梅月夜の夢物語り 読書感想(海外ミステリー)~霧の倉庫📚

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2021'06.12 (Sat)

そして誰もいなくなった(ミステリー小説)

こんにちは。

今日の記事は読書感想文ですーー。





   そして誰もいなくなった

       作者:アガサ・クリスティー


〇あらすじ

イギリスデヴォン州の兵隊島に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれた。

2人の召使が出迎えたが、招待状の差出人でこの島の主でもあるオーエン夫妻は、姿を現さないままだった。

やがてその招待状は虚偽のものであることがわかった。

不安に包まれた晩餐のさなか、彼らの過去の罪を告発する謎の声が響き渡った。

告発された罪は事故とも事件ともつかないものだった。

その声は蓄音機からのものとすぐに知れるのだが、その直後に生意気な青年アンソニー・ジェームズ・マーストンが毒薬により死亡する。

さらに翌朝には、召使の女性エセル・ロジャースが死んでしまう。

残された者は、それが童謡「10人のインディアン」を連想させる死に方であること、また10個あったインディアン人形が8個に減っていることに気づく。

その上、迎えの船が来なくなったため、残された8人は島から出ることができなくなり、完全な孤立状態となってしまう。

さらに老将軍ジョン・ゴードン・マッカーサーの撲殺された死体が発見され、人形もまた1つ減っているのを確認するに至り、皆はこれは自分たちを殺すための招待であり、犯人は島に残された7人の中の誰かなのだ、と確信する。

誰が犯人かわからない疑心暗鬼の中で、召使のトマス・ロジャースが斧で後頭部を割られて撲殺。

続いて、老婦人のエミリー・キャロライン・ブレントは毒物を注射されて、蜂に刺されたように見せかけられて毒殺されてしまう。

そして、元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、判事の正装に見立てた格好にされたうえで銃殺。

医師のエドワード・ジョージ・アームストロングは嵐の海に突き落とされ溺死により死亡し、次々と彼らに見立てた人形も減っていく。

そして、残された3人のうち元警部の探偵ウィリアム・ヘンリー・ブロアは熊の形をした大理石の置物を脳天に落とされて死亡。

元陸軍大尉のフィリップ・ロンバードは、互いに疑心暗鬼に陥った末に女性教師のヴェラ・エリザベス・クレイソーンに隙をつかれて銃を奪われて射殺される。

最後の1人となったヴェラも、犯人がわからないまま精神的に追いつめられて自殺し、……そして誰もいなくなった。

後日、救難信号に気がついたボーイスカウトから連絡を受けた救助隊が、島で10人の死体を発見し、事件の発生が明らかとなる。

事件を担当するロンドン警視庁の副警視総監であるトマス・レッグ卿は、被害者達が残した日記やメモ、そして死体の状況などから(それは読者が知りえたのと同じくらいに)、事件の経緯、大まかな流れをつかむ。

そして、当時の島の状況から、犯人が10人の中にいると考えると矛盾が生じるため「11人目がいた」と推理するが、それが何者で島のどこに潜んでいてどこに消えてしまったのかまではわからない。

しかし、ある漁師が「ボトルに入った手紙」を見つけることですべての謎が解明する。

ボトルの中の手紙は真犯人による告白文であった。

真犯人は被害者の1人と思われた招待客の1人、ローレンス・ウォーグレイヴ判事であり、事件で不明だった犯行方法・犯行動機などすべての謎に対する真相をボトルの中の手紙に記していた。

ウォーグレイヴ判事は幼少より、「生物を殺すことに快楽を感じる性質」を持っていたが、同時に正義感や罪なき人間を傷付けることへの抵抗感も強かったため、判事として罪人に死刑を言い渡すという迂遠な手段で殺人願望を満たしていた。

しかし、病を患ったことを機に「自らの手で人を殺したい」という欲望を抑えきれなくなったウォーグレイヴ判事は、欲望を満たしかつ正義を行えることとして、法律では裁かれなかった殺人を犯した9人の人間を集めて、1人ずつ殺していく計画を実行したのである。

ウォーグレイヴ判事は作中で殺害されることになるが、それは巧妙な偽装死であり、すべてが終わった後に告白文を書き、海に流して本当に自殺した。

真犯人が最後のページで死ぬことを語ることによって幕を閉じる。



アガサ・クリスティーといえばこの作品。
というぐらい有名な小説。
多分読んだことがない人でも大まかな話は知っているだろう。

私の初アガサはまさにこの作品だった。
読んだ時の衝撃は今でも鮮明。
素晴らしい感性と発想力に心から感激、そして拍手を贈りたい。
この作品に感化された人は沢山いることだろう。
まさに傑作。脱帽の言葉の嵐だ。

