【移住者インタビュー】仕事もプライベートも想像以上に楽しくて、面白い南島原市で輝く移住者たちの日々 | TURNS(ターンズ)|移住・地方創生・地域活性化

【移住者インタビュー】
仕事もプライベートも想像以上に楽しくて、面白い
南島原市で輝く移住者たちの日々

青く広がる海と緑の山々に抱かれた長崎県南島原市。自然豊かなこの地域で出会った2人の移住者はいずれも30代。Uターン・Iターンと背景は異なりますが、南島原へ移り住む前からは想像できないほど、面白い“今”があると感じているようです。暮らしも仕事もいきいきと満喫する2人に、それぞれの視点から南島原の魅力についてお話を伺いました。

Part 1|五味 紗央理さん
先端のITスキルも、昔ながらの人づきあいも。
南島原は都会とは違う面白さに溢れている

福岡県福岡市で生まれ育った五味紗央理さん。福岡市の大学を卒業後、建築資材メーカーでの営業事務職を経て、2019年3月に南島原市へ。市役所勤務を経て、現在は地域商社「ミナサポ」のメンバーとして、小中学校でのICT支援員をはじめ、イベントの企画・運営から高齢者向けのスマホ教室まで、地域と関わるさまざまな仕事に携わっている。西有家町の旧長野小学校(廃校)を活用したミナサポの事業所を訪ねると、五味さんが笑顔で迎えてくれた。

地域イベントや仕事を通して、どんどん広がる人の輪

移住した当初、五味さんが抱いていた南島原の印象は「自然が多い」という漠然としたもので、地域性や地元の人との関わり方がつかめず、困惑したことも多かったという。

「地域との関わり方は移住者が最初に苦労するところだと思います。そこで、南島原を知るなら市役所に入るのが一番早いと思って、会計年度任用職員に応募しました」

南島原市役所の教育委員会・生涯学習課に配属された五味さん。そこから一気に人脈が広がった。

「公民館講座や小中学生向けの事業の企画のほか、原城マラソン大会の運営、東京オリンピックの聖火リレー出発式にも携わりました。本当に業務は幅広く、いろいろな年代の方と接する機会も増えました」

前職で身についたPCの知識とスキルもおおいに役立ったという。

「私はOffice系が得意だったんですが、福岡の時はそれが特別なことと思っていなくて。でも、南島原に来てからは今までのスキルをとても重宝してもらえたんです。都会では埋もれてしまう能⼒も、ここに来てからは活躍できる場が増えたように思います」

職員の上下関係なくお互いに助け合い、支えあう雰囲気の中、人の輪もどんどん広がっていった。

やがてコロナ禍が落ち着いたころ、五味さんに転機が訪れる。

「前々から興味があったITの仕事をしたいと思って。福岡に戻ろうかとも考えましたが、南島原でIT事業を展開している地域商社ミナサポの求人があったので、これだ!と思って挑戦しました。それから転職が決まって、市役所で『このまま南島原に残って働きます』って言うと、みなさん喜んでくださって、応援してくれました」

南島原のあたたかな仲間たちにエールをもらって、五味さんは次のステップへ踏み出した。

 

小学生がドローンをプログラミング。南島原の未来を輝かせるIT教育

五味さんが働くミナサポは、南島原の“みんなをサポートする”地域商社。IT×電力×金融×行政がタッグを組み、IT教育・人材育成、産業支援などさまざまな事業を展開している。

五味さんが担当している業務のひとつが、小中学校でのICT支援だ。全国の小中学生が1人1台のタブレット端末を持って学習に取り組む現在、生徒はもちろん教員に対するテクニカルサポートも実施。南島原市内に23校ある小中学校で、ICT支援員として毎日2校に赴き、授業支援をメインにIT会社としてのノウハウを活かしてプログラミングなどの授業も行っている。特に小学生に人気なのが、ドローンの授業だ。

「子供たちがプログラミングをしてドローンを操作するんです。弊社では2020年からICT支援に先立ってこの授業をスタートしたのですが、当時は他の地域にはない取り組みだった思います。ITの授業はまさに今、学校教育で始まったばかり。ITのスキルがあれば地元にいながら場所にとらわれない働き方ができます。そうすると、『南島原に住み続けたい』という子供たちの選択肢が広がるし、生きる力が身につく。自分が授業で教えていることが、子供たちの将来の一助になることって、すごいことです!」と、五味さんは目を輝かせる。

