低緊張の子供たちへのケアとリハビリ:姿勢保持と感覚刺激の工夫 | ゆーのおもしろ発達学 〜子育て・発達障害・グレーゾーン・小児リハビリなど〜
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低緊張の子供たちへのケアとリハビリ:姿勢保持と感覚刺激の工夫

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なんだかぐったりしていますね。
これは、「フロッピーインファント」といいます。

低緊張(ていきんちょう)は、筋肉の緊張が通常よりも低い状態を指します。

これは筋肉が適切に収縮しないことを意味し、特に乳幼児においては、「フロッピーインファント」(ぐったりした乳児)と呼ばれることがあります。以下に、低緊張の主な特徴や原因、診断、治療法について説明します。

筋緊張とはなんですか?

筋緊張とは「筋肉の張り」を指し、これは筋肉が適切に収縮している状態です。これにより、私たちは日常生活での姿勢保持や運動をスムーズに行うことができます。以下に、筋緊張についてさらに詳しく説明します。

筋緊張の役割

①姿勢の保持
 筋緊張は、私たちが直立したり座ったりする際に重力に逆らって姿勢を維持するのに重要です。例えば、背筋が適切な緊張状態にあることで、背骨がまっすぐに保たれます。

②運動の調整
 筋緊張は、運動を行う際に筋肉が適切に働くために必要です。歩く、走る、物を持つといった動作には、筋肉がタイミングよく収縮と弛緩を繰り返すことが求められます。

③バランスの維持
 筋緊張は、バランスを取るためにも必要です。筋肉が適切に働くことで、突然の動きや不安定な状況でも体を安定させることができます。

筋緊張の評価

筋緊張の評価は、医師や理学療法士や作業療法士などリハビリ療法士等によって行われます。以下の方法で評価されます:

・触診:筋肉を触って、その弾力や硬さを評価します。
・視覚的観察(視診):姿勢や動作を観察し、筋緊張の異常を確認します。
・動作テスト:特定の動作を指示し、その際の筋肉の反応を評価します。

筋緊張の異常

筋緊張が正常範囲から外れると、以下のような異常が見られることがあります:

低緊張
 筋肉の張りが弱く、筋力が不足している状態。特に乳幼児では、「フロッピーインファント」と呼ばれることがあります。

高緊張
 筋肉が過剰に緊張している状態。筋緊張の亢進ともいう。これにより、筋肉が硬くなり、動作がぎこちなくなることがあります。

低緊張とはどのような状態ですか?

低緊張の乳幼児は、筋肉や関節の張りが弱く、「グニャグニャした」感じになります。このような状態の子供には、いくつかの特徴的な姿勢や症状があります。以下に、具体的な例と関連する情報を説明します。

低緊張の特徴とは?

低緊張の赤ちゃんは以下のような特徴を持つことがあります

・筋肉が柔らかく、締まりがない
・持ち上げたときに手足がだらんと垂れる
・発育や発達が遅れる
・姿勢やバランスを保つのが難しい

特徴的な姿勢と症状

蛙様肢位(frog leg posture)
仰向けに寝ると、両足が大きく開いて床につく姿勢です。
筋肉が非常に緩んでおり、関節もゆるいため、このような姿勢になります。

①蛙様肢位(frog leg posture)
 仰向けに寝ると、両足が大きく開いて床につく姿勢です。筋肉が非常に緩んでおり、関節もゆるいため、このような姿勢になります。

②哺乳力の弱さ
 筋緊張が低いため、口周りの筋肉も弱く、哺乳する力が不足します。哺乳中に疲れやすく、十分に母乳やミルクを飲めないことがあります。

③むせやすさ
 喉や食道の筋肉も弱く、飲み物や食べ物が気管に入りやすいため、むせやすいです。

低緊張の原因は多岐にわたります。以下はその一部です

フロッピーインファントの代表疾患:脊髄性筋萎縮症(SMA)

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、フロッピーインファントの代表的な疾患の一つです。遺伝性疾患で、脊髄の運動ニューロンが徐々に消失することで筋肉が萎縮し、筋力が低下します。症状は生後数ヶ月で現れ、進行が早い場合もあります。

遺伝性疾患

ダウン症候群やプラダー・ウィリー症候群などの遺伝的な異常が原因となることがあります。

神経筋疾患

脳性麻痺や筋ジストロフィーなど、神経や筋肉に関連する疾患が原因となることがあります。

代謝障害

甲状腺機能低下症やその他の代謝異常が影響することがあります。

その他

母体の感染症や胎内感染が原因で生じることがあります。早産、出生時の低酸素などでも生じることがあります。

どのような治療がありますか?

