諸々綴り…~2024.11.17 内房・勝山 海中世界報告がてら④
ハゼ科イソハゼ属のシロイソハゼ🐟
実はこの魚、インド洋に棲む近縁種とずっと混同されていたのですが、それとは別種と分かり2016年に新たな学名で新種記載されました。
背部には赤色斑と白色斑が交互に縦列、腹部には赤色斑が縦列し胸鰭基底から腹部に大きめの白色横帯3つあるのが特徴となるハゼ科美麗種です。
イソハゼ属は南方系の種が多いグループですが、近年こっちの海でも遭遇が増えていて正にこれからの注目グループと言えます。
ハゼ科コバンハゼ属からはコバンハゼ幼魚🐟
このコバンハゼ属も近年遭遇が増えていますが、こっちの海での新たな種との遭遇となるとまだそんなにはないので、これからに期待のグループですよね。
実はこの魚、皮膚が厚い粘液に覆われていてそこに毒を持つので、こう見えて毒魚なんですよ。
サンゴに付くハゼ科小型種で、
こっちの海のロコ魚定番種と言えば、ガラスハゼ属のガラスハゼですよね🐟
どの海で潜っても必ず出会える普通種です。
ガラスハゼ属のハゼ達も判別がややこしいものが多いですが、フトヤギに付いているのは大概このtheガラスハゼです。
南方種からは、ベラ科ホンベラ属ムナテンベラの極小幼魚🐟
そっくりさんのカノコベラ幼魚ととてもよく似ています。
ムナテンベラ成魚が沢山いる内房・勝山らしい遭遇ですね。
そっくりさんが沢山いる南方種幼魚と言えば、
スズメダイ科シコクスズメダイ幼魚🐟
これ自体は死滅の普通種ですが、似た配色のスズメダイにレア種が多いので、視界に入るとついついチェックしてしまうんですよね。
フサカサゴ科のコクチフサカサゴ🐟
後ろに見切れて写っているのはtheカサゴです。
同じグループかのような名前ですが、カサゴはメバル科の魚なので実は全く別グループの魚です。
コクチフサカサゴにはフサカサゴというそっくりさんがいますが、口の後縁が眼の後ろに届くか届かないか、側線が胸鰭の辺りで緩やかに下方に向かうか急激に折れて下に向かうか等で判別するので、水中での判断は中々難しいです。
theフサカサゴはコクチフサカサゴよりも生息エリアが深いので、深場でこれっぽい魚と出会った時には要注目です。
魚類からの番外編では、
夜行色になって爆睡していたアイゴ科アイゴ🐟
透視度良く海中も明るかったのに何故って感じもあったので、もしかしたら弱っている個体は夜行色になるとかがあるのかもしれませんね。
最後に軟体類から、
マダコ科ワモンダコ🐙
体色を目の前でコロコロ変えてくれるのが面白いタコですが、真っ白になって目の部分だけ赤褐色っていうこのパターンでの遭遇が定番です。
南方系のタコですが近年遭遇が増えていて、内房・勝山ではもう既に完全にマダコを凌駕し遭遇数が多いです。
という訳で、この日の内房・勝山海中世界でのその他遭遇を本日は並べてみました。
諸々綴り…~2024.11.17 内房・勝山 海中世界報告がてら③
カレイ目ヒラメ科魚類はスキューバダイビングではtheヒラメ以外中々出会えません。
ですが、前回ここを潜った時にレア種タマガンゾウビラメと出会えたので、今回も期待を込めて意識して泳いでいたら新たにまた1種出会えました。
同じくガンゾウビラメ属からガンゾウビラメの登場です🐟
そっくりさんのガンゾウビラメ属テンジクガレイは後ろ半身の側線上にもう一つ黒色斑がありますが、ガンゾウビラメは胸鰭の上辺りにあるものだけです。
あ、テンジクガレイはカレイと語尾に付きますがヒラメの仲間です。
対して、ぼちぼち遭遇のあるセイテンビラメという魚がいますが、こちらはダルマガレイ科でヒラメ科ではありません。
魚の名前を聞いて語尾だけで「あぁ、〇〇の仲間かぁ」と判断してしまう人をしばしば見掛けますが、それだといささか早計なので御注意下さいね。
砂地では他にも色んな遭遇がありました。
アカタチ科アカタチ属のイッテンアカタチ🐟
リボン状の体をくねくねさせて巣穴の上で佇む姿が人気のアカタチ科魚類、その中でもスキューバダイビングで最も遭遇が多いのがこのイッテンアカタチです。
背鰭にある黒い斑紋からこの一点アカタチという名前は付きました。
こちらはまだ小さかったイッテンアカタチ幼魚🐟
背部にまだ水色が残っていて2トーンなのがとても綺麗でしたね。
砂地と言えばハゼ科魚類、
イトヒキハゼ属のシゲハゼ🐟
日本固有種ですが、生息環境が限られるので何処でも出会える魚って訳ではないんですよね。
魚類学のBIGネーム田中茂穂先生への献名で茂ハゼの名は付いたんだそうです。
このシゲハゼと同所的に見られるのが、
ヤツシハゼ属のヒレナガハゼです🐟
淡く紫色掛かったボディに金ラメが散りばめられた美麗種です。
内湾砂泥域の普通種という紹介がなされる魚ですが、この環境で潜れるダイビングポイントが実際そんなにはないので、スキューバで狙って遭遇出来るって事で言うと、この内房・勝山の海ならではで結構貴重なんですよね。
ハゼ科からは他にも、ハゴロモハゼ属の人気種ミホノハゴロモハゼとの遭遇もありましたが、ちょっとしたトラブルで巣穴に引っ込んでしまったので残念ながら写真はありません。
ハゼ科のユカタハゼと、イトヨリダイ科のタマガシラのコラボシーンです🐟
タマガシラ幼魚はSTOP&GOを繰り返す動き方が愛らしいので要注目です。
ユカタハゼはこのエリアにうじゃうじゃいて、こうして遠目だととても地味なハゼですが、アップで見れば金ラメが入っていて中々綺麗です。
軟骨魚類からはエイ区のシビレエイです🐟
学名はNarke japonica、英名もJapanese sleeper rayなので、日本ならではの魚と言えるでしょう。
東シナ海辺りまで生息域を持つようなので、東アジア固有種となりますね。
このシビレエイ、またの名を電気エイ。
体盤の鰓域辺りに発電器があり、50~60Vの電気を発します。
という訳で本日は、この日の内房・勝山海中世界の中から砂地エリアでの遭遇を並べ、諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.11.17 内房・勝山 海中世界報告がてら②
スズメダイ科ルリスズメダイ属のセナキルリスズメダイ🐟
礁斜面やや深場にある岩周りで暮らす南方種で本来こっちの海では死滅回遊魚ですが、ここ内房・勝山では越冬を繰り返した成魚がすっかり馴染んで暮らしています。
虹色素胞を持つ青色のスズメダイは浅場で沢山群れているイメージですが、この魚は深場で暮らしかつ大きくは群れません。
産卵期に入るとペア行動になる魚なのですが、今回の遭遇は既に7~8㎝にまで育った成魚が2匹で絡み合うシーン。
どう考えてももうじき産卵行動、そしてその先の卵保護光景が見られるであろう予告編のような遭遇でした。
この先の展開が楽しみですね。
美麗種遭遇と言えば、欠かせないのがハナダイ科魚類。
ナガハナダイ属のフチドリハナダイ🐟
各鰭の上縁下縁がほんのりと赤く縁取られていますね。
2匹でいたのですが、1匹は♂への性転換を始めかけている雰囲気でした。
これもこの先の展開、要注目ですね。
フサカサゴ科ミノカサゴ亜科のプテロプテルス属ミズヒキミノカサゴです🐟
ネッタイミノカサゴと混同されていたものが10年程前に分けられ新種として生まれた種ですが、こっちの海ではとてもレアでそうそう出会えない魚でした。
ですが、ここに来て数を増やしているのか、西伊豆・大瀬崎に次いでここ内房・勝山でも遭遇です。
胸鰭軟条が水引模様(紅白の縞々)になっている事からこの名前は付きました。
幼魚の内は黒色斑が眼径よりも小さければハコフグ、眼径大であればミナミハコフグという判別が分かり易いこの黄色いハコフグ科。
ですが、少し成長して若魚相に近付くとミナミハコフグも黒色斑が小さくなるので、これ位のサイズの時が一番判断に悩みます。
とは言え、これ位になるとハコフグであれば黄色がくすみ水色斑が入るので、これ位大きくなってこの色であればミナミハコフグと言っていい気がします🐟
チョウチョウウオ科タキゲンロクダイ属のタキゲンロクダイ🐟
幼魚期の個体は背鰭の眼状斑が白く縁取られています。
バタフライフィッシュ達は浅場で暮らすものが多いですが、この種は水深100mからも採取されているらしく、生息範囲がとても広い種です。
ゴンベ科サラサゴンベ🐟
美麗種が多くアクアリストにも人気の高いゴンベ科の魚達の中でも、特に美しい種の一つとして人気がある魚ですね。
浮袋がなく中層遊泳しないのでゴンベ科の魚は撮影がし易くダイバー人気も高いですね。
同じく鞍状斑を持つ美麗種、
カワハギ科のノコギリハギ🐟
毒のあるフグ科の魚シマキンチャクフグに体色を似せたベイツ型擬態の典型例としてよく挙がる有名魚です。
シマキンチャクフグもここ内房・勝山には越冬個体が現在暮らしていますが、ノコギリハギの方は滅茶苦茶沢山います。
ノコギリハギが遠目に入るとシマキンチャクフグ遭遇に期待しますが、ほぼほぼ背鰭・臀鰭の幅が広いこのノコギリハギの方なんですよね。
ロコ魚からも美麗種を一つ、
クロユリハゼ科ハナハゼの若魚です🐟
いつでも出会える普通種ですが、光沢のある水色ボディと神秘的な佇まいでとっても目を惹く魚ですよね。
ですがそれ以上に、リュウキュウハナハゼとスミゾメハナハゼとの遭遇への期待が余計にこのハナハゼへと目を向けさせるんですよね。
という訳で本日は、この日の内房・勝山海中世界での美麗種遭遇を紹介してみました。
諸々綴り…~2024.11.17 内房・勝山 海中世界報告がてら①
トゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属のイバラタツです🐟
紫色の綺麗な海綿動物ジュズエダカリナに付いていたのもあって、汚れやくすみが一つもない実に美しい薄桃色の個体でした。
発見した御本人の撮影シーン。
環境に擬態して身を潜める生物ですが、タツノオトシゴ属の魚はもう何度も出会って自身にとって❝既知のもの❞となっているていうのもあって、視界に入って直ぐ認識出来たようです。
経験を積みナリッジスキルが向上したベテランダイバーならではですね。
トゲウオ目の定番人気種からは他にも、
カミソリウオ科カミソリウオ属のニシキフウライウオ🐟
紅白の綺麗な番(ツガイ)がヤギ(珊瑚の仲間)に寄り添って身を隠しているところとの遭遇でした。
♀(写真上の個体)の育児嚢には卵がパンパンに詰まっていました。
甲殻類の定番人気種では、
モエビ科トガリモエビ属のトガリモエビ🦐
ホストのコエダモドキ(珊瑚の仲間)にとても上手に体色を似せていました。
しばしばネタモノという扱いを受ける定番人気種達は、基本的には居場所が動かない生き物達なので遭遇はそう難しくありませんが、定番となるだけあってやはり興趣深いフォルムをしていますね。
この日は黒潮が寄せていて水は真っ青。
浅場から深場まで澄み渡って心地好かったですね。
スズメダイ科タカサゴスズメダイ群と、ベラ科コガシラベラ群🐟
根頭は魚がイッパイ。
この中を泳ぐと南方種も色々と混ざっていてとっても艶やか。
それだけで楽しくなるんですよね。
房総ポイントらしい光景、イサキ科コロダイの群れ🐟
昔はコショウダイ科に含まれていた魚だけあって、幼魚期はコショウダイ系の幼魚のように細長ボディでくねくね泳いでいます。
成長による相の変化が激しい魚としても有名な種ですね。
内房・勝山と言えば、房総随一のソフトコーラルポイント。
ホソエダトゲトサカの白は海中世界の青の中に柔らかく燈る灯のようでとても神秘的。
透視度が良いとこういう光景もいつも以上に映えますね。
という訳で本日は、定番種と青い水って感じでこの日の海中世界について諸々綴ってみました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1117 内房・勝山海中世界
まるで植物のような動物、ソフトコーラルの仲間コエダモドキ。
その枝部にくっ付いて見事に擬態しているのはモエビ科のトガリモエビです🦐
長く伸びた額角が尖っている事でこの名前が付いた実に興趣深いフォルムの人気エビです。
今回は一つのコエダモドキに2匹のトガリモエビが付いていました。
砂泥底域の深場に暮らす種で、昔は激レア種として出現すれば大きく話題になるような種でした。
駿河湾に面する西伊豆・大瀬崎で近年爆発的にその数を増やした事で通年見られる種となりましたが、相模灘や東京湾側では今でも滅多に出現しないレア種です。