このほか、ミナサポでは南島原に全国のエンジニアが集結するイベント『ITキャンプ』を開催。

「ITキャンプには地元の大人も子供も参加します。プロと接することで、子供たちがITの道に進んだり、あるいはITを活用して地域の役に立ちたいと考えるかもしれません。ITは面白い、楽しいと興味をもって、子供たち自身の可能性を広げるきっかけになればと思います」

IT教育を小学校から導入している南島原市。都会では順番待ちが出そうな講座やイベントも、南島原の子供たちはまんべんなく学ぶことができる。ITによる人材教育が、人口減少や高齢化、それに伴う人材不足など地域課題をクリアする糸口にもなりそうだ。

空き家のシェアからDIYまで。“初めて”づくしのスローライフ

実は、五味さんは南島原に来てITを学び始めたそう。

「興味はあったもののITは全くの未経験。ミナサポに入りたいと思ってから、ほぼ独学に近い状態で、勉強!勉強!勉強!でした」と、ITの基礎知識が身につく国家試験『ITパスポート』を皮切りに、1年に1個ずつ資格を取得。

「今は個人的に興味があるサイバーセキュリティの講座をオンラインで受講しています。夜3時間もあるんですよ」と、日々の業務をこなしながら、資格試験や講座の勉強にいそしむ五味さん。自分のペースでワークライフバランスが整えられるのも田舎暮らしのメリットだと教えてくれた。

「南島原にいるおかげで自分の時間はしっかり確保できます。毎日、定時になったらすぐ帰宅して(笑)。福岡にいる時は満員電車に揺られてましたが、今は車で海を見ながらゆっくり帰っています」

また、五味さんは、空き家だった一軒家を同じく移住者の友人とシェア。南島原での暮らしは“初めて”づくしだと楽しそうに話してくれた。

「仲の良い友達でも一緒に住むのは無理だと思っていたのに、まさかシェアするなんて(笑)。あと、犬と猫を飼ってるんですけど、以前は動物にさわれなかったんです。今はもう可愛くて、ペットと戯れながら自分の時間をゆっくり。スローライフを満喫しています」


五味さんが暮らすシェアハウス

もうひとつ、五味さんが初挑戦したのがDIYだった。

「都会の賃貸物件は原状回復など細かなルールで成り立っていますが、ここは割とおおらかで。自由に改修できるので、同居人と一緒にDIYを楽しんでます。ネットの動画とか見ながら、壁に色を塗ったり、台所のシンクの扉にシートを貼ったり。最近、犬がいたずらで砂壁に穴を掘るんですが、穴が空いても塞げば良いかって心穏やかでいられます(笑)」

プチリフォームできる物件が多いのも空き家の魅力のひとつ。自分好みにDIYするほど愛着も湧くと話してくれた。

フレンドリーな地元住民との交流が日常をより豊かなものに

五味さんに南島原の一番の魅力を尋ねると、「人」という答えが返ってきた。

「ここに移住して生活している私を、色んな人が助けてくれて、応援してくれています」という五味さんが頼りにしているのが、隣に住んでいるご夫婦。

「お隣さんが猫好きだったのがきっかけで仲良くなったんですけど、今では『南島原の両親です』と周囲に紹介しています(笑)。奥様はよくご飯をお裾分けしてくださって。体調が悪い時もすぐに駆けつけて氷枕や食事を持ってきてくれるんです。旦那様はこれまたなんでもできちゃう元消防士。親しみを込めてお父さんって呼んでます。DIYも手伝ってくれるし、虫やムカデが出たら駆けつけてくれたり。お父さんがいれば百人力です」

福岡に帰省する時は、南島原の友人から『気をつけて行ってきてね』と連絡をもらうことも。人懐っこく温かい南島原の人との交流が五味さんの日常をより豊かなものにしている。

「よく南島原の人は『ここには何もない』なんて言いますけど、私の場合、福岡の実家に戻っても何もすることがないんですよ。南島原ならペットと遊んだり、庭いじりをしたり、人と会ったり、すごく充実しているから」と、意外な逆転現象に五味さん自身もびっくりだという。

「昔は都会でしか暮らせないと思っていたけど、南島原で新しい刺激をいっぱい受けて、人生の幅が広がったように思います。良いご縁がたくさんあって、移住して良かったと思う自分がいる。ここにはプラスしかありません」

五味さんのもうひとつのお気に入りが、自宅の前から一望できる早崎海岸の美しい景色。日差しにきらめく水平線のように、五味さんの人生の幅ものびやかに広がっていく。

 

Part 2|カルローニ なつみさん
美味しいものは人と人をつなげる力がある。
お菓子を通して南島原の魅力を発信!

