金目鯛や伊勢エビ、アワビ、サザエ、アジ、サバなど、多彩な魚介類が水揚げされる「伊豆稲取漁港」
伊豆半島の南部に広がる賀茂地域は、海山川がそろう自然環境と温泉、グルメ、アクティビティ、歴史・文化などの観光資源に恵まれた、1市5町(下田市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町)から成るエリア。
近年、賀茂地域の豊富な地域資源と自らのスキルを掛け合わせ、自分らしいワーク&ライフスタイルを確立する若者が増えている。
今回TURNSが訪ねたのは、JR東京駅から約2時間半でアクセスできる東伊豆町。
10年ほど前から、首都圏からやってきた若者によるまちづくりが盛んに興り、新たな賑わいが生まれている町だ。
観光地としても移住先としても人気の伊豆地域を巡り、求人募集中の観光施設の職場環境などを見学できる、参加費無料の『伊豆おしごとバスツアー』が10月20日(日)に開催されます!
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恩返しから始まったまちづくり
森本健介さん|株式会社micro development COO・東伊豆町地域おこし協力隊
兵庫県西宮市出身。2011年、大学2年生の時に「地域づくりインターン生」として東伊豆町を訪れたことがきっかけで毎年町に通うようになる。大学院生の時には東伊豆町をフィールドに活動する「空き家改修プロジェクト」を立ち上げ、後にNPO法人化。2022年4月に東伊豆町の地域おこし協力隊に着任し、移住・定住支援、ワーケーション促進をミッションに活動しつつ、同年11月には空き家改修プロジェクトの仲間と共に「株式会社micro development」を起業。東伊豆町を拠点に、多数のまちづくりプロジェクトを展開している。
町の賑わいの中心にいるのが、兵庫県出身の森本健介さん。2011年から東伊豆町に通い、2022年4月には東伊豆町地域おこし協力隊に着任。移住・定住支援、ワーケーション促進に取り組む傍ら、同年11月にはローカルビジネスの立ち上げを伴走支援する「株式会社micro development」を起業し、東伊豆町の活性化に取り組んできたキーパーソンだ。
『株式会社micro development』が設計・運営を手掛ける「まちのレセプション ようよう」
都内の大学・大学院で建築を学んだ森本さんの会社の強みは、設計・施工から運営に至るまで、空き家活用の全てを一手に引き受けられること。
元・消防団の事務所をシェアキッチンスタジオにリノベーションした「ダイロクキッチン」や、空き物件を学生とともにDIYした海を望むシェアスペース「EAST DOCK」、伊豆稲取駅にある観光案内所兼アンテナショップ「まちのレセプション ようよう」など、森本さんが手掛けた物件は数多く、町に新しい風景と人の流れを生み出している。
「まちのレセプション ようよう」には、伊豆ならではの品が並ぶ
今でこそまちづくりの中心で活躍している森本さんだが、意外にも活動の原点にあるのは、学生時代に東伊豆町で得た挫折経験なのだと言う。
2011年、大学2年生の時に東伊豆町役場主催の「地域づくりインターン」として2週間の地域活動を行った森本さんは、滞在中の経験をもとに、より良いまちをつくるための新事業を提案することになった。
「『良い提案をして、若い力で東伊豆町を変えるんだ!』と意気込んでいたのですが、プレゼン資料すら思い通りに作れない自分の無力さを痛感しました。今の自分のままでは地域貢献などできないと反省しつつプレゼンに臨んだのですが、町の皆さんは空き家を改修したいという僕の提案を、誰一人否定することなく『いいじゃん、どんどんやってみなよ!』と背中を押してくださって。そうした地域の人の前向きさがとても魅力的で、自然と『いつか恩返しがしたい、この人たちと活動していきたい』という気持ちが湧いてきたんです」
地域に愛され、町に明かりを灯すリノベーションへ
インターン終了後も毎年東伊豆町を訪れ、地域と関わり続けていた森本さん。『町に恩返しをしたい』という思いは大学院進学後も変わらず、身に付けた知識やスキルを東伊豆町に還元したいと、大学内でメンバーを募り学生団体「空き家改修プロジェクト」を設立。再び町役場の門をたたいた。
「役場の担当者に『自分たちの力で町の空き物件を改修したい』という思いを伝えると、いち学生からのお願いにも関わらず、町長まで動いて僕たちが自由に施工できる空き物件を探してくださいました。公民館の付属施設の改修を任せてもらえることになり、夏休みにみんなで泊まり込みで作業してやっとの思いで休憩所『水下庵』を完成させたのですが、結局『水下庵』は地域の誰からも利用されなかったんです」