内房・勝山と言えば房総随一のハナダイポイント。
今回もナガハナダイ属のフチドリハナダイやスジハナダイ等の美麗種としっかり遭遇出来ました🐟
フチドリハナダイは1匹が♂化し掛けていて、この先の展開が楽しみな状況になっていました。
何度出会っても、やっぱりハナダイ科魚類の美しさは群を抜いていますね。
内房・勝山で深場遭遇と言えば、ハゼ科の魚達も欠かせませんね。
ヤツシハゼ属ヒレナガハゼ🐟
上顎に朱色の線が入り口許が赤く見え、頬に黄色の縦帯が入り、ボディや背鰭・尾鰭には黄色斑が散在する美麗ハゼです。
この日は黒潮が来て透明度抜群な上に天気も良かったので、ハゼの出がとっても良くじっくり観察・撮影が出来ました。
1枚目は鰭を開いたシーン、2枚目は抱卵した♀個体です。
このヒレナガハゼと同所的に見られるハゼと言えば、
イトヒキハゼ属のシゲハゼ🐟
この種の最大の特徴は尾鰭後縁が長く伸びて尖る事なんですが、巣穴から全身出ている事があまりないので、この尾鰭まで観察・撮影出来る事は稀です。
この日は出が良かったので、普段は巣穴に隠れて見えない事が多いその長い尾鰭がきっちり先っちょまで全部観察出来ました。
こう見ても、本当に長い尾鰭ですね。
この滅茶苦茶長い尾鰭の全開シーンこそがシゲハゼ遭遇のクライマックスとなります。
このエリアからはハゼ科以外でも、
テンジクダイ科のテッポウイシモチ🐟
深場のイソギンチャク周りで群れるテンジクダイです。
イトヨリダイ科タマガシラ属のタマガシラ🐟
ヒメジ科ヒメジ等との遭遇を、この群れとのコラボで楽しんだのもナイスですね🐟
同じくテンジクダイ科からは、
岩礁域での遭遇、スジイシモチ属南方種のウスジマイシモチ🐟
ミナミフトスジイシモチのそっくりさんですが、尾柄部に小斑があります。
成魚だと臀鰭後端が青白くなっているのですが、幼魚だとここは分かりにくいですね。
同じく南方種からは、
スズメダイ科ルリスズメダイ属のセナキルリスズメダイ🐟
7~8㎝にまで育った立派な成魚が2匹で絡み合っているシーンと出会えました。
このまま行けばもしかしたら卵保護まで見られる日が来るのかもなんて期待をしてしまう興趣深い光景でしたね。
フォルムが独特な種が多いトゲウオ目からは、
定番人気種を2種。
カミソリウオ科カミソリウオ属のニシキフウライウオ番(ツガイ)と、ヨウジウオ科タツノオトシゴ属のイバラタツです🐟
トゲウオ目の魚達はホントどれもこれも、知らなければこれが魚だとは思わないでしょっていう不思議なフォルムをしていますよね。
捕食者から身を守る為の隠蔽的擬態、その進化の果てがこの姿とは、実に興趣深いですね。
隠蔽的擬態と言えば、
フサカサゴ科コクチフサカサゴは岩礁壁面に身を潜めていました🐟
そっくりさんのtheフサカサゴと比べると体高が低く、体側の側線が胸鰭の上辺りから緩やかに下に向かうのが特徴です。
口が小さく、その後端が目の後端に達していない事で、この小口フサカサゴという名前は付きました。
ロコ魚からは他にも、
温帯適応種のエンゼルフィッシュ、キンチャクダイ科のキンチャクダイです🐟
1枚目は幼魚、2枚目は若魚。
成長する中で同種とは思えない程その相を変えます。
エンゼルの近縁バタフライフィッシュからは、
チョウチョウウオ科のシラコダイ🐟
学名Chaetodon nippon。
その名に日本と付くように、昔は日本の固有種という扱いでしたが、その他の国でも見られる事が分かり、現在では東アジア固有種となっています。
日本固有種と言えばこの魚、カワハギ科のアオサハギです🐟
同じくカワハギ科のヨソギ幼魚とも出会いましたね🐟
最後は無脊椎動物から、
マダコ科のワモンダコです🐙
元々は若干南方系のタコの仲間ですが、近年こっちの海での遭遇が増えている種です。
第二と第三腕の腕膜に紫褐色の輪紋がある事から、このワモンダコという名前は付けられました。
豊富な生物相を持つ内房・勝山海中世界、そのMEMBER'S PHOTO GALLERYだけあって賑やかで綺麗な写真が並びましたね。
諸々綴り…~2024.11.16 内房・西川名ビーチ 海中世界報告がてら②
マンジュウダイ科ツバメウオ属、ミカヅキツバメウオの幼魚です🐟
成長すると短くなる背鰭と臀鰭が著しく長いのが幼魚の特徴で、腹鰭はその長い臀鰭よりも更に長いです。
この独特なフォルムに加えて黒・白・黄色の3トーンの色合いも綺麗でとても人気のある魚です。
浮力をコントロールしながらのミカヅキツバメウオ観察光景。
ドライスーツコントロールのトレーニングをしながら広い範囲を泳ぎ回っていると、中層以外からも様々な生物があちこちに潜んでいるのが目に入って来ました。
岩礁の亀裂に隠れていたのは、ハリセンボン科の有名魚ハリセンボンです🐟
こうやってじっとしているのを見ると何が針千本なのって感じですが、
危険を感じると水を吸い込んで真ん丸になり、全身の針をこんな風に立てます。
この姿を見れば、針千本っていう名前にも頷けますね。
勿論、実際にはこの針1000本もありませんが、それでもこの大きさの体表に350本もの針が生えているんですから実に興趣深いですね。
フグ目ではありますがフグ科の魚ではないので、フグ毒テトロドトキシンはありません。
むしろ毒を持つのはこの魚、
ミノカサゴ亜科のキリンミノです🐟
美しい鰭を持つ美麗人気種ですが、背鰭・腹鰭・臀鰭の棘条に毒があるので、遭遇時にはうかつに手を出さないようにしましょうね。
ただ全ての鰭に毒があるという訳ではなく、胸鰭と尾鰭の鰭条は全てが軟条なので、そこに毒はありません。
毒があるのは何も魚だけではありません。
ぷくぷくしていて綺麗な刺胞動物のサンゴイソギンチャク。
イソギンチャクの仲間にも毒があるので手は出さない方がいいですね。
あちこちの岩肌に張り付いていましたが、そこでは黒と白の2トーンが愛らしいスズメダイ科のミツボシクロスズメダイ幼魚が暮らしていました。
イソギンチャクで暮らす事で、捕食者から身を守っているんですね。
背骨がある魚類は脊椎動物という分類の生き物ですが、イソギンチャクのような背骨のない動物は無脊椎動物と言います。
エビやカニを食べていて分かると思いますが、背骨がありませんよね。
甲殻類もこの無脊椎動物に含まれます。
こちらは食用重要種、イセエビ科のイセエビ🦐
甲殻類アレルギーの人でなければ一度は食べた事があるかもしれませんね、あのイセエビです。
夜行性なので昼間は大概こんな風に岩礁の亀裂の奥等の暗がりにいます。
イセエビはこっちの海のロコ種(地元種)ですが、
本来は南方域の種である同じイセエビ科のゴシキエビとも今回は出会えました🦐
岩に開いた小さな穴に後ろから入った態勢で隠れていたまだ若い小さな個体でした。
本体はきっちり隠れていましたが、白いヒゲが2本穴から食み出していたのが頭隠してヒゲ隠さず状態で、何だかとっても愛らしかったですね。
エビの仲間からもう1種、
オトヒメエビ科のオトヒメエビです🦐
紅白がとても艶やかなこのエビ、クリーナーシュリンプとしても知られ、大型魚をお掃除している生態シーン等もタイミングが合えば観察出来ます。
昨日は同日の中層遭遇を紹介したので、本日はこの日の内房・西川名ビーチの海中世界での岩礁エリア遭遇をメインに紹介してみました。
諸々綴り…~2024.11.16 内房・西川名ビーチ 海中世界報告がてら①
イサキ科イサキ属のイサキ、その成魚群です🐟
東アジアの固有種でかつ非常に濃い密度の群れを作る魚なので、スキューバダイビングでの人気も高いですが、とても味が良く食用魚としても人気があります。
幼魚の内は体側上部に黒から黄褐色の縦縞が3本ある魚ですが、成長するにつれてこの縦縞は薄れていき、成魚になると若干オリーブ色掛かった銀色の単色魚へと変わります。
初心者ダイビングポイントでの群れ遭遇は大概黒い縞の入る幼魚のものですが、内房・西川名では頑張って泳げば立派な成魚が中層を埋め尽くすこんな光景とも出会い得ます。
この日は流れがあったので泳ぐのもそれなりにハードでしたが、西川名らしいこの光景まで無事辿り着く事が出来ました。
ここに泳ぎ至る途中には、沢山の根が海中世界にそびえる山々のように張り巡らされているのですが、
その根頭にはメジナ科メジナが群れて集まっています🐟
黒潮が差し込んでいて水も青かったので、見上げた水面の光の揺らめきも実に綺麗でした。
食味の良さでも知られるアジ科の大型魚ヒラマサ🐟
距離は遠かったですが、滅茶苦茶大きな個体が2匹、遠い根頭を渡っていきました。
同じく、
アジ科の大型魚からはカンパチも登場🐟
メジナがかたまっていた根頭を、まだ若いカンパチが単体で泳ぎ去っていた光景です。
そして、西川名ビーチで潜るダイバーがターゲットにすると言えば、やはりこの人気生物、
アオウミガメです。
潜れば必ず出会えるという訳ではないのですが、前回に引き続き今回もしっかり遭遇出来ました。
写真は遠景のものなので遭遇証拠レベルのものですが、生で見るウミガメはやっぱり優雅でしたね。
この他にも大型魚遭遇では、
イサキ科コロダイ属のコロダイ🐟
元々少ない魚ではないですが、最近とみに増えている印象です。
銀色のボディに金色小斑が散在する魚で、この個体は60㎝程ありました。
最近遭遇が増えていると言えば、
ヘラヤガラ科のヘラヤガラ🐟
これも60㎝程ある成魚遭遇でした。
小型魚が群れているところで半逆立ち状になっていつも捕食のチャンスを狙っています。
変てこ細長フォルムでとても目を惹く魚ですね。
色んな遭遇がありましたが、
この日はmyドライスーツを使いこなしていく為のトレーニングをしながら泳ぎ回りました。
後半はがっつり時化てハードなコンディションになりましたが、実りの多いDIVEになりましたね。
諸々綴り…~2024.11.10 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら③
ベラ科ニシキベラ属のセナスジベラ🐟
南方種でこっちの海では死滅回遊魚として幼魚と遭遇出来ます。
成魚になると腹部にまで届かない黒い斜帯が背部から並ぶのですが、幼魚期のものはそれが黒くなく淡い赤色です。
成魚の特徴である頭部の赤い斜帯は幼魚にはまだありません。
ディープダイビングにおいて重要となるのは浅場での過ごし方です。
普段のダイビングよりも浅場から極浅場で過ごす時間が圧倒的に長いので、ここを満喫出来るだけのナリッジスキルが充足していないと、潜水時間の大半を棒に振る事になってしまいますもんね。
秋深まって死滅シーズン本番になると、潮流に乗ってやって来た様々な南方種達が浅場を賑わしてくれるので、この時間の楽しみが増えます。
ソラスズメダイ属のメガネスズメダイ🐟
今年は当たり年のようで、例年よりも個体数が大分多いですね。
幼魚期は愛らしく、成魚になると地味になってしまうスズメダイ科の魚達ですが、この辺の南方種はこっちの海では基本的には幼魚遭遇なので、むしろ成魚の地味さを味わう事の方が難しいです。
スズメダイ科死滅回遊魚の定番遭遇と言えば、
ルリスズメダイ属のミヤコキセンスズメダイ幼魚🐟
同属のそっくりさんにイチモンスズメダイがいますが、背部の黒色斑が丸いイチモンスズメダイと違い、ミヤコキセンスズメダイの黒色斑は長方形っぽい形をしています。
似ているのは幼魚期のみで、ミヤコキセンスズメダイは育って来ると体側に白色横帯が出て来ます。
ここ何年かで、ミヤコキセンスズメダイは成魚相にまで育つ個体とこっちの海でも出会えるようになりました。
背部が緑で腹部が白のイシガキスズメダイ属セダカスズメダイ幼魚が、少し育って腹部の白がくすみ始めたステージのものです🐟
この魚はこっちの海のロコ魚なので、幼魚から成魚まで通年出会え、岩肌に卵を産み付けそれを保護する繁殖行動も容易に見られます。
秋になると浅場で必ず出会える死滅の定番種、
ハゼ科クロイトハゼ属のアカハチハゼ🐟
真っ黄色の頭部がとてもよく目立つ綺麗なハゼです。
砂を食んで有機物だけ濾し取り、不要な砂は鰓から捨てるという摂食行動を繰り返すシーンがとても人気の高い、番(ツガイ)でいる事が多いグループの魚です。
ニザダイ科クロハギ属ニジハギの幼魚🐟
育つと30㎝程にまでなるのでかなり大きな魚ですが、こっちの海で見られるのは幼魚のみです。
とっても綺麗なデザインの魚ですが、極浅場で動き回られるので写真は撮りにくい魚です。
