諸々綴り…~2024.02.25 内房・勝山 海中世界報告がてら①
全身に散りばめられた黄色斑が目を見張る程に美しいこのハゼ科の魚は、ヤツシハゼ属のヒレナガハゼです🐟
ヤツシハゼ属のハゼながらボディは細くなく、しっかり太みのある体型をしていますね。
砂地でテッポウエビと共生するハゼですが、砂質が目の細かい砂泥域を好む種なので、遭遇出来るエリアも必然的に限られてきます。
大きく育ったこの個体は結構図太くて、思いっ切り寄らせてくれました。
共生していたテッポウエビの方は、触角が赤くハサミも朱み掛かった見慣れない種でしたが、しっかり観察出来る前に沈まれちゃいましたね。
こちらはまだ若い個体。
頬の黄色縦線、上顎の朱色、全身の黄色斑、何を取っても綺麗なハゼですね。
とは言え、やっぱり第一背鰭第二背鰭共にキンキラ金のラメが散りばめられているのが売りの魚なので、背鰭が開くか閉じるかで全然印象は変わります。
こちらはヒレナガハゼ遭遇でのお待ち兼ね、威嚇のポーズです。
開いた第一背鰭を思いっ切り前傾させるインパクト抜群のこのポーズが見られた時には流石に興奮しちゃいましたね。
今回の勝山海中世界でのメインターゲットの一つだったのがレアハゼ遭遇。
このヒレナガハゼだけでも充分でしたが、更に、
イトヒキハゼ属のシゲハゼにも出会えました🐟
ジャパニーズダイバーであれば是非とも出会っておきたい日本固有種ハゼの登場です。
ヒレナガハゼと同所的に見られる種なので、ヒレナガハゼが見られればそのエリアではこの種との遭遇も期待出来るという事を、頭に入れておくと良いかもしれません。
因みに、シゲハゼという名前は魚類学のビッグネーム田中茂穂先生のシゲから来ています。
沢山の種の標準和名を提唱した田中茂穂先生ですが、自身の名前が献名された種がしっかり日本固有種っていうのは、やっぱり何だか凄いですよね。
あ、
このエリアで幾つも見掛けたのがこの某かの巣穴。
一体これは何の巣穴なんでしょう。
御存知の方は御教授下さい。
巣穴入口周りに貝殻を並べる生物は色々といますが、これは砕いて平たくした貝殻が穴の入口から結構奥にまで綺麗に挿し込まれるような形で整備されていました。
実に興趣深い巣穴です。
ハゼ科以外の砂泥底らしい遭遇では、
フサカサゴ科のセトミノカサゴなんかもいましたね🐟
ミノカサゴ亜科の魚としては基本生息水深が深い種なので、遭遇は基本的に浅場に上がってきたまだ若い個体となります。
30㎝位までなら出会い得ますが、深海域だと40㎝程ある個体もいるようです。
という訳で本日は、内房・勝山の海中世界から、美麗種ヒレナガハゼ、日本固有種シゲハゼ等のハゼ科遭遇を中心に諸々綴ってみました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.02.25 内房・勝山~
房総半島随一のレア種遭遇ポイント、内房・勝山。
そこで今回出会ったのがこの魚、アマダイ科アマダイ属のアカアマダイ🐟
淡赤色の体色がとても美しい食用高級魚の登場です。
食用流通時には❝甘鯛❞という名前で知られるあの魚です。
スーパーで売られるサイズではなく、高級料理屋で提供されるような立派なサイズの個体でした。
眼後下縁に入る大きな三角形の銀白色斑がとても目を惹きましたね。
こちらはアカアマダイとその巣穴です。
あちこちにポコポコとこの深い巣穴が開いていて、その周りをぐるぐるしていました。
巣穴で暮らすタイプの種なので、それを見掛けないような海を泳いでいてポロっと遭遇するっていう事は滅多にない貴重な魚です。
内房・勝山ならではの嬉しい遭遇でしたね。
アカアマダイ以外にも、今回の砂地ダイブでのメインターゲットの一つだったレアハゼがコレ、
ハゼ科ヤツシハゼ属のヒレナガハゼです🐟
頬の縦帯と全身の斑、全てが金色にキラキラ輝くとても美しいハゼです。
第一背鰭を思いっ切り前傾させるのは、ヒレナガハゼの威嚇ポーズ。
こういうヒレナガハゼならではの是非とも出会いたい生態シーンまで撮影出来る位、じっくり観察出来ました。
砂泥域ならではのハゼとしては他にも、
ユカタハゼ属のユカタハゼが沢山いましたね🐟
こちらもよく見ると、美しい金色の小斑が全身に散りばめられているハゼなのですが、小さいので余程寄らないと流石に写真には写らないですね。
ボディに模様がほぼ入らない体色無地のホシノハゼが沢山いました🐟
成魚サイズで沢山いたんですが、このエリアの個体はどれも模様がなく、全部が全部無地の個体ばかりでとっても地味。
全部ホシノハゼと決め付けないで混ざりものがいないかをチェックしたくはなりましたが、他に見るものが多過ぎて、ざっと見る位しか今回は出来ませんでした。
このダイブで楽しんだエリアではハゼ科以外にも、
コチ科のイネゴチ、ウナギ目ウミヘビ科のダイナンウミヘビ🐟
等々、砂地ダイブらしい遭遇が色々とありました。
普通種シロウミウシが岩礁エリア目指して猛スピードで歩いているシーンなんかも見掛けましたね🐚
潜り込めば更なるレア遭遇がポコポコ出て来そうな、実に面白いエリアでした。
深度復帰中にも、
チョウチョウウオ科のゲンロクダイや、トラギス科コウライトラギスの♀個体等、色んな遭遇がありました🐟
岩礁域に到ると、
フサカサゴ科ボロカサゴ属のボロカサゴが石の上でちょこんと佇んでいました🐟
この何年かでこっちの海に流れてくる個体数が増え過ぎて、以前ほど有り難がられなくはなりましたが、未だに人気はとても高い魚です。
こうなると、同属のレア種、ニセボロカサゴやナミダカサゴ、ホウセキカサゴとの遭遇が欲しくなりますねぇ。
アマクサクラゲに付いていたのはイボダイの幼魚🐟
この時季らしくない水温、黒潮の恩恵を受けるとこの組み合わせとの遭遇はやっぱり多くなりますね。
そして、浮遊系での今回のサプライズ、大ヒットは何と言ってもコレ。
廃棄された黒い網がゴミになってぷかぷか漂っている。
そんな風にしか見えないコレ、当然ながらゴミではないんですが、何だかお分かりでしょうか。
実はコレ、キアンコウの卵。
帯状になる事から卵帯と呼ばれます。
あれ、キアンコウの卵帯って真っ白な羽衣みたいなものじゃなかったっけってお思いの方も多いでしょう。
近付いて覗き込むと、白くなく真っ黒に見える理由が分かります。
今回遭遇出来たこのキアンコウの卵帯、何とハッチアウト(孵化)寸前のものだったんです。
この卵帯を覗き込むと、物凄い数のキアンコウの稚魚がぎっちりうじゃうじゃ。
もう既に脊椎も鰭も全部出来上がった魚フォルムの稚魚達が、卵帯の中でうにゅうにゅとひしめき合って泳いでいました。
キアンコウ卵帯との遭遇って事で言うと、これまでも発眼卵にまでは出会った事がありましたが、この状態の卵帯との遭遇は初めてです。
いやぁ、一期一会としか言い様のない素晴らしい遭遇でしたね。
アカアマダイ、レアハゼ、そしてキアンコウの卵帯。
感動大連発の内房・勝山海中世界のMEMBER'S PHOTO GALLERYでした。
諸々綴り…~2024.02.21 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら③
今回は平日ダイブとなった為、土日祝日限定オープンとなる西伊豆・大瀬崎が誇る最強ポイント岬の先端では潜れませんでした。
それもあって今回は、前浜での砂地ダイブと、外海・柵下での岩礁ダイブを楽しんできたので、今日はそれぞれのポイントならではの遭遇を紹介してみたいと思います。
TOPの写真はハゼ科ミジンベニハゼ属のミジンベニハゼの番(ツガイ)です🐟
瓶や缶等の人間が捨てた人工物に入る事が多い定番人気種ですが、この番が入っていたのはサザエ殻。
やっぱりこういう自然物の方が、絵として気持ち良いですね。
因みに・・・
2匹でいるからと言って性的二形でない以上、番かどうかは本来分からないですよね。
ですが、このミジンベニハゼという魚は成魚が2匹でいれば、ほぼほぼ♀と♂になります。
どういう事か簡単に説明すると、もし元々が♂&♂、もしくは♀&♀だとしても、片方が性転換して番となる、そんな絡繰りがこの魚にはあるんですよね、実は。
ハナダイ科やベラ科で有名な♀で産まれて強者が♂になる雌性先熟。
反対にクマノミ等のように♂から♀になる雄性先熟。
この二種類の性転換はとても有名ですが、ミジンベニハゼは双方向性の性転換。
必要に応じて♂が♀になるし、♀が♂にもなれるんですよね。
西伊豆・大瀬崎で潜っているとあまりに普通種過ぎてすっかりスルーの対象になってしまっていますが、実はこの魚、そんな興趣深い生態を持つ魚なんですよね。
本来、今日のブログのTOPにしたかったのがこの魚、
ヒメ目ヒメ科ヒメ属のヒメです🐟
ヒメ目の有名魚と言えばエソ科の魚達で遭遇も多いですが、このヒメ科のヒメは水深ウン百メートルにも棲むような深海性の魚なので、稀に深度を上げて来た個体と出会えるのみ。
1シャッターで消えちゃって証拠写真のみとなったのは残念ですが、これは嬉しい遭遇でしたね。
同じくヒメ目からは、
ヒメ目エソ科マエソ属のトカゲエソ🐟
この魚にはマエソ、ワニエソ、クロエソ等のそっくりさんがいるので、実は遭遇時の判別が楽しい種なんですよね。
先端が腹鰭に届かない位胸鰭が短いのが特徴で、顔全体に斑が入ります。
因みに、トカゲエソと並んで遭遇の多いマエソは顔に斑が入らず、目から後ろ下方に向けて斜線が入ります。
アゴアマダイ科アゴアマダイ属の未記載種、アゴアマダイ.spです🐟
伊豆で多いホシカゲアゴアマダイやニラミアマダイのように図太くなく、警戒心が物凄く強い種です。
その上、東伊豆・初島に行けば簡単に見られるホシカゲアゴアマダイしかジョーフィッシュを知らないダイバーからすると、遥かに細く小さいので、観察・撮影はかなり困難になります。
更に、細かい砂地で暮らし巣穴に石垣を作らない為、見付け易い目印が特にない砂地にポツンとおでこだけが出ているような状態での遭遇となるので、撮影どころか認識すらも結構シビア、そんなジョーフィッシュがコイツです。
しかもコイツには興趣深い生態があって、口から出した粘膜を出口に張る事で巣穴を隠します。
棲むのが目の細かい砂地なので、その粘膜には直ぐ砂が被り、巣穴は周囲と同化してしまいます。
常におでこが見え隠れする状態を想定して巣穴を探す普段のジョーフィッシュ捜索のようにはいかないんですよね。
さて、ここまでは全て、大瀬崎・前浜の砂地での遭遇でした。
外海・柵下では、
深場でハタ科アカハタ属のホウキハタと遭遇🐟
立派なサイズの成魚2匹が一緒になって泳いでいました。
一時遭遇が減っていた魚ですが、ここ2年程でまたちょくちょく見掛けるようになりましたね。
ですが、近縁種イヤゴハタの成魚の方はめっきり遭遇がなくなったまま。
ここ数年で言うと幼魚すら出なくなってしまいました。
もう戻って来ないんでしょうかねぇ。
浅場の岩肌にはヨゴレヘビギンポがイッパイ🐟
東伊豆・IOPにおいて、出現するようになったと思ったら瞬く間に浅場のヘビギンポ界の覇者となってしまった元・南方種のヨゴレヘビギンポ。
西伊豆・大瀬崎でも現在急増中です。
IOPと同じ事が、大瀬崎でも起こりそうな勢いですね。
という訳で本日は、平日大瀬崎の前浜と外海・柵下、それぞれの海中世界を紹介してみました。
諸々綴り…~2024.02.21 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら②
西伊豆・大瀬崎で冬の風物詩と言ったらコレ。
食用重要種、アンコウ目キアンコウ属のキアンコウです🐟
江戸の昔から五大珍味に数えられた冬が旬の関東鍋の王様、鮟鱇(アンコウ)鍋。
あの鮟鱇鍋に使われるのは、実は標準和名アンコウではなく、実はほぼほぼこのキアンコウなんですよね。
