フグ目~フグ科の魚達③ トラフグ属の名古屋フグ
いつかのライトトラップで遭遇したフグ科の稚仔魚です🐟
極端に後ろに寄った背鰭と臀鰭が特徴的で、とても興趣深いフォルムですよね。
ところでなんですが・・・
これまで色んなフグ科の魚を見てきましたが、一般的な魚類と違って何かが欠けていると思いませんか。
はい、お分かりですね。
実はフグ科の魚達には腹鰭が無いんです。
通常、魚の腹鰭は左右一対の二枚。
ですが、フグ目の魚の腹鰭は退化傾向にあるんですよね。
フグ目の中でも進化の先にあるもの程その傾向は強くなり、モンガラカワハギ科やカワハギ科は腰骨が癒合して単一の腹鰭になっています。
更に進化の先にあるフグ科以降のグループでは完全に消失し、腹鰭はなくなってしまうんですよね。
形態的特徴で見る事が出来る進化の過程、実に興趣深いですね。
と言う訳で、本日はクサフグ・ショウサイフグ以外のトラフグ属の魚達を紹介してみたいと思います。
アカメフグ🐟
その名の通り目が赤いフグですが、水中での遭遇印象は❝金色のフグ❞って感じでとっても美しいフグなんですよね。
褐色の背部に大きめの斑が入るヒガンフグ🐟
体表に棘は無いのですが、疣状の小突起が分かり易く密集しているので、それが何よりの判別ポイントになります。
「食べると彼岸に渡る=死んでしまう」から彼岸フグ。
猛毒テトロドトキシンを持つくせして美味しいフグ科の魚らしい名前ですよね。
背部の白斑が比較的大きめで特徴的なのが、コモンフグ🐟
同じく背部に白斑が入るクサフグと小さい個体だと似て見えますが、眼の下にも白斑があるので、そこで見分けが付きます。
クサフグや今日紹介したフグ達には引っ包めて興趣深い異名があります。
その名は❝名古屋フグ❞。
・・・なんですが、何故❝名古屋フグ❞と呼ばれるかお分かりでしょうか。
最後に綴る答を見ずに、考えて正解が浮かんだ方。
自身の頭の柔らかさを褒めてあげて下さい。
と言う訳で、本日はまだ紹介していなかった❝名古屋フグ❞達を紹介してみました。
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【ヒント】
猛毒テトロドトキシンを持つこれらの魚達、食べたら身の終わりです。
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このヒントの時点でお分かりになられた方もきっといるでしょうね。
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【正解】
食べたら身の終わり⇒食べたら美濃尾張
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昔の『美濃・尾張』⇒今の名古屋ら辺
って事で❝名古屋フグ❞になったんだそうです。
落語好きな方だったんでしょうかね、最初にこう呼んだ人は。
中々興趣深いひねりの利いた異名ですねぇ。
フグ目~フグ科の魚達③ トラフグ属からクサフグとショウサイフグ
砂に潜るクサフグ、浅場で見掛ける光景です🐟
中々興趣深いシーンですが、これはコイツの気紛れでもなんでもなく、❝潜砂行動❞というフグ科の魚ならではの生態シーンなんです。
下顎や腹部で砂を掻き分けるようにして先ずは半身を砂に沈め、それから尾鰭を使って背中から頭にまで砂を掛けていきます。
頭部だけを砂から出したこの❝潜砂❞の状態で寛ぐフグ、とっても愛らしいので遭遇がまだの方は是非意識してみて下さいね。
こちらは幼魚期のクサフグ。
フグ目の魚には色々といますが、一般に言うところの❝フグ❞という言葉でイメージするフォルムと言えば、やっぱりフグ目フグ科トラフグ属の魚達のこのフォルムですよね。
初夏の大潮が産卵光景との遭遇チャンス。
超浅の波打ち際に大群で押し寄せて産卵します。
♀が産卵したところに♂が一斉に放精する❝集団放精❞と言われるタイプの産卵なんですが、これに出会すと波打ち際が白濁するって程でとても荘厳な光景なんです。