まぁ、極浅場での死滅遭遇タイムは大概どれもそんな感じですが。
今回はトレーニングDIVEだったので、写真はどれも泳ぎながらの証拠撮影のみですが、色んな遭遇があって賑やかな秋らしい海中世界でした。
諸々綴り…~2024.11.10 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら②
クロユリハゼ科ハタタテハゼ属のハタタテハゼです🐟
ハゼ科の魚達は分類学的な再検討を求められているグループですが、このグループの魚達はハゼ科からオオメワラスボ科に変わり現在ではクロユリハゼ科となっています。
南方美麗種として人気の高い普通種で、かつてはこっちの海での出現は少なかったのですが、近年では毎年死滅シーズンになると何処でも見られるようになっています。
大瀬崎・岬の先端では中深度域で潜っているとここあそこで見掛けます。
深場から深度復帰しての中深度域ではこっちの海の環境に適応した様々な南方種達が見られます。
その顕著な例がハタ科の魚達。
ユカタハタ属のアザハタ🐟
幼魚期の体色は黒から濃紺で成長すると赤くなる魚です。
この個体は体色が変化していく過程の相ですね。
南方種ながらこっちの海の色んなポイントでちょこちょこ見掛ける種ですが、大瀬崎・岬の先端ではちょこちょこを超えてうじゃうじゃいます。
元々は南方種ながら、今やすっかりロコ魚化し、幼魚から成魚まで沢山いるハタ科と言えば、同じくユカタハタ属のユカタハタです🐟
今回も色んなステージの個体と沢山出会いましたが、写真の個体はオレンジ一色だったボディに水色の小斑が現れ出したところの幼魚です。
同じくハタ科ユカタハタ属から、
茶褐色の体地色に幅の広い暗褐色横帯が並ぶヤミハタ🐟
ユカタハタ属の魚に多い全身の小斑はこの種にはなく、鰓蓋に暗色斑があります。
南方普通種ですが、こっちの海では結構なレア種です。
岩陰にいるところとの遭遇で、そのまま奥に沈んで行ったので、今回は残念ながら体側の模様までは撮れませんでした。
深度復帰中の普通種遭遇では、
ゴンベ科の定番人気種クダゴンベ🐟
他ポイントでは未だに重宝されていたりもしますが、ここ西伊豆・大瀬崎では普通種で、適当に泳いでいても潜れば必ず数匹は見掛けます。
南方種の越冬個体、トラギス科カモハラトラギス🐟
大瀬崎・柵下にはもう何年も越冬し続けている番(ツガイ)がずっと同じ場所で暮らしていて、ちょっとした名物になっています。
視界に入る時は大概2匹で傍にいるんですが、寄って行くと決まって♂がさっさと遠ざかっていきます。
今回はディープトレーニングDIVEだった為、深場写真は殆ど撮らなかったので、深度復帰中の写真が多く並びましたが、深場からも一種、チョウチョウウオ科のタキゲンロクダイ成魚です🐟
この前のツアーでパンダゲンロクダイに遭遇した時に話題になったゲンロクダイとタキゲンロクダイ。
今回はその内のタキゲンロクダイとの遭遇がありました。
という訳で本日は、ディープダイビングでの深度復帰中の遭遇を中心に色々と紹介してみました。
諸々綴り…~2024.11.10 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら①
スズメダイ科オヤビッチャ属のシマスズメダイです🐟
オヤビッチャが浅場に群れる季節が来ると楽しくなるのが、その中で混泳する同属種のそっくりさん探し。
沢山のオヤビッチャを目に映していたら、今回目に留まったのがこの魚、シマスズメダイです。
白い体地色に暗色横帯が並ぶのはこの属の魚の共通点ですが、シマスズメダイの横帯は6本です。
尾柄上部に輪郭の濃い黒色斑があり、背鰭前部にも淡い暗色斑があります。
若魚期までの個体は背鰭が黄み掛かります。
浅場に同科のソラスズメダイが群れ、その少し高いところや更に極浅場に幼魚から若魚のオヤビッチャ達は群れます🐟
浅場に戻って浮くか浮かないかのレベルの内は当然ながらそのエリアでは遊べませんね。
そっくりさん探しでは、
ブダイ科アオブダイ属のアオブダイ幼魚🐟
アオブダイ属の幼魚達は白い縦線が褐色のボディに入るものが多いので、白色縦線があるもの同士はどれもよく似て見えます。
そして同じ種でも成長過程や環境によってこの白線がない個体も出現するのですが、白線がないもの同士もよく似ていて、折角レア種に遭遇しても普通にアオブダイ幼魚だと思ってスルーしてしまうダイバーが非常に多いんですよね。
濃褐色の体地色に白色縦線が2~4本入り胸鰭付け根が黄褐色っていうのがアオブダイ属唯一の温帯適応種アオブダイ幼魚の定番色ですが、この写真のものは白色縦線がなく体地色の褐色も淡いので、アオブダイ幼魚だと分かりにくいパターンの個体です。
定番色のアオブダイ幼魚は浅場で潜っているとちょくちょく目に入って来る種ですが、今回も沢山いました。
そんな中、目に留まったのがそっくりさんの一つ、
アオブダイ属ナガブダイの幼魚です🐟
鱗が黒く縁取られ、鰭が赤く嘴部は白いです。
アオブダイ属の幼魚達は普通種のアオブダイも含めて、それだけでぐっちゃり群れるという状況になる事はなく、単独、もしくは数匹単位で様々な浅場種に混泳しています。
ほぼほぼがアオブダイ、そしてちょくちょくヒブダイっていうのがこっちの海でのアオブダイ属との遭遇ですが、ちゃんと意識して見ると、それ以外のレアアオブダイ属も実は結構いるんですよね。
浅場に戻って来ての楽しみ、そっくりさんのウォーリーを探せ。
知識が充足したダイバーは、やはり楽しみの幅が広いです。
因みにこちらはカマス科タイワンカマスの群れ🐟
これも間違われ易い遭遇ですね。
カマスの群れに出会うと自身にとって既知の種であるアカカマスと何でも思いたがるダイバーが非常に多いですね。
この他にもヤマトカマス、ホソカマスを初め、実はカマス科遭遇も結構色んな種があるんですよね。
海中世界は勿論、人が何かを堪能するにおいてこの❝既知のものである❞というファクターはとても重要になってきます。
なので必然的に、この❝既知のもの❞が増えれば増える程、楽しみは深くなり。そして単純に楽しめるものの数自体多くなっていきます。
上にはハナダイ科ナガハナダイ群、そして下にはスズメダイ科マツバスズメダイ群🐟
今回はトレーニングDIVEだったので深場では殆ど写真を撮りませんでしたが、相変わらずこの海の深場光景は絶景でした。
こちらはハナダイ科ナガハナダイ属のケラマハナダイの♂個体です🐟
元々は南方種ハナダイですが大瀬崎・岬の先端には沢山いて、すっかりこっちの海の環境に適応しそれのみのハレムも見られますが、今回は混泳個体との遭遇でしたね。
レアハナダイとの遭遇チャンスがある海は基本的に魚影が濃く、魚種も豊富なので、経験を積んだダイバーでないと何処に何がいるかを判断するゆとりすら持てません。
どんな遊び、どんなスポーツもそうですが、腕を磨く程楽しみが増えるっていうのはやはりダイビングも同じですね。
という訳で本日は、西伊豆・大瀬崎で開催されたディープトレーニングでの海中世界を紹介してみました。
諸々綴り…~2024.11.03-04 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら④
目玉のような、風船のような。
この不思議な物体の正体は・・・
ガンガゼ科アラサキガンガゼの肛門です。
ナイトダイビング中にここをクルクル回している個体に出会いました。
夜行性の動物だけにこれは何の行動だろうと不思議に思っていたのですが、なんと脱糞の直前行動だったようです。
自身の排泄した糞が棘に引っ掛かってしまわないように、遠心力を利用して糞を放出するんだそう。
実に興趣深いですね。
ナイトダイビングで出会った夜行性の動物と言うと、
甲殻類からテッポウエビ科テッポウエビ属の仲間です🦐
デイダイブでは表に出て歩いているなんて事は中々ないテッポウエビですが、夜の砂地を泳いでいると偶にこういうシーンを見掛けます。
そうでなくとも種判別の難しいテッポウエビが夜行色になってしまうと種名までは中々調べる術がありませんが、今までに出会った事がない綺麗な体色のテッポウエビでした。
昼間の甲殻類からは、
シマキッカイソギンチャクに付いていたイソギンチャクエビ🦐
硝子細工のような透明ボディの為、アカホシカクレエビ等のアンキロメネス属のエビと似て見えますが、このエビはそれらのようにイソギンチャク周りでふわふわ浮く事はなく、イソギンチャクの上でいつも這っています。
イソギンチャクとエビという組み合わせは定番ですが、イソギンチャクと甲殻類のちょっと変則的なコラボと言えば、
背負った貝殻にベニヒモイソギンチャクをぎゅうぎゅうイッパイに張り付けたソメンヤドカリです。
ヤドカリも夜行性のものが多いので、夜の砂地を泳いでいるとあちこちで歩き回る姿を見掛けます。
ウナギ目ウミヘビ科ウミヘビ属のモンガラドオシ🐟
円形暗色斑が体側に並び、頭部の斑紋は体側の斑よりも小さくて密なのが特徴で、砂地から顔だけ出している姿としばしば遭遇します。
砂地から全身出れば60㎝程はあります。
近縁のモヨウモンガラドオシは黄色の体地色に黒い円形斑なので、モンガラドオシはそれよりも体地色と斑の色のコントラストが淡いので判別は容易です。
大型種では、
軟骨魚類からエイ区のサカタザメ🐟
夜の海で出会ったので、全身に斑模様がくっきり散在していました。
砂地と言えば、テッポウエビと共生するハゼ達との遭遇に期待が掛かるエリア、
定番人気種からはネジリンボウ属のネジリンボウとの遭遇がありました🐟
白黒のボディが印象的でそこからこの名前も付きましたが、遭遇に際してはむしろ頭部の黄色の方がとってもよく目立ちます。
同属のそっくりさん、ヒレナガネジリンボウ🐟
ネジリンボウの第一背鰭は三角形ですが、ヒレナガネジリンボウの第一背鰭は前半部が伸長し、そこから黒いフィラメントが伸びます。
浅場でも出会えて見付け易い種なので、初心者ダイバーでも遭遇出来、ガイドが重宝する知名度の高いハゼです。
ネジリンボウ属のハゼ達はコトブキテッポウエビと共生している事が多いです。
ヤツシハゼ属のクサハゼ🐟
ニセオニテッポウエビと共生している事が多い、目の細かい砂地を好むハゼです。
第一背鰭の形状で♀♂判別が出来る種ですが、この長い第一背鰭の個体は♂ですね。
大きく育った個体程、ボディや鰭周りの青輝色がはっきりと出て綺麗です。
ハゼ科と近縁のクロユリハゼ科からは、
イトマンクロユリハゼ幼魚群🐟
まだ小さな幼魚なので胸鰭付け根の黒色斑は出ていませんが、目から吻に掛けて入る黒色線はもう出始めていますね。
背部に黄色、尾柄下部に黒が入っているものが2匹混ざっていますが、そちらはクロユリハゼです🐟
砂地DIVEを終えてゴロタで窒素調整をしているとしばしば目に入って来る南方種群です。
という訳で本日は、今回の西伊豆・大瀬崎の砂地DIVEでの遭遇を色々と紹介してみました。
諸々綴り…~2024.11.03-04 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら③
背鰭が13棘10軟条、胸鰭の軟条部18。
遂に登場、フサカサゴ科ミノカサゴ亜科プテロプテルス属のミズヒキミノカサゴです🐟
ちょくちょく出会えるそっくりさんのネッタイミノカサゴであれば、背鰭が12棘11軟条、胸鰭軟条が17です。
遭遇時の目安となる胸鰭軟条のフィラメント部もしっかり紅白の縞模様、胸鰭鰭膜外縁に入る褐色筋模様もちゃんとありますね。
やっとの遭遇、いやぁこれはナイスでしたね。
美麗鰭魚が揃うミノカサゴ亜科からは他にも、
セトミノカサゴ属のセトミノカサゴ🐟
このグループの魚達の鰭はどれも美しいですが、このセトミノカサゴの鰭の美麗っぷりはホント半端ないですね。
今回も遭遇時にはしっかり鰭の開閉を意識して、その美しさを堪能しました。
尾柄部の模様がT字になっている事から、ダイバーにはTパンツの愛称で呼ばれる魚、デンドロキルス属のキリンミノ🐟
写真は鰭が閉じているのでちょっと残念ですが、今回遭遇の個体は美しいトサカの幹部に付いていたので、背景ごと美しさを楽しめましたね。
ミノカサゴ亜科と同時に今回ターゲットの一つとしていたグループがハタ科。
このグループの魚達の幼魚期の個体にも美麗種が多いですが、こちらはバラハタ属バラハタの幼魚です🐟
