風のしわざ - 片付けられない「私」と向き合う

風のしわざ

庭に小さな洋服が落ちていた。
強風がもたらす影響を受けたのは、私だけではなかったようだ。

 

 

「ゆめ子ちゃん、目が真っ赤だよ」

別れ際、私の顔を正面からみた遥子ちゃんが言った。

 

そろそろ声を掛けようと思いながら、先延ばしになっていたウォーキングがやっと実現した。

「ちょうど昨日、ゆめ子ちゃんのことを思っていたら、連絡が来た」と彼女は言っていた。
土手のどこかで合流できれば良し、としている私達だが、なかなか遥子ちゃんの姿が見えない。そのことにちょっと安心する。家を出た時間が遅かったのは、私だけではなかったようだ。

土手を歩いている途中で、涙が出ると訴えた私に、彼女はすぐ道を変えようと言ってくれた。いつもは土手を往復するが、折り返し地点から、住宅街へと降りていく。なるべく花粉から遠ざけようとの心遣いだ。

杉の花粉が飛ぶ時期、花粉症に悩まされる。その時期と同じ症状が出た。帰ってすぐに目薬を差す。薬箱の市販の飲み薬は、二錠しか残っていなかった。

 

 

今朝、等間隔で竿に掛けた洗濯物は、夕方、取り込むときには、隙間なくピッタリくっついていた。「クシュン」と、くしゃみをした私は、庭に舞い込んできた、見覚えのない小さな洋服を持って、玄関を出た。