ハナタツ~ヨウジウオ科タツノオトシゴ属
ダイバーならずともその名を知るところの有名魚タツノオトシゴ。
タツノオトシゴ属にはそのものタツノオトシゴという種名の魚もいるのですが、それは浅い藻場に棲む地味魚。
一般にタツノオトシゴと人が言う時には、タツノオトシゴ属魚類の総称を指します。
この写真のタツノオトシゴは、ヨウジウオ科タツノオトシゴ属のハナタツです🐟
頂冠がそれなりに高く上向きに真っ直ぐ伸びているのがハナタツの特徴です。
写真の個体はその♀個体。
頂冠や眼上棘から伸びる皮弁が長くて立派なのは、♀に多い特徴となります。
♀個体は抱卵していなくても腹部の下側が出っ張っていて丸みがあり、しばしばイラスト化されるようなタツノオトシゴ然としたフォルムをしているので非常に人気は高いです。
ですが、温帯適応種でかつては伊豆・房総の海の普通種だったこのハナタツ、近年減少傾向にあり、伊豆の主要ダイビングポイントでは何年間も出現ナシとなっているところも多いんですよね。
こちらがハナタツの♂個体。
♀のような長い皮弁は基本的にはなく、お腹の丸みもないので至極シンプルですね。
抱卵中であれば♂もお腹は膨らみますが、下側が出っ張る♀と違い上っ側が出っ張るという特徴があります。
生息環境に応じて変わるので体色のバリエーションは様々ですが、赤・黄・白等、綺麗な色のものが多いのもハナタツの特徴です。
こちらが抱卵中の♂個体です。
タツノオトシゴ属の魚達には一風変わった特徴があり、♂が育児嚢を持っています。
求愛・産卵行動の後♀が♂のお腹の育児嚢に卵を産み渡すので、お腹パンパンの抱卵個体に出会ったら、他の魚達とは逆で基本的にそれは♀ではなく、♂個体となります。
有精卵を♂が育卵し、やがて稚魚を放仔するので、抱卵中の♂のお腹はパンパンで真ん丸になります。
パンパン具合が分かり易いように、お腹を上から撮った写真です。
この個体は興趣深いですね。
長くて立派な皮弁があり、♀個体然とした見掛けですが、お腹は張り裂けそうな位パンパンになっている♂です。
これを見ると皮弁の有無だけで♂♀を完全には判断出来ない事が分かりますね。
こちらは幼魚。
まだ小さな♂個体です。
タツの仲間との遭遇においては、大きく泳いで逃げられるって事にはまずなりませんが、ゆらゆらと安定しない姿勢の為、背中から撮影の写真になりがちです。
タツノオトシゴ然としたフォルムで写真に収めるには、ゆらゆらの動きを見極めてシャッターを切る必要があります。
近年こっちの海での遭遇が減っているタツノオトシゴ属のかつての普通種ハナタツ。
今後また数を戻していくのか、動向を見守りたいですね。