魔法をかけてよ
昨日からなんかうさぎの受け答えが冷たいなと思ったら昨日うさぎの推しが引退したらしい。
ちょっと喜んでしまった、でもそれと同時に不安になった。これでうさぎに余裕がなくなったらうさぎが私に構う時間が減ってしまう。やっぱり私はうさぎの幸せなんて芥ほども望んでいない。
そしてあの後レンとも連絡をとっていない。私自身あの体験でなんだかひどく満たされてしまって、直近でまた誰かに触れられたい甘えたいと思わなくなってしまった。こんな簡単に癒される安っぽいものだったのか、私の孤独は。レンが私の髪に触れたあの温もりをもうちっとも思い出すことができないのだけれど、ただ「レンに抱きしめられた」その記憶だけでなんとなく幸せ、視界がちかちかしてここじゃない世界に体が浮かぶ。地に足をつけない幸せはどうしようもなく癖になる。
それでもなんとなくあの体験を人に打ち明けたい衝動に駆られて私は中学からの友人二人に相談という体でぶちまけたのだけれど、一人は「お前が幸せならそれでいいよでも妊娠とかはしないでよ」なんて、わりと好意的?だったけれどもう一人には「付き合ってもいない人とディープキスなんて気持ち悪い」と突っぱねられたからフェラしたことまでは言わなかった。言われてみて自戒してみたけれどやっぱり気持ち悪さがわからない。自由恋愛が保障されているこの社会で、この何にも縛られていない一人の身体で、誰かを求めること求められることの何がいけないのか。「キスは付き合っている人とするべき」という考えはそんなに正しいのか。だってほら、ただキスだけで私こんなにもしあわせ。今ならなんでも愛せるような錯覚すらしてしまう。
倫理的に正しくないなんてことはわかってる。でも今私に必要なのは道徳なんかじゃないただここにある充足感。甘い眩暈に一生踊らされて生きていたい。一瞬のきらめきに突き動かされて踊り続ける、このばかばかしさも、その一瞬が一生起こり続けられるのならそれでいいじゃないか。それで満足じゃないか。たとえその幸せが他の誰かの幸せを奪うことで成立するものだったとしても構わない、ぼーっと生きていたら私も誰かに何かを奪われる、誰かに奪われないためには奪うのが一番の方法だって私はちゃんと知っている。
次寂しくなった時のために新しい男を用意しておこうと思ったけど周りに私のタイプの男はほとんどいない。最近もうずっとジリ貧で、いま言い寄ってきているのは地元の高校のいけすかないサッカー部と中学からの知り合い。前者はなんとなくストーカーチックで、遊んだことだって他の友達を含めた一回しかないのに「二人でディズニー行こう」だの「めっちゃタイプ」だの頓珍漢なことを言ってきてうざい。後者はなんかもう全部が気持ち悪い、鉄ちゃん。別に鉄オタ自体は否定しないけど発車メロディーの「淡い恋心」が使われなくなったからってDMしてこないでください。「淡い恋心がなくなって寂しいよ…」とか急にくるから何かと思った。そういう謎の匂わせをしてくる男が一番キモい。駆け引きなんて大嫌い。そもそも私は結構派手なタイプなのにどうしていけると思ったのか。鉄道なんて最低限の知識しかないし撮影のコツなんて聞かされても困る。私は一般人だから中央線と山手線さえ頭に入っていれば迷うことなんて何もない。
でも男を人間だと思わなければこんな意味不明な連中との関係だって楽しめる。どうでもいい人間との恋愛は私にとってただのゲームで、いかに相手に私を大事にさせるかが一番の肝。それで相手がどんなに苦しもうが知らない。ただなにが最悪って、そんなことを言う割に私がそれをされたら絶対に私は烈火の如く怒り出す。人で遊ぶな、私の気持ちを考えろよ。まぁそんなことされたことないからよくわからないけど。
自分の矛盾も醜悪さも全部知ってる誰よりも知ってるでもそれを受け入れて生きた方が楽だと気づいた。ヒロインになんてならなくても幸せになれるんだね。
そのぬくもりに用がある
せっかく人間に生まれたのに、もったいないじゃないか、何も愛さずに死んでいくなんて。
でも今は恋人なんていらない、だって私にはレンとうさぎがいる。レンがくれないものをうさぎが、うさぎがくれないものをレンが私に与えてくれるから。
