PROJECTSつくば国際戦略総合特区
未来の産業を生み出す9つのプロジェクトを推進中
つくば市と茨城県内の一部の地域は、2011年12月に内閣総理大臣によって「総合特別区域」に指定されました。つくば国際戦略総合特区では、つくばの科学技術の集積を活用したライフイノベーション・グリーンイノベーションの推進による産業化促進を目標とし、9つの先進的な研究開発プロジェクトが進められてきました。
2021年、つくば国際戦略総合特区の第3期計画変更が認められ2025年まで特区期間が延長となりました。今後は、産業化促進と社会実装を目標とし、現計画の9プロジェクトを柱とした推進方法から、より広範囲な分野ごとに個別事業を分類する構成として特区を推進していきます。
※詳細はこちら→【第3期計画】つくば国際戦略総合特区
つくば国際戦略特区 これまでの取組
Promotion of Life Innovation and Green Innovation
第2期計画(平成29年度~令和2年度)では、事業化・産業化の促進において、大学・研究機関だけでなく民間企業の参入を促進させていくため、令和元年度までに連携企業数486社、事業・産業創出件数13件を達成目標としておりましたが、令和元年度時点で連携企業数616社、事業・産業創出件数59件を達成し、目標値を大幅に上回っています。また、これらの実績値と別に、将来的にライセンスアウトや製品化に繋がる可能性のある特許出願等については計41件の実績があるなど、産業創出に向けて順調に事業が進展しています。
Project 1 次世代がん治療(BNCT)の開発実用化
Development and Implementation of Boron Neutron Capture Therapy (BNCT)
難治性がんにも有効な治療 医工連携の最高タッグで世界をリード
BNCTは正常な組織にあまり損傷を与えず、腫瘍のみを選択的に破壊する治療法です。浸潤がんや再発がんなど難治性がんに有効な治療法として期待されています。筑波大学では、1980年代から原子炉を使用してBNCTの臨床研究に取り組んできました。特区プロジェクトでは、この実績を生かし、原子炉に代わって病院にも併設可能な小型で使い勝手の良い治療装置の開発と治療計画装置等の周辺機器の開発を進めています。医学、物理工学、加速器開発、薬学の知が集結するつくばから、世界をリードするBNCTの治療パッケージを構築していきます。
Project 2 生活支援ロボットの実用化
Living with Personal Care Robots
つくば発のロボット国際基準の確立
生活支援ロボットは、人間の生活における動作や移動を支援するためのロボットです。超高齢化社会に向けて、さまざまな場面での活用が期待され、多くの研究機関や企業で研究開発が進んでいます。そこで本格的な実用化に向けて、ロボットの安全性の評価が必要となるため、「生活支援ロボット安全検証センター」を軸に、技術面における安全性の確認や、実証実験を通したその効果・課題の検証を行っています。ロボットの開発から安全認証に至るまで切れ目のない体制を構築し、生活支援ロボットを国内外の市場に本格投入することを目指しています。
Project 3 藻類バイオマスエネルギーの実用化
Commercialization of Algae Biomass Energy
藻類オイルでエネルギー問題に貢献
石油代替燃料として期待される藻類オイルは、食料と競合せず、高い生産能力を有するバイオマスとして注目されています。本プロジェクトでは、藻類オイルの大量生産技術を確立し、世界的エネルギー問題の解決に貢献するとともに、健康食品や化粧品、医薬品など、藻類が有する様々な機能を応用した藻類産業の創出を目指しています。
Project 4 TIAを通じたオープンイノベーションプラットフォームの形成
Creating an Open Innovation Platform through TIA
わが国のイノベーションシステムを変革するオープンプラットフォーム
TIAとは、筑波に拠点をおく産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と、東京大学、東北大学の6機関が協力して推進する「オープンイノベーション拠点」です。日本経済団体連合会(経団連)も運営に加わり、内閣府、文部科学省、経済産業省の支援を得て、広汎な分野、多彩な融合分野の研究開発および次世代を担う人材育成に取り組んでいます。
