2023年ベストアルバム
年一しか稼働しないブログの更新の時期がやって参りました。本当歳取ると一年が早い…
今年は来日公演にも、
・Peter Gallway
・June of 44
・Poter Robinson
・Ride
・Summer Sonic(Fall Out Boy,Blur etc...)
・Their/They're/There
・Khotin
・Anxious
・The Hotelier/Origami Angel/Oso Oso/Prince Daddy & Hyena
と沢山行けて、いよいよエンタメ業界も平常運転に戻ってきた実感がありました。そんな2023年を振り返りつつぼんやり決めた30枚です。
30位:Lies/Lies
まさかの再結成&大ブレークを果たしてしまったAmerican Footballのマイク・キンセラと従兄弟のネイト・キンセラのユニットによるデビューアルバム。アメフトと併行してこの2人でやる意味とは…?と最初は思いつつ中身を聞くと納得。エレクトロ〜シンセポップ的なアレンジで、そこにいつものマイク節が乗るとかなり新鮮。曲自体も最近のマイク関連作品の中でも泣き要素強めでかなり良い出来。サポートを入れずに2人だけで敢行した来日公演もサンプラーと生&電子ドラムを同時に操りサウンドメイクを一手に引き受けるネイトの大活躍っぷりが印象的だった。
LIES - Resurrection [OFFICIAL MUSIC VIDEO] - YouTube
29位:Knower Forever/Knower
昨年リリースのアルバム・来日公演ともに素晴らしかったルイス・コールとその公演でオープニングアクトとサポートメンバーと務めたジェネヴィーヴ・アルターディによるユニット。身も蓋もない言い方をするとルイス・コール印なサウンドとメロディをジェネヴィーヴが歌うという感じなんだけど、それが驚くほど新鮮に響く。ノスタルジックなのに未来的、前衛的なのに只管美しい、そんなソウルミュージック。
28位:愛の太陽/くるり
オリジナルドラマーのもっくんが全面参加した『感覚は道標』もヘンテコかつメロディアスでとてもくるりらしいアルバムだったが、個人的にはEPとしてリリースされたこちらを推したい。ミニアルバムとは言えここまでメロディメイカー岸田繁を前面に押し出した作品は初めてではなかろうか?④の『ポケットの中』は個人的にくるりベストソングの一つになった。
27位:El mundo no se hizo en dos días/Pedro Aznar
セル・ヒランやパット・メセニーグループなどで活躍したアルゼンチンを代表するベテランSSWの2枚組新作。フォルクローレ、ラテンポップスを軸にしつつ、クラシックロック・プログレ・ヒップホップ等多彩なジャンルを混ぜ込んでいくスタイルは変わらずで、情感溢れる歌声とベースプレイの両面を堪能できる。ジョン・レジェンドのスペイン語カバーも秀逸。
Pedro Aznar - Todo De Mi (Versión en Español) - YouTube
26位:ムーンライトストリート/うさぎのみみっく!!
元々は福岡をベースに活動していたアイドルグループの初のフルアルバム。川上きらら(推しメン)、新山ひなの既存メンバーに新メンバーとして井出ちよの(3776)と荒瀬みうを迎え実力者揃い新体制となった本作、ジャンルや楽曲派的観念に囚われないドリーミーなアイドルポップスの玉手箱のようなアルバムとなった。初見の度肝を抜くコーラスワークス、曲展開で話題のシンメトリックも収録。
うさぎのみみっく!!『アンジュのジュネーズ』 - YouTube
25位:Long Light/Lusine
90年代後半からエレクトロニカシーンを牽引するベテランの6年ぶりとなる9作目。一聴してLusineとわかる浮遊感のある上物と硬いビート、ゲストボーカルの使い方も巧みで心地よくサウンドの中に溶け込んでいる。チル過ぎずダンサブル過ぎずの絶妙なラインは最早職人芸。ポストクラシカル的な新境地のアプローチも。
Lusine - Zero to Sixty (ft. Sarah Jaffe) [Official Video] - YouTube
24位:Make The Most Of It/New Found Glory
25年以上に渡ってポップパンクシーンで活躍するNFG初のアコースティックアルバム。チャド・ギルバートの癌闘病に触発されて制作した新曲群が出色の出来、既発曲のアコースティックアレンジも改めて原曲の素晴らしさを実感できる。あえてパーカッションを入れず(ドラムのサイラスはリズムギターを担当)、ギター・ベースのみのアレンジがメロディを引き立てて実に沁みる…
New Found Glory - Dream Born Again (Official Music Video) - YouTube