カルローニなつみさんは、南島原市口之津町出身。地元の高校を卒業後、大学進学を機に福岡へ。卒業後は福岡の家具商社、大分を経て2021年にUターン。その頃、国際交流員として南島原市に赴任したカルローニ・エマヌエーレ・エルコレさん(通称エマさん)と出会い、2024年3月に結婚。実家が営む「本田屋かすてら本舗」の広報兼看板娘として働きながら、コミュニティFMのパーソナリティとしても活躍するなつみさんに話を伺った。

食・人・デザインを軸に、『私にしかできないこと』を

「本田屋かすてら本舗」は大正7年創業の老舗菓子店。お店のドアを開けると、ふわっと焼きたての甘い香りが漂ってきた。

「カステラや丸ぼうろなどの南蛮菓子のほか、ケーキやパイ、和菓子など、個人店なのに5~60種類くらい作っているんですよ」と、笑顔で話すなつみさん。

店にはたえまなくお客さんが訪れ、地元で愛されていることが伝わってくる。なつみさんが南島原にUターンして3年、その経緯を伺ってみた。

「社会に出て、私にしかできない仕事って何だろうって、ずっと模索していました。そこで、興味のあることを片っ端からやろう!と、思い切って会社を辞めて、イタリア料理店に入りました」

飲食業やSNSの運用など色々なことにチャレンジしたが、「どれもピンとこなくて。もう一度、自分のやりたいことを考えた時、共通点として出てきたのが『食』『人』『デザイン』『経営に携わること』でした。その時、ふと思ったのが実家のお菓子屋さんだったんです」

それまでなつみさんは、実家に戻ると家族に迷惑をかけるのではないかという思いもあった。

「家族経営で私が従業員になると人件費が増えるから、外で何らかの仕事を作って家業とつなげた方が良いと思っていました。でも、よく考えると、過疎化や少子化で人口も減っているし、時代に合った売り方で販路を広げたり、付加価値を付けたり、私が力になれることがあるんじゃないかと。地元だけではなく、他のエリアの人たちにもうちのお菓子に目を向けてほしいと思いました」

そこで、なつみさんがまず制作したのがホームページ。オンラインショップを立ち上げるとともに、Instagramを活用して認知度を高め、販路拡大を目指す取り組みをスタート。

「お店の包装紙材も私がイラストを描いたり、デザインしています。あと、うちは販売のみでイートインスペースがないので、他のお店とタイアップして、できたてのお菓子を食べてもらうイベントも気まぐれで開催しています」と、地元と一緒に盛り上がる企画も実施している。

南島原を愛するエマさんと共にふるさとの魅力を再発見

南島原の情報を発信するコミュニティFM「FMひまわり」。なつみさんはゲスト出演をきっかけに、パーソナリティとして毎月1回朝の番組を担当している。

「基本的に番組では、南島原市の情報なら何を話しても良いというスタンスです。うちのお菓子そのものが南島原市の歴史や文化と関わっているので、南蛮菓子にまつわるお話もしていますね。地元の面白い方たちをゲストにお招きして、枠にとらわれず、いろいろなカタチで南島原市の良さを伝えています」

なつみさんがパーソナリティとして心がけているのは、とにかくポジティブな気持ちを発信すること。

「ためになった、元気が出た、お菓子の話を聞いたらお腹がすいたとか(笑)。リスナーさんもタイムリーにメッセージ送ってくれるのが嬉しくて。顔は見えないけど、電波にのって自分の声と気持ちが相手に届いてると実感できます」

ラジオではなつみさん自身が体験した南島原の良さが話題になることも。実は、南島原の魅力を再発見できたのは、ご主人のエマさんの影響が大きいそう。

「私は地元に戻ってからも休日は市外に出てばかりだったんです。長崎市に行ったり、フェリーで熊本に行ったり。でも、エマは南島原が大好きで、市役所勤務だから私より詳しい。色んなイベントに引っ張り出してくれるので、島原半島から一歩も出なくなりました」