思えば私はうさぎのことなんて愛してもいなかったのにどうしてかうさぎに愛されたかった。そしてうさぎに愛された上でならうさぎを愛したいなんて傲慢なことを考えてた。もしその考えがうさぎに透けてたら…なんてぞっとしたけどでもすぐにどうでも良くなったのはやっぱりうさぎを愛していなかった証拠なんだろう。先ほどうさぎに送ったDMは返信するような内容でもなく既読スルーされたけどちっとも心はざわざわしない、この状況を甘んじて受け入れている。
私が欲しかったのは甘い言葉なんかじゃなく甘いハグとキスとそれ以上の肉体的なものだったのか。自分の動物じみた衝動には怖気もするけど同時に安心する、やっぱり私も女なんだ。人外なんかじゃないんだ。
私はレンのことを考える時必ず性がセットになるけどうさぎと抱き合うことはあまり想像できない。なんとなくレンとの方が容易に想像できるし、恍惚とできる。レンがこわごわと私の背中を支えて、汗だくになって交わるところがありありと想像できる。私たちは決して愛してるとは言わないけれどそれでも構わない。私はたったの16歳で、そんな大仰な愛なんてまだいらない。ただ舌を絡ませているそれだけが今の私の幸せ。
正直、うさぎにも情がある状況でレンと途中までとはいえ行為をしてしまえば罪悪感だとか後悔だとかに苛まれることになるんだろうと思っていたけどちっともそんなことなかった。ただ温かくて、それが偽物の愛情だとわかっていても私はそれに縋りたいしそれで満足だった。私はレンとデートをしたいとは思わない。レンと遊んでいるところをインスタにあげたいとは思わない。レンに愛を囁かれたいとも思わない。レンにとって私が都合のいい女であるように、私にとってもレンは都合のいい男でしかないから成り立つこの関係性。それがなぜかひどく心地よい。どんな元彼にどんな元彼に愛を囁かれていた時よりもよっぽど気持ちいい。私が異性に求めているのは身体の温もりとほんの少しのやさしさ、たったそれだけ。本当の愛情まで、なんて手に負えない。一番わかりやすい形で私を必要としてほしい、本当にそれだけ。
自分の幸せのかたちがわかって、どうしたら寂しさをなくしてしまえるのかがわかったからすごく安心もしたし嬉しかったけれど同時に少し悲しくなった。私はいわゆるクズ男が嫌いだったけど今なら気持ちがわかる。気持ちがわかるどころか自分もそいつらとどうしようもなく同じなんだと突きつけられる。自分の一時の欲望のために他者を何人も道具のように扱うなんて、だとか正義ぶっていたけれど私だってレンのこともうさぎのことも道具だとしか思っていないって気づいてしまった。いや、もうずっと前からわかっていたけど気づかないフリをしてた。私はきっと孤独なヒロインぶりたかっただけなんだ。私は自分にかわい子ぶりっこをしていた。自分の本当の気持ちがわかるほど自分の醜さが露呈して怖くなるけど…それと同時に安らかな気持ちになれるのはどうしてなんだろう。抱きしめられたい、それだけでいいんだ。愛なんて探さなくてもいいんだ。
嘘でもいい嫌いでもいい私を見つけて
6時くらいにレンと現地待ち合わせをして、私はカラオケに入った。
時間はとりあえず1時間。お互い2、3曲適当に歌ってみたりして、レンの歌が割と私の趣味と被っていたから驚いたけどやっぱり親近感。
レンは「シングルベッド」とか性を匂わせる歌を歌っていたけれど1時間経たないくらいまでほぼ手を出してこなくて、ただ雑談をしたりDAMのどうでもいいプロモーションを眺めたりしていた。
正直、レンの女性遍歴だのを考えるとまともに歌いもせず手を出してくるだろうと高を括っていたから、なんとなくがっかりした。レンは目も合わせない。
体感45分経った辺りから、私はレンの腕に手を伸ばしてレンに抱きついた。レンも少し照れくさそうに私の背中に手を回して頭を撫でた。うさぎがするよりも、その前のどの彼氏がするよりも優しいハグだった、気がする。レンは「彼女にも頭ポンポンとかしたことないけど」とはにかむ。
そうやって抱き合っているうちに1時間が過ぎていたらしく、部屋の電話が鳴ったけれど私たちは延長してまだ抱き合っていた。そして延長の30分も私たちは抱き合い続けた。セフレといえるのかもわからない、側から見たら恋人にしか見えない甘いハグをした。レンは自分から胸を触ろうとはしなかったし、しきりに私の背中をさすったり頭を撫でたりして、うっかり愛情を感じかけて怖くなった。
