の実現に向け積極的に環境保全に取り組んでいること、さらに非常時にも配慮したホテルとして安心・安全を感じていただけることが、ブランドイメージの向上につながると考えています。
多くの利用者様がこのような取組を理解され、地球環境に関心を持つようになれば、業界も自ずとEV化に向かっていくと思います。
リビエラ逗子マリーナにおけるワークプレイスチャージングの効果検証詳細は次の添付ファイル参照
EVは優れた環境性能以外にも、車両に搭載しているバッテリーに電気を貯められる蓄電池としての機能を持っています。
「車」と「蓄電池」、両方の機能を持つEVの特長を存分に活かすV2Xは、停電時の電力確保手段として注目されています。
昨今では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、国では、あらかじめ指定した避難所以外の避難所の開設や、ホテルや旅館等の活用など、「分散避難」を推奨しています。V2X機能を備えた施設が、新たな避難施設としての役割を果たすことが期待されます。
EVの導入促進とEVの蓄電池としての活用に取り組むマリブホテルの動きを今後も注視していきたいと思います。
皆様も、様々な活躍が期待できるEV、そしてワークプレイスチャージング及びV2Xシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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