移住+農業 新規就農したご家族に今を聞きたい!
桜地区の「桜農園」でオリーブ農園を目指す木村佳晶さんと木村かなこさん、大岸で「grow.seed.works たねびと」を営む佐藤英貴さんと佐藤りつこさん両ご家族にお話を伺いました。
────なぜ豊浦町で農業を始めようと?
木村佳明さん 僕は広島のオリーブを育てる会社にいて、いずれ故郷の北海道でもオリーブを育てたいと思っていました。それで日照時間や降雨量とかを事前に調べて、道内の適地を色々周っていたんです。ただ、どこの町に行ってもミニトマト農家になってと言われました(笑)
木村かなこさん 当時、私は広島で医療系の仕事をしていて。その時会社で見た業界紙に、国産生薬がこれから伸びる!という情報が載っていて、その話を主人にしました。
木村佳明さん 挑戦も大事だけど、同時にしっかりした土台も必要だと考えていた時期にその話を聞いて。それで北海道でも薬草を栽培している所がないか調べたら、豊浦町にあったんです。その薬草農家さんと話をしてみると、自分の挑戦をすごい応援してくれて。しかも、後継ぎを探していたので、すぐに弟子入しました。もう、ここしかないって自分が納得した町が豊浦町だったんです。
────ご主人が移住先を探してた1年間、奥さんは広島で待っていたと伺いました。その時はどう思っていましたか?
木村かなこさん 寂しくもあったんですが、毎日連絡をくれて。夫からの報告が嬉しかったです。頑張ってるな~って。夫の夢を応援したくなりました。
────佐藤さんはどうでしたか?
佐藤英貴さん 自分は宮城の石巻市で会社員、妻はお店を経営してました。そして東日本大震災があって、その時子供はまだ2歳。震災後は復興に向けて頑張っていたんだけど、やっぱり食べる物や外での遊びも気になるようになって、日常生活の不安が常にありました。だけど仕事を辞めてまで移住は無理かなと。
佐藤りつこさん でも子供には不安なく遊ばせてあげたくて、調べたら豊浦のシュタイナー学園のサマースクールがあり、旅行も兼ねて思い出づくりに参加してみました。来てみたら、ほんと良かった。
佐藤英貴さん 震災の影響もあって、もう本当に豊浦町は違う世界に感じました。それですぐ妻が移住しようとなって。でも最初、妻は移住するなら沖縄が良いって言ってたんだけどな~。寒いの嫌だって(笑)
佐藤りつこさん すぐに、当時経営してたお店の引き継ぎも済ませて、先に私だけ来ました(笑)
佐藤英貴さん 半年後に自分が来たんだけど、本当にノープランで移住。ただ、食に関わる仕事で企業を考えていた。来た時に、たまたま役場の臨時職員になれて、その時に豊浦町はイチゴが有名なんだと知って。農家さんに関わるうちに自分も生産者になりたいという想いになった。まったく農業のことは分からないから完全0からのスタート。でも、自分が作るんだったら無農薬でイチゴを作りたい。それは被災した時に感じた『食への不安』。その体験があったから挑戦しなきゃならなかった。
────知らない土地、人との関わり、色々大変だったと思いますが。
佐藤英貴さん その時は地域の人に受け入れられるとかは考えていなくて。移住は色々気にすると出来ないんじゃないかな。自分たちは海と山と、100m 範囲でしか豊浦を見てなかったかも(笑)勢いで決めたから。
────お二人とも農業という職を選ばれて、率直に良かったですか?
木村佳明さん 僕は農家になって良かったですね。広島では仕事が忙しく、土日も出勤する事が多かったので、今は家族の時間が圧倒的に増えました。
木村かなこさん 農繁期はとても忙しいですが、自分たちで働き方を調節できますし、家と畑が近いので、何かあればすぐ家族の元へ帰って来れる。子供との時間も作りやすく、子育てには良い環境だと思います。
佐藤英貴さん 自分たちも宮城ではお互い仕事の時間が合わず、なかなか一緒の時間がなかった。豊浦に来て家族の時間が増えたよね。私生活と仕事はごっちゃになったかもだけど(笑)
佐藤りつこさん そういう意味では幸せですね。まだまだ満足はしていないけど(笑)
────これから移住を考えている方にアドバイスがあれば教えて下さい。
佐藤英貴さん 豊浦町や移住とか抜きにして、自分のやりたいことを考えた結果、移住していた。というのが良いと思います。
木村かなこさん 移住した時は夫婦二人でしたが、この町で子供が二人産まれました。この子達にとっては豊浦町が故郷なんです。この子たちの為にも、この素敵な町に何ができるんだろう。私たちの行動が「小さなきっかけ」の一つになれば嬉しいです。
私たちが移住する際には地域の方も役場の方も、町民皆さんに快く迎え入れて頂きました。私たちにとって豊浦という町は優しくて温かい町です。どうかこれから来る方にも、そのことを知ってほしい。
佐藤英貴さん あと、ある日いきなり子ども神輿が家に来ます。その時はお賽銭の用意をするように。初め知らなくてビックリした(笑)
木村佳明さん それ、ありました。事前に誰かに教えてほしかった(笑)
一同大笑
と、最後は豊浦町の神社のお祭りである「子ども神輿」のアドバイスまでしていただきました。桜農園のオリーブ葉を使った化粧品や、たねびとのイチゴは町内でも続々とファンが増えているといいます。広島県と宮城県から、まったく知らない土地である豊浦町に移住してきた木村さんと佐藤さん。両ご家族の挑戦は続きます。