タカクラタツ~ヨウジウオ科タツノオトシゴ属
絶滅危惧種のレッドリストでオオウミウマ同様に危急種(VU)指定されているのがこのタカクラタツです🐟
鱗が変化した環状の硬い甲板が全身を覆っているのが目で見てよく分かるボディの作りもオオウミウマとよく似ていますね。
全長20㎝を超える大型種です。
頂冠は一応オオウミウマと同じく斜め後ろ向きで存在してはいるんですが、限りなく低くパッと見では頂冠の存在自体がそもそも不明瞭です。
そして、顎の棘が後ろ向きに鉤状に生えているのが何より特徴的ですね。
背部に黒色斑が3つ並ぶのも特徴の一つなのですが、これは目立たない個体も多いです。
この写真の個体だと、3黒斑の入り方が分り易いですね。
こちらは表層を遊泳中だった5㎝位のタカクラタツ幼魚。
この日はそういう潮だったようで、1日で計7匹もこんな風に遊泳中のタカクラタツ幼魚と出会いました。
タツノオトシゴ然としたフォルムで人気の高いタカクラタツ。
オオウミウマ程いつでもポンポンいる魚ではありませんが、それなりの頻度では現状出会える種なので、ちょっと意識してみて下さいね。
オオウミウマ~ヨウジウオ科タツノオトシゴ属
今、タツノオトシゴの仲間の中で最も簡単に出会えるのがこの種、オオウミウマです🐟
絶滅危惧種を記したレッドリストでも危急種(VU)となっているような貴重生物なんですが、スキューバダイビングではむしろ遭遇の多い種で、各ポイントでコンスタントに出現し、ネタモノとして重宝されています。
タツノオトシゴ属の最大種で、育つと30㎝程になります。
枯れ枝に尾部を巻き付けて体を安定させじっとしているせいで、枝の一部だと思われてしまったようですね。
お腹にトウヨウコシオリエビがピトっと乗っかっています。
まぁとは言え、オオウミウマは黄色~褐色でカラーバリエーションにそんなに幅がある訳ではなく、その上大きいので、擬態によって捜索に手こずるって事はなく、泳いでいて偶然目に入ってのサプライズ遭遇もちょくちょくあります。
さて、オオウミウマの特徴ですが、
頂冠がハナタツやタツノオトシゴのように上向きに伸びるではなく、おでこのラインそのまま斜め後ろ向きに伸びています。
吻部は長く、且つ太いです。
こちらはオオウミウマ幼魚🐟
マメタワラの丸い気泡よりも遥かに細い事で、これが極小幼魚であるのが分かりますね。
オオウミウマは最も見付けるのが簡単なタツノオトシゴですが、とは言えこのサイズの個体となると流石にホイホイとは見付かりませんよね。
ハナタツが激減した事で、タツノオトシゴ属のネタモノとしては最も登場機会の多いオオウミウマ。
こちらは減ってしまわないといいですねぇ。
タツノオトシゴ~ヨウジウオ科タツノオトシゴ属
一口にタツノオトシゴと言っても、タツノオトシゴ属には色んな魚がいますが、タツノオトシゴ属タツノオトシゴとはこんな魚です🐟
Hippocampus coronatusという学名のこの種が、タツノオトシゴ属(Hippocampus)のタイプ種となっています。
(タイプ種とは、平たく言えばそのグループの代表として指定された種の事です)
因みに、Hippocampusという属名はHippos(馬)Campos(海の怪物)。
ギリシャ神話の海神ポセイドンが乗る馬車を引く馬から来た名前です。
日本でも龍の落とし子ではなく海馬と呼ぶ地域もあります。
英名もseahorseです。
洋の東西を問わず、この頭部の形状は馬に見えるって事なんでしょうね。
theタツノオトシゴは、頂冠(頭の上の出っ張り)が著しく高く、先端がやや後ろ向きになっているのが特徴となる種です。
背鰭基底の両サイドからは、よく目立つ棘が横向きに生えています。
特に少ない種という訳ではないのですが、生息エリアが浅場の藻場ととても限定的な種なので、スキューバダイビングで出会えるポイントは案外限られているんですよね。
見事に擬態中の個体。
こうして写真で見ても何処にどういるか、パッと分からない方も多いんじゃないでしょうか。
環境に隠蔽的に擬態する種なので体色は様々ですが、浅場の藻場での擬態なので基本的には地味色のものが多いです。
一般的にはタツノオトシゴと言うとHippocampus(タツノオトシゴ属)の魚達の総称ですが、種名で言えば他はタツノオトシゴではなく、この魚こそがタツノオトシゴそのものなんですよね。
ハナタツ~ヨウジウオ科タツノオトシゴ属
ダイバーならずともその名を知るところの有名魚タツノオトシゴ。
タツノオトシゴ属にはそのものタツノオトシゴという種名の魚もいるのですが、それは浅い藻場に棲む地味魚。
一般にタツノオトシゴと人が言う時には、タツノオトシゴ属魚類の総称を指します。
この写真のタツノオトシゴは、ヨウジウオ科タツノオトシゴ属のハナタツです🐟
頂冠がそれなりに高く上向きに真っ直ぐ伸びているのがハナタツの特徴です。
写真の個体はその♀個体。
頂冠や眼上棘から伸びる皮弁が長くて立派なのは、♀に多い特徴となります。
♀個体は抱卵していなくても腹部の下側が出っ張っていて丸みがあり、しばしばイラスト化されるようなタツノオトシゴ然としたフォルムをしているので非常に人気は高いです。
ですが、温帯適応種でかつては伊豆・房総の海の普通種だったこのハナタツ、近年減少傾向にあり、伊豆の主要ダイビングポイントでは何年間も出現ナシとなっているところも多いんですよね。
こちらがハナタツの♂個体。
♀のような長い皮弁は基本的にはなく、お腹の丸みもないので至極シンプルですね。
抱卵中であれば♂もお腹は膨らみますが、下側が出っ張る♀と違い上っ側が出っ張るという特徴があります。
生息環境に応じて変わるので体色のバリエーションは様々ですが、赤・黄・白等、綺麗な色のものが多いのもハナタツの特徴です。
こちらが抱卵中の♂個体です。
タツノオトシゴ属の魚達には一風変わった特徴があり、♂が育児嚢を持っています。
求愛・産卵行動の後♀が♂のお腹の育児嚢に卵を産み渡すので、お腹パンパンの抱卵個体に出会ったら、他の魚達とは逆で基本的にそれは♀ではなく、♂個体となります。
有精卵を♂が育卵し、やがて稚魚を放仔するので、抱卵中の♂のお腹はパンパンで真ん丸になります。
パンパン具合が分かり易いように、お腹を上から撮った写真です。
この個体は興趣深いですね。
長くて立派な皮弁があり、♀個体然とした見掛けですが、お腹は張り裂けそうな位パンパンになっている♂です。
これを見ると皮弁の有無だけで♂♀を完全には判断出来ない事が分かりますね。
こちらは幼魚。
まだ小さな♂個体です。
タツの仲間との遭遇においては、大きく泳いで逃げられるって事にはまずなりませんが、ゆらゆらと安定しない姿勢の為、背中から撮影の写真になりがちです。
タツノオトシゴ然としたフォルムで写真に収めるには、ゆらゆらの動きを見極めてシャッターを切る必要があります。
近年こっちの海での遭遇が減っているタツノオトシゴ属のかつての普通種ハナタツ。
今後また数を戻していくのか、動向を見守りたいですね。