そして再び延長。レンはまだ私を優しく撫でてくれていた。レンは「下がもうやばい」なんて笑う。私が耳元で「キスしたい」と囁くとレンは「今日はだめ、唇カサカサだし」と断ってきたけど私がひたすら「お願い、私もカサカサだけどしたいの」と言ったら「一度だけね」といいそのままディープキスをした。レンのキスは多分あまり上手くなかった、けどどこか安心してしまってやっぱり怖い。
目を合わせてニコッと笑って恋人繋ぎをしたらレンは「すごい小さい手なんだね」と言った。そのままその手を胸に誘導すると、レンは控えめに私の胸に触れた。今までの男みたいにがっついたりしない、確かめるような触り方だった。あんまりレンがおとなしいから、今度はその手を私の首に誘導して首を絞めるような形にしたら、「それはダメ」と言うけど私はこの体制だと何となく安心する、と言ってレンの温かい手を首元に添え続けた。レンは私を抱き寄せた。
そしてそのまましばらく抱き合い続けて、私はまたキスがしたくなったから「キスして」と言うけどレンが「一度だけって言ったでしょ」とか言うからつまらない。「お願い、したいの!」とせがむとレンは恥ずかしそうに目を逸らせて「俺のしたいことしてくれたらいいよ」。「俺のしたいことってなに。」と言ってもレンは「わかるでしょ?」しか言わない。「何よーわかんないから聞いてるんだよ?」と言ってみたら「キスしたら俺の言いたいこと察してね」といいまたディープキスをした。やっぱりあんまり気持ちよくないキスだったけどでもいい、私はキスに気持ちよさより安心を求めてる。キスが終わった後、レンは私の唇に触れて本当にカサカサだ、と笑った。そして私の顎の下を、猫にそうするように撫でた。それからもう一度私を抱き寄せて、「俺のてぃんてぃんしゃぶって」と言った。本当にてぃんてぃんと言った。そこの謎の恥じらいとユーモアに思わず笑ってしまう。「いいよ」と言いレンがゆっくりと下着をずらして、私はレンのそれを咥えた。私はまだへたくそだから痛かったら言ってね。といいゆっくり舐めた、レンの体は痙攣していた。
はじめはまだ少し柔らかかったレンのそれもだんだん硬くなって、私は必死で、髪の毛が絡みつくのが鬱陶しくて、でもレンが最中に私の頭を撫でてくれたから、髪を持っていてくれたから、「ここが家だったら襲ってやってるのに」なんて囁くから頑張った。そしてレンが「いきそう」と告げた直後に電話が鳴って気まずかったけどレンはノータイムで「延長で」と言い私の前にまた座った。レンは「いく時どこに出せばいい?」と聞いたけどそこにティッシュはなかったしこのまま止めるのもなんか嫌だったから私は無言で続けた。レンは「ごめんもう無理」と言い私の口の中に出した。ちょっとだけレンの下着にこぼしてしまって、私の口の中のレンのそれでいっぱいで、レンは「どうしようどうしよう吐く?」なんて慌てていた。私もちょっと気が触れててレンをちょんちょんとつついて飲んでみせた、そして笑った。「飲んじゃった。」
レンは一瞬嬉しそうな顔をしてでもすぐに「ごめん飲ませちゃって本当にごめん」なんて謝ってきた。でも私は元から味覚が鈍い方であんまり苦いなんて思わなかったし結構勢いに任せてえいやって飲んでしまったから辛くなかったよと言ってもレンはあわあわしてる。「ごめん俺飲ませたこととかなかったから罪悪感えぐい…」レンは私を撫でて、「口ゆすいできな」と言ってくれた。昨日想像してた以上にレンがやさしくて不覚にも喜びかけた。私はレンとの甘い時間を過ごせた充足感と「やりきったんだ」という謎の達成感で満たされていた。
私が席に戻るとレンはまた私の顔を撫で、「歌うかー」といいマイクを握った。レンは結構歌が上手いしマッシュだしさぞ女の子からモテるんだろうなと実感して、それなのになんで私みたいなセフレにも優しくできるんだろうと思った。レンのリクエストの残酷な天使のテーゼを歌ったら93点が出てレンは悔しそうで、絶対勝ってやる!とか言って十八番を聞かせてくれる。カップルにしか見えない。最後は二人で水平線を歌ったところで延長の時間も切れた。結局、二時間半も私はレンと二人でいたことになる。