23位:Losing What We Love/Knuckle Puck
現行ポップパンクシーンを代表する5人組の4作目。前作『20:20』は開放的でパンクに囚われない作風が印象的だったが、Pure Noiseに移籍した今作は本来のメランコリックでエモーショナルなパンクに回帰しつつも前作で得たアレンジの幅も活かしたバランス良い内容に。ベテランが気を吐く一方で、現行勢もコンスタントに活きのいい作品を連発する今のパンクシーンの状況は本当に刺激的。
Knuckle Puck "The Tower" (Official Music Video) - YouTube
22位:Norm/Andy Shauf
稀代のソングライターにしてストーリーテラーの4作目。とある男の偏執的な横恋慕を複数視点で描写する不穏な内容とは裏腹に、楽曲は従来のフォーキーなアプローチに比べるとソウル風味でほんの少しアッパーでダンサブルに感じるところも面白い。柔らかな音の余韻と曖昧な解釈を残して閉じる物語、音楽で一冊の小説を読んだように感じるのはこの人ならではだろう。
Andy Shauf - "Wasted On You" - YouTube
21位:But Here We Are/Foo Fighters
ドラマー、テイラー・ホーキンスの急逝後初のアルバム。序盤2曲こそかつてのフーファイを彷彿とさせるアッパーなオルタナチューンだがそれ以降はミドルテンポの時に重厚、時に静謐なナンバーが続く。只管歌われる喪失感と悲しみから脱却しようとする足掻き。弟分と母を喪ったデイブ・グロールにとってこのアルバム作成そのものがセラピーだったのは想像に難くない。10分超えの大作The Teacherのラストでデイブが叫ぶ"Goodbye"はあまりにも重い。精神を消耗する作品だけど、だからこそ聴く意味がある。
Foo Fighters - The Teacher - YouTube
20位:All That Was East Is West of Me Now/Glen Hansard
アイルランドの国民的バンドThe Framesのフロントマンであり、初期バンドメンバーでもあったジョン・カーニー監督の映画ONCEをきっかけに世界的に有名になったSSWの新作。ソロ活動を軸に移してからはフォーク・カントリー要素をどんどん強めていたが、今作ではエレクトリックギターが多用され、バンド時代を彷彿とさせる荒々しさとエモーションを感じる曲もある。キャリアを重ねた渋みと、未だに若々しいメロディの煌めきと衝動性が絶妙に重なってグッとくる。
Glen Hansard - "The Feast Of St. John" - YouTube
19位:Stowaway/Samiam
30年以上のキャリアを誇るベテランメロディックパンクバンドの12年ぶりの新作。リリース期間が空いてもSamiam印のサッドかつキャッチーなパンクチューンは変わらずだし、今作ではアメリカンオルタナ要素強めの楽曲もあり新鮮さもある。セルジよりショーンの書いた曲が多い影響もあるか?進化・成熟を見せつつも軸をぶらさない姿勢は頼もしい限り。
Samiam "Lake Speed" (Official Music Video) - YouTube
18位:Happy Music/Supershy
今や次世代ソウル・R&Bシーンの代表格となったトム・ミッシュによる変名ダンスミュージックプロジェクトのフルアルバム。タイトルの通りひたすらキャッチーで多幸感溢れる楽曲が並ぶ。いい意味で捻りの無い直球感はソングライティングに自信があるゆえだろう。個人的には2016年最高傑作だったSkyker SpenceのProm Kingを彷彿とさせたり。今年一番「そうそう、ダンスミュージックってこういうのでいいんだよ」と思った一枚。
Supershy - Happy Music (Official Video) - YouTube
17位:Almost There/Grapevine
約2年振り18作目の新作。活動が殆ど途切れることなくコンスタントにアルバムを出し続けるのは本当に凄い。前作『新しい果実』はネオソウル的なアプローチに挑戦するなど新機軸を見せたが、今作はそこから更に深化させた印象。フロントマン田中和将がここに来て何度目かの覚醒、詞も曲もボーカルも遠慮無しの振り切れっぷり。それに触発されたかのように亀井亨もキラーチューンを連発し、西川弘剛のギターも冴え渡る。例のあまり炎上しなかったスキャンダルが発端なのかはわからないけど笑、結果的に素晴らしい作品に帰結したのは痛快としか言いようが無い。
GRAPEVINE – 雀の子(Official Lyric Video) - YouTube
16位:The Window/Ratboys
