ヘアスプレー(2007) - 353log

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主に映画の感想文を書いています

ヘアスプレー(2007)

ジャケ避けといいますか、これぜったい苦手なやつだわ…と思い込んで敬遠してた一本です。いやはや、こんなことなら早く観ておきたかった。めちゃくちゃよかったです。「ヘアスプレー」っていうタイトルに騙されてた感もある。そういうことだったのね、ヘアスプレー。

鑑賞の動機

またかよ!って感じですが今回もやはり町山さんと「シェイプ・オブ・ウォーター(2017)」が絡んでまして。もはやお馴染みのこれです。 このなかで、「ヘアスプレー」の舞台が「シェイプ〜」と全く同じ1962年ボルチモアだと知ったのです。ということは「ドリーム(2017)」とも場所は少し違えどほぼほぼ同じ状況下のお話であり、…っていうかそういう話なの?!とまず驚き。思ってたのと全然違うじゃないの。いや特になにも思ってすらいなかったけど。ん〜〜〜そういうことであれば「シェイプ〜」再鑑賞の前にこれもマストだなあ…ってな流れです。

あらすじ

1962年ボルチモア。主人公トレイシーは、テレビのダンス・ショウで踊ることを夢見る太っちょな女子高生。差別が色濃く残る時代だが、白人の彼女は「人と違ってるのがいいことなのよ」とそんなことは一切気にせず、黒人のスクールメイトたちとも交友を深めていく。

いつしかテレビ出演も叶え、一躍人気者となったトレイシー。黒人の出演できる「ブラック・デー」が番組から廃止されたことへのデモ行進にも彼女は最前列で参加するが、警察に目をつけられて事態は悪化。それでも諦めずに新しい時代を作ろうとする彼女たちをグルーヴィーな音楽とともに描く、ひたすら前向きなミュージカル作品。

とにかく音楽が最高

音楽めっちゃくちゃよかったです。ちょう好みでした。全曲を手掛けたマーク・シャイマンさん、お名前は存じあげなかったですけど参加作品を見たらなるほど納得感。次から次へノンストップでゴキゲンなナンバーが畳み掛けられていく様はまさに「オープニングからクライマックス」というやつ。最初の「おはようボルチモア!」な曲で早くもノックアウトされまして、あとはもう引きずられていくだけでした。こんなに曲のいいミュージカルって、ある???とか思っちゃうくらい。これはサントラ買うべきだ、わたし。

というわけで「とにかく音楽が最高」。ストーリーはもうどうでもいいや、っていうレベルです。

どっこい、お話もよいのです

これがね、全然ダレないんですよね。1988年のオリジナル映画があってさらにミュージカルもあってからの本作ということだそうで、しっかり練りこまれた最終形なんだろうなと思っているんですけども。登場人物にしてもまず主人公トレイシーのキャラ設定が見事というか、わたしの懸念事項トップはこの子だったんです。でも見事に予想を裏切られまして、まったくイラッとこない、最高のヒロインでした。あんな子いたらほんとにみんな好きになっちゃうよ、という感じ。

他の登場人物も好きになれるキャラばっかりで。濃いのに。お母さんに至ってはジョン・トラボルタなのに(混乱)。トラボルタのお母さんめっちゃよかったですねえ…。お父さんのクリストファー・ウォーケンも、大好きですこのひと。親友のペニーもなんかすごくいいポジションだし、ほんと、ドタバタなようでいてキャラクターの交通整理がよくできてる。

あとはやはり人種差別へのメッセージ性が、こんな娯楽作なのにびっくりするほど前に出てて、かつしっかりバランスが取れた仕上がりになってるんですよね。結構エグいもの出してると思うんですよ。それでいて全体の味付けは超ピースフルという。同じ時代で同じテーマを扱っても「ヘアスプレー」に「ドリーム」に「シェイプ・オブ・ウォーター」に、こんなにもいろんな映画の作り方があるんだなあと驚きました。 時代背景を理解するうえで、なかでも「ドリーム」を鑑賞済みだったのはとてもよかったです。冒頭で早速出てくる「大学が黒人学生の入学を拒否」とかも具体的なイメージで浮かぶし、「偏見は無いと言っても見下している」みたいな台詞でキルスティン・ダンストの顔が浮かぶし、有色人種が「線を引かれている」状態も最低限認識できているし、「ジョン・グレンじゃないの」とトレイシーの映るチャンネルに切り替えるシーンではマーキュリー計画としっかり繋がるし。おすすめです。

あと最近「ジャッキー /ファーストレディ 最後の使命(2016)」を観たのもあってトレイシーの髪型がジャッキーことジャクリーン・ケネディをイメージしていたことに「そうなんだ(笑)」ってなれたりもしたし。1〜2本観るだけでこんなに深まるのだからやはり映画の力はすごい。

日本にいると実感しにくいですが、エンドロールの曲でも歌っているように人種差別問題は「やっとここまで来たけれど まだまだ先の道のりは長い」のだと思います。本作のような間口の広い作品が、こういったことについて考えるきっかけを作れるのはいいことですね。もちろん単純にハッピーなミュージカル映画としても楽しめるので、ものすごいお得な作品です!

(2018年111本目)