後縁が大きく湾入して三日月型になった立派な尾鰭の成魚相や若魚相の越冬個体も大瀬崎・岬の先端では既に出現していますが、やっぱり幼魚のこの色合いは実に美しく愛らしいですね。
同じくハタ科からの、
興趣深かった遭遇がこの個体。
岩の隙間から顔だけ出していた時には普通のユカタハタ属アザハタだったのですが、全身出て来た姿を見てみたら、後ろ半身に明青色の小斑が散在し、尾鰭後縁も白ではなく明青色で縁取られたレア模様のアザハタでした🐟
尾鰭後縁が青いアザハタ、こんなのいるんですねぇ。
今回ナイトダイビングでメインターゲットとなったのがテンジクダイ科の魚達。
カクレテンジクダイ属のヨコスジイシモチ幼魚🐟
西伊豆・大瀬崎には岬の先端の岩陰でずっと暮らしている越冬個体の成魚が密かにいるのですが、今回は白黒美麗カラーの幼魚と前浜で遭遇です。
ヤライイシモチ属のリュウキュウヤライイシモチ🐟
尾柄部に黒色域がある幼魚は死滅の定番種なのでよく出会えますが、今回は滅茶苦茶大きく育った成魚との遭遇です。
見た事のない大きなサイズで、水中で戸惑う程でした。
ヒトスジイシモチ属のカスリイシモチ🐟
岩陰の余っ程奥深いところで暮らしているのか、昼間のダイビングではまず滅多に出会えない夜行性の種です。
スジイシモチ属のアオハナテンジクダイ成魚🐟
昼間にも出会える種ですが、夜行色だとピンク色が抜けてこんな白っぽい体色になります。
南方種ですが、最近では成魚の繁殖活動までこっちの海で見られるようになっています。
そして、
これがそのアオハナテンジクダイ幼魚🐟
こちらは昼間のDIVEで遭遇したものです。
テンジクダイ科らしく幼魚はスケルトンボディで内臓まで全部見えますね。
という訳で本日は、今回遭遇の注目グループ、ミノカサゴ亜科、ハタ科、テンジクダイ科の興趣深い遭遇を並べてみました。
諸々綴り…~2024.11.03-04 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら②
浅場にスズメダイ科オヤビッチャ属の普通種オヤビッチャが大量に群れ始めると秋の訪れを感じますが、今年もその季節の到来です。
オヤビッチャが群れるとそこに同属のそっくりさんが色々と混ざるので、浅場に戻って来てからの時間で混泳種のウォーリーを探せが楽しめるのですが、今回も混泳そっくりさんの一つと遭遇出来ました。
オヤビッチャ属テンジクスズメダイです🐟
体側に並ぶ黒色横帯の数がオヤビッチャよりも多く、かつ細いですね。
頭部にある横帯は腹部側にまで伸びず短いです。
天竺と名前に付いているので、ホロタイプの産地がインドなのかもしれませんね。
死滅シーズンが始まると浅場でよく見掛けるスズメダイ科南方種と言えば、ソラスズメダイ属のメガネスズメダイ幼魚🐟
そっくりさんのクロメガネスズメダイには尾柄部に白色域がありません。
南方種幼魚からは他にも、
フエフキダイ科ヨコシマクロダイ幼魚🐟
まだ色が出切っていないかなり小さな個体でした。
見ている目の前で捕食者アカハタに食べられてしまったので、この個体がここから成長する姿は見られませんが、死滅回遊魚としては定番種なのでまた別個体が何処かで見られるでしょう。
白黒で美しかった南方種と言えば、
ハゼ科イソハゼ属のクロスジイソハゼ🐟
キクメイシ系のハードコーラルにちょこんと乗っかっていてとっても愛らしかったですね。
黒色縦帯の上部に並ぶ白色斑が輝いて見えてとっても綺麗でした。
同じく砂地以外で暮らすハゼ科からは、
ベニハゼ属のオキナワベニハゼ🐟
双方向性の性転換というとても興趣深い生態を持つ魚の代表種とも言えるハゼです。
名前に沖縄なんて冠が付きますが、普通にこっちの海でも繁殖しています。
生息環境が似る同属のオオメハゼのそっくりさんで、いずれもこっちの海で見られますが、オキナワベニハゼの方が個体数は多いです。
一口には説明しにくい複雑な配色のこの魚は、ベラ科イトヒキベラ属のクロヘリイトヒキベラ近似種🐟
南方普通種でこっちの海での遭遇は珍しい魚ですが、西伊豆・大瀬崎ではもう長いこと同じ場所で越冬個体が観察され続けています。
クロヘリイトヒキベラによく似ていますが、胸鰭後方に黄色域があるものは恐らく別種であろうと言われていて、現状ではイトヒキベラsp.という扱いになっています。
同じくベラ科南方種ではクギベラ属クギベラ幼魚🐟
浅場で岩々を縫うように泳ぐこの魚の背部の黄緑色はとってもよく目立ちます。
ハタの仲間からは三大美味ハタと言われる高級食材アコウ(キジハタ)のそっくりさん、キョウモドリ。
ハタ科アカハタ属のこの魚、標準和名はノミノクチと言います🐟
遠い昔、紀伊から京へとキジハタだと偽ってこの魚を送ったら、バレて送り返されたという逸話からキョウモドリ(京戻り)という名前が付いたそうです。
以前は結構レアでしたが、ここ何年かで随分遭遇が増えました。
甲殻類での南方種遭遇では、
イワガニ科トゲアシガニ属のミナミトゲアシガニ🦀
こっちの海のロコ種トゲアシガニとフォルムはよく似ていて歩脚はとても長く、ハサミ脚は短いです。
いた場所が悪くて写りませんでしたが、甲面とハサミ脚のピンク色がとても綺麗なカニなんですよね。
甲殻類美麗種の遭遇では、
エボシカクレエビ属の一種🦐
普段はシロアザミヤギを初めとしたヤギ系のソフトコーラルに付いているエビですが、今回遭遇の個体は珍しくトサカに付いていました。
トサカに体色を似せた紅白ボディの実に美しい個体でした。
という訳で本日は、今回の西伊豆・大瀬崎海中世界での美麗種遭遇を並べて諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.11.03-04 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら①
アジ科魚類で食の最高峰と言えばこの魚、シマアジ属シマアジ🐟
育つと1mを超える大型種で、天然物ならキロ1~2万円はする超高級魚です。
釣りの世界でも超の付く人気者で、大型魚は❝オオカミ❞と呼ばれ釣り師憧れの魚となっています。
スキューバダイビングでも出会えるのは幼魚から若魚までで成魚遭遇はまず滅多にありません。
ですが、今回は60~70㎝の大味になり切らない一番美味しいサイズの成魚が激流の中トルネード状になって群れる姿と遭遇出来ました。
写真ではサイズ感が伝わりにくいですが、成魚の特徴である目の上頭部の盛り上がりは既にちゃんと見られますね。
流れに逆らってへこたれずに泳いだ甲斐がありました。
アジ科からは他にも、
ナンヨウカイワリ属のクロヒラアジ🐟
これも体高の高いアジ科魚類で育って40㎝。
これも成魚遭遇でした。
吻部が短いのが特徴で、体側に黄色斑が基本的には入らない事で他のナンヨウカイワリ属の魚と見分けが付きます。
西伊豆・大瀬崎海中世界で中層群れモノ遭遇と言えば、
やはりハナダイ科魚類の圧倒的美麗群。
こちらはナガハナダイ属のナガハナダイとアカオビハナダイの同属混成群です🐟
今回のように流れの強い日はナガハナダイの活性が特に高くなり、普段よりも高めの位置でこの美しい赤橙色のボディが潮に逆らう方向に視界をどんどん流れていきます。
止め処ない暖色の魚影、これぞ正に伊豆の絶景と言えるものをたっぷりと堪能しました。
二日間通して流れっぱなしだった大瀬崎・岬の先端と柵下。
それもあって潮表のエリアで他のチームに会う事はなく、連休中とは思えない程貸し切り状態で海中時間を楽しめるDIVEが続きました。
大きいものから小さいものまで、何でもござれで色々楽しめる大瀬崎海中世界ですが、本日はこの流れのまま少しサイズ感のある目に優しい遭遇を並べてみましょう。
ハリセンボン科ハリセンボン属のネズミフグです🐟
今回も沢山いた同科のイシガキフグとよく似ていますが、背鰭と尾鰭付け根までの間の背部にも棘が並んでいればネズミフグ、背鰭の直ぐ後ろにあるもの以後に棘がなければイシガキフグです。
イシガキフグはハリセンボン属ではないので、棘が動かず短いので、胸鰭後ろ辺りの特に棘の長くなる部分を見れば両種の見分けに悩む事はもうありません。
キンメダイ目イットウダイ科の南方種アヤメカサゴです🐟
南方種でこっちの海でこの魚と出会えたとなるとかなり貴重ですが、紅白が美しいイットウダイ科魚類の中にあって、このアヤメカサゴはそこに更に黄色も入るので、美麗種としての人気も高いです。
越冬を繰り返しているこの南方種、異郷の地で長く生き続けて欲しいですね。
こっちの海に居着いて長く暮らし続けている南方種と言うと、
ハタゴイソギンチャク科のセンジュイソギンチャク。
こっちの海では多くない南方種イソギンチャクがずっと見られていたんですが、昨今の海中環境の変化ですっかり白化しちゃっていました。
このまま藻類が戻って来なければ死滅してしまう事も充分あり得ます。
それまでに藻類が戻って来てくれるといいですね。
大きいサイズの普通種と言えば、
アンコウ目カエルアンコウ科のオオモンカエルアンコウ🐟
若干南方系という括りの種ではありますが特に珍しくもなく、大きく育った成魚が何かに張り付いてじっとしている姿が何処で潜っても直ぐ目に入って来ます。
同じくアンコウ目から、ちょっと番外編の御紹介。
アンコウ目フサアンコウ科のミドリフサアンコウ🐟
水深100m以深、900m程にまで生息域を持つ深海魚です。
小さな棘に覆われた皮膚は厚く、体側に黄色で縁取られた緑色斑が散在する事でこの名は付きました。
いつか出会ってみたい憧れの種ですが、今回は底引きで網に掛かったものを見せて貰ったので、残念ながら海中遭遇ではありません。
同時に、かの有名な深海生物も見せて貰えたので、これも載せておきましょう。
深海軟体類、メンダコです🐙
近年マスコミ等で取り上げられ一躍有名になってキャラクターになったりもしている人気生物です。
編に掛かったものなのでもう死んじゃっていますが、海中でポロっと上がってきた生体とダイビング中にもし出会えたりしたら、滅茶苦茶テンション上がりそうですよね。
西伊豆・大瀬崎が面する駿河湾は日本一深い湾として深海魚遭遇のメッカとも呼ばれる海なので、いつかはそんな奇跡があったりするかもしれません。
考えただけでワクワクしますね。
という訳で本日は、サイズ感があって初心者でも見易い生物達にちょっとした番外編も添えて紹介し、諸々綴ってみました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1103-04 西伊豆・大瀬崎海中世界③-Ⅱ
フエフキダイ科の南方種、ヨコシマクロダイの幼魚です🐟
ヨコシマクロダイの幼魚というと白い体地色に太い黒色横帯がくっきりと入る白黒FISHのイメージですが、今回遭遇出来たのはまだ黒い帯の色が出切っていないとっても小さな個体。
極小期がこういう色合いなのは今回初めて知りました。
とってもキュートなこの個体、暫く観察・撮影していたのですが、そしたら何と・・・
脇から飛び出して来たアカハタに、見ている目の前で食べられてしまいました。
のそっと岩の上でいつものんびりしているアカハタですが、捕食の瞬間は速かったぁ。
可哀想ですが、これも自然の摂理ですね。
フエフキダイ科と名前が似ていてしばしばややこしくなるのがフエダイ科、
こちらはそのフエダイ科のヒメフエダイです🐟
これもまだ訪れたばかりの小さな個体でした。
南方種で死滅シーズンの幼魚遭遇が基本となる魚ですが、最近ではかなり育った越冬個体も見られるようになってきました。
ヒメ〇〇〇繋がりで、
ゴンベ科ヒメゴンベ🐟
元南方種ですが今ではすっかりロコ魚化し、元々のロコ魚ミナミゴンベを凌駕する勢いです。
この両種はそっくりさん同士ですが、尾鰭にまで斑があるとヒメゴンベ、尾鰭が無地だとミナミゴンベです。
ハタ科ユカタハタ属のユカタハタもすっかりロコ魚化した元南方種ですね🐟
大瀬崎・岬の先端で潜っていると同属アザハタとこのユカタハタが幼魚から成魚まであちこちに沢山いて、元々が南方種である事を忘れてしまいそうになります。
今の時季は幼魚期にはない水色小斑が全身に行き渡ったこれ位の若魚が特によく目に留まります。
キンメダイ目イットウダイ科のアヤメエビス🐟
南方普通種ながらこっちの海では結構なレア種です。
とは言え、西伊豆・大瀬崎に現れてもう3~4年経ちますが越冬を繰り返しながらずっと居着いてくれているので、この海では出会えちゃうんですよね。