それについては味の問題という訳ではなく、アンコウは大きく育っても40㎝そこらにまでしかならないので、食用漁獲種としては大型のキアンコウの方が遥かに商品価値が高い事によるものです。
そもそも、魚類学のビッグネーム田中茂穂先生がキアンコウに付けた和名はアンコウ。
そしてアンコウにつけたのはクツアンコウという名前でした。
この時点で、鮟鱇鍋に使われるキアンコウはアンコウだったので、鮟鱇鍋というその名に偽りはナシだったんですよね。
それを後に松原先生という別の研究者が、アンコウをキアンコウとし、クツアンコウの方にそれまでキアンコウに使われていたアンコウという名前を標準和名として付けてしまった事で、今のこのややこしい状況は生まれたようです。
とってもそっくりな2種ですが、キアンコウはキアンコウ属、アンコウはアンコウ属でそれぞれ別属なので、両種のハイブリッドが生まれるような事はありません。
いずれも♂は小さく、♀は大きくなります。
深海に棲む魚で、この時季浅場に上がって来るのは産卵の為なので、基本的には全て♀。
なので、40㎝までの個体であればアンコウ、それを超える大型個体であればキアンコウ、ダイバーとしてはそういう見分けでもほぼほぼ当てはまる事になります。
ですが、折角超の付く人気2種ですし正確に見分けられるよう、見分けポイントとなる表徴形質を今回遭遇の個体で全て撮ってきたので、ここからはそれを紹介していきましょう。
先ずは、真上から見ます。
顔に近い方の胸鰭付け根を境界として、頭部と胴体の長さを比較して下さい。
頭でっかちのアンコウは頭部と胴体が同長です。
この個体は胴体の方が遥かに長いですよね。
食べる身たっぷり、キアンコウです。
次は眼を見てみましょう。
アンコウの目は真ん中に窪みがあるようなバッドマンマークに似た形の黒目をしています。
この個体は真ん丸ですね。
確かにキアンコウです。
次は胸鰭を見てみましょう。
頭でっかちのアンコウは胴体と頭部の境界が内側に大きく窪みます。
胸鰭はその内に入り込んだ部分から生えるので、頭の後ろに胸鰭が付いているような形になります。
対して、キアンコウは境界が内に食い込まないので、体のサイドに横向きに胸鰭が付いている感じになっています。
この写真を見れば一目瞭然、キアンコウですね。
最後に、アンコウとキアンコウの表徴形質の比較に付いての書き物を調べると必ず出て来るのが上膊棘(ジョウハクキョク)という言葉です。
ボディに生えたこの棘が多尖頭(一本棘ながら先っぽが数本に分かれている)であればアンコウ。
単尖頭(先割れしていない)であればキアンコウです。
先割れしていない一本棘ですね。
確定、キアンコウです。
さてこの上膊棘の生えている位置ですが、
左右一対でこの位置になります。
ただ、皮弁ふしゃふしゃのこのボディの中からこの短い棘を見つけ出すのは、慣れていないとちょっとシビアかもしれません。
写真右下に写っているのが顔に近い側の胸鰭付け根です。
この胸鰭付け根からの位置で覚えておけば、上膊棘の大体の位置の見当は随分付け易くなると思います。
アンコウとキアンコウの見分け方について解説文等を読んで、ややこしくってよく分からないってなった事がある方もいると思いますが、こうして写真を添えて見ていくと何らややこしさもなく、もう間違える事はありませんね。
という訳で本日は、今回遭遇したキアンコウの写真を使って、アンコウとキアンコウの判別について諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.02.21 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら①
エボシカクレエビ属の激レア種、エボシカクレエビ.spです🦐
奥の枝にいる個体はお腹とハサミしか写っていませんが、2匹で暮らしていました。
名前の紹介が〇〇〇.spという表記になっている事でお分かりの通り、まだ標準和名はありません。
エボシカクレエビ属の一種って事ですね。
ホストによって様々に体色を変化させる為カラーバリエーションがとても豊富な種なんですが、その極美麗カラーの個体が見付かりました。
西伊豆・大瀬崎以外の海でこのエビと狙って遭遇するのは至極困難ですが、ここ10年程掛けて大瀬崎では徐々に数を増やしているので、見られ始めた頃に比べると随分出会い易くなりました。
初期の頃はほぼほぼシロアザミヤギに付く白色個体でしたが、最近では色んな体色のものに出会えるようになっています。
ですが、今回のこの個体の美しさは群を抜いていましたね。
紅白バージョン自体は偶にいるんですが、普段はもうちょっと赤が淡いんですよね。
目に飛び込んで来るような鮮やかな赤がとても印象的な遭遇でした。
同じくエビの仲間からは、いつものハボウキガイの仲間でのチョウガイカクレエビチャレンジもしてきました。
運良く薄っすら開いた殻の口の傍まで上がってきていた為、遠目ではほんの少し見えていました。
このシャッターでも隙間にちょびっとだけ写っていますね。
この角度からチョウガイカクレエビがちょびっとでも見えるような位置にいてくれる事はかなり奇跡的です。
なんですが・・・
息を潜めてじわじわと寄った時には、
チョウガイカクレエビは奥へと行ってしまい跡形もなし。
ハボウキガイ自体もひゅるひゅると閉じていきました🐚
相も変わらず手強いですねぇ。
チョウガイカクレエビがバシッと撮れる日が来る気がしません。
それにしても、このところずっとこのオキゴンベがチョウガイの殻に張り付いていますが、そんなに居心地良いんですかね。
そこまで動かない魚じゃないだろって位、長い期間同じ場所でびくともしませんね。
撮れないもののチャレンジだけじゃ何なんで、
定番種のトガリモエビが目に入ったので、それも撮っておきました🦐
昨年、1ダイブで二桁当たり前って位あまりにもうじゃうじゃ居過ぎて、一気にその価値を下げたトガリモエビですが、今年はそこまでじゃないですね。
泳いでいると偶に目に入って来るっていう例年の通常運転レベルの個体数です。
同じく無脊椎動物からは、
殻を持たない貝の仲間、ショウジョウウミウシ科のハナショウジョウウミウシです🐚
濃赤色の蓑状突起と散りばめられた青色斑が特徴的な綺麗なウミウシです。
こちらは深度復帰中に目に入ったカナメイロウミウシ🐚
泳ぎながらのシャッターでの証拠写真じゃ伝わりませんが、とても艶やかなウミウシです。
平日の水曜日に潜った西伊豆・大瀬崎海中世界。
本日はそこでの遭遇の中から無脊椎動物を並べて諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.02.18 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら④
見事な擬態で何がどうなっているかよく分からない方も多いでしょう。
カレイ目ダルマガレイ科からダルマガレイ属のチカメダルマガレイです🐟
しっかり見れば、ちゃんと全身、要所が分かる位にはちゃんと写っていますよ。
砂地に擬態するカレイ目の魚との遭遇。
このグループはどの種もパッと見だと似て見えますが、まず尾鰭の上下葉ら辺にそれぞれ1つずつの黒斑があるのを確認すれば、それがダルマガレイ遭遇だと気付けます。
写真左方に同じ形の黒い点が2個並びで写っているのが、唯一パッと見でも認識出来ますよね、これがその黒斑です。
この時点でダルマガレイである確率がかなり高くなりますが、そのそっくりさんの可能性もまだあります。
なので、こうなった時には次に眼の周辺を確認して下さい。
因みに、このグループの魚達の目は、砂地に身を隠しても周囲が見られるように、周辺の肉塊ごとボディから丸く飛び出た形になっています。
両眼の間隔が広いとダルマガレイ、狭いとその名の通りチカメダルマガレイとなります。
広い狭いという曖昧な基準じゃ分かりにくそうって思うかもしれませんが、チカメダルマガレイは眼が二つ並んでいるって位に近く、ダルマガレイは歪な位両眼が離れていますので、この違いを知ってしまえば迷うような事は決してないって位に両眼間隔の違いは大きいので御安心下さい。
以上を踏まえた上で再度上の写真を確認してみて下さい。
theダルマガレイではなく、そのそっくりさんのチカメダルマガレイである事が分かりますね。
因みに同じに見える両種の尾鰭の黒斑ですが、ダルマガレイは両端から第三~第四軟条の2本にまたがって、チカメダルマガレイは第二~第四の3本にまたがって入っています。
ここを見なければ判断し兼ねるという種だとかなりハードルが上がってしまい大変でしたが、両眼間隔に大きな差があってくれてホッですね。
この日の海の諸々綴りもその④まで進んだので、本日は特にテーマなくその他の遭遇という形で色々紹介していきますね。
この日は若干砂が舞っていて流れのない白みのある海でしたが、こういう時にはナガハナダイの活性が落ちて位置が低くなり、アカオビハナダイが活性を増し高い位置を支配する傾向にあります🐟
アカオビハナダイ自体もそりゃあ普段からプランクトンが多く流れて来た方が嬉しいでしょうし、きっと最有力者であるナガハナダイとの力バランスが故の現象なんでしょうね。
当然ながら、ナガハナダイの活性が高い日の方が海の状態はよく、ワイド映えする光景が広がります。
死滅回遊魚を楽しむメインシーズンが終わると、そこからの楽しみは水温低下に耐えてまだ踏ん張っている無効分散種達の越冬チャレンジの継続観察です。
こちらは死滅の普通種トノサマダイですが、滅茶苦茶大きくてそのサイズに驚かされました🐟
この種の成長スピードを知らない以上何とも言えませんが、普段行かないエリアでの遭遇だったので、気付かぬ間に既に1回越冬した個体だったりするのかなって思う位の大きさでした。
成長による相変化があまりない種なので写真じゃ分かりにくいですが、この個体の行く末をしっかり見ていきたいですね。
ここのハードコーラルエリアの死滅回遊魚達もやはりすっかりいなくなっていましたが、元南方種のヒメゴンベはうじゃうじゃ付いていました🐟
こっちの海の環境に適応しロコ魚化するっていうのは、こういう事なんですよね、きっと。
大瀬崎・岬の先端でプチコロニーを作っている南方種クロヘリイトヒキベラ、その♀相です🐟
♀だとあまり見分けが付かないのですが、ここにいる♂が全てクロヘリイトヒキベラ近似種(イトヒキベラ.sp)なので、それからいくとこれもクロヘリイトヒキベラ近似種の♀となるんでしょうね、恐らく。
動き回っていつも陸な写真が撮れないこの魚ですが、今回もまたいつも通りピンのボケた写真になってしまいましたね。
まぁ、これに限った話ではなく、ベラ科はやっぱり手強いです。
死滅の普通種ながら人気のある定番種、カミソリウオの♀です🐟
砂地を泳いでいて遠くで視界に入った時には尾鰭全開の素敵フォルムだったんですが、近付き切る前に閉じられていつものこのフォルムになっちゃいました。
今年はまだ水温が下がり切らないので、この手の定番種が普通にゴロゴロしています。
もう一段下がったところでどうなるかですよね。
という訳で、この日の海の諸々綴りその④は、①~③から洩れたその他遭遇をあれこれ並べてみました。
諸々綴り…~2024.02.18 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら③
タカノハダイ科タカノハダイ属のタカノハダイは、成魚になってしまうと超の付く普通種で誰もにスルーされてしまう魚ですが、この魚の幼魚は新しい季節の訪れを告げる魚としてダイバーにはとても馴染み深く、この時季遭遇するととても喜ばれます🐟
日本産タカノハダイ科魚類はタカノハダイ、ミギマキ、ユウダチタカノハの3種。