正直、犯人が誰なのかまったく推測できなかった。
島に閉じ込められた密室感、童謡になぞらえられる不気味さ。
次々人がいなくなる恐怖と煽られる不安に疑心暗鬼からの狂気……
今の「ミステリー」の基礎といわれるものが全て詰め込まれている。

なにより童謡になぞらえてというのが堪らなく私好み。
ドキドキ、そして恐怖感。

ミステリーの奥深さと面白さをこの作品が教えてくれる。
まさに金字塔的な一冊。
本当に面白い^^








一言お断りを。
実は今、ひじょうに忙しい毎日でして・・・。
コメント頂いた方々にはお返事できなくて大変申し訳ありません。
壱日も休みがない状態でして。
仕事が休みの日には資格取るため、学校に行っています。
勉強も、まあ、しているのでそれだけで精一杯の毎日です。
記事は以前書き貯めていたのを予約で更新しております。
なので、あまり自分のブログを見返す時間もなくて。
コメント頂いた方には申し訳ないですが、お返事はまだしばらくはできないことをどうかご了承ください。
宜しくお願い申し上げます。

皆さまのブログには、時間の合間にお邪魔させて頂いております。
宜しくお願い致します。

        冬灯







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2020'10.12 (Mon)

その女 アレックス(ミステリー小説)

こんにちは。

最近、ミニトマトを栽培しようか迷っている冬灯です^^


今日は海外ミステリー小説の感想です。
ネタバレしっかしありますのでお気を付けください。






   その女 アレックス

      作者:ピエール・ルメートル


〇あらすじ
おまえが死ぬのを見たいーー。男はそう言ってアレックスを監禁した。
檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが・・・。
しかし、ここまでは序章にすぎない。
孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突き進むのだ。





フランスのミステリー。
かなり面白かった!
近年では私の中でベスト1かもしれない。
意外性、残虐性、悲愴さ、物語、すべてよかった。

最初はサイコな誘拐事件なのかと思いきや、アレックスの凄まじい過去とその復讐劇。
彼女は頭が良く、辛抱強く、そして激しい怒りと憎しみをもって、自分が受けてきたことに対する復讐を行っていく。

筆者の卓越した文章力も素晴らしく、ミステリーというよりはサスペンスに近い物語。
アレックスの壮絶な人生は読んでいて、胸が痛む。

誘拐の被害者、連続殺人犯、そして復讐者…二転三転する"アレックス"の立場と印象。
最後に彼女は常識を逆手に取ることで計画を完璧に遂行する。
身体を傷つけられ心を殺された彼女の行動を誰が責められるだろうか?

アレックスが本当に許せない相手・・・兄という存在。
すべてはこのろくでもない兄にせいで彼女の人生は狂わされてしまった。
その兄に自らの命をかけた壮大な復讐は、悲し過ぎる終わりを迎える。

カミーユはそんな彼女の悲しい過去に同情したのだろう、アレックスの思惑に乗っかり、思い描く結末へと終止符を打つ。
そんなカミーユの心に心から喝采を贈りたい。
それがしかるべき正しい道かどうかはさておき、実際兄が妹を殺したという結末を与えなければ、この最低な兄は野放しになってしまうわけで。
正義とか真実を追い求めるよりも、アレックスの心情を汲みしてあげたカミーユの決断はせめてもの彼女への弔いなのだろう。

哀し過ぎたアレックスの人生。
最終的には自らの命を絶つ方法を選んでしまったのは切ないけど、思惑通り兄を妹殺しの犯人として葬れたことだけは、少しは報われたのだと思いたい。

ピエールは素晴らしい作家だ。
どんでん返しといい、文章力といい、人物設定といい、とても私好み。
はっとさせられる内容に、時間を忘れ一気に読み進めてしまった。

ただし、かなりグロい場面描写が激しいので、そういったのが苦手な人は読まないことをすすめる。
映画になったら是非見たいけれど、いつか映像化になったらいいな。







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2020'09.29 (Tue)

氷姫(ミステリー小説)

こんにちは。

種無し巨峰が大好きな冬灯です^^


今日は海外ミステリー小説の感想です。
ネタバレあります。






   氷姫(エリカ&パトリック事件簿)

