朝日新聞のこの記事を読みました。
運動部のみんな、熱中症「無理」「もうダメだ」の勇気を - 高校野球:朝日新聞デジタル
熱中症の予防には、気温や湿度から総合的に計算する「暑さ指数(WBGT)」があり、環境省の熱中症予防サイトで各地方の予報を見ることができます。
日本スポーツ協会はこのWBGTが25~28度になると「積極的に水分、塩分を補給する」、28~31度だと「激しい運動や持久走は中止」という指標を出しています。そうした状況では練習には細心の注意が必要なのですが、正しい知識を持たず、認識が甘い先生がいるのが事実です。
これからの時期、給水が少なかったり、過度な持久走が課されたり、そうしたことについての意見が言えない雰囲気があるなら、それは先生の間違いです。
「それは無理」と感じた時、「もうダメだ」と体に異変を感じた時、仲間の様子がおかしい時、自分や仲間を守るために、声を上げましょう。とても勇気がいることです。でも、みなさんの方が正しい場合がきっとあります。
子どもに教育目的で伝えるのもいいですけど、本来は指導者に気をつけて欲しいことですよね。セクハラでもパワハラでもいじめでも、被害者が声を上げやすい環境作りは大切である一方、そもそも、加害者(候補)に適切な指導が行われているのが前提です。
この記事では、暑さ指数(WBGT)の28~31度までが紹介されていますが、公式には、
31℃以上 運動は原則中止
WBGT31℃以上では、特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合は中止すべき。
28~31℃ 厳重警戒(激しい運動は中止)
WBGT28℃以上では、熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。体力の低い人、暑さになれていない人は運動中止。
WBGTが31度以上の紹介もあります。この場合は、運動は原則中止で、特に子どもは中止すべきとあります。そして、WBGTが31度以上の状況は日本国内では夏場は頻繁に発生しています。この記事がWBGTの31度以上の状況に触れていないのは、ちょっと意味がよく分かりません。
WBGTは環境省が実測値と予測値をリアルタイムで提供されています。例えば2018年7月16日海の日の正午12時のWBGTの予測値は以下のとおりです。関東甲信越近畿は真っ赤です。真っ赤なのがWBGTが31度以上です。オレンジがWBGTが28~31度です。
※画像は環境省熱中症予防情報サイト 暑さ指数より
WBGTは気温だけではなく、湿度や輻射熱(地面や建物から出る熱)も考慮して計算されるので、必ずしも、環境省の数字がその地域にすべて当てはまるものとは言えません。参考情報です。
できれば、熱中症の発生しやすい、激しい部活動をさせる傾向のある、中学・高校一般では、WBGT測定器を購入し、それに応じて、部活動の中止を学校側で判断していいのではないでしょうか。WBGT測定器は、日本スポーツ協会の推奨品で3.3万円で買えます。案外安いですよね。
日本では次の表の通り中学・高校での熱中症の発生が毎年増加しています。この数字は医療費を支給したベースなので、もっと多い可能性はあります。ちなみに、熱中症による児童の死亡者数は毎年5名前後とあまり変わっていないので、熱中症の発生状況の増加は、熱中症に私たちが気付いたからかもしれません。児童虐待が増加している統計と同じ背景はあるかもしれない。
朝日新聞が書いているような、教員の認識が甘いとか、先生が間違っていることもあるとか、子どもが自ら声を上げるというのは、どれも個人の判断の話です。教員も子どももスポーツや健康のプロではないのですから、自分の頭で物を考えるのは大切だけれど、まずWBGTのような適切な客観指標を導入し、運動の可否・程度を検討したほうが確実だと私は考えます。その上で、子どもの個別の体調に配慮する。
大体、暑いときは指導する方もシンドいですからね。特に学校の先生は、本来はボランティア活動であるものを薄給でやらされているのですから、子どももそうだけど、ご自身の健康にも気を使って頂きたい。
平日残業代なし、土日出勤4時間以上で時給600円の部活動顧問という仕事 - 斗比主閲子の姑日記
最後に、今年の暑さは記録的なようなので、運動をしていない人もぜひお気をつけください。喉が乾いたという段階では体からすでに水分が奪われていますので、喉が乾く前に、「それは無理」「もうダメだ」となるずっと前に、こまめに水分補給をし、休憩をしたほうがいい。
暑い最中で、水分補給をさせず、休憩も挟ませないような指導者は、確実に判断が間違っています。暑さに脳がやられています。すぐに逃げて周りに助けを呼びましょう。
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