昨今の海中環境の変化で、様々な死滅回遊魚が越冬したり、そのまま環境適応したりする姿が見られるようになりましたが、当然ながら全部が全部適応出来るようになったという訳ではありません。
スズメダイ科ソラスズメダイ属のメガネスズメダイ幼魚🐟
この辺は幼魚期のみの遭遇になるので、成魚相まではまだ見られていませんね。
まぁ、成魚になってしまうとただの地味色スズメダイになるので、特にそれと出会いたいというリクエストが掛かる事もありませんが。
やっぱりスズメダイ科は幼魚遭遇が華ですね。
タカサゴ科タカサゴ属のウメイロモドキ幼魚🐟
南方種ですが死滅シーズンになると沢山の幼魚が小群れを作ります。
30~40㎝程にまでなる魚ですが、そこまで育った個体とこっちの海で出会う事はまずありませんね。
この季節らしく色々と南方種が並びましたが、ロコ魚の美麗種も御紹介です。
ハナダイ科サクラダイ属を一属一種で構成するサクラダイ🐟
長く日本の固有種という扱いでしたが、近年海外でも発見されるようになっているんだそうです。
とは言え、この魚が普通種として物凄い数で美しく群れる光景を拝めるのは日本のみ。
学名もSacura margaritacea。
属名が桜からなる正に日本の海産魚を代表するとも言える美麗種です。
美麗種と言えばフサカサゴ科ミノカサゴ亜科の魚達。
今回の大HITと言える遭遇がこのグループからありました。
それがこのプテロプテルス属のミズヒキミノカサゴです🐟
胸鰭の軟条が紅白の縞々で、その鰭膜の縁が黒ずむのが特徴となります。
折角の嬉しい遭遇なので、ちょっと詳しく解説を加えてみますと・・・
このミズヒキミノカサゴ、同属のネッタイミノカサゴとそっくりでずっと混同されていましたが、2011年に海外のこれのまた別のそっくりさん(Pterois mombasae)がネッタイミノカサゴと分かれた為、日本近海のこの魚もそれと同じと考えられてこの名前は付けられました。
ですが、その後の研究でこの魚はそれとはまた別の魚だという事になり、2014年の論文で学名Pterois paucispinulaとしてミズヒキミノカサゴはまた新たに新種記載されました。
ですが、2022年の海外論文でミノカサゴ亜科の魚達の系統分類が再編集され、Pteropterus mombasaeという学名がこのミズヒキミノカサゴには充てられました。
そこからの2年、日本の論文の発表が待たれている状況なのですがまだそれがない為、Pteropterusという属名の和名はまだ提唱されていません。
それが属名がプテロプテルス属というややこしい名前になっている理由です。
キミオコゼをタイプ種とするグループなので恐らくはキミオコゼ属になると思われますが、論文発表までは学名しかなく和名のない属という事になるので、プテロプテルス属というややこしい名前で皆さんにもそれまでは管理して頂く事になります。
同様に、2022年のこの論文で、
この魚はデンドロキルス属のキリンミノとなりました🐟
2022年以前はヒメヤマノカミ属(Dendrochirus)というグループだったのですが、今回の論文でこのグループの魚達がDendrochirusとNeochirusの2つに分かれる事になりました。
キリンミノはDendrochirus属のままなんだからヒメヤマノカミ属のままでいいじゃんって思っちゃいそうですが、実はその肝心のヒメヤマノカミがNeochirusの方に含まれる事になったんですよね。
そうなるとヒメヤマノカミがいない属の名前がヒメヤマノカミ属のままっていうのも変な話なので、ここの属に充てられる和名もきっと変更になります。
因みに、ヒメヤマノカミとシマヒメヤマノカミはNeochirusの方になりましたが、シロヒメヤマノカミはキリンミノと同じDendrochirusの方になりました。
なので、魚の名前は語尾が同じなら同じグループと思われがちですが、必ずしもそうはならないという状況に今後はなります。
プテロルテルス属とデンドロキルス属、この2つの遭遇のお蔭でややこしい解説が必要になっちゃいましたが、
同じミノカサゴ亜科でも、セトミノカサゴはセトミノカサゴ属のままなので御安心下さい🐟
海外には近縁種もいるようですが、日本産のセトミノカサゴ属はこのセトミノカサゴ1種のみなので、ややこしくなくていいですね。
今回注目グループとなったのが、このミノカサゴ亜科の魚達ともう一つ、
テンジクダイ科の魚達です。
こちらはカクレテンジクダイ属のヨコスジイシモチ幼魚です🐟
白黒のパンダカラーがとっても愛らしいこの美麗幼魚に出会えたのはナイスでしたね。
ヤライイシモチ属のリュウキュウヤライイシモチはなんとドでか成魚と遭遇🐟
尾柄部に黒色帯がある幼魚は死滅シーズンになると結構遭遇出来ますが、ここまで大きく育った越冬個体が目の前に現れたのには驚きでした。
リュウキュウヤライイシモチの体側の褐色縦帯は体地色の淡色部よりも太いですが、そっくりさんのカスミヤライイシモチであれば褐色縦帯の方が細いです。
ヒトスジイシモチ属のカスリイシモチと、スジイシモチ属のアオハナテンジクダイ🐟
カスリイシモチは夜にならないとほぼほぼ穴から出て来ないので、ナイトダイビングの機会がなければまず出会えない魚です。
テンジクダイ科の魚達はあまり素早く泳がず簡単に遭遇・観察出来るので、例えばこっちの海で言えばネンブツダイやクロホシイシモチ等もそうですが、昼間から表に出ている昼行性の種達は初心者でも出会える為、テンジクダイ科というとどれも普通種っていうイメージを持たれがちです。
ですが、暗がりを好む種の場合、夜にならないと表に出て来てくれないので、通常のスキューバダイビングでは滅多に出会えません。
夜の海に入れる機会はやはりデイダイブ程増やせるものではないので、ナイトダイビングという貴重な機会を今回のようにしっかり活かせて貴重遭遇を重ねられたのはナイスでした。
デイダイブからナイトダイブまで、貴重遭遇目白押しだった今回の西伊豆・大瀬崎海中世界。
MEMBER'S PHOTO GALLERYも賑やかで見ていて楽しくなっちゃいますね。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1103-04 西伊豆・大瀬崎海中世界③-Ⅰ
ハゼ科オニハゼ属のヤジリハゼです🐟
最初はオニハゼの幼魚かなと思いつつも、ポージングがオニハゼとは違う事に違和感を懐いていたのですが、届いた写真を大きな画面で見てみたら案の定オニハゼじゃありませんでした。
オニハゼ属の魚なのは明白なので、背鰭が畳まれていて見えない状態のヒメオニハゼかなと思ったんですが、なんと同属魚のヤジリハゼだったようです。
砂地ハゼDIVEはすれば毎回何かが当たるという程容易いものではないだけに、これはナイスな収穫でしたね。
砂泥域でのレアハゼ捜索のお邪魔虫、ヤツシハゼ属のクサハゼです🐟
まぁ、とっても綺麗なハゼなんでこれとの遭遇自体も最初はとっても嬉しいんですが、あまりにもこればっかり沢山居過ぎて、砂泥域でのレアハゼ捜索においてはこれじゃないハゼを探すって感じになるんですよね。
とは言え、それをさて置けば水色と金色が綺麗に入る美しいハゼです。
砂地ハゼと言えばテッポウエビとの共生シーンで押さえたいところですが、クサハゼと共生するニセオニテッポウエビはとっても臆病なので中々難しいんですよね。
こちらはダテハゼ属のダテハゼとニシキテッポウエビの共生シーン🦐
一番観察・撮影のチャンスが多い組み合わせですが、それですらそう容易くはありません。
こうしてエビもちゃんと写ると嬉しいんですよね。
ネジリンボウ属のネジリンボウとヒレナガネジリンボウ🐟
これらはコトブキテッポウエビと共生するハゼです。
この日は海が活き活きしていて全体に水に動きがあったので、ハゼ類の出は総じて良かったですね。
岩陰に近い砂地ではサンカクハゼ属のセホシサンカクハゼ🐟
サンカクハゼ属で唯一の温帯適応種です。
セホシサンカクハゼ以外のサンカクハゼ属も、激レアながらこっちの海でも出現例はあるので、いつかは出会ってみたいですね。
それで言うと、
ベニハゼ属も種数は多い割に温帯適応種が少ないグループです。
昔はイチモンジハゼ位しか中々見られなかったですが、今ではこのオキナワベニハゼもこっちの海の環境にすっかり適応しています🐟
その2種に加えてオオメハゼ位までが偶に見られるベニハゼ属って感じで、その他は全てレア遭遇です。
伊豆の名を冠した憧れのベニハゼ属、イズベニハゼにもいつか出会ってみたいですねぇ。
今回のハゼDIVE最大の収穫は、
イソハゼ属のクロスジイソハゼ🐟
黒色縦帯の上に被る点列状の白色斑が輝いて見えて、とっても綺麗でした。
岩場でハゼ捜索をしていると自然と遭遇が増えるのが、
ヘビギンポ科の魚達。
元々こっちの海のロコ魚のtheヘビギンポ♂と、元南方種のヨゴレヘビギンポです🐟
ヨゴレヘビギンポのシェア拡大は東伊豆の方が大分早かったですが、このところ西伊豆・大瀬崎でもかなり増えました。
theヘビギンポの♂は興奮色を発すると白い帯の入った真っ黒の魚になります。
語尾は同じ〇〇〇ギンポでありながら実は違うグループ、
イソギンポ科からはテンクロスジギンポ属のミナミギンポ🐟
コケギンポ科の魚達のようにいつも穴に入っているって訳ではない魚ですが、この個体は二日間ずっといつ通り縋っても同じ廃パイプの中に入って顔だけ出していました。
卵でもあるのかなと思って覗き込んだのですが、今のところそれらしきものは見えなかったですね。
ここまで、体高の低い長めボディの魚が並んだので、この流れのままベラ科へ。
ニシキベラ属の南方種セナスジベラ🐟
一緒に写っているニシキベラとオトメベラ、この両種もニシキベラ属なので、同属3種盛りでの遭遇ですね。
ノドグロベラ属のセジロノドグロベラ幼魚🐟
同じように浅場でひらひらしているっていうのもあって、似たような佇まいのブチススキベラと混同されがちな種ですね。
イトヒキベラ属イトヒキベラの♂相です🐟
長く伸びた♂の腹鰭が糸引きの名前の由来となった美麗種です。
イトヒキベラ属は美麗種揃いで非常に人気の高いグループですが、このtheイトヒキベラのみが温帯適応種で、この他の種は全て南方種です。
カミナリベラ属のカミナリベラと、ホンベラ属のイナズマベラです🐟
雷と稲妻、名前がややこしい2種の揃い踏みですね。
カミナリベラのそっくりさんはアカオビベラ、イナズマベラのそっくりさんはアカニジベラ。
そっくりさんの名前もどっちもアカで始まって、これまたややこしいんですよね。
という訳で本日は、この連休に潜った西伊豆・大瀬崎海中世界での遭遇の中から、体高が低くて細身フォルムのものが多いグループの魚達を集めたMEMBER'S PHOTO GALLERYでした。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1103-04 西伊豆・大瀬崎海中世界②-Ⅱ
スズメダイ科ソラスズメダイ属のメガネスズメダイ幼魚です🐟
スズメダイの仲間らしく成魚になると誰も見向きもしない地味魚になりますが、幼魚期の個体は頭部から背部がオレンジ色でそこに点列状のピンク色の小斑が並ぶのでとってもキュート。
死滅シーズンの浅場を賑わす定番南方種幼魚の一つです。
今回も、大瀬崎・岬の先端・柵下・前浜の各ポイントいずれでも目に入ってきました。
今年は特に多い印象ですね。
魚種豊富な西伊豆・大瀬崎では色んな科、様々なグループの魚と出会う事が出来ます。
今回も思う存分それを堪能して来たので、本日はその御紹介です。
タカサゴ科タカサゴ属のササムロです🐟
タカサゴもニセタカサゴもイッセンタカサゴも名前にタカサゴと付きながらタカサゴ属の魚ではありませんが、このササムロはウメイロモドキ同様タカサゴ属の魚となります。
これも南方種ですが、毎年死滅シーズンになると幼魚から若魚が小群れを作って現れます。
キンメダイ目イットウダイ科のアヤメカサゴ🐟
これも同じく南方種ですが、こちらはもう長く棲み付いている越冬個体です。
フサカサゴ科ミノカサゴ亜科からはセトミノカサゴ属のセトミノカサゴ🐟
深海域にまで生息域を持つ深場種ですが、砂泥エリアで潜っていると中深度域でもちょくちょく目にします。