その中で体側の縞が唯一タカノハダイだけ黄土色で、他2種は黒ですが、幼魚期のものはタカノハダイも黒いんですよね。
成魚と全く違う風貌なのも実に興趣深い魚で、銀色のメタリックボディに入るこの縞が成魚とは違い腹部まで届かず背部のみで終わります。
模様のみならずフォルムも変化する魚で幼魚期のみ見られる喉許のぷっくり感がとっても特徴的。
これらタカノハダイ幼魚の特徴をしっかり踏まえてから上の写真の個体を見ると、体側背部の縞がまだ黒ではありますが、頭部のものからほんのり茶みを帯び始めていますね。
背部のみだった筈の縞の先っちょが、淡く腹部へと向けて伸び始めてもいます。
そう思って見ると喉許のぷっかり感も、更にもうちょっと若い個体よりはなくなりつつあります。
タカノハダイ幼魚のシルバーボディ期後半ってところでしょうかね。
シルバーボディ期はとても短く、同じ幼魚遭遇と言っても、これと変わらないサイズのものでももう既に成魚と同じ黄土色の縞の個体との遭遇が殆ど。
因みに、成魚を小さくしただけの見るからにタカノハダイ幼魚と分かる時季のものにもちゃんと幼魚としての特徴があり、その時季の個体には、背鰭に(若干の青みを帯びる)黒斑があります。
このように、成魚相への変化がとても興趣深いタカノハダイ。
季節感と絡めながらこれを楽しむのは毎年の習いです。
今季でこれを知った方は、来年の同じ時季にまたこの遭遇をする事で海中世界の季節が変わりつつある事を悟り、季節の巡りを感じる事が出来ますよ。
陸で言うと、梅の花が咲くのを見て春の訪れが近いと感じるのに似ていますね。
海中世界の季節感、実に興趣深いですね。
とても愛らしいピンク色の斑でとても人気の高いハタ科オジロバラハタ幼魚🐟
南の海から訪れた無効分散種ですが、今年は水温が下がり切らずにいるので、まだ何個体もが越冬目指して頑張り中です。
頑張って欲しいですねぇ。
人気のハナダイ科幼魚からは、
カシワハナダイ幼魚🐟
アカオビハナダイの幼魚がぐちゃっと集っている場所でよくよく見てみると、結構な確率でこのハナダイが混ざっています。
カシワハナダイと言うと、もうすっかりこっちの海でロコ魚化した魚という印象ですが、そうは言ってもやはりまだまだ近縁の普通種アカオビハナダイありきの存在ですね。
南方種幼魚との遭遇と言えば、ヒメエダミドリイシ周り。
秋の頃から見るとすっかり減ってしまいましたが、フタスジリュウグウスズメダイ幼魚は未だ健在🐟
毎年沢山流れて来て、水温低下と共にパタンと死滅してしまう魚ですが、この個体はどうなる事でしょうね。
春になると、石の下や物陰で沢山見られるメバル科やフサカサゴ科の幼魚達🐟
このグループの幼魚は資料がとても少なく、同定がとても難しいです。
これはフサカサゴ科の何かでしょうが、種までは現状不明です。
定番種からはまだお肌ツルツルのクマドリカエルアンコウ幼魚🐟
昔はとても有り難がられる魚でしたが、もうここ何年かは、秋から冬の死滅回遊魚全盛の時季に沢山流れて来過ぎてスルーするダイバーも増えてきました。
成魚化すると肌感ボコボコになって愛らしさは損なわれてしまうんですが、ここ2年は越冬してボコボコ肌にまで育つって事がなかったので、今年は期待したいですね。
最後は幼魚と言うか幼貝です。
ベニキヌヅツミにとてもよく似ていますが、ソフトコーラルの仲間コエダモドキがホストだったんでシュスヅツミでしょうかね🐚
開いたポリプと同大位しかない極小個体でした。
貝やウミウシは動かないので写真に撮り易く、魚類程当り感はないものの、写真映えも含めて一定の人気はあります。
こうして見ても確かに綺麗ですよね。
という訳で本日は、今回の西伊豆・大瀬崎海中世界遭遇から幼魚をテーマに集めて諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.02.18 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら②
フグ科キタマクラ属の超普通種、キタマクラです🐟
大きさも色目も全然違いますが、奥にいるのが♀、手前にいるのが♂、かなり露骨な性的二形ですね。
夏の繁殖期さながらのバキバキの婚姻色を発して、♂が♀の周りをくるくるしていました。
婚姻色を発した♂は、ボディの青輝色の模様が普段以上に浮き立ちます。
更に、顎から腹部の皮と、背側の皮をでろんと伸ばし、体を大きく見せます。
繁殖期でもないのにそんな行動をするのって何だか不思議な感じがしますが、これはキタマクラの挨拶行動と言われています。
普通種とは言え、生態行動シーンに出会すのは実に興趣深いですよね。
クツワハゼが一所で集まっていました🐟
ここから大きな動きはありませんでしたが、こちらはこれから産卵期に入るので、求愛準備行動のようなものなのかもしれませんね。
こちらは定番、ダテハゼと共生するニシキテッポウエビが巣穴補強の為にせっせと働く姿を、全身出ているところで押さえてみました🦐
普通種ダテハゼはそこら中に沢山いるので、潜っていれば見ようとしなくても誰でも目に入ると思いますが、その時直ぐ脇にいるテッポウエビの方に気付かずにいたっていう経験がある方も多いと思います。
今回のこの2匹はダテハゼが全く仕事をする気がなかったので、寄っても寄っても撮り放題でした。
いつも全然出てくれない砂泥域のニセオニテッポウエビで、こんなシーンを押さえたいですね。
継続観察中のものとは別に、ハボウキガイの仲間の新しい個体を見付けました🐚
左右の殻がちょっと開いているその隙間の撮影に成功したのですが、残念ながらチョウガイカクレエビは入っておらず、寄生シーンは見られませんでした。
覗いてチョウガイカクレエビが入っている事を確認済みのいつものハボウキガイは、撮ろうとするといつも直ぐ殻を閉じてしまうのに、入っていない個体に限って呆気なく中が撮れるなんて、非常に残念です。
美しいチョウガイカクレエビを写真に押さえる日はまだ遠そうです。
これも一応生態シーンですね。
ツノザヤウミウシによるフサコケムシの捕食シーンです🐚
この時季砂地を泳いで渡っているとあちこちで目に入って来ます。
特段珍しい種ではありませんが、色目も綺麗だし、冬の風物詩的なものなので、結構人気のある光景です。
海中世界での生物遭遇は、季節感と絡めながら満喫するのがとっても重要。
その土台となる知識を遊びながら集めていくのはとっても楽しいですね。
という訳で本日は、日曜日の西伊豆・大瀬崎での遭遇の中から、生態シーンに焦点を当てて綴ってみました。
諸々綴り…~2024.02.18 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら①
クラゲの傘の下では色んな種の魚達と出会い得ますが、今回はイボダイ亜目イボダイ科イボダイ属、イボダイの幼魚と遭遇出来ました🐟
クラゲに付いて浮遊生活を送る幼魚とのダイバーの遭遇は、ほぼほぼアジ科幼魚かもしくはハナビラウオと相場は決まっていますが、それらより遥かに遭遇が少ないイボダイ幼魚出現。
これにはテンションが上がりましたね。
後半身の鰭の形や側線の入り方でアジ科の魚でないところまでは絞れますが、同じイボダイ亜目のハナビラウオとその辺は似ているのでかなり迷わされました。
ですが、幼魚期とは言えほんのりと黄み掛かっている以上、確実にハナビラウオではないので、あれこれ調べてみたら、
幼魚期のイボダイは全身に小黒斑が散在するとの事。
写真で見るとそれがちゃんとありますね。
水中ではイボダイの名前の由来となった鰓上の黒斑がないように見えましたが、こうして写真で見るとほんのりとその斑も出来掛けていますね。
云百匹とハナビラウオ遭遇を繰り返した挙句、やっとのイボダイ幼魚です。
付いていたのはこのクラゲ、外洋性のアマクサクラゲです。
黒潮系のクラゲなので、ちょっと前に寄っていた黒潮が運んでくれたんでしょう。
伊豆で潜る以上、潜る日潜らない日に関わらず、毎日の黒潮図確認はやっぱり欠かせませんね。
あ、クラゲに付く幼魚遭遇の定番種ハナビラウオとも、今回もちゃんと出会えました🐟
似てはいますが、しっかりと見れば全然違いますね。
クラゲに付いているからと言って、どうせいつものハナビラウオかアジ科幼魚でしょって決め付けてかかると、肝心の貴重遭遇を逃し兼ねません。
先入観なくフラットな目線で全てを判断する事が、やっぱり重要になってきますね。
あ、そうは言ってもこのハナビラウオ、珍しい遭遇では決してないですが、スケルトンボディのこの魚がクラゲに付く姿はとっても美しいので、人気はとても高いんですよね。
もう一つ、クラゲ自体の興趣深さでは、
このベニクラゲモドキとの遭遇もありましたね。
ベル型のフォルムの中に、赤桃色の消化器官が透けて見えるとっても綺麗なクラゲです。
という訳で本日は、今回のイボダイ幼魚遭遇から、クラゲを絡めながら諸々綴ってみました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.02.18 西伊豆・大瀬崎~
大瀬崎・前浜で遭遇したこのエビは、キサンゴカクレエビ属の激レア種、ポントニデス・マルディブエンシスです🦐
学名で記載した事でお分かりの通り、和名はまだ付いていません。
キサンゴカクレエビにとてもよく似ていますが、眼上棘が先分れしておらず、尚且つ太くて立派ですね。
同定における重要ポイントであるこの部分が分かるように撮影出来たのはナイスです。
ぷっくり具合から言って♀なんでしょうね。
オオエダキサンゴに見事に擬態してはいたものの、とってもキュートなフォルムの綺麗なピンクの激レアエビとのこの遭遇は嬉しかったですねぇ。
エビ類からは他にも、
抱卵中のアカシマシラヒゲエビ×2🦐
遠目で見て番(ツガイ)かなと思ったんですが、近付いて見ると二匹とも、緑色の卵でお腹がパンパンでした。
地中生活に適する為視力が極端に弱く、外敵警戒の為にハゼを共生させるテッポウエビの仲間からは定番種、ニシキテッポウエビです🦐
うちらダイバーが近付いているのにダテハゼがお仕事サボりまくりで一向に鰭ぷるぷるをしなかったので、このニシキテッポウエビは平然と目の前で巣穴補強を続けてくれました。
スナイソギンチャクでは、カニの仲間からミズヒキガニ🦀
冬の風物詩的存在ですね。
第五脚でシロガヤを翳している個体でした。
異尾類からは、
こちらもまだ和名のない種で、コシオリエビ.spです。
ポツンと生えている小さなトサカには、しばしば色んな甲殻類が付いていて面白いんですよね。
甲殻類以外にも、無脊椎動物遭遇では。
白化したセンジュイソギンチャク。
こっちの海でクマノミが共生するこの手のイソギンチャクと言えばほぼほぼサンゴイソギンチャクかオオサンゴイソギンチャクなので、センジュイソギンチャクとクマノミのこの共生シーンは案外レアなんですよ。
主眼をクマノミに置いてしまうと超の付く普通種光景ですが、見方を変えると途端に興趣深いシーンに早変わり。
実に面白いですね。
軟体類からは、
フサコケムシをムシャムシャと食べていたツノザヤウミウシ🐚
これも冬の風物詩ですね。
砂地を泳いでいると、ちょくちょく目に入って来ます。
ここからは魚類遭遇。
ハゼ科からは砂泥域の定番種クサハゼ🐟
今回は前浜重点のリクエストだったので、明るい時間に潜っただけあって、クサハゼがうじゃうじゃ出ていました。
同じくハゼ科からは、
ホシノハゼとオオガラスハゼ🐟
そっくりさんのいる種は見掛けると一応、普通種の方かレア種の方の確認が必要になるので、ひと手間掛かっちゃいますね。
この2種は、止まらずスイムしたまま見るのは当然の前提ではありますが、要所確認の為に背鰭に意識を持っていく事が出来る位には、スイムを減速するという手間が掛かる種達です。