シカゴのインディロックバンドの4作目。バンド形態になって初の作品だった前作Printer's Devilはその年のベストアルバムの一つにも挙げた傑作だったので、今作がどう転ぶか気になっていたが杞憂だった。前作のアグレッシブさを引き継ぎつつも、アルバム全体にアトモスフェリックな空気感が漂うのはプロデューサーのクリス・ワラの影響か?楽曲の即効性という意味では前作かもしれないが、アルバムトータルの完成度では圧倒的に今作。
"It's Alive!" by Ratboys (official video) - YouTube
15位:Jump for Joy/Hiss Golden Messenger
M.C.テイラーによるソロプロジェクトの新作。19年作『Terms Of Surrender』個人的にその年のトップ作だった。毎回安定して良質なアメリカーナを提供しているが、今作は60-70年代のフォークロック総浚いといった感じの内容でバラエティ豊かな楽曲が並ぶ。テイラーの本領はシンプルなフォークソングだと思うのだけど、ある程度アグレッシブな曲や遊び心のある曲があった方がそれが引き立つ。
Hiss Golden Messenger - Nu-Grape (Official Video) - YouTube
14位:The Ballad Of Darren/Blur
ご存知ブリットポップムーブメントをオアシスと共に牽引したバンドの8年振りの新作。自分は元々完全にオアシス派なのだが、ギャラガー兄弟の新作を差し置いてブラーの新作をランクインさせているのは結構異常事態だったりする笑。決して派手さは無いが老獪で捻くれていてそれでいて飛び切りポップでノスタルジック一辺倒にもならない絶妙さ。解散しなかったバンドの強かさを感じる。改めてグレアム・コクソンのヘンテコなギターフレーズ、奇才っぷりにはびびる。
Blur - Barbaric (Live) - YouTube
13位:Fuse/Everything But The Girl
まさかリアルタイムでEBTGの新作のリリースに立ち会えるとは…!音楽界きってのおしどり夫婦として知られながらそれぞれソロ活動に勤しんでいたのでほぼ諦めていただけに驚きだった。前作Temperametalから24年間冷凍して解凍したようなエレクトロチューンは3周くらい回って今のトレンドと合致しているようにすら感じる。ヒンヤリとしているのにどこか心地よいシンセの音色の重なりとトレイシーの歌声に只々溺れていく。絶品。
Everything But The Girl - Run A Red Light - YouTube
12位:Release Spirit/Khotin
カナダ出身のアンビエントアーティストの新作。柔らかなシンセの音色を軸にチルなビート、フィールドレコーディングやサンプリングサウンドが重ねられていく。初めてボーカルをフィーチャーした楽曲が収録されるなど、従来の白昼夢のようなサウンドはそのままによりビートオリエンテッドになった印象。フロアでは無く明け方にベッドルームで鳴らされるダンスミュージック。
Khotin - Fountain, Growth (ft. Tess Roby) (Official Video) - YouTube
11位:Altering a Memory/Feverchild
デビューEPが話題となったベルギー出身のエモ・ポストハードコアバンドの初のフルレングス。Sunny Day Real Estateからの影響を色濃く感じさせるも、ギターアプローチはニュースクールハードコアのエッジーさを感じるし、ボーカルやメロディはThe Get Up Kidsみを感じる時もある。つまるところどこから切り取っても90sエモ好きにとっては号泣必至な作品なのである。
10位:Seven Psalms/Paul Simon
説明不要の大御所による5年振りの新作は7つの楽章からなる33分の組曲。アンビエントな音色やスライドギター、管楽器やコーラスなどが味付け程度に入るがあくまでメインはアコースティックギター1本の弾き語り。82歳とは思えない躍動感のあるギター演奏と情感に満ちた歌声に圧倒される。アフリカ音楽など様々なアプローチに挑戦してきた中で、シンプルで荘厳なフォークミュージックに回帰してきたのはとても興味深い。
9位:Carousel Circle/Carnation
40年のキャリアを誇るベテランバンドの19作目。コロナ禍の抑圧感が色濃く反映された前作から一転、1曲目『ここから - Into the Light』の希望と解放感に満ちたイントロから一気にワクワクさせられる。全体的にポップで適度に捻くれたこれぞカーネーション!という楽曲揃いで、太田譲が初めてカーネーションとして曲を書きボーカルをとった『深ミドリ』も絶妙なアクセントに。ここに来てこんな若々しくキラキラした作品を作ってしまう2人に感嘆…!