ふたりの出会いも地元のイベント。なつみさんが知り合いに誘われて参加した口之津町のオルレ(韓国発祥のトレッキング)で、偶然出会ったのが、南島原に着任したばかりのエマさんだった。国際交流員として南島原にやってきたエマさんは日本語が堪能で、なつみさんともすぐに親しくなったそう。エマさんと一緒に過ごすことで、南島原在住の外国人や英語教師たちとの交友関係も広がった。

「29歳でUターンして、南島原で絶対出会いはない!あと5~6年は独身かなと思ってたけど、まさかイタリア人のエマと出会って、しかも国際結婚するなんて(笑)。どこに出会いがあるかわかりません」と話してくれた。

“食の宝庫”のまちで育ったふたりで楽しむ食の異文化交流

エマさんの出身地はイタリア北部の都市、ボローニャ。赤煉瓦の美しい建造物から“赤い町”、世界中の知識人が集まる “学問の町”、そして“食いしん坊の町”として知られている。

「エマとイタリアに行った時、赤い町並み、学問、美食の3つはもうすべて体感しました。特に、ボローニャは美味しいものしかない。食材も面白かったです」

食の宝庫という点では、山海の幸が豊富な南島原にも共通するものがある。子供時代から美味しい食に囲まれて育ったなつみさんもエマさんも食べることが大好きで、日々、食の異文化交流が繰り広げられている。

「ふたりとも食にこだわるタイプで、最初はお互いの好みを主張してました」と、なつみさん。

食事の支度は基本的にふたりで一緒に。和食はなつみさん、イタリアンはエマさんと、それぞれの得意分野で料理を楽しんでいる。エマさんに、なつみさんの料理で一番好きなものを聞いてみると、「やっぱり焼きそばです。凝っていて、めちゃくちゃ美味しいんですよ」と即答。

なつみさんも「大分に住んでいたこともあり、日田焼きそばが恋しくなって。カリカリのかた焼きのですね。焼きそば麺、ちゃんぽん麺、ゆでたパスタとか色々な種類の麺で試したり、ソースを入れるタイミングとかも研究しまくりました(笑)」と教えてくれた。

ふたりの住まいは、別の移住者が住んでいた空き家の戸建てを引き継いだもの。家具は以前なつみさんが使っていたものや、移住者がよく利用するリサイクルショップなどで揃えたそう。

「前に住んでいた移住者さんとは友達で、私たちもちょうど家を探していたので、スムーズに入居できました。改装は自由にできるし、少しずつ自分たちらしい家にしていく過程も楽しいです」

歴史があるから今の自分がある。お菓子から広がる未来の夢

なつみさんが生まれ育った口之津町は南蛮貿易港として栄え、宣教師をはじめ多くの人、モノ、文化が到来した。口之津フェリーターミナル横の広場には、宣教師として南島原とヨーロッパをつないだヴァリニャーノ巡察師の功績をたたえた銅像が立っている。

「最初の宣教師がキリスト教の布教活動をする際、日本人と言葉が通じないから、南蛮菓子とワインでコミュニケーションをとったんです。その南蛮菓子からカステラや丸ぼうろが生まれ、うちのお菓子屋さんもあります。さらに、ヴァリニャーノさんの故郷のイタリア・キエーティ市は南島原市と友好都市提携をしていて、その国際交流員になったエマとも出会うことができました。歴史があるから今の自分があるんだと思います」

南島原と南蛮菓子の歴史を知れば知るほど、面白さを感じるようになったというなつみさん。

「南島原は貿易港だったからこそ、新しい人を受け入れる風潮が根付いています。私もすごい楽しんでいるんですけど、地元の人と仲良くなるきっかけになるのが物々交換(笑)。ちょっとしたものでもお裾分けすると、南島原の人は優しいからお返しをしてくれます。ウエルカムな気質なので、顔見知りになったらすぐに打ち解けますよ」と移住生活のヒントも。

最後に、これからの展望を尋ねてみた。

「エマと協力して、グローバルな視点でお菓子を広め、国内外と結びつくような仕事ができればと思っています。南島原とお菓子の歴史、そして魅力。私が受け継いだものを未来に発展させることができれば素敵ですね」

「本田屋かすてら本舗」
住所:長崎県南島原市口之津町丁5778番地
HP:https://hondaya-kasutera.com/
Instagram:@hondaya_kasutera

取材・文:山田美穂 撮影:内藤正美


▼関連リンク
南島原市 田舎暮らし情報
https://www.city.minamishimabara.lg.jp/kiji003694/

                   

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