ミノカサゴ亜科は鰭フォルムの独特さで目を惹くグループですが、真ん丸や細長、ボディのフォルム自体で目を惹く魚も色々といますよね。
ハコフグ科ハコフグ属のハコフグ🐟
黒色小斑が完全に消失し水色小斑が散在した若魚でした。
廃パイプの中で暮らしていたイソギンポ科テンクロスジギンポ属のミナミギンポ🐟
ミナミギンポはその口許から、笑う魚という取り上げられ方をよくする魚です。
アンコウ目カエルアンコウ科のオオモンカエルアンコウ🐟
この2匹に加えてもう1匹、計3匹との出会いがありました。
泳いでいるとあちこちで目に入って来る普通種ですが、カエルアンコウ科の魚達は動かない事で人気があるのでイグジット後に現地ガイドさんに場所を教えてあげると喜ばれますよ。
ナイトダイビングでは夜の海らしい遭遇を楽しみました。
肝醤油で有名な食の重要種カワハギ科のカワハギ🐟
こちらは3匹並んで水底で身を傾けて爆睡していました。
ヒメジ科からヨメヒメジ🐟
フエダイ科からはロクセンフエダイ幼魚🐟
昼行性の魚達は夜になると、夜行色と呼ばれる体色にその身を変えるのが実に興趣深いですね。
夜らしい遭遇と言えば、
甲殻類からロウソクエビ科のミナミロウソクエビ🦐
日中は砂の中に潜って暮らす種なので、ナイトダイビングでしか出会えないエビです。
甲殻類遭遇ではデイダイブでも、
トサカに付いていた事で体色が綺麗な紅白になっていたエボシカクレエビ属の一種🦐
まだ和名のない貴重なエビですが、西伊豆・大瀬崎では通年見られる種となっています。
シマキッカイソギンチャクで暮らしていたアンキロメネス属イソギンチャクエビの番(ツガイ)🦐
エビの仲間らしく♀は大きくて♂は小さいです。
中央下側にデカデカと写っている♀の少し上、触手の間の黒いゴミのところにもう1匹極小の個体が写っていますが、こちらが♂個体です。
アナエビ下目のヤハズアナエビ。
ダイバーにはトゲアナエビの名で知られているこのアナエビ、標準和名はヤハズアナエビというようです。
一つの巣穴に番(ツガイ)で暮らす種ですが、出口が小さいので残念ながら2匹で並ぶ姿が見られる事はまずないでしょう。
この巣穴は地中にかなり大きく掘られていて、巣穴の中ではヤハズアナエビの番だけでなく、二枚貝も共生しているとのこと。
実に興趣深いですね。
無脊椎動物からもう1枚、
ウミウサギガイ科のベニキヌヅツミが付いていたヤギ(ソフトコーラルの仲間)をよくよく見てみると、異尾類のトウヨウコシオリエビが沢山付いていました🐚
因みに、このベニキヌヅツミは産卵中の個体。
産みたての卵もしっかり写っていますね。
いつもながら遭遇が多過ぎて全ては紹介出来ない西伊豆・大瀬崎DIVE。
本日は様々なグループからチョイスしてのMEMBER'S PHOTO GALLERYとなりました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1103-04 西伊豆・大瀬崎海中世界②-Ⅰ
ハゼ科イソハゼ属のクロスジイソハゼです🐟
キクメイシ系のハードコーラルの上にちょこんと乗っかっていました。
スケルトンボディでかつ極小の南方種ハゼなので、遭遇機会は中々ありません。
体内部の黒色縦帯が透けて見えていて、その上縁に白色の斑点が並ぶとっても綺麗なハゼで、尾柄部には黒色斑があります。
極小個体でしたが、動かずにいてくれたので、じっくり観察・撮影が出来ました。
このクロスジイソハゼを筆頭に、今回のハゼDIVEでも様々なハゼとの遭遇がありました。
イソハゼ属同様小型種グループとして人気の高いベニハゼ属からは、
オキナワベニハゼです🐟
このオキナワベニハゼという魚は双方向的な性転換をする魚の例としてよく挙げられる有名魚です。
繁殖期に2個体が出会うと大きな方が♂に、そして小さな方が♀になって繁殖します。
その♂がまた別のところで自分より大きな個体と出会ったら、再度♀に性転換し、その相手が♂になってまた繫殖活動をします。
生涯♂になったり♀になったりを繰り返すなんて実に合理的ですよね。
小型種で長距離移動が難しいタイプの種だけに、取り敢えず2匹が出会えばそれで繁殖が出来るんですもんね。
因みに、性転換に要する期間自体も短く4日程で変わると言われています。
砂地の共生ハゼからは、
ネジリンボウ属の定番種、ヒレナガネジリンボウとネジリンボウ🐟
そっくりですが第一背鰭の形が違いますね。
その名の通り黒い第一背鰭が長く伸びているのがヒレナガネジリンボウです。
偶に白い第一背鰭が長く伸びた小さな個体を見掛けますが、それはヒレナガネジリンボウではなく、ネジリンボウの幼魚です。
今回の海中世界はよく流れて水に動きがあったので、砂地のハゼ達も元気にお食事モードで見易かったですね。
普通種からはニシキテッポウエビと共生していたダテハゼと、ニセオニテッポウエビと共生していたクサハゼ🐟
ニシキテッポウエビと比べると、ニセオニテッポウエビはやっぱりとても臆病で過敏ですね。
西伊豆・大瀬崎だけあってハゼ科以外からも注目遭遇は盛り沢山でした。
ハゼ科の近縁グループ、クロユリハゼ科からは、
クロユリハゼとイトマンクロユリハゼの幼魚達が混成群を作っていました🐟
背鰭側に黄色が入り、尾柄下部に黒斑があるのがクロユリハゼです。
イトマンクロユリハゼにはヒメユリハゼというそっくりさんがいますが、背鰭の欠刻の有無で見分けが付きます。
ベラ科からは、
クロヘリイトヒキベラ近似種とセナスジベラ🐟
いずれも南方種ですが、クロヘリイトヒキベラ近似種の方はずっと居着いてくれている越冬個体です。
セナスジベラは動き回って撮影は困難を極めましたが、こういう死滅回遊魚が浅場で見られるようになると秋の訪れを強く感じますね。
死滅回遊魚からは他にも、
キンチャクダイ科アブラヤッコ属のソメワケヤッコ🐟
毎年死滅シーズンになるとあちこちで見られますが、まだ繫殖活動をする程にまでは適応していないですね。
色んなエンゼルフィッシュが越冬し、♂化し、そして繫殖行動まで見せてくれるようになっているので、この辺の種もいすれに期待ですね。
今回ナイトダイビングで重要なテーマとなったテンジクダイ科の魚達から、
カクレテンジクダイ属のヨコスジイシモチ幼魚🐟
色のくすんだ成魚は大瀬崎・岬の先端で越冬個体が密かに暮らしていますが、幼魚遭遇は然り気に今回がお初でした。
成魚だと地味ながらフォルムが興趣深い魚ってイメージですが、幼魚は色まで美麗で見蕩れてしまいましたね。
それとは逆に幼魚は普通に見掛けるものの、成魚遭遇となるととてもレアとなるのが、
ヤライイシモチ属のリュウキュウヤライイシモチ🐟
尾柄部の黒色横帯が完全に消失した、滅茶苦茶大きな個体と遭遇出来ました。
体側に並ぶ白と褐色の縦帯、この褐色の方が太いですが、白の方が太いとそっくりさんのカスミヤライイシモチとなります。
死滅回遊魚として訪れるスジイシモチ属のアオハナテンジクダイも最近では越冬個体を普通に見掛けるようになりました🐟
今回はその夜行色個体と遭遇です。
昼間に見るピンク&イエローの体色とは大きくイメージが変わりますね。
ずっと中層を賑わしていたカマス科のタイワンカマスですが、随分数を減らしましたね🐟
アカカマスよりも南方系のカマスですが、最近ではアカカマスよりもこのタイワンカマスとの遭遇の方が多い気がします。
最後に激流への抗いの中、陸に写真の撮れなかった大瀬崎・柵下での遭遇を2つ紹介。
アジ科シマアジの成魚群です🐟
1匹1匹が60~70㎝ある滅茶苦茶大きなシマアジがぐるぐると渦を巻くようにトルネードショーを見せてくれました。
普段スキューバでは若魚位までしか遭遇出来ないシマアジですが、激流のお蔭で大迫力の光景を堪能出来ました。
こちらは完全な証拠写真ですが、ツアー初登場の貴重遭遇なので載せておきましょう、
チョウチョウウオ科ゲンロクダイ属のパンダゲンロクダイです🐟
2020年に新種記載された貴重なバタフライフィッシュです。
今回は激流でまともに撮れませんでしたが、次回遭遇時にはしっかりと撮影出来るでしょう。
再会が楽しみです。
西伊豆・大瀬崎お泊りツアーのMEMBER'S PHOTO GALLERYとなると、やっぱり遭遇も多種多彩ですね。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1103-04 西伊豆・大瀬崎海中世界①-Ⅱ
日本を代表するエンゼルフィッシュと言えばこの魚、キンチャクダイ科アブラヤッコ属のレンテンヤッコ🐟
英名もJapanese angelfishなので、正にって感じですね。
アクアリスト垂涎の魚で、1匹10万円程の価格で取り引きされる事もある美麗魚です。
ずっと日本の固有種として認知されて来たこの魚、1981年にミッドウェイ島のクレ環礁で発見された事で完全な固有種というポジションではなくなりましたが、今となってもほぼほぼ日本以外ではまともに出会えない貴重種のままなんですよね。
温帯適応種なのでこっちの海のダイバーは居て当たり前になりスルーしがちですが、実はとっても貴重なこの美麗種、これとの遭遇を求めて海外ダイバーは伊豆にまで潜りに来るなんて話も聞きます。
美麗と言えばハナダイ科魚類、
今回も大瀬崎・岬の先端で、ナガハナダイ属のハナダイにたっぷり塗れました。
岬の先端ダイブの全てが今回は流れが強かったって事もあって群れの活性が高く、深場のナガハナダイが視界に壁を作る絶景も堪能出来ましたが、今回はアカオビハナダイに注目した写真が届きました🐟
美麗と言えばミノカサゴ亜科の魚達。
今回はプテロルテルス属(キミオコゼをタイプ種とするグループ)のミズヒキミノカサゴをメインターゲットの一つに掲げていたのですが、無事遭遇出来ました🐟
ネッタイミノカサゴと混同されていたものが2011年に論文発表され新種として和名提唱された貴重種です。
胸鰭鰭膜の外縁が黒ずみ、そのやや内側にラインが並ぶのがそっくりさんであるネッタイミノカサゴとの大きな違いです。
大瀬崎・岬の先端に多いデントロキルス属(キリンミノをタイプ種とするグループ)のキリンミノにも出会えたので比較観察が出来ましたね🐟
2023年発表の論文でミノカサゴ亜科の魚達の系統分類が再編成されたのですが、まだ日本からの論文は出ておらず、属名の新称が提唱されていない為、プテロプテルス属とかデントロキルス属とかややこしい名前になっていますが、いずれも新しく出来た属の学名です。
なので、和名提唱までは少しややこしい期間が続きます。
同科他属のそっくりさん比較の次は、同科同属の似た者同士の比較観察、
ベラ科ススキベラ属のクロフチススキベラ♀成魚と、セジロノドグロベラ幼魚です🐟
いずれも死滅回遊で訪れる南方種の定番魚です。
クロフチススキベラの方は既にこっちの海で定着し、♂化した個体を中心にハレムまで形成されています。
ちょこんと留まるポージングの愛らしさで人気の高いグループのゴンベ科からは、ヒメゴンベ🐟
これも元々は南方種ながら、今ではすっかりこっちの海に適応し、ロコ魚化した魚です。
ミナミゴンベとパッと見だと似ていますが、尾鰭には斑が入らないミナミゴンベと違い、ヒメゴンベの尾鰭には斑が散在しています。
ここまでは全て岬の先端での美麗種遭遇でしたが、大瀬崎・前浜でも美麗種遭遇は色々とありましたよ、
同じ魚の写真が2枚並んでいるかのようですが、それぞれ別の魚です。
ハゼ科ネジリンボウ属からネジリンボウと、ヒレナガネジリンボウ🐟
よくよく見ると第一背鰭の形が違いますね。
その名の通りここが細くて長いのがヒレナガネジリンボウ、三角形だとtheネジリンボウです。
砂地でテッポウエビと共生するのだけがハゼ科ではありません。
ベニハゼ属のオキナワベニハゼ🐟
そしてもう一つは、ウミショウブハゼ属の仲間です🐟
これらの小型種はサイズは小さいものの、巣穴に入られてしまってハイ終了って事がないのでじっくり観察・撮影が出来、むしろ共生ハゼより見易かったりもします。
ハゼ科の近縁グループであるクロユリハゼ科からは、
theクロユリハゼとイトマンクロユリハゼの幼魚混成群🐟
全部同じ魚が集まっているようですが、尾柄部に黒斑があるものとないものが混ざっていますね。
ある方がクロユリハゼです。
タカサゴ科タカサゴ属のウメイロモドキ幼魚群🐟
これも実に美麗な魚ですよね。
タカサゴ科の魚も属の再編成で名前がややこしくなったグループとして有名です。
theタカサゴやイッセンタカサゴ等がいかにも属していそうなグループ名のタカサゴ属にこれらは含まれずクマザサハナムロ属。