部屋を出る直前、私がレンに向かって手を広げると「俺本当は彼女にしかこういうことしないんだけどー」と言いながらも私を抱きしめた。私の「嫌だった?」にも「別に」と笑ってくれてちょっとふわふわした気持ちになっちゃってまずい。レンの優しさとか温かさとか私の頬を撫でる手管とかが妙に甘くてついくらくらしそうになる。たかがフェラしただけの私が、セックスをした女よりも大切に扱われる、優越感。そして単純にレンの肌の温もり。こんなもので満ち足りてしまう私の愚かさにも背徳感にもぞくぞくする。
「知り合いに見られたらまずい」と言うレンをとりあえず改札まで送って私は家まで歩き始めた。帰り道、うさぎにDMをする。うさぎに甘える。「迷惑かけてないかな?」と聞く私にうさぎは「いいよ、気にしすぎるな」と言う。「ありがとう友達扱い嬉しい」に「やっぱり迷惑…」。うさぎは結構パターン行動だからこの後何を言うか想像がついたけどあえてわからないフリをして「えっごめん」と謝るとうさぎは「嘘だよ」と笑う。うさぎの甘さにまんまと癒される。
ねぇうさぎ、今あなたが相談に乗っている女はさっきまで他の男のものを咥えていたんだよ。それを知ったらあなたはどうするの。もし私の情が少しずつ他のものに傾いていると知ったら、あなたはどうするの。
君にあるき方 愛し方
昨夜はうさぎといっぱい話せた!!!嬉しい。
今日もうさぎは学校に来なかったけど大丈夫、ぜんぜん悲しくない。この前はうさぎが学校に来なくてちゃんと落ち込んだのに今日は全然元気だ。
愛せなくてもうさぎは私にとってどうしようもなく大切な存在らしい。うさぎと話せたってだけでこんなに一日を普通に生きられるなんて。
ちっとも話したくもないダンス部の子とも普通に話したよ。総合の授業もサボらずにちゃんと作業したよ。メンヘラとは心の支えがないからメンヘラなのであって、君と言う支えがいたら普通に生きられるのです。
4日連続くらいうさぎとちゃんと話せてなかったから、今日はうさぎが寝てしまう前に連絡しようと思って8時には連絡した。8時半くらいにうさぎから返信がきて、うさぎは「今日は用事があるんだ」って言ったけど、その時の私は疲れていて9時には寝るつもりだったから「じゃああとちょっと、私が寝るまで話しててくれる?」ってお願いしたらOKしてくれた。「あと十分話そ」に「もう十分」なんて返してきた割に、うさぎはちゃんと私の会話に付き合ってくれる。やっぱり私はうさぎにとっての特別なんだね。
そろそろ寝ようという話から、いつのまにか私の不眠症についてに発展した。ちゃんと診断を受けたわけじゃないけど、最近なんだか横になると息が苦しくなって、つらい。それに悪夢ばっかり見るから寝るのが少し負担になってきていた、なんて、私にとってはしょうもない、いつもの話。そのことを話すとうさぎは「病院行きな」と言った。なんとなく予感がして「内科?」と聞くと「精神科」。僕も君みたいになったことがあるから、気の持ちようだからがんばって。たぶんこれはうさぎの優しさだと信じている。
まんまとうさぎの優しさに乗せられるうちに私がどうしてこんなに悩んでいるかという話になって、私は小学校、中学校時代からなんども容姿や牛乳・卵アレルギー、喘息でいじめられたり馬鹿にされてきたことを話した。普通にしてても誰かに後ろ指刺されて「あの人見た?とんでもないブスだったよ」なんて言われてないか不安になってしまう、と。
うさぎは私を可愛いよ、と言った。うさぎは普段人を貶す言葉を使わないのに、その時は私をいじめてきた人たちに対して「カス」とか「クズ」とか形容した。滅多に使わないうさぎの強い言葉にびっくりしたけど、なんだか代わりに怒ってくれたみたいで安心して嬉しかった。
中学の時の私は本当に化け物にしか見えなかったし高校入って整形した疑惑も出たんだよねーなんて冗談混じりに言うとうさぎは意外と自体を重くみた上に昔の写真を見たがった。小説の感想も素直に言えなかった私だけど、半分深夜テンションだったし、うさぎには素直でいたいと思ったから写真を3枚ほど見せた。一枚目の写真こそ私がどれか当てられなかったけれど、その後見せた二つの集合写真はどっちも私が誰かを当てた。
