明石市長が2017年6月に市職員にパワハラをしていたことが発覚し、本人もそれを認めて謝罪をしました。
明石市長が部下に暴言 立ち退き交渉で「燃やせ」 (写真=共同) :日本経済新聞
泉氏は同日記者会見し「発言は全て事実。許されないことと深く反省している」と謝罪した。
(中略)
泉氏はパワハラと認めており、暴言を浴びせた幹部には28日に謝罪したという。「これまでパワハラはなかったと認識しているが、過去には相当厳しい口調で部下を叱ったことがあった」とも話した。
この言い方だとこれだけじゃなくて、他にもやってそうな感じですね。
そうしたら、パワハラをしていたのには背景事情があったという報道がそこそこされるようになりました。死亡事故が起きていた場所で、立ち退きに7年もかかっており、明石市長としても市民の命を守るために、早急に対処するべく、担当者をパワハラしたということです。
明石市長はなぜパワハラ発言をした?背景に死亡事故(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
で、これを受けて、私のネットでの観測範囲では、パワハラを容認する声が出てきました。児童福祉に手厚い人だということで、優秀だから目をつぶってみたいな感じもあった(以下のリンク先みたいな話を参照して)。
『明石市はほんとに子供関係に手厚い』睡眠不足に陥っている中、保健師さんに「眠れなくて辛い」と話したら神対応してくれた話 - Togetter
リアルでも賛否両論みたいな状況になったみたい。
苦情殺到から一転 批判と半々 明石市長 暴言後に“続き”があった「しんどい仕事するんや、役所は」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
世の中でリベラルと見られている人たちも容認するコメントをし、
言葉は乱暴だけど「あっこの角で人が巻き込まれて死んだわけでしょ。だから拡幅するんでしょ。市民の安全のためやないか。そのためにしんどい仕事するんや、役所は」の部分に心意気は感じる。
— 駒崎弘樹 ( Hiroki Komazaki ) (@Hiroki_Komazaki) January 29, 2019
:部下に「辞表出しても許さんぞ」「自分の家売れ」 明石市長の暴言詳報 https://t.co/dBjze2KCsu
むしろ人間臭く、明石市民のために働く市長と言えるんじゃないでしょうか、それに引き換え…と。かなり同意 →明石市長・泉房穂氏の暴言をよく読むと、市民の命を守るための正論である件(山本一郎) - Y!ニュース https://t.co/ZOseHgs0bY
— Shoko Egawa (@amneris84) January 29, 2019
この流れはよろしくないと思い、Twitterで、「それはそれ、これはこれ」ということをいくつか書きました。趣旨としては次の1つ目のTweetでほぼ言い切ってます。
明石市長のパワハラと犯罪教唆には背景(死亡事故)があったって報道されてるけど、突き詰めると、いじめられるのにも原因があるとか、言うこと聞かないなら体罰していいとかに繋がる。
— 斗比主閲子 (@topisyu) January 30, 2019
加害行為の背景事情を知るのは、加害行為の解決の手段にはなるけど、加害行為自体が許されることにはならない。
ここに書いたとおりで、本人が優秀だからとか、事情があったのだからということを理由にして、 パワハラを容認しちゃうと、社会として、パワハラは事情があればやってもいい、優秀な人が目的を達成するためならやってもいいという考えが広がっちゃって、良くない。
優秀だから市長として続投してほしいというのは理解できる考えなんだけど、続投してほしいなら、なおさら、パワハラ自体は批判して、再度パワハラを起こさないような再発防止策を求めるのが筋なんじゃないかと、私は思うわけです。
適切な批判と合わせて、議論したいのは再発防止策。
— 斗比主閲子 (@topisyu) January 30, 2019
被害に遭ったことを告発した人間が不利益な扱いにならないようにする公益通報者の保護の徹底や、
権力がある人間の言動が第三者にチェックされる仕組みの導入は、どんなパワハラ・セクハラの後でも必須。
個人の責任だけにすると再発は防げない。
何しろ、この自治体では、2018年6月にも市民生活局文化・スポーツ部長によるパワハラ・セクハラが発覚していて、市長自身が記者会見で、再発防止策が最も重要だということを認めています。
最大のポイントは、こういった事を早期に把握できなかったのか、もっと対応できなかったのかという問題でありまして、まさに再発防止策をしっかりとっていく必要があるという認識をしております。
加えて言うと、市長としては、この部長を優秀だと思っていたと言い、パワハラ・セクハラの背景も以下のように記者会見で語っています。
理解としては、刑法上の傷害に当たるようなケースはなく、ヘッドロックをしたり殺虫剤をかけたり、蹴ったり殴ったりはしたけど怪我をするほどではなくて、本人としては基本的にはスキンシップとか人間関係の延長線上みたいなことです。そして多くはお酒が入っている状況です。ということなので、そこは事実は事実としてお伝えさせていただきます。ただそれ自体はする側ではなくてされる側からすれば許される行為では当然ありませんし、怪我はしていなくても刑法上では暴行罪は構成します。そして何よりも職場環境においてそういった状況は望ましいわけはありませんから、そういった状況が一定期間続いたことに関しては市長としても当然責任は感じます。もっと早い段階でそれを認識できていれば、もっと早く対応できた面は当然ありますので、もっと早くそういった情報が確認できる体制を整えないといけませんし、確認できれば早急に対応をとる必要があると強く認識しています。
これ、本人がスキンシップとか、人間関係の延長線上とか、お酒が入っていたらみたいな事情があったら、ヘッドロックや殺虫剤をかけたり、怪我しないぐらいの暴行をしたりするのは、そんなに悪いことじゃないと考えているのが透けて見えますよね。私はそう思いました。
また、記者会見の最後には、
記者 こういう上司は今把握している限りでは他にいないですか。
総務部長 はい。
で、結んでいるけれど、これが本当なら、総務部長として市長が過去パワハラ発言をしていたのは認識していなかったことになる。
そんなこともあり、再発防止策を市及び市長が適切に提示するのは筋だと思うわけです。じゃないとパワハラが再発する可能性があります。
繰り返しになるけど、優秀だから、事情があるのだから、ハラスメントがOKという考えが広まるのは本当に怖いです。
世界的なフォトジャーナリストの広河隆一さんのハラスメントが昨年スクープされていましたが、広河さんの職場では、広河さんがハラスメントをすることが問題ないと認められていたという、ハラスメント被害者の手記が公開されました。
編集長は、広河氏の言動に何かを言うことはまずなかった。それどころか、私が「広河氏の罵声に耐えられない」という内容のメールを編集長に送ると、「たまに大きな声をだすことはありますが、理不尽なこととは別段思ってはおりません」と返ってきた。広河氏のパワハラがあまりに常態化し、会社にとって日常であり、「理不尽ではない」と会社全体で容認されていたといえよう。今思えば会社全体が洗脳されていたのかもしれない。
ここでは会社全体の洗脳とあるように、組織のトップがハラスメントを常態的に行っていると、組織全体でハラスメントが当たり前になっていきます。
私は、世の中からハラスメントが撲滅されて欲しいと思っているので、優秀だから、事情があるのだからという理由で、ハラスメントが許容されるようなことがあれば、今後とも声を上げていくつもりです。「それはそれ、これはこれ」です。