Project 5 つくば生物医学資源を基盤とする革新的医薬品・医療技術の開発
Development of Innovative Pharmaceuticals and Medical Technologies Using Biomedical Resources in Tsukuba
世界最大級の生物医学資源を活用
つくばの研究機関や製薬企業などが密接に連携し、つくばが有する世界最大級の生物医学資源を活用しながら、がん、流行性疾患、細胞治療分野に関する革新的な医薬品・医療技術を開発するほか、生活習慣病予防やアンチエイジング効果等のある機能性食品等の開発、市場化を目指します。
Project 6 核医学検査薬(テクネチウム製剤)の国産化
Domestic Production of Medical Radioisotope (Technetium-99m) in Japan
精密検査に欠かせない薬剤 安定供給を目指す
核医学検査には骨シンチグラフィやSPECTなどがあり、病巣部に集まりやすい性質をもつ薬剤と放射性同位元素(RI)を結合させた医薬品を利用し、発生するガンマ線を映像化することで病気の診断等を行います。核医学検査では、「テクネチウム製剤」が多く使用され、がんの診断や脳・骨・心筋の血流の検査などに用いられています。このテクネチウム製剤の原料が「モリブデン-99(99MO)」です。日本は、米国、欧州に次いで99MOの世界第3位の消費国であるにもかかわらず、その全てを輸入に頼っている状態です。そのため、海外の製造用原子炉のトラブル等による停止や、火山噴火等による輸送(空輸、陸送)の不具合が生じると供給不足が生じます。そこで国内の安定供給面などから、早期の国産化が強く求められています。当特区事業では、JMTRホットラボ(日本原子力研究開発機構大洗研究開発センター)を利用して、実用化技術を確立し、医療産業の国際競争力強化を目指します。
Project 7 革新的ロボット医療機器・医療技術の実用化と世界的拠点形成
Achieving Practical Use of Revolutionary Robot Medical Equipment and the Formation of a Global Focal Point
革新的ロボット医療機器HALの世界展開
新領域【サイバニクス:人・ロボット・情報系の融合複合】の技術を駆使した革新的ロボット医療機器・医療技術の実用化を推進します。研究開発、治験、社会実装等の実用化の取り組みと共に、新産業創出、手探りでの未来開拓に挑む人材の育成等を一体的に行える環境を整備します。世界のフロントランナーとして革新的ロボット医療機器・医療技術を創出し続けることができる世界的拠点(サイバニクス国際先進医療開発センター(仮))の実現を目指します。
Project 8 戦略的都市鉱山リサイクルシステムの開発実用化
Practical Development of a Recycling System for Strategic Urban Mining
戦略的都市鉱山思想に基づく循環型社会の実現を目指す
小型家電をはじめ、都市鉱山(使用済家電製品(廃家電)等に含まれる、有用な金属を鉱石に見立てて「鉱山」と称したもの)の多くが、未開発あるいは埋め立て処分されているのが現状です。そこで、革新的なリサイクル技術の開発と、住民への普及啓発や環境教育などを一体的に進めることにより、生産活動に必要な様々な金属資源の安定確保、リサイクル関連産業の発展を促す、戦略的都市鉱山思想に基づく循環型社会の実現を、世界に先駆けて目指します。
Project 9 植物機能を活用したヒトの健康増進に資する有用物質生産システムの開発事業化
Development and Commercialization of a Plant-based Useful Material Production System that Promotes Human Health
有用性物質生産植物の大規模生産を目指す まずはミラクリンから
糖尿病や高血圧性疾患などの生活習慣病をはじめとした疾病の効果的な予防と健康管理による健康長寿社会の実現に資するため、ヒトの疾病予防・健康増進に資する有用物質を、トマトなど容易に栽培できる植物を利用して生産する(バイオマテリアル生産)のシステムの開発・事業化を目指します。