自分でいうのもなんだけど当時の私と今の私は本当に雲泥の差で、当時の私はとんでもない癖毛も相まって本当に人間には見えない。それでもうさぎは当ててくれた。当ててしまった。もしかしたら変われたっていうのは幻想で、実は私は不細工のままなんじゃないかともちょっと思った。今まで何人もにその写真を見せたけど、私がどれか当てられた人は一人たりともいなかったから。
でもうさぎは私を見つけて、君も普通の女の子だって言ってくれた。普通の女の子って言葉をもうずっと嫌悪してきて、神戸くんに「君も一人の女の子として見てるよ」と言われた時は怖気がやまなかったのになんかもうすごい嬉しかった。うさぎは、本当に落ち込んでいる時の私のことをすごい甘やかしてくれる。欲しい言葉をちょうど言ってくれる。だから私はうさぎに毎日DMをしてしまう。
変な風に気分が乗ってしまってぼろぼろ涙をこぼしながら別れた途端私をブスだと広めてきやがった元彼のことをうさぎに話すと、それもうさぎはクズだクズだと言って思い出させないようにしてくれる。楽しいことをして忘れな。君は素敵だよって。楽しいことをしろなんて言われても最近どうも音楽もゲームも楽しめなかったからそのことも素直にいうとうさぎは一緒にバドミントンをしようと誘ってくれた。バドミントンはうさぎの趣味で、うさぎはうちの高校のバド部の部長でもあった。そんなうさぎの大事なことに触れさせてくれるなんて思いもしなかった。うさぎに誘ってもらえることなんてちっとも期待してなかったのに。
うさぎは「練習にきていいよ。テスト終わったら体育館借りてやろう」と言ってくれた。練習に来ていいってそれはもはや彼女ヅラにしか見えないしクラスのみんなには見せないプライベートに私を介入させてくれた喜びでくらくらする。うさぎに告白された時よりよっぽど甘い目眩がした。
行ってみたいという私に「しかたねーなー」と満更でもなさそうな返しなんかしちゃって、「ごめん今のめっちゃ嬉しかったごめん」「すごい嬉しかったから約束ね!」なんて私のキモい発言にも「はい約束」って。そもそもうさぎはやることがあったはずなのにこんなにいっぱい話してくれて遊ぶ約束もなんて嘘みたい、もしかして私はもう寝落ちしててこれは夢?なんて馬鹿なこと考えてでも今昨夜のDM見返してにやにやしてる。
全体的に重い話だったから「こんな話してごめん辛かったよね」と言ったら「進級できなかったら君のおかげね」って。おかげの用法間違ってるし君はやっぱり馬鹿だなぁって思ったけど可愛いから許してあげるよありがとう。
いつもは寝るタイミングで絶対ぐずる私だけどうさぎが用事あるのを知っていたから「おやすみ」には素直に「遅くまでごめんね用事あるっていってたのに」って本当の気持ちを伝えてみた。「笑 素直じゃん。」なんてちょっと上から目線な言い方にまたくらくらする。続けてうさぎは「甘えるなよー」とも言ったけど私ががっかりして見せたら「多少はいいけどもー」なんて。これは優しさだよね。安心していいよね。私はまだ、うさぎといていいんだよね。
私はうさぎの負担になりたいわけじゃないけどでもやっぱりうさぎのそばにはいたいから「君が私のこと嫌いになるまでそこはかとなく甘え続けるね」って宣言したら「嫌いになってほしいのかー」って、違うようさぎ逆だよ嫌われたくないよ。でもその質問はどうしてしたの?私に嫌われたらいやなの?いやだからわざわざ聞き返してくれたの?そうしたらどれだけ幸せなんだろうけどそんなこと聞くのもはしたないから「嫌いになったら言って、そうしたら関わらないから、って意味」って言葉の意味を説明した。そしたらうさぎは「かかわらなくていいの」なんて言う。これが思わせぶりなら残酷すぎるけど今日で1番嬉しかったのはこのセリフかもしれない。「君が苦しい思いをするのはなんかちがう」って説明したら「へー。」。絶対何かしら思うところあったよねうさぎ。それをちゃんとは言わないところが最高に君らしい。
