2023年11月のハノイ探訪。
ベトナムの宗教について、少し書いてみます。
ハノイの旧市街を歩いていると、『・・亭』という、お寺のような佇まいの建物をよく目にします。
雑踏の中なので、気づかないことも多いのですが、
ホテルを出入りするたびに目に入り、だんだん気になってきました。
大きな木に寄り添うようにあるのは『鼓舞亭(Đình Cổ Vũ)』
その樹は、Cây Đaとよばれ、神霊が宿る木なのだそうです。
その幹の隙間には、なにか供えられていますね。
中秋節(Tết trung Thu)のお祝い?、お願い?
『・・亭』とは、ベトナムの村落における守護神や民間信仰の神々を祀る宗教施設で、亭には、祭りや祈りなどの宗教的な機能のほかに、村人や関係者が集まって交流する社会的な機能もあるそうです。ハノイにおける亭は、旧市街の各通りに点在しており、多くは同郷会によって運営されています。同郷会は、同じ村出身者や同じ地域出身者が組織する団体で、亭を拠点にして宗教活動や慈善活動、親睦活動などを行っており、ハノイの同郷会は、都市と村落の関係を維持する重要な役割を果たしているのだそうです。
こちらはホアンキエム湖畔にある『南香亭』(Đình Nam Hương)。
この2階建ての亭は1902年、ホアンキエム湖に向いたレ・タイ・ト像を見下ろす位置に建てられました。また、この亭はかつてはハンチュン村(Hạnh Chương)の集会場でもあったそうです。
※レ・タイ・トとは、ベトナムの後黎朝の初代皇帝であるレ・ロイ(黎利)の廟号で、レ・ロイは、中国の明朝に対して起こした反乱(後黎朝の建国戦争)の指導者であり、1428年に明軍を撃退してベトナムの独立を回復した。レ・ロイは、ベトナムの民族英雄として尊敬されている。
こちらは、すぐ近くにある東香亭(Đình Đông Hương)
大通りに面していて、夜になると扉が開いて、お燈明があげられます。
そう言えば、ホテルの入口にも祭壇がありましたね。
彼氏の話では、こちらはお客さんをたくさん呼んでくれる神様なのだそうです。
ハノイの旧市街、ドンムアン市場(Chợ đôn muang)の近くには、イスラム教のモスクがありました。扉が開いていたので、すっと入ってみたのですが、人が出てきて、やさしく出るように促されました。
時節柄、イスラムはナーバスなんでしょうか?。
ベトナムのイスラム教徒は全体の0.1%弱、約67000人ほどだそうです。
これは、有名なハノイ大教会(Nhà thờ Lớn Hà Nội)。
カトリックの教会ですね。
現在、ベトナムの全人口のうち、約7%がカトリックなのだそうです。
これはフランス植民地時代の名残りですね。
旧市街のど真ん中。
関帝廟がありました。
※関帝廟とは、関帝(関羽・関聖帝君・関帝聖君)を祀る廟のこと。関帝は中国の歴史上の武将で、三国時代に劉備の配下として活躍し、信義や義侠心に厚いとされ、後世に神格化されました。関帝廟は中国だけでなく、東アジアや東南アジアなどにも広く分布しており、商売の神としても信仰されており、商人や会社員などが繁栄や成功を祈願しています。
中華民国9年(1920年)、「粤東会館」(えっとうかいかん)と書かれてますね。
※粤東は、現在の中国・広東の意味
その廟は、「粤東会館」の中にあります。
当時、旧市街のハンブオム通り(đường Hàn Buồm)に住んでいた中国人(広東人)すなわち華僑たちは、1803年、この大きな集会所である粤東会館を建てた。それは、仲間同士の会合や商売の打ち合わせなどに利用され、広東人同士の結びつきを強めるのに大いに役立ったそうです。
やはり中国、華僑の影響は大きいのですね。
それと、仏教寺院。
そして、いろいろな神様がいて、土臭い。
道教の香りもします。
それと、冒頭に記した『・・亭』。
都会に出てきても故郷との結びつきは強い。
ふるさとの村は決して忘れない、ということですね。
日本人と似ているかな。
でも、もっと土地に根を張っていて、故郷や仲間とのつながりが強そうですね。
そう言えば、
コロナのずっと前ですが、ベトナム南部(HCMCよりもっと南)を旅しました。
ソクチャンというところ。
メコンデルタのど真ん中。
今の彼氏と知り合う前の話ですが、クメール人(カンボジア系)と華人(中国系)の混血のベトナム人と知り合いになりました。
この人に連れられて、家でごちそうになったり、あるいは親戚のパーティーに行くからと言われて、バイクで爆走して、ベトナム南端のカマウ付近まで行ったものです。その親戚の家の庭先に、唐突に船が現れてびっくりしました。メコンデルタにある無数の河川を船が遡上していて、それが見えたのです。
雨季だったのかもしれませんが川の水面とその家の庭先が同じ高さだった、ということです。
そして、宗教ですが、
南部の寺院(一部)の作りは明らかに北部とは違います。
クメール文化が色濃く浸透しています。
要するに、タイ、カンボジアなどの小乗仏教が多い、ということです。
(北部は大乗仏教)
ベトナムは東南アジアにおいて、その南北をチュオンソン山脈で隔てられていて、中国文化の影響が大きいのですが、その山脈の果ての南では、インド文化も含めて、クメール(カンボジア)文化が浸み込んでいるということですね。
同じベトナムの南北で、浸み込んだ文化、宗教が大きく違う。
それもベトナムの風景、ですね。
ハノイ探訪⑬(終わり)