今年の5月1日の環境省主催の水俣病被害者団体との懇談会で、環境省が自分ルールで被害者団体の話す時間と音量を制限しました。
熊本県水俣市で1日開かれた水俣病慰霊式の後、環境省が主催した伊藤信太郎環境相との懇談会には、八つの患者・被害者団体が参加した。思いを伝える制限時間は1団体3分間。複数の団体は時間が超えると司会者にせかされ、話し続けるとマイクの音が消えた。団体は「被害者の声に丁寧に耳を傾けて」と憤った。
小池百合子元環境大臣が今から29年前の2005年5月の水俣病問題の懇談会で、次のように述べている通り、環境庁ができたのは水俣病問題がきっかけであり、
水俣病について、そもそもの話からいたしますと、今は環境省になっているわけでございますが、環境庁ができたきっかけ、原点でございます。
水俣病の患者認定の裁判が継続している中でのことでもあり、この対応は多くの批判を受け、5月8日に、環境大臣の伊藤信太郎さんと懇談会の司会をしていた環境省特殊疾病対策室室長の木内哲平さんが被害者団体に謝罪をしに行っています。
「悔しい 人間じゃない扱いをされたのかな」発言制止された参加者の涙 水俣病患者らとの懇談会でマイクの音が絞られる | TBS NEWS DIG
一応形式的に謝罪はしたものの、5月1日の懇談会の場では、大臣の伊藤信太郎さんは被害者団体がマイクが切れたのを何度もアピールしていたのに、マイクが切れたと認識していないと言っていたり、
※画像の出所はTBS
室長の木内さんは、台本上、明確に3分で話を切るルールが書いてあったのにマイクが切れたのは不手際だったと言っていたりしていたので、
※出所は同じ
本当はこの件で謝罪する気はなかったのは明白です。ここまで大事になるとは思っていなかったのでしょう。
ちなみに、室長の木内さんは前の部署が環境省の石綿健康被害救済対策室の室長で、そこでも被害者団体とできるだけ接点を減らすようにして、被害者団体から抗議を受けていたので、
今回の報告書の取りまとめに係る事務局においては、昨年7月の木内室長の着任以来、異質な事務局運営がされてきました。一例をあげれば、前・吉住室長時に内定していた医療関係者のヒアリングが一時、取り消されたことです。(中略)木内室長の委員会運営は、私たちと環境省石綿対策室の歴代の責任者が築いてきた信頼関係を崩壊させるものでした。
今回の水俣病の被害者団体に対する対応も、前の部署での"成功体験"を再現したのだと思います。"適材適所"で、"素晴らしい"人事ですね。
ただ、事はこれで終わらず、被害者団体には「一人3分という時間を守らないのがおかしい」と電話やメールが来ているようです。
「時間守らないのがおかしい」 水俣病被害者団体に批判電話やメール | 毎日新聞
「よく分からないルールでも守らないといけない」という話はどこかで見たと記憶を辿ったら、去年2023年10月2日に、ジャニーズ事務所の記者会見で似たようなルールが定められていたことを思い出しました。
会見の当日には事務所の幹部の井ノ原快彦さんが記者をあげつらい、その後にSNS等で、「ルールを守らない記者がおかしい」という批判が起きたのも同様です。
ジャニーズ事務所会見、怒号飛び交う 井ノ原快彦が理解求める ルール無用の会見は「見せたくない」 | ORICON NEWS
環境省とジャニーズの対応の共通点を整理するとこんな感じでしょうか。
- 会の主催は環境省、ジャニーズともに加害者側によるもの
- 会の目的はしっかりと対話・説明をするもの
- 会のルールを設定したのは加害者側
- 会のルールで"得"をするのは加害者側
懇談会でも記者会見でも、設定された背景を考えれば、加害者側が自分ルールを押し付けるのは話にならないわけですが、まったく問題ないと思う人も世の中にはいるようです。
日本人はルールを守らないといけないと固く信じ込まされていますから、加害者が設定した、加害者に都合の良いルールでも守るべきと考える人がいるのは理解できます。
ただ、ルールづくりは民主主義の根幹で、時に応じて作り変えるものです。以前に紹介したように、法の番人である法務省もこんな報告書を作っています。
私は子どもに「ルールを守るだけでなく、ルールを作る・変える側に回るのがおすすめ」と教えています - 斗比主閲子の姑日記
※下線はtopisyu
ルールは一方的に押し付けるものでもなく、協議して決められるものだし、一度決めたものでも作り変えて問題ありません。
「加害者側が作ったルールは無条件に従うのが当たり前」なんてことになったら私は嫌なので、今回の環境省の対応は批判します。国がやることは民間もマネしますしね。再発防止策を策定し、二度と起きないようにしてもらいたいところです。
今日はこんなところです。ではでは!