そして、タカサゴがいなくなったタカサゴ属に、このウメイロモドキやササムロが属しているというのが現状なんですよね。
因みに、ウメイロはフエダイ科アオダイ属というグループなので、ウメイロモドキとは全く縁遠い魚です。
ややこしくってすみませんって感じですが、人類の叡智は日々進歩しています。
魚類学の分野において新たな検討がなされる度こういうズレはどうしても生じて来るものなので、海中生物をガイドする以上、知識の更新はやはり欠かせませんね。
次は刺胞動物とそこで暮らす生き物達。
白化したサンゴイソギンチャクには極小のクマノミ幼魚🐟
シマキッカイソギンチャクにはイソギンチャクエビが番(ツガイ)で付いていました🦐
そして、このジャンルの遭遇で特に目を惹いたのが、
トサカ(ソフトコーラルの仲間)で暮らしていたエボシカクレエビ属の一種🦐
トサカとそのポリプに体色を合わせていたので、紅白のとても綺麗な個体でした。
因みに、エボシカクレエビ属とは、昨日のナイトダイビング編で紹介したキミシグレカクレエビが属するグループです。
このグループのエビである事までは分かっているもののその先にまで研究が進んでおらず、まだ学名も和名も提唱されていないsp.種です。
やがて付く名前がどんなものになるのか、楽しみですね。
という訳で本日のMEMBER'S PHOTO GALLERYは、今回の西伊豆・大瀬崎海中世界で出会った美麗種達を紹介してみました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.1103-04 西伊豆・大瀬崎海中世界①-Ⅰ
ダイバーが海中世界に普段エントリーするのは昼間。
昼行性の魚達の様々な光景を楽しむ事が出来ますが、海の中で暮らす生き物達の中には夜行性のものも実はとても多く、それらにはデイダイブでは出会う事すら能わないものが多いです。
テンジクダイ科ヒトスジイシモチ属のカスリイシモチ🐟
この魚も夜行性で、昼間は岩の隙間奥深くで暮らしているので、デイダイブではまず滅多に出会えません。
今回はお泊りツアーでナイトダイビングが出来たので、この遭遇にありつけました。
同属のヒトスジイシモチは昼間でも岩の下や亀裂の隙間の目が届く範囲で見られるんですが、カスリイシモチとはそういう遭遇がほぼないので、かなり奥深くで暮らしているんでしょうね。
ヒトスジイシモチは尾柄部の黒斑が体側中央に入る暗色縦帯と同じ高さの尾柄部中央にありますが、このカスリイシモチは暗色縦帯より少し上にズレた位置に黒色斑があります。
同属ユカタイシモチも尾柄部の黒斑が上にズレている等似ている部分が多いですが、そちらはもっと体高が低いテンジクダイです。
この写真を見ても、カスリイシモチの体高の高さがよく分かりますね。
テンジクダイ科魚類にも勿論、昼間でも表に出ている普通種もいますが、この魚に限らず暗くならないと表に出て来てくれない遭遇貴重種が結構多いのもこのグループの特徴の一つです。
今回はそこをテーマの一つに置いて夜の海を潜ったので、色んなテンジクダイ科貴重種と出会えました。
その中でも美麗筆頭だったのがこの魚、テンジクダイ科カクレテンジクダイ属のヨコスジイシモチです🐟
真っ白ボディに黒色横帯2本、尾柄部の斑まで含めて黒白で統一されたお洒落さんで、見蕩れる程の美しさでしたね。
こちらはヤライイシモチ属のリュウキュウヤライイシモチ🐟
幼魚期の個体に見られる尾柄部の黒色帯もすっかり消失した滅茶苦茶大きな個体でした。
一緒に写っているキンセンイシモチ成魚と比較してもその大きさがよく分かりますね。
幼魚であれば死滅シーズンになるとこっちの海でもちょくちょく見られる南方種ですが、こっちの海での成魚遭遇はとても貴重です。
ですが、西伊豆・大瀬崎では越冬個体が繁殖活動までしています。
本当ここはスペシャルな海ですね。
とは言え、表に出ている幼魚とは違い大型成魚は岩の隙間の奥深くで暮らしているようで、昼間には出会えないんですよね。
因みに、この魚にはカスミヤライイシモチというそっくりさんがいますが、そちらであれば体側に複数入る縦帯がもう少し細いです。
昼間でも出会える種との遭遇では、昼間との体色の違い、つまりは夜行色を楽しむ事が出来ます。
スジイシモチ属のアオハナテンジクダイ🐟
全体に透け感のあるピンク色で頭部から腹部が明黄色、それが通常体色なんですが、そこからガラッと変わり、全体に白み掛かっていました。
テンジクダイ科に限らず、夜行色を呈して水底で爆睡する魚とは色々出会えましたよ。
アイゴ科アイゴは夜行色の典型例としてよく挙がる魚ですね🐟
昼間は黄銅色の単色魚ですが、夜行色になるとこんな風に模様が浮かび上がります。
胸鰭後部上方の円形斑が特に目立ちます。
夜行色は魚類に限らず、
テナガエビ科エボシカクレエビ属のキミシグレカクレエビも夜行色になっていました🦐
帯模様以外の部分は透明になっていて、その透明部やハサミ脚に金色のラメが出ているのがとっても綺麗でしたね。
デイダイブでも出会えるものの暗がりになったちょっと見にくい場所での遭遇となってしまう事が多いキンメダイ目イットウダイ科の魚達。
夜になると平然と表に出ているので、実に観察・撮影がし易いんですよね。
アカマツカサ属のナミマツカサと、イットウダイ属のアヤメエビスです🐟
ナミマツカサはずっとアカマツカサと混同されていたものが1996年に新種記載された種なので、未だに知識更新せずアカマツカサと呼んでいるガイドさんも見掛けますが、こっちの海で出会えるのはこのナミマツカサの方。
もし無効分散でアカマツカサがこっちの海で出現すれば大騒ぎです。
アヤメエビスもそっくりさんの多い種ですが、体側の縦帯が背鰭基底後方と臀鰭基底で褐色斑になるのが特徴の魚です。
南方では普通種ながらこっちの海での遭遇はとても少ないのですが、西伊豆・大瀬崎ではもう何年も越冬個体が暮らし続けています。
夜の海で砂地を泳ぎ回っているとちょくちょく目に入って来るのがウミヘビ科の魚達。
今回もモンガラドオシとダイナンウミヘビが砂地から顔を出していました🐟
ウミヘビと名前に付く事で勘違いされがちですが、これらはウナギ目ウミヘビ科というグループの歴とした魚類です。
爬虫類のヘビ亜目に分類されるウミヘビ達は鱗があり、陸でも出会うあの蛇の仲間と同じグループの生物です。
それに対して、ウナギ目に分類されるウミヘビ科の魚達には鱗がありません。
同じウナギ目でもウツボ科の魚達には胸鰭がありませんが、このウミヘビ科の魚達にはちゃんと胸鰭もあります。
軟骨魚類からはエイ区のサカタザメ🐟
サメと名前に付くけれどサメ区の魚ではなく、実はエイ区の魚だという事で知られた魚ですね。
甲殻類からは、
異尾類ヤドカリの仲間から、ソメンヤドカリです。
背負った貝殻にベニヒモイソギンチャクをたっぷり付けた豪勢な個体が元気に歩き回っていました。
こちらはロクセンフエダイの成魚と幼魚🐟
幼魚の方には通常色模様である縦帯に被る形で、白く疎らな斑が入っていますね。
これがこの魚の夜行色になります。
お泊りで海に出向くと楽しみなのが、やっぱりナイトダイビング。
という訳で本日のMEMBER'S PHOTO GALLERYでは、今回の西伊豆・大瀬崎で潜った夜の海での遭遇をまとめてみました。
諸々綴り…~2024.10.29 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら②
白・黒・黄色、3トーンの魚が並んでいます。
これを見て、同じ魚が2匹って思われた方もいるでしょうが・・・
よくよく見てみて下さい。
それぞれ別の魚な事に気付けましたか。
下はチョウチョウウオ科ハタタテダイ🐟
上にいるのはツノダシ科ツノダシです🐟
種として別どころか属するグループすら縁遠い、そんな魚2種がこんなにもそっくりなんて、実に興趣深いですね。
白地に黒色横帯が入るのは同じですが、ツノダシの方は尾鰭にもハタタテダイにはない黒色横帯があります。
吻部の突き出し方もじっくり見ればかなり違いますね。
ボディに横帯が入る美麗種と言えばこの魚もそうですね。
フサカサゴ科ミノカサゴ属のハナミノカサゴ🐟
こちらは同属魚ミノカサゴのそっくりさんで、鰭の美しさやインパクトが見所となる鰭魚の代表格とも言える魚です。
そう言えば、先程から見た目で縦に入る太い筋模様の事を横帯と呼んでいますよね。
縦に入っているのに何故横か。
実は脊椎動物の模様は、見た目で縦か横かではなく、脊椎に対して平行に入っているか垂直に入っているかで見ます。
なので、ここまでの3種の模様は横向きの縞模様って事になるんですよね。
人間の場合、背骨に垂直向きに入った縞模様の服を着ていればそれは横縞のボーダー柄となりますが、それは人間が背骨を縦にして歩く二足歩行動物だからです。
これで分かるように、シマウマのボディ部に見た目では縦に入っているあの黒い縞模様、あれも当然ながら横縞模様です。
今回の遭遇で言えば、
黄色いボディに青白い筋模様が並ぶこのフエダイ科ロクセンフエダイ🐟
これは縦縞模様の魚って事になりますね。
筋模様の魚を紹介してきたので、ここからは丸い斑紋がボディに散りばめられた魚を紹介してみましょう。
オレンジ色のボディに青色小斑が散在するこの魚はハタ科のユカタハタ🐟
その綺麗な色目でとても人気の高い魚です。
赤系統の暖色は水中で吸収される色なので遠目ではこの美しさが分かりにくいですが、近付いてライトを灯してやるとこの艶やかな色彩が存分に堪能出来ます。
黄色のボディに水色小斑が散在するのはハコフグ科ハコフグの若魚です🐟
幼魚期の個体は真っ黄色のボディに黒色小斑が散在しますが、成長するにしたがい水色斑の魚になります。
更に育って成魚相になると、青いブロック模様の魚へと変わります。
成長でその相を変える魚達、これも興趣深いジャンルなので要注目視点です。
小斑が並ぶ美麗種と言えば、
ハゼ科のオトメハゼ🐟
白い体地色に橙色小斑が点列状に並ぶこの魚も、美麗種として人気が高いですね。
ハゼ科の魚達は基本的にはサイズが小さいので、スキルが安定するまでは遭遇をじっくり堪能するのは中々難しいですが、これも非常に人気の高いグループで、経験を積んでいく中で、様々な種をしっかりとその色や模様を堪能しながら出会えるようになっていきます。
同じくハゼ科からは、
ガラスハゼ属のオオガラスハゼ🐟
スケルトンボディに橙色の斑が並ぶ美麗種ですが、名前の頭に大きいとは付くもののとても小さな生命です。
水中ではやはり魚類遭遇に目が行く比率は高くなりますが、無脊椎動物からも興趣深い遭遇が実は色々とあるんですよね。
棘皮動物ウミユリ綱ウミシダ目カセウミシダ科のオオコブウミシダです。
赤ベースに黄色模様のものと、黄色ベースに赤模様のものがいますが、今回は黄色い個体でした。
ウミユリ綱の動物であるウミユリ類は古生代カンブリア紀中期に出現、そこから茎のような柄部を持たない形で進化したウミシダ類は三畳紀末に出現しました。
そこからずっと大きく形を変えず生き続けるウミユリ綱の動物達は、❝生きた化石❞と呼ばれる生物の一つです。
ウミユリ類は今は深海にしかいませんが、ウミシダ類はスキューバダイビングで出会える深度にもいてくれるので、こうしてこの❝生きた化石❞に今でも出会う事が出来るんですよね。
❝生きた化石❞の生きた姿に海中世界で出会えるスキューバダイビング、実に興趣深いですね。
このオオコブウミシダをよくよく覗き込んでみると、
小さなエビが付いていました。
ウミシダヤドリエビです🦐
名前にウミシダと付く事でも分かるように、ウミシダに寄生してしか生きられないエビなので、このエビとの出会いは先ずはのウミシダ遭遇ありきのものなんですよね。
今回は黄色いウミシダに付いていたので黄色い個体ですが、ホストが赤ければ赤くなり、黒ければ黒くなります。
まるでカメレオンのようにホスト(寄生先)に合わせて体色を変えるエビなんですよね。
お腹がパンパンに膨れてそこに粒々が透けて見えますね。
抱卵中の♀個体でした。
という訳で本日は、この日の大瀬崎・前浜での遭遇を並べ、色や模様を軸に諸々と綴ってみました。
諸々綴り…~2024.10.29 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら①