無駄に止まって大事な水中時間をロスしたくないですもんね。
アカオビハナダイとアカオビベラ🐟
違うグループのアカオビ〇〇〇同士で並べてみました。
定番種からは、
クマドリカエルアンコウとワカヨウジ🐟
この辺の普通種は泳いでいればちょくちょく勝手に目に入ってくるので、特にネタとして場所を聞いたりする必要はありません。
今回は大瀬崎・前浜重点のリクエストだったのでここまで前浜遭遇を紹介しましたが、大瀬崎・岬の先端も1本だけながら勿論潜って来ましたよ。
深場ではキンチャクダイ科からシテンヤッコの若魚🐟
唇の水色が何だかとっても愛らしい種です。
浅場のミドリイシエリアを久しぶりに見に行ってみたら、トノサマダイがびっくりする位大きく育っていました🐟
成長しても大きく相を変えない種なので写真では分かりにくいですが、過去最大サイズです。
ハナキンチャクフグが強烈に色を発していたり、新しい季節の訪れを告げる喉許ぷっくりの銀色タカノハダイ幼魚に出会ったり、大瀬崎・岬の先端と言うとディープダイビングのメッカと言われはしますが、浅場も面白いですね。
という訳で本日は、日曜日に潜った西伊豆・大瀬崎海中世界のMEMBER'S PHOTO GALLERYでした。
十脚目からカニの仲間達~判別の難しいカイカムリ科のカニ達
カイメンを被って生きるこのカニはカイカムリの仲間です🦀
生殖器が普通のカニ類と違いヤドカリ類と同じ位置にあり、カニの仲間の中では最も原始的なグループと言われています。
カイカムリ科のカニ達は、切り取ったカイメンをハサミでくり抜き自身にぴったりサイズの穴を開け、それを背負う事で身を隠すという興趣深い生態を持ちます。
カニの仲間なので当然ハサミ脚合わせて左右5本ずつ脚がある筈ですが、身を起こしたこの写真ですら、4対しか脚が見えませんよね。
一番後ろにある第五脚が甲羅の方に向けて生えていて、その一対の脚で自身好みにカスタマイズしたカイメンを保持しています。
他の擬態ガニ達のようにカイメンをボディに張り付けているのではなく、あくまでも脚で持っている訳です。
実に興趣深いですよね。
あ、この個体、イソカイカムリかフクイカムリかだと思いますが、カイカムリの仲間の同定は非常に難しいです。
日本で見られるカイカムリ科のカニは30種はいると言われていますが、写真レベルでそれらを同定出来る簡単な見分け方が確立していないようなので、カイカムリの仲間と呼ぶまでに現状留めておきます。
書き物の解説でよく挙がる特徴を備えている事で言うとこれがtheカイカムリなのかなって事になりますが、そもそも図鑑やネットレベルのその解説自体が正しいかどうかも怪しいですよね。
カイカムリ科のカニの表徴形質による同定法について詳しく書かれた論文が読みたいと、ずっと切に願っています。
御存知の方はお教え下さい。
ここまでの写真は様子がよくうかがえるように、カイカムリ氏達に撮影協力して貰っていますが、
本来は当然ながらこういうポーズで身を潜めています。
動かなければ千切れたカイメンが転がっているだけのように見えますが、夜行性の為、夜の海では動きで気付ける事も多いです。
因みに、ナイトダイビングで深場の方まで行くと、稀にソフトボールやハンドボールのボール位ある大きな個体と出会える事もあります。
初めはオオカイカムリかと思いましたが、そんなサイズですら大きさだけでオオカイカムリだと言えるものではないようです。
これはヤギに乗っかっていた個体。
カイメンの破片染みたものが不自然なところで目に入ったら、ちょっと怪しんでみて下さい。
もしかしたらカイメンの下からカイカムリがこちらを見上げているかもしれませんよ。
カイカムリの仲間とは、ほぼほぼカイメンを背負った個体との遭遇になりますが、
こんな風にポリプの生きた綺麗なソフトコーラルを被っている事もあります。
❝貝被り❞からカイカムリの名は付いたようですが、貝を被っているカイカムリに出会った事はまだありません。
カイガラカツギというカイカムリと似たようなネーミングの甲殻類がいますが、そちらはヤドカリの仲間で異尾類なので、カニの仲間のカイカムリとは全く別物になります。
カニ類の中でも人気の高いカイカムリの仲間達。
現状、種の同定までは厳しい状況ですが、カイメンを被った愛らしい姿はどの種でも共通なので、毎回の遭遇を楽しみながら同定の鍵を探すのも楽しいかもしれませんね。
十脚目からカニの仲間達~モガニ科 イソバナガニ属から3種
サビカラマツの枝上で♀♂で向き合うこのカニは、モガニ科イソバナガニ属のナカザワイソバナガニ🦀
額角が長い手前の個体が♂、短い方は♀です。
普段は枝上ではなくその基部(枝分かれの部分)にしがみ付いている事が多い種なので、もしかしたら求愛行動に向けて動いているシーンだったのかもしれませんね。
結構珍しい光景だったので、とても印象的な遭遇でした。
植物ライクな見た目のこのサビカラマツを初め、ウミカラマツ科の珊瑚の中でも枝分かれが多い種をホストにしています。
ホストに合わせる為体色は様々で、色は特徴になりません。
最大の特徴は長く伸びる額角がやや下向きに長く伸びる事。
額角先端が小さく二叉するのも特徴の一つなのですが、この写真の個体のように付着物で覆われてそこは見えない事も多いです。
甲面の正中線上に淡色の縦帯が入るのはイソバナガニ属全般に見られる傾向ですが、甲面が扁平なのでこの種はそれがよく目立ちます。
こちらは紫色の個体。
ホストのカラマツと色が合っていないので、移ってきたばかりでこれから体色を変えていくのかもしれませんね。
イソバナガニ属と言えば、
いつでも誰でも直ぐに出会える圧倒的普通種がコイツ、イボイソバナガニです🦀
額角が短いのでこの個体は♀ですね。
ナカザワイソバナガニと同じくカラマツに付くカニですが、イボイソバナガニは枝分かれの無いカラマツであるムチカラマツにしがみ付いている種なのでとても簡単に見付かります。
多くのムチカラマツは黄緑色なので、必然的に黄緑色の個体との遭遇が殆どですが、
違う色のムチカラマツを狙えば、当然ながらイボイソバナガニも別のカラーバリエーションが楽しめます。
ムチカラマツなんてうじゃうじゃ生えていてどれを覗けばいいか分からないんじゃないかと思われそうですが、同じムチカラマツでも群生するムチカラマツではなく、1本単独でぴょろんと伸びているようなぼっちのムチカラマツがこの種のお好みなので、当りが付け易く、遭遇は尚更容易なんですよね。
こちらは珍しくオドリカラマツに付いていた個体。
額角がとても長いのでこの個体は♂ですね。
イボイソバナガニはホストのポリプを切り取ってボディに張り付ける習性を持つのですが、ムチカラマツよりもポリプがふさふさしているオドリカラマツなだけに何だかとっても格好良いですね。
普段はスルーする普通種でも、ホストやそこへの擬態の組み合わせによって、途端に目を惹く存在になったりもします。
イソバナガニ属のtheイソバナガニはこちら🦀
前2種と同じく珊瑚に付くカニではありますが、カラマツ類ではなく、ヤギ類(八放サンゴ亜綱ヤギ目)のイソバナという珊瑚の仲間がホストとなります。
艶やかなイソバナに付くので、必然的に鮮紅色の綺麗な個体が多いです。
南方種なのでこっちの海で出会えるのは無効分散で訪れて来てくれた個体のみ。
遭遇はとても珍しいです。
古い図鑑にクモガニ科と書かれている為、それをコピペしただけのネット記事にはしばしばクモガニ科と書かれてしまっているモガニ科のイソバナガニ属、そこから3種を今日は紹介してみました。
十脚目からカニの仲間達~クモガニ科 モクズショイとアケウス
クモガニ科モクズショイ属を一属一種で構成するカニ、モクズショイです🦀
・・・って、これの何がどうカニか写真で見てもよく分からないですよね。
ですが、写真だからという訳でもなく、目と触角以外ほぼほぼ全身隈なくカイメンに覆われていて、生で見ても実際こんな感じです。
動きがなければこの擬態を見破るのは結構シビアかもしれませんね。
ですが、夜行性で暗がりではのそのそ動き回るので、ナイトダイビングやケーブダイビング等の特殊環境下で潜ればちょくちょく出会える種ではあります。
あ、当然ながらこの全身のカイメンは寄生されているとかではなく、隠蔽的擬態の為に自身で張り付けたもの。
体中に生えた毛が鉤状になっていて、それにカイメンを付着させているんです。
実に興趣深いですね。
鉤状の体毛に勝手にカイメンが引っ掛かっていくなんて記述を目にする事がありますが、
脱皮から日が浅くまだ全身がカイメンで覆われ切っていないこの個体を見ると、張り付いたカイメンの断面がハサミで切り取られた不自然な形状で、意図的にモクズショイ自身が張り付けたものだという事がよく分かりますね。
モクズショイにより本体から切り取られたカイメンは生きたままなので、カニの体表でちゃんと育ち、一枚目の写真のように表面も滑らかになり、自然な感じの擬態を演出出来るものに直になります。
あ、全身がカイメンに覆われ切っていないこの個体、あくまでも幼体とかではなく立派に育った大きな成体です。
モクズショイを観察・撮影出来ても大概はカイメンだらけの訳の分からない塊って感じになってしまうので、この写真のようなボディの一部がまだ見えるカニ然とした個体に出会えるのはかなり稀です。
因みに、全身カイメン塗れのカニというとこのモクズショイの他にアケウスというカニがいて、両種はとてもそっくり。
その上、見分け方を紹介する書き物がネット等でぱっと出て来ないのもあってか、しばしば混同して紹介されていたりします。
なのでここで、実に簡単な判別方法を紹介しておきましょう。
ポイントはこの眼の形です。
アケウスは普通のカニ類にありがちな丸い小さな眼ですが、モクズショイの眼はこの写真のように横長の黒が後ろ上方に反ったような形になっています。
両種共、眼にカイメンを付ける事はないので、しっかり見分けられますよ。
では、そのアケウスの紹介もしていきましょう。
同じくクモガニ科、アケウス属のアケウスです🦀
先述の通り、眼柄の先に丸い小さな目が付いていますね。
生息環境で判断出来る状況になる事もあり、ウミトサカに乗っかっている形での遭遇であれば、ほぼほぼこのアケウスです。
体に付けるカイメンに選り好みはないので、こんな風に青いカイメンを付けている個体もいます。
両種共にハサミ脚が歩脚よりも短く、前に畳んだようなポーズでいる事が多いのですが、アケウスの方がモクズショイよりはハサミ脚が長いです。
こちらはまだ小さなアケウス幼体。
右の第二歩脚には新たに切り取って付けたばかりであろう直ぐ脇にあるピンクの珊瑚のポリプも食っ付いていますね。
クモガ二科のカニらしく歩脚の長さが際立ちますが、その細さもとても目に付きますね。
全身にカイメンを張り付けて擬態するクモガニ科のモクズショイとアケウス。
海中生物の擬態って実に興趣深いですね。
十脚目からカニの仲間達~モガニ科 コノハガニ
全く違うフォルムの二匹のカニが並んでいますね。
側縁が板状に張り出していて幅広の右にいるカニが、Huenia heraldica。
二等辺三角形フォルムの甲羅で縦細の左にいるカニが、❝元❞Huenia elongataです。
❝元❞と言うのも変な話ですが、これらがこの名前の2種だったのはずっと前の話・・・
かつては別のニ種として記載されていたこの2タイプのカニ、後に同一種である事が分かり、H. heraldicaがこの種の♀、H. elongata は同じ種の♂だと判明しました。
heraldicaとelongataは性的二形の一つの種の♀と♂、つまりは性的二形の1種のカニが2種の別のカニと勘違いされていた訳です。
同一種だと分かった先の命名にも実はこの種には紆余曲折があったんですが、最終的には♀の方の名前だったH. heraldicaがこの種の種名となりました。