一生懸命空き家を改修しても、使われなければ意味がない。自分たちの思いだけでなく、もっと地元の人たちの声を聞いて、地域に愛される物件にするためのリノベーションをしなければ。
大きな学びを得た森本さんは、次年度には地元協議会にも参加しながら、役場から新たに任せてもらった旧第六分団器具置き場を、地域住民とともに1年間かけて改修。2016年3月にシェアキッチンスタジオ「ダイロクキッチン」を竣工した。
「ダイロクキッチン」では、今も地域住民によるイベントやチャレンジショップなどが開かれている。
大学院卒業後、建設コンサルタント会社等で経験を積んだ森本さんは、2022年に東伊豆町の地域おこし協力隊に着任。時間外副業OKの利点を活かし、空き家改修プロジェクトの仲間とともに「株式会社micro development」を起業し、お店を開きたいという移住者夫婦を物件探しから支援して「DELI & GUEST HOUSE なぎ」をプロデュースするなど、それぞれの仕事の相乗効果も生み出している。
森本さんが、東伊豆町の関係人口を可視化したいという思いから立ち上げた、東伊豆町ファンクラブ『うちっち』。会員数は300名にのぼる
豊かさが日常にある伊豆暮らしの魅力
まちづくりの主役となり、外から来る人を迎える側になった森本さん。実際に腰を据えて住んでみると、伊豆地域の魅力がより鮮明に見えてきた。
「伊豆は暮らしのベースが豊かなんです。わざわざ見に行かなくても海も山も生活の中にあるし、新鮮な魚介類は安く手に入る。毎日自宅で温泉に浸かれますし、キャンプやバーベキューも思い立ったらすぐにできます。都市部だと特別な日の贅沢だったことが、伊豆では日常になるんです」
「EAST DOCK」では、海を眺めながら仕事ができる
地方には仕事がない、空き家が見つからないという話をよく聞くが、伊豆地域の実情はどうなのだろうか?
「この辺りはどこも人手不足なので、働きたいという人を歓迎する事業者さんは多いです。実際に、旅館経営者からは人手が足りなくて宿泊希望者を受け入れ切れないという声を聞きますし、僕も地域の方々からの『手が足りないから手伝って』という声を受けて、複数の業種のバイトを掛け持ちしていました。
伊豆地域の協力隊は勤務時間外に副業できるケースも多いので、まずは協力隊として活動しながら色々な仕事を経験して、暮らしの基盤を築いていくのもいいと思います。
住まいも、東伊豆町なら月額3万円ほどで十分な広さのアパートを借りられるので特に困らないです。空き家バンクにも複数物件が登録されていますし、静かに暮らしたいという方は別荘地にも空き家があるので探してみてください」
車移動が基本の伊豆地域では、生活圏は近隣市町村まで広がる。東伊豆町に住まいを構え、人口・観光客ともに多い伊東市・下田市内の企業に勤める、映画や買い物などの娯楽は三島市で楽しむなど、多彩なライフスタイルが実現し得る。
資源豊富な伊豆地域は、ビジネスフィールドとしてのポテンシャルも高い。特にまちづくりに携わりたい人にとっては、活躍できるチャンスが多いと森本さんは言う。
「まだ手つかずの地域資源やビジネスチャンスが町中に転がっているのですが、それを活用できる人が足りていないんです。でもだからこそ、誰もがまちづくりに関われる余白があります。
食にも住まい・仕事にも困らないし、地域の人たちは新しい挑戦に協力的。事業を興すにも首都圏よりも大幅に初期投資を抑えられます。暮らしも仕事も、何でも気軽に始められるのが伊豆地域の良さです」
引越し感覚で住める地域
最後に、これから伊豆地域に移住したいという方に向けて、メッセージをいただいた。
「“移住”っていうと、人生がかかっているようでちょっと重いですよね。一度来たら一生住み続けなければいけない訳ではないので、まずは来て、気に入ったらお引越し感覚で住んでみて、そのあとどうするか考えるくらいの心持ち来ればいいと思います。首都圏から数時間で行き来できて、居職住に困らない伊豆はそういうトライアルが気軽にできる、来ればなんとかなる地域です。
僕は、駅前の『ようよう』や『EAST DOCK』など、いつでも東伊豆町のどこかにいるので、声をかけてくれれば喜んで相談に乗りますよ!」
日常の中に豊かさがある伊豆地域に来ると、「来ればなんとかなる」という森本さんの言葉がスッと腑に落ちる。
仕事を決めてから、住まいが見つかったらと気負わず決めつけず、まずは訪ねてみる。
心地よい伊豆の海風に吹かれていると、そんな風に動いた先に新しい人生が広がっているはずだと思えてくる。
■株式会社micro development
https://microdeve.com/
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