おやすみを言った割にそのあともまぁまぁ会話が続いてしまって、うさぎが急に私を下の名前にさん付けで呼んだからああそろそろ寝たいのかと察して「おやすみ、ね」と言ったらうさぎは「よくわかってるじゃん」と笑う。私もふざけてうさぎを下の名前で呼んで、うさぎは親戚と名前が同じだからきまずいって言ったら「知ってるよ」って。言った覚えがなかったからびっくりしてそれと同時にやっぱりくらくらした。もしかしたら付き合ってた時に言ったかもしれないけどそれって半年前だよねえええ。記憶力には自信があるはずなのに私より覚えてるとかすごい。興味ない人の親戚の話なんてよく覚えれるね、ねぇ君は記憶力がいいだけなのそれとも私に興味があるのどうなの。
話初めてもう2時間だから流石に眠くて私も会話を切ったら、うさぎは「なんかお礼はないのかな」と言った。その時打ちかけてた文を一回消して「かこうとしてた」と送ってから、元々送ろうとしてた「今日は遅くまでごめんね!おやすみ!ありがとう!」を送った。「…まぁいいだろう。」って反応はよくわからなかったけどでも感謝ちょっとは伝わってるよね、べつに都合のいい存在ってだけじゃないんだよ私にとって君は。
こうやってうさぎは時々ひどく私を甘やかすから私はまたうさぎに甘えちゃうんだろうと思う。でもそれでもいい、今私は幸せで、やったぁ初めて遊ぶ約束しちゃったぁってホクホクしてそれだけで今日も生きててよかったあの時自殺してなくてよかったって思えるから、だから君もまだしばらくはそばにいてね。
汗と涙でベタベタになってなんか大変そうですね
私は実力テストとは実力を測るためのものだから実力テストで高得点をとるために勉強するのは違うと思ってて、それに私が実力テストで測りたいのはMAXの実力じゃなくてMINで、たまたま試験本番で出せるはずもないMAXの実力を出して「あらこんなに私賢かったのかしら」なんて自惚れるなんて時間も金も無駄だしそれならMINの実力を確かめてちゃんと危機感を覚えたいしそれが正しい実力テストの在り方だと思うからむしろ実力テストの前日は勉強を控えたりする、前日にやったところがたまたまでたりしたらそれはもう違う気がするから。もちろん、実力テスト当日は真剣にそれに取り組むのだけれど。
私はそう言うしょうもないことでも周りと価値観が合わないから、いわゆる勉強できる系の真面目な子達とか学級委員の子達とか、そういう子の方が頭のレベルは合うはずなのにちっとも仲良くなれない。彼らは私を啓蒙しようとする、授業を真面目に受けなさい、宿題を毎日提出しなさい、テスト前は勉強しなさい。
こいつらは何もわかってない、私を啓蒙できるのは愛する人だけなの。
そういう真面目な子たちに限って私より実力テストの点数が低いのはどうしてなんだろうか。うちの高校みたいな中堅校だったり底辺校の真面目な子って本当悲惨だと思う、残酷な物言いだけど。
あなたが誇りに思ってるその成績、授業一回も起きてない子に負けちゃってますよ。悔しくないんですかどうなんですか。嫌いな人に何かで負けたことがないからその感覚よくわかんない。
好きな人より嫌いな人の方が多いけど私が嫌いな人はそもそも頭の悪い人だから絶対負けない絶対に。
来週から定期テストだということを今更認識したけど正直どうでもいい、でも数2だけはちょっとやる。数2で85点以上とったら数学少人数の席替えをしてもらうことを先生と約束したから。うっかりうさぎと隣になれたらすごい嬉しい。だから数学の神様お願いお願いお願い。もうlogのLと1が混ざるからめんどくさいとかそういうしょうもない言い訳しないからお願い85点とうさぎの隣の席をください。うさぎのアデノイド気味の横顔を、しっとりと眺めていたい、私だけが。
みんなが必死に努力してようやくできることも私には難なくこなせてしまうその私の強さが怖い。弱い人の気持ちが理解できない。それが確実にうさぎや神戸くんのことを傷つけていることを知っている、だから私は自分が怖い。
いつまでも曇り空を眺めましょう
結局神戸くんへのバースデーカードは書かなかった。
あのあと、うさぎから返信が来なかったのが悲しくて、わざわざ23時まで起きてあげたのに「待つ」と言ったのにうさぎが寝てしまっていたことが悔しくて、だから私は腹いせに色々なひとにDMをした。
中学時代の部活の同期に、小学校からの友人に、最近やたら構ってくる21才鳶職の男に。今日はまたうさぎとちゃんと話せる!という期待をどこに収めればいいかわからなかったから。