正式種名について綴る以上仕方なくラテン語が並んでしまい、ややこしく感じた方もいらっしゃるでしょう。
これらが一つの種だと既に分かっている現在では、勿論の事ですがちゃんと標準和名も存在するので御安心下さい。
このカニの名前はコノハガニ🦀
一部の図鑑やネットではしばしばクモガニ科と紹介されていたりしますが、モガニ科のカニです。
木の葉に擬態する蝶にコノハチョウというのがいますが、それに見立ててこの名は付いたそうです。
先程の説明でお分かりの通り、これはコノハガニの♀ですね、
頭にヒラフサノリを付けていますが、西伊豆・大瀬崎ではこの組み合わせがかなり多いです。
外広がりに2枚付いているのがウサ耳のようでとってもキュートですね。
然り気にお洒落さんです。
こういう赤い海藻に紛れている個体は、このように鮮やかな赤い体色をしています。
ボディ自体隠蔽的擬態が出来るようなフォルムになっていますが、それのみならず、海藻をちょん切りそれを頭に張っ付けるこの習性、実に興趣深いですね。
こちらは綺麗な二等辺三角形の♂個体。
こうしてじっくり見てみても、♀と♂が別種と勘違いされた過去にも確かに頷けますね。
頭に海藻を付けていない個体はむしろ珍しいですね。
恐らく何かの拍子に外れちゃったとかなんでしょうね、きっと直ぐにまた新たな海藻を切り取って張り付ける事でしょう。
体色は環境次第なので、カラーバリエーションはとても豊富です。
緑の海藻の中に紛れていたこの♀個体は黄緑色。
あ、コノハガニはとても擬態が巧みなカニなので、海藻に紛れたままだと撮影しても何がどうなっているか全く分からないっていう写真になってしまうので、海藻から出て貰って撮影しています。
皆さんもこれからそういう場面があるかもしれませんが、そんな場合には必ず元の環境に戻してからその場を去る事を忘れないようにしましょうね。
アミジグサの仲間を頭に張っ付けたこの♂個体の体色は地味な褐色ですが、海藻まで込みで見ると立派な角が生えているみたいで存在感抜群、中々素敵なフォルムですよね。
因みに、コノハガニは海藻に紛れているところをお邪魔してこんな風に出て来て貰うと、何故だか真っ直ぐに立てず背中側に身を反ります。
2枚目写真の赤い♀個体、あれは正に身を反らせているところなのでお腹側が丸見えですね。
この後傾姿勢になる動きもとっても愛らしいので、遭遇時には是非それも意識して見てみて下さいね。
性的二形、海藻張り付け、カラバリ、動き、見所沢山のコノハガニ。
昼間にも見られますが、ナイトダイビングでは遭遇率がうんと跳ね上がりますよ。
十脚目からカニの仲間達~オウギガニ科 キンチャクガニ
オウギガニ科の人気種と言えばこのカニ、キンチャクガニです🦀
オウギガニ科のカニにはありがちですが、浅場の石の下で暮らしているので、石を捲って捜索しないと中々遭遇の叶わない種です。
元々は南方種なので、こっちの海では無効分散で訪れた個体と稀に遭遇出来る程度でしたが、伊豆諸島では近年通年見られる種となりました。
伊豆半島ではまだ死滅回遊遭遇なので、遭遇出来るのは秋~冬の季節となります。
あ、大前提として・・・
石捲り捜索をするに際して、ダイバーが海中環境を変えてしまう事があっては決してなりません。
動かした石は必ず、元の位置は勿論、向きまできっちり元に戻す事を忘れないで下さいね。
あ、捜索並びに観察・撮影中のベラ払いも忘れないようにしましょう。
とても綺麗なカニで甲面の模様はまるでステンドグラスのよう。
これだけで充分人気種となる要素は満たされているんですが、それ以上に興趣深いのが、
細いハサミ脚の小さなハサミでイソギンチャクを両手に持ち、それを左右に振り回して目の前のダイバーを威嚇してくる姿の愛らしさなんですよね。
小さいながらしっかりと生きたイソギンチャクなので、当然ながら刺毒を持っています。
イソギンチャクの毒を翳して外敵から身を守る訳ですね。
キンチャクガニが持つこのイソギンチャク、ずっとカニハサミイソギンチャクだと言われていたんですが、近年の研究でカニハサミイソギンチャクではなくカサネイソギンチャクだという事が分かりました。
因みに、キンチャクガニが自らこのイソギンチャクを手放す事は決してありませんが、もし一つを失くしたらどうするか御存知でしょうか。
なんと、残った一つのイソギンチャクをハサミでチョキンと切って両の手に持ち分けるんですよね。
それはつまり、片手に残った一つのイソギンチャクのクローンを自ら作り出して、二つにするって事なんですよね。
なんだか凄いですね。
因みの因みに、両方とも失くしたら・・・
他のキンチャクガニから一つを奪い取り、それをチョキンと二つにして両手分にするんです。
奪われたキンチャクガニも同様に、片手に残った一つを二つにします。
二つに分けられたイソギンチャクじゃ小さくて役に立たないんじゃないかって思われるかもしれませんが、元のイソギンチャクもクローンの方も数日あれば元のサイズ位にまで直ぐ育つので、何ら問題はありません。
自然界の不思議、いやぁ、実に興趣深いですねぇ。
こちらは西伊豆・大瀬崎、島の方ではなくちゃんと半島で出会った個体です。
無効分散種にはありがちですが、ほぼ幼体のみの遭遇となるので大概の場合とても小さいです。
手に持つイソギンチャクも物凄く小さいですね。
甲面のステンドグラス模様も、黒褐色の縁取りがまだ未完成ですが、動き方は全く一緒。
強いて言えば、成体よりはちょっと動きが忙しないイメージかもしれませんね。
オウギガニ科の人気種キンチャクガニ。
石捲りでのマナーをしっかりと守りながら遭遇に期待してみて下さいね。
十脚目からカニの仲間達~モガニ科 イソコンペイトウガニ
トゲトサカ類のポリプに擬態して暮らすこのカニは、モガ二科のイソコンペイトウガニ🦀
このカニは体色自体もホストにするトサカの色に合わせますが、それのみならずトサカからポリプを切り取ってそれを頭の上に張り付けるんですよね。
目の間や目の後ろ辺りに濃赤色の膨らみみたいな部分が見えますよね。
これがこのトサカから切り取ったポリプです。
因みに、張り付けたこのポリプはちゃんと生きていて、この写真のものは閉じていますが、切り取られたこのポリプの摂食のタイミングで遭遇すればちゃんと開いているんですよ。
磯金平糖ガニという名前の由来は、
このトゲトゲボディ。
丸みのあるボディにトゲトゲがイッパイ、それをお菓子の金平糖に見立てたんですね。
中々粋なネーミングですよね。
前出の写真で見ると、そんな大した擬態じゃないじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、
実際の遭遇シーンはこんな感じ。
写真中央辺りのポリプにイソコンペイトウガニが紛れているのがお分かりでしょうか。
いやはや、実に見事な隠蔽具合ですね。
イソコンペイトウガニとの遭遇の殆どは、これらのように赤いトサカのポリプ内ですが、
時々、黄色いトサカにも付いていて、その場合はちゃんと体色も黄色に合わせています。
頭に張り付けたポリプも、当然このトサカから切り取ったものなので黄色です。
赤い個体なら幾らでも見付かるイソコンペイトウガニですが、ネタモノになっていない状態での黄色個体とのサプライズ遭遇は結構貴重かもしれません。
最後はこの写真。
これが何だかお分かりでしょうか。
実はこれ、イソコンペイトウガニそのものではなく、その脱皮殻です。
当然ですが、脱皮してツルツルになった本体は、また直ぐに新しいポリプを切り取って頭に張り付けます。
個性的なフォルムの擬態種が多いモガニ科から、今日はイソコンペイトウガニを紹介してみました。
十脚目からカニの仲間達~ガザミ科 トサカガザミ属
ウミトサカ科の珊瑚ユビノウトサカに擬態して寄生生活を送るガザミ科の小型種、トサカガザミ🦀
ユビノウトサカのポリプの感じに絶妙に似せた全身の斑が実に興趣深い擬態生物です。
背景に同化していて何処にカニがいるのって感じですが、よく見ると写真の個体はクラゲムシを摂食中ですね。。
こちらは大きく育った個体。
トサカガザミの斑の数は幼体でも成体でも18個と決まっているので、育っちゃうとトサカのポリプと斑の密度が違う状態になるので存在が分かり易くなりますね。
こう見ると、丸みがあって実にキュートなカニですね。
因みにこちらがユビノウトサカ。
腔腸動物門花虫綱八放サンゴ亜綱ウミトサカ目ウミトサカ科に属する、いわゆるソフトコーラルの仲間ですね。
トサカガザミはそのハサミでこの珊瑚に切り込みを入れ、その肉質の中に入って身を隠しているので、必ずしもさっきの写真のように珊瑚の表に出て乗っかっている訳ではありません。
こちらは水中では抱卵個体だと思って撮った個体ですが、こうして写真で見ると、お腹から食み出ているのは卵ではなく、寄生甲殻類フクロムシの卵巣のようですね。
フクロムシはカニ等の甲殻類に寄生するフジツボの仲間に近い甲殻類で、♀♂問わずのカニに寄生して自身の卵をカニに育てさせるという恐ろしい寄生生物です。
ここで興趣深いのが、♀♂問わずという部分です。
♀ガニに寄生して自身の卵と思わせて育てさせるっていうのまではまだ分かるんですが・・・
なんとフクロムシは♂ガニにも同様に寄生し、その神経系を乗っ取り、ホルモンバランスまで崩させ、♂ガニを♀化させて自身の卵を育てさせるんです。
この♀化は行動の部分だけではなく、体の構造まで♀化させてしまうので、お腹のふんどしは大きくなり、逆にハサミは♀のように小さくなります。
因みに、これは♂であれ♀であれですが、フクロムシに寄生されたカニは自身の生殖機能を失います。
当然、カニに寄生したフクロムシは、寄生先のカニを繁殖に利用するのみならず、そのカニの体内の栄養分を吸い取って生きるので自身の栄養摂取にも使います。
平たく言うと、フクロムシに寄生された瞬間からそのカニは、フクロムシが栄養摂取して生き、そして子孫繁栄の為繁殖活動するのに利用される、その為だけに生きるマシーンとなるんです。
たとえそれが♂ガニだとしても、神経系を操られ♀化させらてしまうので、フクロムシから逃れる術はありません。
フクロムシ、実にえげつない生物ですね。
あ、このえげつなさにはしかもがもう一つあります。
フクロムシに寄生されたカニは繫殖能力を失い、繫殖エネルギーを使わなくなるので、うんと長生き出来ます。
長生きと言うと聞えは良いですが、果たしてこの長生きが自然界に生きる生物として万歳な事態かどうかですが・・・
フクロムシという神経系を操るえげつない生物に寄生されたまま、フクロムシに栄養を吸い取られる為に生き、フクロムシの繁殖活動の為のマシーンとして、ただひたすら長生きを強いられる。
生命の終わりを迎えるまでずっと。
いやぁ、考えれば考える程フクロムシ、恐ろしいですねぇ。
さて、フクロムシ話の花が咲き過ぎたので、この辺でトサカガザミ科のカニ話に戻しましょう。
こっちの海で出会うトサカガザミ科のカニはほぼほぼtheトサカガザミですが、
極稀にこんな模様の違うトサカガザミに出会える事があります。
甲面の模様が斑紋ではなく縦帯で、トサカガザミとは明らかに違いますよね。
このカニはツヤトサカガザミ🦀
南方種なので、無効分散でこっちの海に流れて来た幼体遭遇が基本となります。
同じく珊瑚寄生のカニですが、本来はユビノウトサカではなくウミアザミの仲間に付くカニです。
こっちの海に訪れた場合はウミアザミが少ないのもあってユビノウトサカに付く場合が殆ど。
ホストとの適応が不十分なのもあってか成体にまで育つ事はあまりないようで、まだ幼体にしか出会った事がありません。
