菓子類 | にっぽん伝統食図鑑 | 農林水産省
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菓子類

花

歴史、文化

我が国の菓子の歴史は紀元前にさかのぼる。日本最古の加工食品といわれる餅がつくられていたことや、木の実を粉状にしアクを抜き団子状にしたものを食していたことに由来する。餅は、代にかけてその食文化が地域ごとに変容しながら根付いた。木の実を用いた団子は、地域によりどんぐり(しだみ)をもちいた団子が伝統的な食文化として伝承されている。
その後、遣唐使の派遣により唐の国と文化交流が進んだ。遣唐使が持ち帰った唐菓子「ぶと」は神社や神棚に供える供物となった。

室町時代には大陸より渡来した林浄因(りんじょういん)が、小豆あんの饅頭を我が国に伝えたことが饅頭の始まりとされている(この説とは別に、円爾が福岡に伝えたという説もある)。
室町時代から安土桃山時代に武家社会を中心とした茶の湯文化が発達すると、茶会に供する菓子が争うようにつくられ、砂糖の輸入量は増大した。また、南蛮菓子などの西洋菓子の渡来による影響を受けたことや、流通の整備により原材料の供給が進んだこと、そして製造技術の進歩により、現在の多種多様な我が国の菓子の世界がつくられた。
江戸時代においては、鎖国政策の影響により他国との文化交流が一部地域を除き途絶えたが、その間に食味の向上とその技巧が国内で競われ、日本独自の文化変容が充実した時期といわれている。それまでは貿易品目であった砂糖が、日本で製造開始したのも江戸時代であり、その影響は大きい。
明治時代以降は機械の導入が開始され、主に焼き菓子の種類が増加した。菓子食文化が日本各地に広がり、食習慣が定着したことから、今も日本各地で新たな菓子が次々に登場している。
なお、一部の生菓子においては、その製造技術とともに、令和4(2022)年11月17日に「菓銘をもつ生菓子(練切・こなし)」として登録無形文化財に登録されている。

特徴、種類

<和菓子の種類>
菓子は規格品でないため、製造者や地域により原料や製造工程の細部は異なる。
たとえば、まんじゅうは皮(生地)であんを包んだものであるが、製造工程は蒸したり、焼いたりしてつくられる。あんの原料は小豆(こしあん、つぶしあん)、青えんどう豆(白あん)、栗、ごま、ゆず、抹茶、味噌などさまざまである。皮の原料は小麦粉、米粉が主であり、黒砂糖や味噌を混ぜ込んだり、酒を混ぜたりするものもある。
ようかんであれば、同様に小豆や白いんげん豆があんの材料とするものや、抹茶、こんぶ、ごまを混ぜてつくるもの、栗やつるし柿を原料とするものがあり、まんじゅうとようかんだけでも多種多様である。
日本各地の地域性や原料を特色とした菓子や、行事や季節に関連付けられた菓子の種類においては、数え上げたらきりがないほどであるが、大きく分けると以下となる。

種類
餅もの(米を主原料とした餅が用いられる) 柏餅、大福、おはぎなど
蒸し物(蒸してつくる) 蒸し饅頭、栗蒸し羊かんなど
焼きもの(平鍋もの) どら焼き、さくら餅など
焼きもの(オーブンもの) 栗饅頭、カステラなど
流しもの(型に流し込んでつくる) 羊かんなど
練りもの(餡を主体にして形をつくる) ねりきり、こなしなど
おかもの(別々の素材をくみあわせてつくる) 最中など
打ちもの(型に入れて打ち固める) 落雁

<季節の表現や生活との寄り添い>
長い歴史をかけて日本ではぐくまれてきた菓子食文化の特徴の一つは季節感である。春夏秋冬の四季を重んじるわが国において、菓子は季節の移ろいを表現してきた。
また、季節ごとの年中行事にも、菓子は欠かせないものであり、日本人の生活に寄り添ってその食文化が発展してきたものである。
以下に抜粋し紹介する。

    

主に原料の季節性を表現したもの

1月 花びら餅など
2月 うぐいす餅、くさ餅など
3月 くさ餅、さくら餅など
4月 花見だんご、いただきなど
5月 かしわ餅、ちまきなど
6月 若鮎(焼鮎)など
7月 くず桜、水羊かんなど
8月 きびもち、干菓子、ずんだ餅など
9月 みたらし団子、おはぎなど
10月 栗蒸しようかん、栗きんとんなど
11月 芋ようかん、きんつばなど
12月 ぜんざい、柚子かんなど
    