いつかの必見シーンの一つとして脳内にストックしておいて損はないですよ。
因みに、この産卵は1時間近くも続きます。
トラフグ属の魚の中で最も遭遇が多いのがこのクサフグ。
小白点が散在する背部の暗緑褐色、これが草色って事でクサフグというこの名は付きました。
胸鰭上部によく目立つ黒色斑がありますよね、これが判別ポイントになります。
このクサフグのそっくりさんに、
ショウサイフグがいます🐟
ボディ上部に不定形の斑が散在し、パッと見だとクサフグにとてもよく似ていますが、胸鰭上部に黒色斑がありません。
なんですが・・・
胸鰭後方付け根に比較的大きな斑紋が集まっている部分がある為、それをクサフグの黒色斑と勘違いしてしまいがちなので、そこは注意が必要です。
因みに、とても似た見てくれで臀鰭が黄色いものを稀に見掛けますが、ソイツはショウサイフグとゴマフグのハイブリッド個体です。
因みにクサフグでも名前の由来を綴ったので、このショウサイフグも由来を紹介しておきましょう。
ショウサイを漢字で書くと『潮騒』。
シオサイが発音し易いように拗音化してショウサイなんですね。
背中の模様が潮騒を連想させるからこの名が付いたようです。
実に風情ある命名ですね。
伊豆では結構珍しめのフグなんですが、房総で潜ると腐る程います。
クサフグよりも大きくなるので、育った個体ならクサフグと見誤る事はありません。
猛毒テトロドトキシンを持つフグ科の魚の中でも食用種が多いトラフグ属。
今日はその中から出会いの多い、クサフグとショウサイフグを紹介してみました。
フグ目~フグ科の魚達② モヨウフグ属
「か、顔が浮かんでる⁉」
・・・みたいな感じですが、これで全身です。
黄色いドット模様が入った真ん丸の真っ黒ボディ、これを目の前で見た時の可愛いらしさと言ったらホント半端なかったですよ。
コイツの名前はミゾレフグ🐟
フグ目フグ科モヨウフグ属の人気魚です。
中空にいながらにしてコロコロと転がるかのような、そんな不器用な動きが、愛らしさを尚の事引き立てていました。
死滅回遊型の南方種ですが来訪は極稀なので、この遭遇は嬉しかったですね。
モヨウフグ属の基本種となるのがこの魚、モヨウフグです🐟
育つと1m近くにまでなる大型種ですが、幼魚期は全く模様が違い、オレンジ色に黒斜帯が沢山入る奇抜カラーの魚なんですよね。
南方種ながら、この個体は更なる越冬を目指して随分頑張っていた個体です。
後半は寒さに凍えながらいつも水底でじっとしていました。
寒さに負け遠い世界に旅立ってしまったのか、それとも温かい水を求めて遠い海へと旅立って今も何処かで元気にしているのか。
本当のところは誰にも分かりませんが、死滅回遊魚としての遭遇だからこそのドラマがあるんですよね、こういう出会いには。
もう何年も前に西伊豆・大瀬崎に現れたスジモヨウフグの幼魚です🐟
「今年、結構育った若魚が同じ大瀬崎の海で出現していたけど、そんなにポコポコ現れる事のないレア死滅だし、もしかしたらこの個体が人知れず育ったとかだったりしないのかなぁ・・・」
答が出る訳でもないそんな四方山事をあれこれ考えて楽しめるのも、海中世界の興趣深いところですよね。
モヨウフグ属で最も遭遇が多いのが、
このサザナミフグです🐟
とは言っても、この魚ですら昔は充分レア死滅だったので、今レアと綴っているものも、何年か後にはちょくちょく見られます、なんて綴っているのかもしれませんね。
基本南方種のみで構成されるグループながら、近年こっちの海での遭遇も増えてきたフグ科モヨウフグ属を、本日は特集してみました。
フグ目~フグ科の魚達① キタマクラ属
クリックリのお目々がとってもチャーミングなコイツの名前はキタマクラ🐟
フグ目フグ科キタマクラ属の魚で、その幼魚です。
フグと名は付くけれど実はフグ科ではない、そんな魚達をこれまで紹介してきましたが・・・
フグと言えばやっぱりこのグループって事で、遂にフグ科の魚達が登場です。
キタマクラ属の魚達は、他のフグ科の魚達と違い全体に丸みを帯びるではなく