美麗種揃いの人気グループ、ハナダイ科の魚達。
今回はその中から、ナガハナダイ属アカオビハナダイと遭遇出来ました🐟
体側中央によく目立つ赤い帯があるものとないものが写っていますが、ピンク掛かった体色のもの全てがアカオビハナダイ。
赤色横帯があるものが♂、それがないピンク色のボディのものが♀となります。
繁殖の為に形成された群れをハレムと呼びますが、今回の遭遇はアカオビハナダイのハレム光景だったんですね。
アカオビハナダイのハレムにお邪魔しての観察シーン。
いやぁ、実に美しい光景でした。
海中世界には色んな生き物がいますが、その中でも取り分け高い人気をハナダイ科魚類が誇るのも頷けますよね。
こちらもアカオビハナダイのハレムで撮影した写真ですが、それとは別にオレンジ色のハナダイが4匹写っていますね。
これらは同属魚キンギョハナダイの♀です🐟
アカオビハナダイとキンギョハナダイ、とても艶やかでよく目を惹きますが、いずれもこっちの海のロコ魚(地元魚)です。
これからダイビング経験を積み、しっかりと腕を磨く中で色んなハナダイ科美麗種と出会えるといいですね。
因みに、この写真の中にはもう1種また別のハナダイがいて、実は全部で3種のハナダイが写っています。
これに気付けるようになると、かなり潜り込んだダイバーですね。
泳いでいたら、タイワンカマスの群れが中層を渡っていきました🐟
この日は中々タフな天候で、浅場エリアは細かい砂が巻き上がって白みが強く透視度は残念ながら優れませんでしたが、中性浮力とトリム姿勢の重要性を学びながら、たっぷり泳いで遊びました。
カマスと言えば塩焼きですが、食の重要種と言えば何と言ってもこの魚、
タイ科のマダイですね🐟
食味が大変によい白身魚で、古くから❝百魚の王❞等と呼ばれる魚です。
お頭付きで有名な縁起の良いこの魚が、今回はずっと一緒に泳いでくれました。
このマダイと一緒に、ずっとついてきてくれたのが、
同じくタイ科のクロダイです🐟
とても引きが強く釣りでも人気のある魚で、釣り師にはむしろチヌという呼び名の方がよく通ります。
食の有名種と言えばトラフグに代表されるフグ科の魚等もいますが、
このフグは食べられません。
フグ科モヨウフグ属のサザナミフグです🐟
フグと言うと内臓や皮膚に毒があって筋肉(身)は食べられるというイメージですが、このサザナミフグは身にも毒があります。
背部には白色小斑が散在し、腹部に筋状の模様が入ります。
この腹部の模様を漣に喩えてサザナミフグというこの名前は付きました。
胸鰭周りの大きな黒色円形斑がとても印象的な種です。
丸いフォルムの魚の次は細長フォルム、
アナゴ科のハナアナゴです🐟
砂地から顔だけ出してこちらを横目で覗く姿がとっても愛らしかったですね。
西伊豆・大瀬崎の前浜で潜ったリフレッシュDIVE。
新しい練習も色々と交えながら、様々な遭遇を楽しめました。
諸々綴り…~2024.10.25 内房・勝山 海中世界報告がてら③
岩盤域から砂地まであちこちにソフトコーラルが咲き誇る内房・勝山海中世界、そこに色艶やかな魚達が絡んで一つの光景を作るのがとっても美しいんですよね。
このオレンジ色の魚は人気グループであるハナダイ科のキンギョハナダイ🐟
こっちの海のロコ魚で、かつ浅場でも見られるので、遭遇の難しいものが多いハナダイ科魚類の中では数少ないダイビングキャリアのまだ浅い内から遭遇出来るハナダイの一つです。
内房・勝山海中世界で潜ると、色艶やかな美麗種遭遇がとても多いです。
今回はそこを中心に紹介してみましょう。
ヒメジ科ウミヒゴイ属のマルクチヒメジ🐟
体色が変異に富む事でも有名なヒメジ科の南方種ですが、幼魚相ではこの黄色いものが一番多いです。
目の周りに水色のラインが入るので、この写真のようにヒメジ科のシンボルでもある下顎の2本のヒゲが畳まれていて見えなくても、直ぐそれと気付けます。
海中世界で黄色はとってもよく目立ちますね。
ハゼ科からはクロイトハゼ属の美麗種ササハゼ🐟
巣作り光景を見せてくれるハゼの仲間として有名で、人気も高いクロイトハゼ属の魚達。
その中でもこのササハゼは美麗デザイン魚としての評価も高いです。
美麗種遭遇は何も魚類に限った事ではありません。
甲殻類から先ずはカニの仲間、
サンゴガニ科ヒメサンゴガニ属テトラリア・ルブリダクティラの番(ツガイ)🦀
標準和名はまだ提唱されていないものの、sp.種ではなくTetralia rubridactylaという学名は既に付いている種です。
ピンク・白・褐色・赤・水色・黄色、多色刷りの実に美しいカニですね。
ミドリイシ類の枝間で白っぽい小さなカニが挟まっていると大概はtheヒメサンゴガニですが、ちゃんと見ていくと偶にですがこうして別種のヒメサンゴガニが混ざっています。
甲殻類紹介でカニの番が来たら、次はエビですね。
タラバガニ科のビシャモンエビ、こちらも同じく番遭遇です🦐
ポリプがオレンジ色のムチカラマツ(ソフトコーラルの仲間)に、隠蔽的に擬態していました。
前にいる大きい方が♀、後ろの小さい方が♂です。
エビの仲間には性的二形(♀♂の違いが見掛けで分かる)のものが多くいますが、その大半が大きさの違いによるものです。
それにしてもこの♂の方の隠蔽的擬態、見事ですね。
隠蔽的擬態と言えば、
食の人気魚、カレイ目ヒラメ科ヒラメもそうですよね🐟
こちらの擬態は捕食者から身を守る為ではなく、接近してきた餌となる魚に見付からないように身を隠す為のもので、基本的には捕食者としての攻撃的擬態です。
育つと1m程になる大型魚でもあります。
大型魚遭遇と言えば、
ハタ科アカハタ属のクエ🐟
全長1m近くある大型個体と遭遇出来たのはラッキーでしたね。
美麗種から大型種まで、今回の内房・勝山海中世界での多彩な遭遇を本日は並べてみました。
諸々綴り…~2024.10.25 内房・勝山 海中世界報告がてら②
ぐっちゃりと群れるキビナゴ群に捕食アタックを繰り返すブリの若魚です🐟
大型回遊魚による捕食アタックのシーンはダイバー人気の特に高い光景の一つですが、それが眼前で繰り広げられる光景はやはり圧巻の迫力でしたね。
因みに、食用重要種であるアジ科ブリは出世魚と呼ばれ、その成長によって呼び名が変わります。
地方ごとにこの呼称は変わりますが、関東地方では、幼魚はモジャコ、35㎝以下はワカシ、35㎝~60㎝はイナダ、60~80㎝でワラサ、そして80㎝を超えたものがブリとなります。
内房・勝山は釣りの一級磯としても知られるだけあって中層での群れモノ遭遇も非常に豊富です。
イサキ科イサキ群🐟
とても味の良い白身魚として知られる魚ですが、東アジア周辺でしか見られない日本近海の固有種で、こっちの海の中層魚としては定番遭遇となる種です。
テンジクダイ科クロホシイシモチの幼魚群🐟
今年孵った幼魚がもう随分育っていて、細長いソフトコーラルの仲間ムチカラマツが群生するエリアを一面埋め尽くしていました。
群れ塗れになって海中世界を泳ぎ回るのはとっても気持ちいいですね。
今回の海中世界は、見上げればずっとこの光景。
キビナゴ科キビナゴ群です🐟
キラキラと輝く銀鱗は秋の青い水にとても映えますね。
ロコ魚群と言えば、スズメダイ科スズメダイ🐟
通年見られる普通種ですが、尾鰭フォルムに特徴があるので印象に残り易い魚ですね。
浅場の磯エリアには磯魚達がイッパイ。
メジナ科メジナを中心に、イシダイ科イシダイ等の人気釣魚が、釣り人垂涎の光景を作り出していました。
中層ではないところの群れも一つ紹介しておきましょう。
ナマズ目ゴンズイ科のゴンズイ群🐟
タンパク毒を持つ毒魚として知られる魚ですが、毒があるのは背鰭と胸鰭のそれぞれ第一棘条のみです。
ゴンズイ玉と呼ばれるこの魚の群れは集団行動を引き起こすフェロモンによって制御されているので、人為的にばらけさせようとして手を出しても直ぐにまた元の玉状の群れに戻ります。
安全停止中にはイソギンポ科ニジギンポの幼魚群を観察・撮影🐟
締めは、
おろしたてのニューBCDとレギュレーターを装着した船上の笑顔。
スキューバダイビングの醍醐味の一つ、移動中の群れ遭遇。
今回の内房・勝山海中世界でもたっぷりと堪能出来ました。
諸々綴り…~2024.10.25 内房・勝山 海中世界報告がてら①
硝子細工のようなスケルトンボディに赤・白・紫の模様が入った美しいエビがスナイソギンチャクに物凄い数付いていました。
このエビはアンキロメネス属のハクセンアカホシカクレエビ🦐
クリーナーシュリンプとしても知られるエビですが、こうして強い毒を持つスナイソギンチャクの傍にいる事で身を守って暮らしています。
このスナイソギンチャクを全景で撮った写真がこちら。
スナイソギンチャクはカラーバリエーションがとても豊富なイソギンチャクですが、今回遭遇したのは実に美しい色彩の個体でした。
ハクセンアカホシカクレエビはスケルトンボディのエビなのでパッと見だとここにエビが沢山付いている事に気付かないかもしれませんが、よくよく見るとこの全景写真にもちゃんと写っていますよ。
綺麗なイソギンチャクに沢山の美麗エビ、実に美しい遭遇でした。
こちらはまた別のイソギンチャク、クマノミが付く事で知られるサンゴイソギンチャクです。
そして、ここにいつものようにクマノミが暮らしていたのですが、その尾鰭をよくよく見るとそのクマノミ、こっちの海のロコ魚クマノミとはまた違うクマノミでした。
尾鰭が全体に黄色ではなく、くっきり上下葉のみ黄色いですね。
沖縄型クマノミの♂です🐟
生物に現れる地理的変異の好例として認知される❝Moyerの地域型❞、その一つですね。
(1976年、魚類学雑誌23巻1号にて発表)
この個体はこっちの海のロコ魚クマノミではなく、沖縄あるいはそれに準ずる南方系個体群に由来する無効分散種がここ内房・勝山の海で越冬を続けていたもののようです。
同じくサンゴイソギンチャクからは、イソギンチャクモエビも付いていました🦐
頭胸甲と尾を上方に反らしてフリフリするその動きと、その色・模様でとっても愛らしい小型エビです。
イソギンチャクという別括りで全くの別物のようにダイバーは認識しがちですが、あくまでもイソギンチャク類は六放サンゴ亜綱というグループに属するので、珊瑚の仲間です。
砂地に似たようなイソギンチャクが2つ並んでいましたが、実はこの2つはそれぞれ別の種。
左がシマキッカイソギンチャク、右がキッカイソギンチャクです。
キッカとは菊花。
円盤上に開く口盤上に触手が綺麗に放射状に並んでいますね。
これを菊の花に喩えて付いた名前です。
キッカイソギンチャクの特徴は触手先端が紫色、シマキッカイソギンチャクは触手に明瞭な縞模様が入っていてその縞模様の部分にくびれが入っています。
近縁種同士がまるで同種かのように普通に並んでいる光景、実に興趣深いですね。
こちらはニチリンイソギンチャク。
岩盤の亀裂等で見掛ける事が多いイソギンチャクです。
周辺触手に側突起が沢山生えている為、触手がふしゃふしゃした感じに見えますね。
淡いクリーム色から緑掛かったものが多いですが、今回遭遇の個体は赤み掛かってピンク色っぽかったのでとっても綺麗でした。
因みに、このニチリンイソギンチャクにもイソギンチャクモエビは複数付いていました。
ソフトコーラルやイソギンチャク類等、珊瑚の仲間がとても多い内房・勝山海中世界ですが、実は、造礁サンゴの北限エリアでもあるという事はあまり知られていません。
ミドリイシ類の種類が非常に多く、まだ若い群体もあちこちに沢山あって進行形で増殖を続けています。
サンゴのポリプ食の魚達はハードコーラルのない海では育っていけないので、かつてはこっちの海では出会えませんでしたが、ハードコーラルが多く、そして増え続けているこの海では、そういった南方種達も沢山見られます。
この写真にもニザダイ科ナンヨウハギ、チョウチョウウオ科ヤリカタギ、スズメダイ科フタスジリュウキュウスズメダイ等がロコ魚に混ざって付いていますね🐟
ミドリイシ類で暮らす南方種の中でも、今回特に目を惹いた遭遇と言えば、このチョウチョウウオ科ツノハタタテダイ🐟
死滅回遊魚と一口に言っても出現し易いものと偶にしか現れないものがやはりいますが、このツノハタタテダイは珍しい部類のものです。
実に興趣深いフォルムの魚ですね。
という訳で本日は、今回の内房・勝山海中世界での遭遇の中から、イソギンチャクやサンゴを軸にそこで出会った生き物達を紹介してみました。