    作者:カミラ・レックバリ


〇あらすじ
海辺の古い邸で凍った美しい女の全裸死体が見つかり、小さな町を震撼させた。
被害者が少女時代の親友でもあった作家エリカは、幼馴染の刑事パトリックと共に捜査に関わることに。
20年以上疎遠だった親友の半生を辿ると、恐るべき素顔が覗く。
画家、漁師、富豪・・・町の複雑な人間模様と風土に封印された衝撃の過去が次々と明らかになり、更に驚愕の事実が明らかに。





スエーデンミステリー。
北欧ミステリーって、その土地柄なのかどこか、じめっとしたホラー的要素が絡んだものが多い。
因習が濃いというか、陰鬱なイメージというか、封鎖された恐ろしさというか。

この物語もいわゆるそんなイメージの漂った作品。
どこにでもいる最低な男達のオンパレード。
そんな男達を共依存で支えてしまう女達。
狭い人間関係の中で暮している人々による小さい世界を壊したくないがための歪んだ選択。
虚栄心にまみれ、自分の世間体をはばかった親達による隠蔽。
そのせいで心に深く傷を負った子供達。ドロドロで救いようもない物語。

そんな中でもエリカとパトリックの恋が絡んだり、語り口調が軽やかだったりして、続きが楽しみな作品。
映画になっても面白いだろうな。
次回作を早く読もうと思う。





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2020'09.17 (Thu)

愛国殺人(ミステリー小説)

こんにちは。

夏は麦茶が一番! と思っている冬灯です^^


今日は海外ミステリーの読書感想です。





   愛国殺人


     作者:アガサ・クリスティー


〇あらすじ
どんな人間でも自分がみじめに見える場所がある。
歯医者の治療台はその最たる例だ。
むろん灰色の脳細胞を持つ名探偵にとっても・・・。
診療室での憂鬱な検診を終え、一息ついたポアロのもとに、歯医者の自殺を知らせる電話が入った。
しかし彼ほど自殺と縁遠い人間はいなかったという。
果たして巧妙に仕組まれた殺人なのか?





大好きなポアロシリーズ。
アガサの作品は面白い。
さすがミステリーの女王です。

見立て殺人ではないけど、ここでもマザーグースが引用されている。
犯人の動機がやりきれなさを生む。
国を愛するが故の殺人。
国を支える民を一人であっても殺す結果になれば、それは国のことを本当に考えているとは言えないだろう。
他者から見て、善人であれ、悪人であれ、何らかの形で人は支えられているということを忘れてはならない。

「私は国家のことなどに従っているのではありません。私のたずさわっているのは自分の命を他人から奪われない、という権利を持っている個々の人間に関することです」と、ポアロ。
この台詞にはっとさせられた。
まさしくその通り。







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2020'06.14 (Sun)

時の娘(ミステリー小説)

今日は海外の推理小説の感想。
ネタバレありますのであしからず。





  ☆時の娘

    作者:ジョゼフィン・テイ


◎あらすじ
薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして悪名高いリチャード三世。
彼は本当に残虐非道を尽くした悪人だったのか?
退屈な入院生活を送るグラント警部は、ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。
警部は徒然なるままに歴史書を紐解き、純粋に文献のみからリチャードの素顔を推理する。






グラント警部シリーズの一作。
悪名高い15世紀のイングランドリチャード3世の「犯罪」を、現代の警察官が探究するという歴史追求型ミステリー。

この小説は、「歴史がいかにして作られるのか」を探究し、確かな証拠がないにもかかわらずあたかも真実のように受け容れられている「神話」についても述べている。
巨大な「神話」の作られ方を理解するグラントは、リチャード3世の場合にも勝者であるチューダー朝によって記された虚構が「歴史」として現在も流布しているのだという答えを導き出す。 

作品で中心的に扱われるのは「塔の王子たち」の命運である。
リチャード3世の兄であるエドワード4世の子、エドワード5世リチャードは、リチャード3世によってロンドン塔に幽閉され、その後行方不明になった。
彼らはリチャード3世によって暗殺された、というのが広く語られてきたことがらである。
この作品では、リチャード3世が「塔の王子たち」を殺害したという嫌疑について、根拠がないと否定している。 

真実は如何に。

歴史の教科書では悪名で通っているリチャードだけど、こうして読んでみるともしかしたら警部が推測することが事実であるかもしれない。
こういう歴史を紐解いていく謎解きはワクワクして面白い。
警部の推理にどんどんのめり込んでいって楽しい時間を過ごせた。

薔薇戦争についてあまり詳しくないけど、この本を読んだら俄然興味が湧いた。
史実をもう少し勉強したいかも。
もちろん、歴史をあまり知らない人でも面白く読める一冊ではないかと思う。

歴史はミステリー。
検証は夢がある。




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