感動のエピソードがネガティブに見えるのは「高校野球の運営に対するイメージが悪い」のが大きい - 斗比主閲子の姑日記

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姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

感動のエピソードがネガティブに見えるのは「高校野球の運営に対するイメージが悪い」のが大きい

この感動のエピソード風の記事が「感動できない!」という方向で叩かれています。

秀岳館吹奏楽部「野球部と日本一に」 大会断念し甲子園へ - 西日本新聞

一方で、なぜ叩かれるのか分からない人もいるようです。

ということで簡単に書いてみます。

kousien

※暑い

 

まず、

吹奏楽部は部員21人。4年連続の出場が懸かる南九州小編成吹奏楽コンテストの県予選を翌週に控えた7月26日、野球部が甲子園切符を手にした。

 南九州大会は8月11日。県予選を通過しても、甲子園の応援を優先すれば大会には出られない。コンテストか、甲子園か。7月下旬の職員会議は2日間にわたった。

吹奏楽部のメインの活動であるコンテストに出ることと、甲子園の応援が比較されること自体がたぶん理解されにくいところがあります。しかも、これが職員会議の議題となり、2日間も議論していることがさらに理解しにくい。なぜ、こんな議論が必要となるのか。普通のことじゃないですよね。

また、仮に吹奏楽部の生徒がこの時点で甲子園の応援に行くということを自主的に判断していれば、職員会議にはたぶんなりません。それが職員会議になっているということは、この時点では生徒は甲子園を選んでおらず、また、職員の中に、吹奏楽部のコンテストより甲子園を優先するべきという意見が少数でもあった可能性がある。

 

そして、

多くの教員が「コンテストに出るべきだ」と主張した。吹奏楽部の3年生6人も話し合いを重ねた。「コンテストに出たい」と涙を流す部員もいた。

 しかし演奏がなければチアリーディングもできず、応援が一つにならない。「野球部と一緒に演奏で日本一になります」。顧問の教諭に決断を伝えた部長の■■■■さん(17)の目は真っ赤だった。8月1日の県予選には「上位入賞しても南九州大会を辞退する」と主催者側に申し入れて出場し、金賞を受賞した。

 「県予選で全力を出し切り吹っ切れた」。部員の■■■■さん(16)は16日、スタンドでドラムを打ち鳴らした。

※名前は筆者が伏せ字にしています。

職員会議の結果が「コンテストに出るべきだ」だった一方で、吹奏楽部の生徒が苦渋の決断で自ら野球部の応援を選んだように書いています。

しかし、理由と考えられる"演奏がなければチアリーディングもできず、応援が一つにならない"は吹奏楽部部員ではなく他の人間の利害に関するところに見えるし、"「コンテストに出たい」と涙をながす部員もいた"し、"部長の■■■■さん(17)の目は真っ赤だった"し、ある部員は"「県予選で全力を出し切り吹っ切れた」"と、吹奏楽部部員には迷いがあったことが確認できます。

こういうのを見て、吹奏楽部の部員が自らの意志でコンテストを辞退したのではなく、周りの圧力から辞退させられて高校野球の応援を強制させられたのではないかと読む人が出てくるわけですね。

 

じゃあ、これが大勢かといえば、たぶん紙の新聞を読んでいる読者の多くは感動すると思います。パッと流し読みする分にはよくある日本の美談だから。自己犠牲精神。好きな人が多い。

 

ただ、よくよく読めば西日本新聞の記者が美談に仕立てあげようとやり過ぎちゃったのと("顧問の教諭に決断を伝えた部長の■■■■さん(17)の目は真っ赤だった。"って、目が真っ赤だった情報は、それを見た教諭から入手したとして、記事に書くものかどうか)、

ネットでは特に高野連含めた高校野球の運営体制に対してネガティブな印象を抱いている人がいることもあって、批判的に受け止められていると思います。何しろ、女子マネージャーがグラウンドから追い出されたばかりですから。

女子マネ問題で高校野球の「古い体質」は変わるか|News&Analysis|ダイヤモンド・オンライン

【主張】甲子園女子 「進取」の歴史を思い出せ(1/2ページ) - 産経ニュース

 

この記事と同様に高校野球絡みの美談はこれからも出てくるでしょうが、高校野球の運営体質がクリアーになったとみなされないと、記者がここまでやり過ぎていなくとも「本当に美談なのか?」と捉える人が出てくるのは今後も続くんじゃないかなと思います。

オリンピックの賄賂問題や、相撲の八百長問題や、プロ野球の賭博問題と比較するのはどうかという考えの人はいると思いますけど、それに近い悪いイメージが高校野球の運営にはあるように、私は見ています。

 

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