theトサカガザミもツヤトサカガザミも、白を基調にしてそこに模様が入るとても綺麗なカニなので、ユビノウトサカを見掛けたら是非覗いてみて下さいね。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.02.04 東伊豆・八幡野~④
スズメダイ科ヒメスズメダイ属のタイプ種、ヒメスズメダイです🐟
体側の黄褐色部分に5本の青色縦帯が綺麗に入ります。
そっくりさんのコビトスズメダイは尾鰭下葉も黄色ですが、このヒメスズメダイは尾鰭下縁が黒ずみます。
無効分散で来訪した南方種ですが、越冬目指して岩陰で頑張っていました。
こっちの海ではレア種なので去年見付けて以降、巣にした岩陰を潜る度に見ていたのですが、そこからいなくなって死滅しちゃったかと思っていましたが・・・
場所を変えてまだ元気にしていたんですね。
育つと黒ずんでキュートさが失われてしまうとは言え、このまま頑張って欲しいですね。
ハゼ科からは、
クビアカハゼとコシジロテッポウエビの共生シーン🐟
とても敏感で発見した3個体どれも指してから沈むまで短時間勝負だったクビアカハゼ。
他の方々は間に合わなかったようですが、速い反応で無事遭遇・認識出来たのはナイスでしたね。
コシジロテッポウエビと共生していたこの個体が、多少とは言え3個体中で一番長い間粘ってくれたっていうのも、ラッキーでした。
こちらは皆が囲んでいたのんびり屋さんのダテハゼの方ですね🐟
囲まれて寄られてシャッター切られまくっても一向に沈む気配がない図太さが、見ていて逆に面白かったですね。
ロコ魚はやっぱりエリアのマジョリティなので過敏でなく、観察・撮影もし易いです。
ベラ科からは、
ススキベラ属のレア種ホクトベラを初め色んな遭遇がありました🐟
ベラ科の無効分散種(死滅回遊魚)からはホクトベラ以外にも、
シロタスキベラ、モンツキベラ等との幼魚遭遇がありました🐟
いずれもこの時季らしくそれなりに育った個体でした。
シロタスキベラの方がモンツキベラよりも遭遇は少ないですが、越冬となるとモンツキベラの方が遥かに手強いです。
海中環境の変化が騒がれる昨今ですし、成魚相はまだ先だとして、若魚相位はそろそろ出現して欲しいところですね。
ベラ科ロコ魚からは、
スジベラとアカササノハベラ幼魚🐟
カンムリベラ属のスジベラ、幼魚期の個体は胸鰭付け根の斑がポイントとなります。
MEMBER'S PHOTO GALLERY登場率NO1のササノハベラ属2種からアカササノハベラ、この魚の存在感はホント普通種の域を超えていますね。
フグ目ハコフグ科からは、
ハコフグ属ハコフグと、コンゴウフグ属のシマウミスズメです🐟
フグ目と言えば、自然界を代表する有毒生物の一つですよね。
ハコフグ科魚類は、フグ毒として有名なテトロドトキシンは持ちませんが、猛毒パリトキシンをその身に含む個体がいます。
それ以外にもハコフグ科独特のものとして、皮膚から出す粘液毒ハフトキシンで身を守っています。
パリトキシンはアウトですが、ハフトキシンは人間には問題ないので、観察において恐れる事はないので御安心下さい。
いずれも幼魚の人気はとても高いですが、成魚もこうして並べて観察すると中々面白いですよね。
こんな風に同科や同属の魚を一日の内に同時に観察すると、興趣深さは増しますね。
ゴンベ科からは、
オキゴンベとクダゴンベ🐟
ロコ魚オキゴンベはゴンベ科のタイプ種です。
タイプ種ながらこのグループ名がオキゴンベ科ではなくゴンベ科なのは、魚類学のビッグネーム田中茂穂先生が最初にこの魚に付けた標準和名がtheゴンベだったからなんですよね。
クダゴンベ属は一属一種でこのクダゴンベのみです。
初心者ダイバーに対しては珍しい魚としてよく紹介されたりしている魚ですが、上級ポイントで腕を磨くようになると、実は結構沢山いる魚だと気付きます。
経験を積む中で何が貴重種で何が定番種かが分かるようになる事で、楽しみを広げる目はどんどん養われていくんですよね。
最後はキンチャクダイ科からレンテンヤッコ🐟
小型ヤッコグループであるアブラヤッコ属の最大種です。
岩礁エリアに多いこのレンテンヤッコ、遭遇機会はとても多い普通種ですが、カメラを向けると直ぐ身を翻し亀裂に入っていくので、案外バシッとした写真を撮るのに手こずる魚だったりします。
いつ見ても綺麗な魚ですよね。
という訳で本日は、東伊豆・八幡野海中世界のMEMBER'S PHOTO GALLERYその④でした。
諸々綴り…~2024.02.04 東伊豆・八幡野 海中世界報告がてら③
綺麗なオレンジ色のウミシダに付いていたウミシダヤドリエビです🦐
ウミシダに付くエビ類としては最も普通種で、特にしっかり探さなくても、泳ぎながらでもこんな風によく目に入って来ます。
体色をホストに合わせるエビなので、擬態生物との遭遇をテーマに楽しむような回や、レアエビ遭遇に期待してじっくり覗いたけれど空振ったっていう時にコイツでお茶を濁すという戦法で、ガイドがちょくちょく用いるエビなんですよね、実は。
あ、そう言えば・・・
このウミシダの何処にウミシヤドリエビが付いているか、皆さん気付けていますか。
ここです。
基本的にはこんな風に、羽枝ではなく腕そのものに水平に付いている事が多いので、慣れれば案外遠目で見ても気付けるようになります。
こちらのホスト、スナイソギンチャクには2種の甲殻類が写っています。
普通種ハクセンアカホシカクレエビは当たり前ですが、ここでのメインはもう一つの甲殻類、コペポーダです。
これも、「あぁ、ホントだ」と思った方と「え、何処何処」って方に分かれた事でしょう。
コペポーダは節足動物門カイアシ亜綱の甲殻類で、広くはカイアシ類という呼び方をされる事が多いですね。
カイアシ類というと浮遊生活を送るプランクトンか、魚の皮膚に張り付いている寄生虫というイメージですが、イソギンチャクに付くものは底生生活を送るベントス型のもので、プランクトン型や寄生型のものとは、また種が違います。
プランクトン型や寄生型のもののちょっと怖い感じと違い、イソギンチャクに付くものはとてもキュートなフォルムをしているのですが、小さ過ぎて、コンデジで愛らしく撮るのは不可能に近いですね。
あ、そう言えば、これもコペポーダが何処に写っているか示しておいた方がいいですよね、きっと。
ここです。
写真じゃ何がどうなっているかまでは全く分からないと思うので、今度スナイソギンチャクを見掛けた際に見てみて下さいね。
あ、それなりの頻度では付いていますが、触手の色次第で見易さは変わるので御注意を。
ハクセンアカホシカクレエビをさらっとスルーしたので、同じアンキロメネス属の普通種を一つ、
アカホシカクレエビです🦐
こちらはキッカイソギンチャクに付いていました。
甲殻類遭遇を増やせるかどうかは、ホストとなる無脊椎動物への見識の深さにそのまま比例します。
無脊椎動物侮るなかれ、ですね。
こちらはニシキテッポウエビです🦐
砂地でハゼ科魚類に遭遇しても、ハゼへと向けてレーザーポインターのようなピンポイントの視線を向けてしまうと、その直ぐ脇にある光景にすら、案外気付けなかったりします。
泳ぐ時も観察時も、常に視界を広く取る事を心掛けるのはとても重要です。
最後は存在感抜群のクリーニングシュリンプ、アカシマシラヒゲエビです🦐
岩の隙間や岩礁の亀裂から白いヒゲが食み出していたら、ほぼほぼオトヒメエビ、時々このアカシマシラヒゲエビって感じになります。
以前は南方種でそれなりに喜ばれる種でしたが、最近は何処でも見掛けるようになりましたね。
すっかりロコエビ化してレア感は全くないですが、クリーニングシーンで押さえられるととっても絵になるので、それを狙うであれば今も充分遭遇甲斐のあるエビだと思います。
という訳で本日は、東伊豆・八幡野海中世界で遭遇した甲殻類を紹介してみました。
諸々綴り…~2024.02.04 東伊豆・八幡野 海中世界報告がてら②
軟体動物から十脚目のレア種、ヒレギレイカの幼体です🦑
小さなイカなので定番種のヒメイカと混同してしまいそうですが、胴体がヒメイカよりずっと寸詰まりで、胴後部の鰭が左右にちょんちょんと突き出したように付いているのが特徴です。
ただ、この鰭が多数の支持肉糸とその間の膜に分かれ鰭が切れているように見えるのがヒレギレイカの特徴なのですが、このサイズだとそこがよく分からないので、浅場で極稀に現れるこのイカがヒレギレイカだと同定するのはちょっと早計な気もします。
そもそもヒレギレイカは外洋性のイカですしね。
・・・が、このイカが出現するとヒレギレイカ出現とダイバーはいつも騒ぐので、現状ではヒレギレイカ、もしくはそれに似たイカ類の一種としておくのが妥当でしょうね。
いずれにしてもこのレアなイカ類との遭遇、ナイスでしたね。
同じく軟体動物との遭遇では、
殻を持たない貝の仲間、ウミウシからツブツブコイボウミウシです🐚
普通種コイボウミウシの触角は全体が真っ黒ですが、このツブツブコイボウミウシは触角の後ろ部分は黒、前側は白のツートンになっています。
何処で潜っても岩肌を覗くと、コイボウミウシとキイロイボウミウシはあちこちに沢山付いています。
この二大普通種と何となく違う個体を見掛けたら要チェック。
イボウミウシ科レア種かもしれません。
ウミウシの仲間からは、
ニンジンヒカリウミウシとの遭遇もありました🐚
刺激を受けると左右3対の発光瘤が光る発光生物として人気のある種です。
勿論、殻を持たない貝のみならず、ちゃんと殻を持つ貝からも興趣深い遭遇はありましたよ。
ミノガイが2匹で寄り添っていました🐚
彫りの深い放射肋が並ぶ殻を持つ二枚貝なのですが、特長は何と言っても蓑状の軟体部が殻の隙間からがっつりと食み出ている事です。
二匹で重なり合っていたのは産卵前行動か何かなんでしょうかね。
とても興趣深い光景でした。
今回の軟体動物からの大HIT遭遇と言えばこれも欠かせませんね。
溝腹綱サンゴノホソヒモ科のカセミミズです。
ミミズと名前に付いちゃいますが、ミミズみたいな細長いフォルムっていうだけで、当然ながら陸でイメージするあのミミズとは一切関係ありません。
至極原始的な軟体動物と言われ、平たく言うと貝類等軟体動物の始祖的存在の貴重生物です。
こんなフォルムですが、茶色ボディに黄色の斑がとってもよく映える綺麗な色目の個体でした。
ゆっくりゆっくりですが、普通に軟体類の動物なので、こう見えてちゃんと動いているんですよ。
ヤギやトサカ等のソフトコーラルに巻き付いてそのポリプを食べて暮らすカセミミズですが、今回引っ付いていたのはもう食べ尽くされ寸前なのかとても小さくなったヤギでした。
このヤギを食べ終わったら、また別のコーラルに移動するんでしょうね。
因みに、日本産のこのカセミミズは溝腹綱生物の世界最大種となります。
軟体動物が続いたので最後は棘皮動物から、
チャイロホウキボシの腕6本個体です。
東伊豆・八幡野に多いチャマダラホウキボシよりも、このチャイロホウキボシの方が少し大きくなります。
ホウキボシの仲間は裂片法による無性生殖を行うので、腕1本あればそこから体全体を再生出来ます。
自切した1本の腕の切断部から再生が始まると、小さな4本の腕がそこから生えてきます。
そうすると1本だけ長くて残りは短い状態になりますよね。
その状態を箒星(ホウキボシ)に見立ててホウキボシという名前は付きました。
高がヒトデと侮るなかれ、自切による無性生殖で個体数を増やしていく大変興趣深い種なんですよね、こう見えて実は。
という訳で本日は、東伊豆・八幡野海中世界での今回遭遇から甲殻類以外の無脊椎動物を並べ、諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.02.04 東伊豆・八幡野 海中世界報告がてら①
南方種が多いフグ科キタマクラ属ですが、グループ唯一のロコ魚がこのキタマクラです🐟