季節の風物を表現したもの(練切やこなしなどを用い、主色や造形で季節の移ろいを表現)

季節 風物
1月~3月 松、竹、梅、鶴、亀、梅、桃、桜など
4月~6月 鮎、葛ざくら、貝など
7月~9月 渦、清流、草ほたる、山栗など
10月~12月 柿、紅葉、雪など

製造方法

前項でふれたとおり菓子は規格品でないため、製造者や地域により原料や製造工程の細部が異なる。本項ではいくつかの菓子の原料、製造方法などを抜粋し紹介する。

<原料>
明確な規定はないが植物性の原料が主なものとなり、動物性の原料は鶏卵以外あまり使われない。
あんの原料として豆類(小豆、白小豆、いんげん豆、えんどう豆)、米(うるち米、もち米など)、
米の粉(粉状にしたもの、蒸したり、焼いたり加熱加工後に粉としたもの)、小麦粉、砂糖(上白糖、グラニュー糖、黒糖、和三盆糖など)、寒天、くず粉、栗、いも類、柿、梅、ごま、抹茶、鶏卵などとなる。

<あんのつくり方>
小豆こしあんは、小豆を煮て、豆がやわらかくなったら皮をとりのぞき、水と砂糖を加え加熱しながら練りあげたものである。
小豆つぶしあんは、小豆を煮て、豆がやわらかくなったら皮はついたまま、水と砂糖を加え加熱しながら練りあげたものである。
白あんは、小豆こしあんの製造方法でいんげん豆を原料としたものである。青えんどう豆を原料とすると、うぐいすあんと呼ばれる。
練りきりあん、つくねいもを原料として裏ごしの工程を加え、白あんと混ぜたものである。
抹茶あんは、白あんに水と抹茶、砂糖を加えて加熱しながら練りあげたあんである。
いずれも多くの手順を踏むものではないが、原料の種類や水分量、火加減や火にかける時間、水分の調整、砂糖の加え方ひとつで品質が変化すると言われ、あんづくりだけをみても、専門的な技術が必要となる。

地域との関係性

菓子のうち、地域との関係性が強いもの、製法や歴史が特徴的なもの、いわゆる「郷土菓子」をいくつか紹介する。前項までに紹介した菓子ものと比べ菓子店などの専門店で発展したものに限らず、日本各地の地域性を背景に各家庭、地域ではぐくまれた菓子類を紹介する。

<べこもち(青森県)>(※クリックしてうちの郷土料理へリンク)
うるち米粉、もち米粉、水、砂糖を混ぜあわせ蒸したもの。別名「くじらもち」として北前船によって伝わったとされる。
模様入りの菓子として発展、牛のまだら模様に似ていることからその名がついた。端午の節句につくられていたが、現在は日常のおやつとして食されている。柄は現代的なものが数々生まれている。

<がんづき(岩手県)>(※クリックしてうちの郷土料理へリンク)
満月に向かってはばたく雁(がん)のようであることからその名がついた。小麦粉、砂糖、鶏卵に重曹と酢を加えて蒸してつくられる。ごまやくるみが入る。腹持ちが良いことから小昼食とされてきた。

<いがまんじゅう(埼玉県)>(※クリックしてうちの郷土料理へリンク)
小豆あんを皮で包んだまんじゅうに赤飯をまぶして蒸しあげたもの。
そのさまが栗のいがのようであることからその名で呼ばれている。祝い事や縁起物として食されてきた。

<カステラ(長崎県)>
小麦粉、鶏卵、砂糖、水あめ、はちみつなどを混ぜあわせ、オーブンで焼いた菓子である。
16 世紀より約200年の間、わが国で唯一、西欧との文化交流があった長崎県。ポルトガルやスペイン、江戸時代に入りオランダや中国(清)の文化が長崎県に渡来した。そのなかで、長崎県の食文化として根づき、全国に普及していったものがある。もとはスペインの菓子であったカステラである。その食文化は、日本の菓子として独自の発展を遂げた。

参考文献

『和菓子』東京和菓子協会、吉川弘文館『日本食物史』江原絢子 石川尚子 東四柳祥子、吉川弘文館『日本の食文化史年表』江原絢子 東四柳祥子