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論文やレポートでは,引用文献のリストを作成し,本文中で文献番号を付記する必要があります。 ここでは,そのような文献引用の方法を説明します。
文献リストを作る環境が thebibliography 環境です。 「そんなの enumerate 環境(番号付き箇条書き)でいいじゃないか」と思うかもしれませんが,参考文献のリストにはそれなりの形式があります。 thebibliography 環境ではその形式に従ったやり方で文献リストを作ってくれます。
文献リストを出力したいところに次のように書きます。
\begin{thebibliography}{99} \item 奥村晴彦,黒木裕介『\LaTeX 美文書作成入門』第9版(技術評論社,2023) \item …… \end{thebibliography}
99というのは文献リストの番号が最大で2桁になるという意味です。 これは番号部分の幅を定めるためだけに参照されます。
この方法では,本文中で文献を参照する際に自分で番号を間違えないように
奥村,黒木~[1] によれば,……であることが知られている~[3--5,7]
のように付けなければなりません(~ は,その部分で行分割しない空白です)。 これではリストの順番を変更するのに不便ですので,以下のようにコンピュータに任せた方がよいでしょう。
文献リストを出力したいところに次のように書きます。
\begin{thebibliography}{99} \bibitem{美文書} 奥村晴彦,黒木裕介『\LaTeXe 美文書作成入門』第7版(技術評論社,2017) \bibitem{…} …… \end{thebibliography}
この \bibitem には,文献名を代表するような分かりやすい名前をつけておきましょう。 そして,本文中で文献番号が欲しいところで
詳しくは奥村~\cite{美文書} 第11章を参照されたい。
のように書きます。 こうして LuaLaTeX で2回処理すると \cite{美文書} が [1] のような番号で置き換えられます。 \cite と \bibitem を使った相互参照のある文書を処理するには,少なくとも2回タイプセットする必要があります。
文献の項目数が少なければ上の方法でもかまわないのですが,数が多くなってきたときには,この方法は若干面倒です。 LaTeX と組み合わせて文献データベースから自動的に参考文献リストを作るためのツールとして,BibTeX があります. ここでは,Unicode に対応した BibTeX である BibTeXu を用いて,文献処理を自動化してしまう方法を紹介します。
まず,「文献データベースファイル」を,TeX 文書のファイルとは別に作成します。 このファイル名を bunsi.bib としましょう。 この新しいファイルに,次に示すようにどんどん書いてしまうのです。
まずは日本語の文献です。
の『分子細胞生物学 第4版』という本があるとします。 その場合,相互参照のために使うラベル名を mcb とすると,次のように書きます。 author, title... といったそれぞれの項目は,順不同でかまいません。 思いついたまま書いてください。
@book{mcb, author = "ボルティモア,ロディッシュ,ダーネル and others", title = "『分子細胞生物学 第4版』", publisher = "東京化学同人", year = "2001年9月10日", note = "野田春彦,丸山工作 訳" }
行末のコンマを忘れずに書いてください。
このうち,author(または editor), title, publisher, year の4つは,どの本でも省略せずに書きます(他の項目は省略可)。 その他の著者の存在を示す「ほか」は,"and others" と記します。 note は本の情報等を書く項目であり,訳者はここに書いてしまいます。 なお,著者名が漢字であれば,yomi という項目に(できればアルファベットで "Kousaku Maruyama" のように)書きます。
次に,欧米の文献です。
という本があるとします。 その場合,相互参照のために使うラベル名を mcbe とすると,次のように書きます。
@book{mcbe, author = "D. Baltimore, H. Lodish, J. E. Darnell and others", title = "MOLECULAR CELL BIOLOGY, Fourth Edition", publisher = "W. H. Freeman", year = "2000" }
一方,本文(ファイル名を bunken.tex とします)には,文献リストを出力したい場所に次のように書いておきます。
本文では,先ほどと同様に文献を \cite で参照します。 あるいは,本文(\begin{document} と \bibliographystyle{jplain} の間)に \nocite{*} と書きます。 これは「一切文献を \cite で参照しません」という命令です。
確認しますが, 文献データベースファイル(bib ファイル)名は bunsi.bib です。 また,文献リストの形式には jplain というものを選びます。 これは,一般的に多く使われる文献リストの形式 です。
\documentclass{jlreq} \begin{document} \textit{Molecular Cell Biology}~\cite{mcbe} (日本語訳は『分子細胞生物学』~\cite{mcb} )は, \textit{Molecular Biology of the Cell} と並んで,しばしば分子生物学の入門書として読まれる本です。 \bibliographystyle{jplain} \bibliography{bunsi} \end{document}
他にも bib ファイルがあるときは \bibliography{bunsi,bunsi2} のようにコンマで区切ります。 その上で,以下のコマンドで処理します。
lualatex bunken bibtexu bunken lualatex bunken lualatex bunken
拡張子を省略していますが,そのほうが楽でしょう。 具体的には
bibtexu が作成した文献リスト bunken.bbl を覗いてみると,thebibliography 環境が書き込まれているのがわかります。 したがって,その後の lualatex によるタイプセットは少なくとも2回必要です。
「文献データベースファイル」を作るのが若干面倒だと思われるかもしれません。 BibTeX 関連ツールには,そのような作業を助けてくれるツールが紹介されています。
BibTeX よりスタイルのカスタマイズが簡単な BibLaTeX という LaTeX パッケージも便利です。