鼻先口許がしゅっと前に伸びたような見てくれで、英名ではシャープノーズパファーと呼ばれます。
フグ科とのこの見てくれの違いから、かつてはフグ科ではなく、キタマクラ科として別グループに分けられていました。
キタマクラ科キタマクラ属からフグ科キタマクラ属となったこのグループ、その基本種であるこのキタマクラは、背部は褐色、腹部は白のツートンカラー。
尾柄部から鰓の切れ込みまで伸びるおぼろな暗色二縦帯が特徴となる魚です。
♂相個体はこんな感じ。
いかにも『毒魚』って感じで、とっても毒々しいです。
フグ科の魚と言えば内臓・肝に猛毒テトロドトキシンが含まれる事で有名ですが、このキタマクラ属の魚達は体表から出る粘液にもその毒が含まれています。
なので、捌いて食べる事で初めて危険となる他のフグ科の魚達と違い、このキタマクラは包丁を入れてもいない個体を触った手を、目許や口許に持っていくだけでもNGとなります。
そんなところからこの『北枕』という興趣深い和名は付いたのでしょうね。
老成した♂の婚姻色はこんな感じ。
綺麗と言えば綺麗な模様とも取れますが、その毒々しさたるや半端ないですね。
性的二形(♀♂で見てくれが違う)なので、このようなシーンと遭遇した時、それが求愛の行動であるって事が見て直ぐに分かります。
このキタマクラは普通種中の普通種なので、いつ潜っても必ず遭遇出来るって位何処にでもいます。
それもあって素通りされがちな魚ではありますが、だからこそそういう生態シーンとの遭遇機会にも恵まれ易いんですよね。
普通種だけれど普通じゃない、そんな珍しい遭遇って事で言うとコチラ⇩
キタマクラの❝白変種(リューシスティック)❞です🐟
見慣れたこの形が純白の塊となってプカプカしている姿はとっても神々しく、自然界の神秘を感じましたね。
その言葉が有名過ぎる為、白い個体に出会うと何でもかんでも❝アルビノ❞と言いがちですが、アルビノとは遺伝情報としてメラニン(黒色色素)に関するものを持たないが故にメラニンを作れず、それで体色(瞳孔を含む)が白くなったものの事を言います。
メラニンに関する色素の遺伝情報をちゃんと持ってはいるものの、体色としてそれが発現していないものは、あくまでアルビノではなく、白変種リューシです。
因みに・・・
海中世界では、模様が全くないではないけれど部分的に真っ白、全部ではなくほぼ真っ白、という個体も偶に見掛けます。
白変種リューシとは、模様が一つも無い真っ白な体色の個体の事を指して言うので、一部にでも模様があればそれはリューシではありません。
このように真っ白な部分と模様がある部分が混在している個体の事は、❝パイボール❞と呼びます。
これからのキャリアの中で、色んな種の綺麗な白い個体と出会う事があると思います。
そんな時には❝アルビノ❞か❝リューシスティック❞か❝パイボール❞か、判断してみて下さいね。
キタマクラ属の魚でキタマクラに次いで遭遇が多いのは、
このハナキンチャクフグでしょう🐟
死滅回遊型の南方種ではありますが、越冬個体も普通に見られます。
オレンジに縁取られた鞍状斑がこの魚の特徴となります。
そっくりさんのシマキンチャクフグにはこのオレンジ色の縁取りがなく黄色部分がよく目立ちます。
ですが、そちらの出現は滅茶苦茶稀で、遭遇はとても貴重なので、そのベイツ型擬態魚ノコギリハギと上手く見分けながら、いつかの遭遇に是非とも期待して下さいね。
キタマクラ属の魚は色々といるのですが、基本南方種に多い魚なので、ここからは全て貴重遭遇です。
ゴマフキンチャクフグ🐟
アラレキンチャクフグ🐟
キタマクラ属の魚達はキタマクラ以外のものには、ほぼほぼ『◯◯キンチャクフグ』という語尾になる和名が付いています。
いずれもフォルムに大きな差はないのですが模様は様々、エキセントリックなデザインなものが多いので、こっちの海でのレア度とその美しさが相まって、出現すると大きな話題になります。
死滅回遊魚シーズンの楽しみの一つなので、皆さんも是非、これからのキャリアの中での◯◯キンチャクフグとの遭遇、御期待下さいね。