24時を回る頃、なんとなくこのまま寝るのも勿体無い気がしてインスタのサブ垢に「寝れない助けて雑談しよ」みたいなことを書いて投稿したら中学からの友達がリアクションスタンプ押してくれて、でもそいつとはもうすでに会話が始まってたからリアクションスタンプは押してなくてもいいねをしてくれたレンとかいうやつにDMをした。レンが「おれリアクションスタンプ押したっけ?」と言うから見間違えたことにして強引に会話を始めた。
レンは私の隣の隣の隣のクラスのいわゆる一軍男子で、体育祭の時少しDMしていたことをきっかけにやや関わりがあった。体育祭の後、一度デートもした。学校近くの川沿いの橋の下で、私とレンは付き合ってもないのにハグをしてキスをした。レンの言っていたことが本当なら、あれはレンのファーストキスだったらしい。かわいそう。そしてそれ以降ずっと連絡をしてこなかった。
中学の人なんかとはそもそもいつも話してるし新鮮味がなくてつまんないから私はレンとの会話をメインに据えることにした。内容は学校生活をどう楽しむかとかいうとりとめのない話から恋愛の話にうつった。どうやらレンはあのあと彼女ができて、つい一ヶ月前に別れたらしい。なんだよ青春しやがって。途中まではそんな誰とでもするような雑談?だったんだけれどだんだん雲行きは怪しくなって、レンは「ここ一カ月楽しいことと気持ちいことしかしてない」なんて言い出した。気持ちいことというのはもちろんセックス。六月の時は「キスもしたことない」なんて言ってたくせに、随分悪い方に成長したんだなってなんか感慨深い。その成長が少しでも私のせいならいいと思った。
でもそこから展開された「恋人作るより遊んでたい論」(要はセフレ)は正直私の恋愛観?遊びに関する感覚?にがっちり合っていた。あ、これ、いいな。こーゆーのだったら手軽に楽しめるじゃん。
レンがそろそろ疲れてきて「そろそろ寝る」と言い出した頃私は退屈に任せて「私じゃダメなの」と聞いた。レンは「本当にいいの」なんて聞いてた。それで、どこでするかの場所の話とか周りには秘密にすることなんかを話した。
後悔はしてない。嘘じゃない。
お互いにこんなことをしているのがバレたら社会的に死ぬのはお互い様だしフェラは夏に何度もおっさんのちんぽ咥えてからちょっと自信がある。私だって誰かに触れたい寂しさを発散できるしお互いにいい契約。ビッチと言われても構わない。
そして私はこんな大口を叩いているけれど実は処女で、本番にはまだ抵抗があったけどなんとなく初めては好きな人以外にあげたいとも思っていたからちょうどよかった。好きな人とする初めてなんて、その人を嫌いになってしまった時嫌な思い出にしかならなそうで怖い。セックスをそんな大層なものなんかじゃなく、どうでもいいしょうもないものにしてしまいたいから初めてはこんな人がいい。
でもうさぎのことは切らない。
あくまでレン、お前はうさぎの代わりだ、勘違いするな。うさぎは気まぐれだから、うさぎは絶対に私に手を出そうとしないからその寂しさをお前で埋めたいだけ。でもあわよくばレンが私のことを好きになって本気で付き合いたいとか言い出せばいいなと思う。ちゃんと手を出してくれて愛してくれる彼氏なんて最高だしそれ以上に私は二股(?)に抵抗がない。もし浮気するとしてもそれを完璧に隠し通してお互いの前で完璧な彼女を演じることができるなら浮気してもされても構わないと思う。レンが他に女をはべらせていたってなんとも思わない。クソビッチだから。
でもうさぎが他の女の子と話すのはやだな。うさぎの切ない内面とか皆には見せないだけの傲慢さとかは私だけが知っていて欲しい。独占欲。
私はセフレができたことを決して友達には言わない。引かれるのがわかっているから。私はちゃんとこの行為が最低な行為だって自覚してる、でも私は誰かと繋がっていたいの。友達じゃ埋めれない寂しさってこうやって埋めるしかないんだよ、悲しい話だけど。
きっと私はどうしようもなくクズで最低のアバズレだけどでも愛してよ誰でもいいから。なんて都合のいいことを考えている朝6時半。