8位:Lean In/Gretchen Parlato & Lionel Loueke
現代ジャズシーンを代表するボーカリストとギタリストによる初のコラボ作。リオネルのパーカッシブなギター演奏とスキャット(?)にグレッチェンの独特のリズム感と透明感のあるボーカルが乗り、南米とアフリカの音楽がジャズで融合する唯一無二のサウンドになっている。Foo Fightersの名曲『Walking After You』のカバーも白眉の出来。
7位:Everything Harmony/The Lemon Twigs
様々なクラシックロックを現代に蘇らせる兄弟ユニットによる4作目。今回は「Simon & Garfunkel、Arthur Russell、Moondogにインスパイアされた」そうで確かにジャケもフォークドゥオっぽい。キラキラと洗練されたフォークロック〜ギターポップチューン満載で、Grand PrixあたりのTFCに通じる部分も。アルバムによってコンセプトがガラッと変わるグループだけど、今作は個人的には一番しっくり来たし最高傑作だと思う。
The Lemon Twigs - In My Head (Official Video) - YouTube
6位:One More Time…/Blink-182
一時代を築いたポップパンクバンドが、トム・マーク・トラヴィスの黄金期ラインナップで復活。しかも1曲目から『Anthem part.3』なんて曲から始まったら泣きますわ。純然たるポップパンクナンバーもあれば、それぞれの活動で培った音楽性が反映された曲もあるが、トムとマークのツインボーカルでやったらそれは自然とブリンクになってしまう。交互にボーカルを取る曲多めなのも、必死に関係修復しようとした意図が見えて微笑ましい。前任のAlkaline Trioのマットがいた時期の作品も悪く無かったけど、ライブでトムの曲を歌うマットは無理してる感満載だったので本当に良い元さやだったと思う。
blink-182 - ANTHEM PART 3 (Live Performance Video) - YouTube
5位:Quartet Plus Two/Orbiting Human Circus
Neutral Milk HotelのオリジナルメンバーでありElephant 6の主宰者でもあるジュリアン・コスターを中心としたカルテット。ジャケットから漂ってくるノスタルジーそのままに、再生するとモノクロームの時代の風景が脳裏に浮かんでくるような音楽。只管耳に心地良い少し不思議なジャズ。形容するのも野暮な気がするのでまず聴いて欲しい。
Orbiting Human Circus - I Cover the Waterfront (Official Visualizer) - YouTube
4位:Fools/Dan Croll
リバプール出身ロサンゼルス在住のSSW。その経歴通りの音というか笑、英国人らしいウェットさとカリフォルニアのカラッとしたフィーリングが絶妙にミックスされている。⑧『Piece Of The Action』なんかは故郷の大先輩ポール・マッカートニーの未発表かと錯覚するくらい巧みなオマージュになっているし、FOWぽさも感じる。所謂ポップマエストロ系のSSW・バンドが好きな人なら確実に刺さる曲があるはず。
3位:Leather Blvd./B. Cool-Aid
ラッパーPINK SIIFUとプロデューサーのAHWLEEによるデュオ。ジャンルとしてはヒップホップなのだろうが、ソウル・R&B、ファンクなどなどブラックミュージック総浚いな感じの心地良いノスタルジックな曖昧さ。1時間超えの最近では珍しく長尺のアルバムではあるが、日常のBGMとしてサラッと聴き流すも良し、ベースラインやビートに耳を傾けてトラックに没入するも良しで、長さを感じさせない密度と適度な気軽さがある。
2位:Brightest Days/Origami Angel
デビュー以降着実にパンク〜エモキッズの支持を拡大しているツーピースによる新作。今年待望の初来日も果たした。ウクレレから始まる①や爆音サーフロック②など今までに無かったアレンジや構成の妙を見せつつも、あくまで軸は明快でポップなパンクロックなのは変わらず。出し惜しみ無しにポップなメロディ思わずニンマリ。歌われるのはあの頃一番楽しかった夏、2度と戻れない10代のあの感情、8曲のミックステープという短さ・コンセプトも刹那的で丁度良い。
Origami Angel - Thank You, New Jersey (Official Music Video) - YouTube
1位:Would You Miss It?/KOYO
ニューヨーク出身のエモーショナルハードコアバンドの初のフルアルバム。個人的にボーカルの厳つい見た目でオールドスクール系だと思って敬遠していたのだけど笑、聴いてみたらびっくり!現行ポップパンクから00年代のエモ、更には往年のSamiamのようなエモーショナルメロディックまで幅広い影響を感じさせるバンドサウンドに乗せて、切ないメロディ&激しいボーカルで歌い上げる。バンド名は日本語の紅葉から取ったという。侘び寂びに通じるサッド感に溢れた今年を代表するパンク盤となった。来年1月に待望の初来日、楽しみ過ぎる!
Koyo "You're On The List (Minus One)" (Official Music Video) - YouTube
こんな感じでした、今年は割とジャンルバランス良い感じ?10月以降にこれは!っというリリースがあって結構悩みました。ライブ行く時間が増えた分ここ数年のコロナ禍より音楽を聴く時間は少くなった…というか聴く枚数は若干減って一枚一枚しっかり聴くようになった気もしますね。物価高もあるけど、「このアーティストは毎回買ってるから」みたいな感じで新譜買えなくなった。なんにせよ、感覚的に良いと感じたものが全て、その気持ちは忘れずにまた来年(?)