成魚になると地味な普通種として皆にスルーされてしまうキタマクラですが、幼魚期は一変して、マメマクラなんて愛称で親しまれる程の人気が然り気にあるんですよね。
体のバランスに合わない位大きなクリクリの目は緑色、確かにとってもキュートですね。
春から初夏の頃に遭遇が増えるキタマクラ幼魚ですが、早めの登場ですね。
ベラ科の南方種グループ、ススキベラ属からはホクトベラ🐟
ホクトベラやムシベラ、ホシススキベラ等のススキベラ属のベラは背鰭臀鰭の眼状斑がポイント、ここがしっかり写るように撮りたいですね。
同じくベラ科から、
シロタスキベラ属のシロタスキベラ🐟
幼魚期は吻から尾鰭に掛けて体側に赤と金色の縦帯が入りますが、成魚化するとこれは消え、逆に沢山並ぶ横帯が特徴的な魚に変わっていきます。
これはその模様変化の入口にある個体。
この時季らしく大分育っていただけあって、金色縦帯に差し込むように赤色縦帯の縁からギザギザと横帯が伸び始めていますね。
ハゼ科ダテハゼ属の人気種、紅白縞々のクビアカハゼ🐟
同じく赤い帯のあるダテハゼ属、ダンダラダテハゼととてもよく似ていますが、第一背鰭に沢山の橙色斑が並ぶダンダラダテハゼと違い、クビアカハゼは背鰭付け根に赤色斑が2つ並ぶのが特徴です。
スズメダイ科からは死滅の定番種アマミスズメダイ🐟
毎年沢山幼魚が流れてくる死滅の普通種ですが、おでこに入るV字模様の愛らしさで人気があります。
これ位にまで育つと色もくすんで愛らしさは大分減っちゃいますね。
毎年これ位の若魚にまでは結構なるんですが、黒くくすんだ成魚にまではまだ届いていません。
越冬自体は珍しくない種なので、そう遠くなく成魚相も見られるかもしれませんね。
という訳で本日は、日曜日の東伊豆・八幡野海中世界から魚類遭遇を並べてみました。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.02.04 東伊豆・八幡野~③
ハナダイ科ナガハナダイ属カシワハナダイの♀です🐟
この魚がハレムを作っている西伊豆・大瀬崎で潜っていると、数え切れない程の♂がうじゃうじゃいる♀に求愛しまくっているので、もうすっかりこっちの海でロコ魚化している魚かのような感覚に陥ってしまいますが・・・
大瀬崎以外のこっちの海では、ちょくちょく越冬してちょくちょく♂も見られる遭遇多めの死滅回遊魚って感じなんですよね、まだまだ実際は。
そういうポイントの場合、大概はキンギョハナダイの群れの中で混泳しているところに遭遇するって感じになります。
今回の遭遇も正にそんな感じでしたね。
ベラ科からはそっくりさん同士、
レア種ホクトベラと、普通種クロフチススキベラ🐟
いずれも同じススキベラ属の魚です。
どちらも尾鰭は黄色ですが、後縁が黒く縁取られるか否かで遭遇の嬉しさは雲泥の差となります。
同じくベラ科から、
深場の定番種タキベラ属のタヌキベラです🐟
かつて伊豆海洋公園から採取された個体で新種登録された魚なので、これも正に伊豆ならではの魚と言えますね。
同じくタキベラ属から、
こちらは死滅回遊魚モンツキベラです🐟
死滅の定番種で幼魚は毎年沢山流れてくるのですが、その割に越冬してくれない魚なんですよね。
若魚相位なら見られても良さそうなものなのにって位幼魚の個体数は多いので、ポロっとがない位水温の線引きが強固なんでしょうね。
シロタスキベラ属のシロタスキベラはモンツキベラ程数がいる訳ではありませんが、ちょくちょく若魚相にまで至ってくれます🐟
そして、
このカマスベラに至っては、東伊豆では最早既にロコ魚化していると言っていい位ですね🐟
そもそもが南方種だった事を忘れてしまう程、大きく育った成魚が浅場のあちこちで普通に泳いでいます。
西伊豆・大瀬崎でこの魚が出る事は極稀にしかないので、正に東伊豆ならではの魚ですね。
ハゼ科から届いたのは、
共生ハゼエリアに沢山いたダテハゼと、サンカクハゼ属唯一の普通種セホシサンカクハゼです🐟
セホシサンカクハゼ以外のサンカクハゼ属のハゼにもそろそろ出会いたいですね。
ボディの黄色はまだ出ていないけれど、吻部はもう赤くなったミギマキの若魚です🐟
銀色ボディで喉許がぷっくり膨らんだようなフォルムで人気のタカノハダイ科魚類の幼魚達との遭遇は、これからの季節が旬となります。
今年も是非とも押さえたいところですね。
レンテンヤッコがオトヒメエビにクリーニングされていました🐟
直ぐに逃げてしまうタイプの魚もクリーニング中だとじっとしていてくれるので、観察・撮影し易くなります。
同じくクリーニングシュリンプからは、
アカシマシラヒゲエビ🦐
アクアリウムの世界ではスカンクシュリンプなんて呼び名で通っているエビです。
そもそもは南から無効分散で訪れた種でしたが、今ではすっかり定着して、あちこちでウツボを初めとした様々な魚類をクリーニングしていますね。
そして同じく無脊椎動物から、今回の嬉しい遭遇、
外套膜の縁にある鰭が細かく切れているように見えるのがその名の由来となるヒレギレイカの幼体です🦑
成体は水深500mを超えるような深海域から採取されている非常に珍しいイカです。
小さいってだけで、こっちの海の定番種ヒメイカと混同してスルーしてしまわないよう、注意しなければいけませんね。
胴体が寸詰まりで胴後部の鰭が耳のように左右両端から突き出て見えるヒメイカサイズの小さなイカがいたら要注目です。
東伊豆らしい沢山のベラ科魚類から、超の付く貴重種ヒレギレイカまで、様々並んだMEMBER'S PHOTO GALLERYその③でした。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.02.04 東伊豆・八幡野~②
尾鰭上下葉先端が淡い黄色。
目の周りからおでこに掛けてもほんのりと黄色く色付いています。
これらの黄色が柔らかく映える薄ピンク色のボディがとても綺麗なこのハナダイ、ハナダイ科ナガハナダイ属のベニハナダイです🐟
東伊豆・八幡野ボートポイント、イサキ根で出会いました。
こちらは同属ナガハナダイのまだ若い個体です🐟
パッと見だとキンギョハナダイの♀とよく似て見えますが、オレンジ一色に見えるボディの腹部辺りはオレンジ色が波打ったような模様になっています。
キンギョハナダイ♀であればオレンジ色の腹鰭が、ナガハナダイでは白く見える事で、水中でも直ぐ見分けが付くと思います。
城ヶ崎海岸のポイントだけあって、
深場にはソフトコーラルが立派に育っていて、ハナダイ科魚類が各岩周りにかたまっていました。
この日は流れがなかったのでハナダイ達の位置が低めで派手さは味わえませんでしたが、もうちょっと流れてくれると更に美しい光景が見られたでしょうね。
今回のボートポイントでの大HIT遭遇がコレ、
幼魚期真っ黄色の背鰭が、後ろからがっつり黒ずむ程、過去一大きく育ったゲッコウスズメダイです🐟
あまりに大き過ぎて一瞬「あれ、これゲッコウスズメダイだよなぁ」って考えちゃう位の見た事がないサイズでした。
最近オビトウカイスズメダイでは黒ずみが入るまで育った個体をよく見掛けるようになりましたが、ゲッコウスズメダイもここまで育つようになるとはって感じで驚きでした。
ビーチポイントからは、
ベラ科のホクトベラとシロタスキベラ🐟
この辺の死滅回遊型のベラは西伊豆・大瀬崎ではあまり見掛ける機会がないので、東伊豆城ヶ崎海岸で潜った甲斐のある遭遇ですね。
ロコ魚からは、
テンジクダイ科のスジオテンジクダイと、キンチャクダイ科のtheキンチャクダイ🐟
死滅回遊魚遭遇が少なくなるこれからの季節は、ロコ魚達との遭遇を復習して回る良い機会でもありますね。
無脊椎動物への造詣を深める機会も正にこれから、冬~春の季節です。
棘皮動物からは、
ヒトデの仲間チャマダラホウキボシと、ウニの仲間オーストンフクロウニ。
チャマダラホウキボシは八幡野で潜ると矢鱈と目に付くヒトデです。
ヒトデを餌にする定番人気種フリソデエビの大好物がこのヒトデだっていうのもあって、八幡野ビーチにはフリソデエビが出現しまくるんですよね。
オーストンフクロウニは冬になると深場から上がって来る深海生物。
カゴウニカクレエビやアロポントニア・ブロックイ等の美しい貴重エビがよくこれに付いているんですが、今回は残念ながらなかったですねぇ。
軟体動物からはニンジンヒカリウミウシ🐚
ピンク掛かった発光瘤がとっても綺麗でしたね。
腔腸動物門ヒドロ虫綱クダウミヒドラ科の仲間です。
ベニクダウミヒドラとヒドロ花はよく似ていますが、柄の部分の構造が違いますね。
東伊豆・八幡野の岩肌にはクダウミヒドラ科の生物が色々付いていてとても綺麗なんですよね。
ハナダイ、死滅、ロコ魚、無脊椎動物、バリエーションに富んだMEMBER'S PHOTO GALLERYでしたね。
MEMBER'S PHOTO GALLERY~2024.02.04 東伊豆・八幡野~①
背鰭棘の先端に糸状突起がふしゃふしゃと生える人気グループのゴンベ科。
その中でも今ぐんぐん勢力を拡大し数を増やしているのが、このオキゴンベ属のヒメゴンベです🐟
同属のロコ魚ミナミゴンベととてもよく似ていますが、尾鰭の鰭膜にも赤色小斑が入る事で見分けが付きます(ミナミゴンベは無色)。
かつては死滅回遊魚としての遭遇でしたが、今ではすっかりロコ魚化し普通に繁殖しています。
因みに繁殖行動は夜に行われるので、これを見るには夏の時季にナイトダイビングで狙う必要があります。
サンゴイソギンチャクに沢山付いているミツボシクロスズメダイ🐟
クマノミにスポットが当てられる事が多いサンゴイソギンチャクですが、敢えてのミツボシクロスズメダイ、とっても愛らしいですね。
因みに、クマノミは成魚になってもイソギンチャクで暮らしそこで繁殖もしますが、ミツボシクロスズメダイは成魚になるとそれでイソギンチャク生活終了となり離れていきます。
ほぼほぼ成魚でしょって位に大きくなった個体までは見る事はあるものの、白点3つとも全部なくなるステージまでは見させて貰えないのは、そういうのも関係しています。
言わずと知れた超普通種ダテハゼ属のダテハゼ🐟
そして、こっちの海で唯一普通に見られるサンカクハゼ属のセホシサンカクハゼです🐟
セホシサンカクハゼは三角形をした第一背鰭の前方に黒色垂線、後方に黒色斑があるのが特徴です。
尾鰭の付け根に三角形の黒色斑があります。
この二つの三角形に惑わされそうですが、それらではなく、ボディの断面が三角形なのがサンカクハゼの名前の由来となります。
甲殻類からも普通種を一つ、
オトヒメエビです🐟
伊豆の超普通種ですが、とっても派手で綺麗なエビなので、ふと目が行っちゃいますよね。
実はクリーニングシュリンプでもあります。
無脊椎動物からの興趣深い遭遇は、
ニンジンヒカリウミウシ🐚
3対の発光瘤が刺激を与えると綺麗に光る興趣深いウミウシです。
赤みの強いものからくすんだ茶色のものまで体色に幅がある種ですが、ニンジンの名前に頷ける分かり易く人参カラーの綺麗な個体だったのも良かったですよね。
死滅回遊魚からの嬉しい遭遇はベラ科ススキベラ属のホクトベラ🐟
同じく死滅回遊魚の同属クロフチススキベラは最近では♂相遭遇からハレム遭遇まですっかりこっちの海に馴染んでいますが、このホクトベラはまだまだレア死滅です。
毎年秋になるとあちこちで見られるアマミスズメダイ🐟
越冬個体も毎年普通に見られる種です。
水温が下がってきて数は減りましたが、残っている個体は成魚まであと少しの立派な若魚が殆どですね。
シロタスキベラは、幼魚期の個体は縦帯が綺麗な魚ですが、成魚化する中で横帯の魚に変わっていきます🐟
この個体も大分育ってはきましたが、まだ模様は幼魚相ですね。
西伊豆では少ないのに東伊豆では多く見掛ける死滅回遊魚です。