低緊張の治療は原因によって異なりますが、一般的なアプローチには以下のことがあげられます。

・理学療法:筋力を高め、運動機能を向上させるためのリハビリテーションが行われます。
・作業療法:日常生活の動作を改善するための訓練が行われます。
・言語療法:言語発達の遅れがある場合には、言語療法が役立ちます。
・薬物療法:特定の代謝異常や感染症が原因の場合、適切な薬物療法が行われます。

低緊張の子供に対する具体的な対応とリハビリテーション治療

低緊張の子供たちには、特別な工夫や治療が必要です。以下に、具体的な対応方法やリハビリのアプローチについて詳しく説明します。

クッションや装具の使用

・姿勢保持クッション
 体にフィットするクッションを使用して、子供が座る際の姿勢を安定させます。特に、椅子に座るときや寝ているときに利用します。

・装具
 関節の補強や脱臼を防ぐために、特別な装具を使用します。例えば、足首や膝にサポートを提供する装具などがあります。

呼吸や嚥下のリハビリ

・呼吸リハビリ
 呼吸筋を強化し、効果的に痰を排出するためのリハビリテーションを行います。特定の呼吸法や呼吸器具を使用することもあります。

・嚥下リハビリ
 嚥下(飲み込む)機能を改善するためのリハビリを行います。食べ物や飲み物を安全に飲み込むための訓練や特定の飲食物の調整が含まれます。

筋緊張が低い発達障害の子供たちへの対応

低緊張のように、顕著な筋緊張の低下まではいきませんが、発達障害のお子さんの中には、緊張が低いお子さんがいます。そのような筋緊張の低い子供たちの特徴は以下のものがあります。

・筋肉が軟らかい:触ると筋肉が普通の子供よりも柔らかい。
・関節が緩い:関節が柔軟すぎて姿勢を保つのが難しい。
・疲れやすい:姿勢を保つために普通の子供よりも多くのエネルギーを使うため、すぐに疲れてしまう。

筋緊張が低い子どもへのリハビリテーション治療

感覚のメリハリをつける訓練
・感覚の変化をつける
子供が感覚の違いに気づきやすくするために、強い刺激と弱い刺激、硬い刺激と柔らかい刺激など、明確な「差」をつけることが重要です。

・床面の素材の変化
ハイハイや歩行の際に、床面の素材を変えていきます。一部は固いフロアマット、一部はクッションのような柔らかい素材にすることで、子供が感覚の違いを感じ取りやすくします。

リハビリの実施方法
・安全な環境での体験
 最初は変化に気がつかずに転ぶこともありますが、安全に配慮した環境でこれらの経験を積むことが重要です。

・徐々に難易度を上げる
 最初は簡単な感覚変化から始め、徐々に難易度を上げていくことで、子供が適応しやすくなります。

小児リハビリのメリット
・安全な学習環境
 安全に配慮した環境でさまざまな感覚と運動の経験を積むことができる。

・専門的なサポート
 リハビリ専門家による適切な指導とサポートを受けながら、子供が自分自身の体の使い方を学ぶことができます。

まとめ

 低緊張の子供たちが筋肉の動きや感覚をよりよく理解し、体の使い方を改善することが期待されます。小児リハビリは、安全かつ効果的な環境でこれらの経験を提供する重要な役割を果たします。

 低緊張の早期発見と適切な対応は、子供の成長と発達に大きな影響を与えます。医師や専門家と密に連携しながら、最適なケアを提供することが重要です。

引用文献
下村英毅他:フロッピーインファントとは?.Journal of CLINICA REHABILITATION.vol.28.No.4.pp316-pp321.2019

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