子どもの頃住んでいたマンションの近くに、紙屋川という川が流れていた。ほんの浅くて、けれども勾配の荒い土地なので橋からはとても遠く見下ろす場所を流れていて、春は桜並木が川に手を述べていた。
暖かくなった頃、幼稚園からどじょうを貰って帰ったことがある。成り行きは忘れてしまった。母はどじょうを見て青ざめ、川に流しましょう、と云った。橋からビニル袋を逆さまにして、どじょうは川へと落ちていった。
あとで考えると、橋から十メータ近く落下したどじょうは、生きて紙屋川に棲むことは出来なかったのではないかと思う。思うとき、心が少し、硬くなる。
紙屋川の近くに住めない町があることは、最近Googleで検索して知った。