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見たこともない幸せまで連れてって
今日のうさぎはひどい。
昨日も夜になったら二人で話そうって約束をしてたんだけどうさぎがDMしてきたのが遅くて私が寝落ちちゃって話せなくて、今日はただでさえうさぎは学校に遅刻してきたし昨日も一昨日もほぼ話せなくて寂しかったから「今から英語の勉強するね。終わったら連絡するね」と言うだけ言って正直無視されるか「うん」としか返してくれないんだろうと思ったのに「待つ」って言ってくれて本気で嬉しかった、でも勉強が終わったのが22時過ぎてたからかうさぎはもう寝たみたいだった。さびしい。
私とうさぎは「お互いに不愉快な思いをしたり嫌なことがあったり話したくなくなったらすぐ言う」という約束を交わしてるから、きっとうさぎが私と話したくないのならそう言ってくれるだろうし、私もうさぎも寝るのがそもそも早くてそれに最近の私は21時とか22時に寝るのがほとんどなせいで私の方が先に寝たことも多いくらいだからうさぎを責められない、でも今日だけはうさぎと話したかった。今日だけじゃないけど。
ここ数日あんまり長く話せてないから不安だった、うさぎは言わないだけで私を鬱陶しいと思ってるんじゃないかって、だから安心したかったのに…「待つ」って言ってくれてちょっと安心したのに。
うさぎも「あいつから連絡来ないな…不安だな…」って思いながら寝落ちしてたならそれは許せるそれどころか愛せる。お願いだからそうであってお願い神様、ザーメン。
そういえば明日は神戸くんの誕生日で、私は神戸くんとLINEを繋げているから、バースデーカードを書くかどうかでちょっと迷う。
神戸くんは昇降口ですれ違った時なんか絶対向こうから挨拶してくれるし(クラスメイトに仲良い子はいても男子で向こうから挨拶してくれるのは神戸くんくらいしかいない)授業はほとんど寝てプリントもまともに持ってない私のためにテストの度ほぼ全教科のプリントを送ってくれるしでいい人だ。でも私が神戸くんのことを狙ってるって思われるのは嫌だ。だから書くとしても絶対非公開にはするんだけど、冷静に考えて何書けばいいのかわかんない。誕生日おめでとう!いつもありがとうだなんて皆から言われるんだろうしそもそも今の私のLINEの名前は罰ゲームのせいでとんでもない名前になってる。その状況で神戸くんに送るの気まずい、好きでもないのに引かれたくない。わがまま。
他校の友達に神戸くんのことを話したら、大抵「好かれてるんじゃないの」と言われる、でも神戸くんは別に私のことを好きじゃないってちゃんとわかるから自惚れない。私と神戸くんはお友達、それ以上になんて絶対ならない。
だって神戸くんは多分私の男遊びの激しさとかきっと知ってるし。それに神戸くんはプライドが高いから私みたいに自分より勉強ができる人と付き合おうとはならないだろう。
でも神戸くん、私が顔出したストーリーにばっかりいいねしてくるのはなんなんですか。さも私の顔を可愛いと思ってるみたいじゃないですか。これは自惚れ。
神戸くんの真面目なところはちっとも好きじゃないけど神戸くんの意外と単純なところは結構好きだ。神戸くんは私に対して「性格は変わってるけど顔はちょっと可愛いから手元に置いておこう」とか思ってることも私は気づいてる、でも私も神戸くんに似たようなことを思ってるから大丈夫。「性格は気に入らないけどノート貸してくれるから手元に置いておこう」。
ちょっと考えて、結局バースデーカードは前日から書くのはきもいから当日の朝に書いてあげることにした。文面も決めた。「神戸くん誕生日おめでとう!テストの時いつもプリントを見せてくれて感謝してます。よければ期末の範囲のプリントも見せてください…… いい一年にしてね!」。この喋り方がいちばん私の学校でのキャラに合ってるからこれで正解。ここでの話し方みたいな固い言葉遣いだとみんなを怖がらせちゃう、ただでさえ私の頭の良さは凶器になり得るのに。
書いてるうちに眠くなってきたからそろそろ寝ようと思う。現在時刻23時20分。書いてる間でだいぶEのことを忘れられてよかった。書くことが一番のストレス発散、たとえこの文章が誰の目に触れることもなく終わってしまうとしても。