という訳で本日は、東伊豆・八幡野海中世界のMEMBER'S PHOTO GALLERY①でした。
明日の②はどんな写真が並ぶか楽しみですね。
先行報告~ボート&ビーチで冬の海満喫・東伊豆・八幡野 2024.02.04
ススキベラ属のレア死滅、ホクトベラです🐟
黒い体地色に小白斑が入り、尾鰭が黄色と言えばクロフチススキベラ。
背鰭と臀鰭の後部に眼状斑が入り、吻部が白いと言えばムシベラ。
同じススキベラ属のこの2種を足して2で割ったみたいな、実に興趣深い魚です。
クロフチススキベラと違い黄色い尾鰭の後縁は黒じゃなく無色透明です。
沢山いた死滅回遊魚も随分減ってきましたが、こういうレア死滅がまだ生き伸びていたのは、嬉しかったですね。
八幡野ビーチと言えばこの魚でしょう、
ハゼ科ダテハゼ属のクビアカハゼです🐟
東伊豆・伊豆海洋公園や八幡野では偶に見られますが、他ポイントでは結構レアな人気ハゼです。
ダテハゼがイッパイいるエリアに混ざっているのですが、ダテハゼよりも帯の赤み強く、パッと見でもこの帯が太くて立派なので、一度しっかり認識すればもう見間違う事はありません。
ボートポイントではカワビシャ科のテングダイ🐟
ボートダイビングでは1stイサキ根、2ndサザエ根で潜りました。
オシャレハナダイの成魚や、成魚化しつつある黒模様の入ったゲッコウスズメダイ等、激レア種との衝撃的遭遇もありましたが、残念ながら写真はナシです。
皆さんからの写真で綴るMEMBER'S PHOTO GALLERYでの登場を期待しましょう。
水温が下がって来るとベテランダイバーは、死滅回遊魚一本槍の視点ではなく、無脊椎動物との遭遇を加味した視点に徐々にシフトしていきます。
こちらは軟体類からニンジンヒカリウミウシ🐚
過去一大きく育った個体でした。
このウミウシ、実は泳ぐウミウシなんですが、そればかりか刺激を受けると発光するというとても興趣深いウミウシなんですよね。
秋という季節が派手で賑やかだからこそ、冬の海への変化は分かり易く、明らかに目に見えた形で海中世界の冬は訪れます。
海中環境の変化が取り沙汰されるようになって随分経ちますが、それでも季節は巡ってゆきます。
巡る四季を感じ十二分に満喫するには、当然ながらナリッジスキルの充足が不可欠となりますが、今年もまた海中世界の冬景色を脳裡に焼き付けていきたいですね。
レアハナダイ~マダラハナダイ
ハナダイ科イッテンサクラダイ属の人気種、マダラハナダイです🐟
超人気グループであるハナダイ科魚類の中でも取り分け人気の高い有名種の一つなので、この魚との遭遇に焦がれるダイバーはとても多いです。
特筆すべきはやはりこの作り物のような色目でしょうね。
体地色はピンク色で、ボディには不定形斑、頭部には斜帯で、黄褐色の模様が入ります。
色目の美しさも然る事ながら、
この魚の魅力として挙げられるもう一つが、この鰭フォルムです。
背鰭の棘条部の前半(1~3本目)が長く伸びるハナダイは多いですが、マダラハナダイは棘条部は特別長くは伸長せず、その後ろから始まる軟条部の前半(1~6本目)が極端に伸長するんですよね。
この背鰭フォルムはマダラハナダイのみならずイッテンサクラダイ属魚類全般に見られる傾向ですが、稀に浅場に上がって来る個体が話題となるマダラハナダイと違い、イッテンサクラダイを初めとした他の同属魚はスキューバダイビングでの遭遇はかなり難しいです。
憧れのイッテンサクラダイ、出会ってみたいですねぇ。
深場に棲むハナダイなので、当然ながらライトの光を嫌います。
ライトを当てて遭遇を楽しもうとした瞬間この有り様、穴の中に入っちゃいました。
マダラハナダイは岩の隙間や亀裂に直ぐ隠れられるようなポジションにいる事が殆どなので、油断をするとこうなります。
深場のハナダイとの遭遇を満喫出来るようになるには、ノーライトでもしっかり存在を認識出来るだけの目を先ずは養わなければいけませんね。
諸々綴り…~2024.01.28 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら④
ウナギ目ウツボ科ウツボ属のtheウツボ🐟
伊豆の筆頭普通種の一つで、何処に行っても必ずいる魚と言えばコレってレベルの超の付く普通種ですね。
今日は普通種特集という事で、この魚から紹介です。
白みの強い個体と黒みの強い個体が二匹並んで、ぴったり身を添わせていました。
繁殖期は夏ですが、今の時季でもこんな仲良しシーンを見る事は出来ます。
同じくウツボ科からは、
コケウツボです🐟
theウツボとよく似ていますが、両顎が湾曲していて完全に閉じられない種なので、口を閉じてもギザギザの歯の並びが外から見えるウツボです。
そのせいで矢鱈と厳つく見えますが、所詮ウツボなので普通に臆病です。
theウツボやトラウツボ程ではありませんが、これも普通種です。
久々にレアウツボにも出会いたいですねぇ。
ハタ科の普通種と言えば、アカハタとこのオオモンハタですね🐟
成魚と違って幼魚期は赤茶けた色をしています。
派手色が混ざらないのでパッと目は惹きませんが、背鰭を立てたハタ科幼魚はそのフォルムが愛らしいですね。
タカノハダイ科タカノハダイ属のタカノハダイ幼魚🐟
日本産タカノハダイ科魚類は、ミギマキとユウダチタカノハとこのタカノハダイ、3種のみです。
成魚は年中どこでも見掛ける普通種ですが、幼魚はこれからの時季よく見掛けるようになっていく春の風物詩的存在です。
シーズンにはまだ少し早いですが、既にメタリックボディ期を過ぎた背鰭に眼状斑のあるステージのタカノハダイ幼魚がもういました。
横帯がまだ背部までしかなく腹部に届いていない、ぷっくりお腹のメタリックボディ期幼魚に、今年も早く出会いたいですね。
奇抜なフォルムで有名なマツカサウオですが、普通種な上に黄色フィッシュで誰でも直ぐ見付けられるので、遭遇機会はとても多いです🐟
成魚になると薄くなる体色の黄色が幼魚期は濃いので、幼魚であればそれなりに人気もありますね。
普通種特集の最後はハゼ科。
共生ハゼからはヤツシハゼ属のクサハゼ🐟
砂泥域にハゼ穴がポコポコ沢山開いていますが、その殆どがこのハゼの巣穴です。
ニセオニテッポウエビが掘った巣穴なんですが、ニセオニテッポウエビはとても敏感なので、クサハゼとの共生シーンの撮影は中々難しいです。
あまりにも沢山居過ぎて、何度か見るとスルーの対象でしかなくなってしまうクサハゼですが、ニセオニテッポウエビとの共生シーンを押さえたくてつい目が行ってしまうんですよね。
今回も残念ながらクサハゼのみです。
共生ハゼではないハゼからは、
クツワハゼ属のホシノハゼ🐟
基本単独で暮らすハゼですが、初夏の頃からの繁殖期になると♀♂揃いの姿が見られるようになります。
普段は地味ハゼですが、求愛や闘争等の際に見られる興奮色を発した個体はとても派手になるので必見です。
という訳で本日は、目を向けない人も多い普通種達を敢えてクローズアップして、諸々綴ってみました。
諸々綴り…~2024.01.28 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら③
ハナダイ科ホカケハナダイ属を一属一種で成す貴重種ホカケハナダイの♂個体です🐟
婚姻色から褪める過程で発するピンクの体色はいつ見ても本当綺麗ですねぇ。
2022年冬の大量発生から見ると流石に大分数は減りましたが、それでもまだ沢山のホカケハナダイが大瀬崎・岬の先端では見られます
今回最も目を惹いたのが、
恐らくニシキブダイであろうこの個体🐟
体側の格子模様はかなり小さな幼魚の内だけとは言え、それどころか、顔に入る黄色部も筋模様も一切なくなり、前半身から濃い赤褐色に完全に染まっていて、鰭以外なんの模様もない見た事がないステージでした。
尾鰭も後縁から黄褐色に染まっていました。
体側に小斑点は全く出ていませんが、♀成魚化への過程のステージなんでしょうかねぇ。
キンチャクダイ科アブラヤッコ属のソメワケヤッコ🐟
ここ数年毎年滅茶苦茶個体数が多かったですが、今年はそこまで多くはないですね。
まぁ、大した数はいない年でも、直ぐ目に付くド派手な体色のせいで物凄くよくいる魚な印象にはなるんですが。
ベラ科イトヒキベラ属からはイトヒキベラ属の一種です🐟
腹部に黄色斑があるクロヘリイトヒキベラは、theクロヘリイトヒキベラと別種である可能性を示唆されてからはクロヘリイトヒキベラ近似種と呼ばれています。
現時点では学術的にまだ未同定の段階なので、イトヒキベラ.spという扱いになります。
死滅回遊魚には、年によって矢鱈と多い『当たり年』と呼ばれるものがありますが、
今年は何と言ってもこの魚ですね。
ハタ科バラハタ属のバラハタです🐟
大瀬崎・岬の先端を泳いでいるとあちこちで見掛けます。
かつてはバラハタが出たと言って喜ばれるようなレア死滅でしたが、今は潜れば探さずとも必ず遭遇出来ます。
当たり年と呼ぶ域を超えてすっかりロコ魚化した死滅回遊魚と言えば、
同じくハタ科から、ユカタハタ属のアザハタです🐟
大瀬崎・岬の先端で潜っていると、所構わず本当何処にでもいます。
遠目で見ると真っ黒な地味魚っぽいですが、近付いてよくよく見ると実は、深い濃紺色のボディと尾鰭後縁を縁取る白が印象的でシックな美しさを持つ魚だったりします。
という訳で本日は、大瀬崎・岬の先端での艶やかな遭遇を紹介してみました。
諸々綴り…~2024.01.28 西伊豆・大瀬崎 海中世界報告がてら②
スズメダイ科スズメダイ属、2019年に新種登録されたばかりの魚、ゲッコウスズメダイの幼魚です🐟
目の上のブルーのアイシャドウがとっても愛らしいですね。
日本の固有種ですが生息水深が深い為、スキューバダイビングで見るのは難しい種で、偶に深度を上げて来た個体にポロっと出会える程度。
今回のこの個体のように水深20mそこそこで出会える事は極稀です。
サザエ殻で暮らす定番人気種ミジンベニハゼと一緒にいました🐟
それぞれの生息域も生息水深も合わないので、中々ないコラボですね。
因みに、いつでもいる普通種なので単体であればスルーされがちのミジンベニハゼですが、♀から♂、そして♂から♀、実は双方向性の性転換をする興趣深い魚なんですよね。
モンガラカワハギ科オキハギ属のオキハギです🐟
もう1年近く大瀬崎・前浜に棲み付いている大きな個体ですが、中々じっくり見る機会がなかったので、今回はのんびりコイツを観察してみました。
すると、
何故だか突然、お腹を上にしてゆっくり泳ぎ出しました。
マトウダイ等の側扁した魚が体側を上にして横向きに泳ぐ姿はよく見掛けますが、完全にお腹が上の逆立ち状態。
実に変てこりんなこの行動、何だったんでしょうね。
ヨウジウオ科タツノオトシゴ属のタカクラタツ🐟
頂冠部は低く、顎の棘が後ろ向きに鉤状になっているのが特徴となる人気グループタツノオトシゴの仲間です。
それなりに育っていた上に体色も明るい個体だったんですが、背部に3つ並ぶタカクラタツならではの黒色斑は見られない個体でした。
絶滅危惧II類 (VU)としてレッドリストに名前の挙がる貴重種ですが、西伊豆・大瀬崎ではそれなりの頻度で出現してくれます。
ミジンベニハゼの項で性転換の話が出ましたが、これも雌性先熟の性転換をする魚ですね、ゴンベ科ヒメゴンベです🐟
以前はやや南方気味の印象の魚でしたが、今ではロコ魚ミナミゴンベ等よりも遥かに遭遇頻度の多い普通種です。
本来は死滅回遊魚だった筈が今ではロコ魚化して普通種と言えば、
このハゼ科クロイトハゼでしょう🐟
大来な定着個体からまだ小さな幼魚まで、ここあそこにイッパイいます。
群れる事はなく、性的に未成熟な内から常に番で行動するという、とても不思議なハゼです。
という訳で本日は、日曜日の大瀬崎・前浜海中世界での遭遇に絡めて諸々綴ってみました。