7月18日 (4日目)
予定通りに日の出前の朝6時05分にテントを這い出す。気温は7℃だが寒さ的には問題なし。テントをキャラバンパークに放置したまま車に乗り込み、ハイビームが地平線の彼方に吸い込まれていく荒野へと車を走らせる。
早朝の給水のために水場に来るであろうインコ達を待ち伏せるために水場近くまで車で侵入して鳥達が行動を始めるであろう日の出を待つ。7時20分に日が出ると、ちらほらとオカメインコのペアが空を飛ぶ姿を確認できるが、そのままジッと待つこと8時までこれといった動きが無い。果たして3密を避けているのであろうか。ご時世である…。
いくつかの水場へと場所を変えて9時30分まで粘ってみるものの、期待していた「セキセイの群れ」はついに現れなかった。そもそもここまでの道中で内陸の旅なのにやけに緑が濃いなというイメージを持っていたが、どうやら今年は雨量が多くそこら中に水場が散発しているのであろうか、鳥達もわざわざ一ヵ所に集まって水分補給をする必要性が無いのかもしれない…。
水場で大きな群れは形成していないが、散発的に小さな群れが地面に降りて採食をしていたりそのまま木に留まってお喋りしている姿を、まったりと帰路に着きながら観察する。
朝食タイムのセキセイ・オカメインコを堪能して、まったりとテントまで戻り、さくさくとテントを畳んで10時15分にはBouliaの町を出発。ここからは気づかぬ間に伸びに伸びまくってしまった1500kmという道のりを一気に帰る旅になる。
燃料にはある程度の余裕があるが次の町が200km以上先であることを踏まえてBouliaのガソリンスタンドにて給油。ここまでくるとガソリンの値段も中々凄いが、途中で何かあってガス欠になると悲惨なので保険だと思うしかない。
Bouliaを出て北東に進路を取る。まずはWintonの町を目指すが、道中は基本的には地平線しか存在しない。この地域にはMin Min(ミンミン)と呼ばれる発光体の目撃情報が多発しており宇宙人来訪のメッカ、みたいなノリでその手の人達には有名な土地だが、ぶっちゃけこうも何もない地平線の土地だと、そりゃ夜中に雷なり他人の炊いた火なり流れ星なりを見れば「なんか発光体が飛んでた!」となるだろうよなぁ…。
道中特にハプニングは無し。強いて言うならカンガルーが登場。実は自分の住んでいる地域はワラビーばかりでカンガルーが生息していないので内陸で出会うと地味にテンションがあがる生物なのである。オーストラリアは広いからカンガルーやらコアラやらがいない地域も多いのよ。
13時45分、Wintonの町に到着。ここは2年前の旅のほぼ最終目的地であった町。給油28.1L @239.9c/Lを行った後、前回も行った肉屋で晩飯となるソーセージを購入。前回は数種類の謎ソーセージが並んでいたが今回は2種類しかなかった。そのままドンドン北東へ進みHughendenを目指すことに。
WintonからHughendenの間にもコレといった場所は無いのでどんどん進む。何が怖いって、この道中には前回の旅以来ずっとビビり続けている極寒の地Corfieldが存在しているため、我々としてはとにかく距離を稼いでCorfieldよりも更に先にキャンプ地を構えたいのである。
道中期待していたエミューにも出会えず、つまりは道草を食うこと無く走り続けた結果とても良いペースでCorfieldのキャンプサイトを通過。この町唯一の、というかこの町を『町』として機能させているであろう酒場は閉まっていた。廃れていないであろうか…心配である。
Hughenden到着が16時10分、そこから10分ほど町から離れたブッシュの中に車を突っ込んで、ステルスキャンプの構えに。他に人もおらず静かで平たい素晴らしい立地である。
テントを立てていると、
「おーい!ちょっとこれ見て!!」
との声が奥から聞こえてきた。
なんだなんだと覗きに行ってみると、なんということでしょう、そこには人工物を一切使わず巧妙に組まれてカモフラージュされた原始的なシェルター()が放棄されているではありませんか。
「これ僕ら夜に喰われるんじゃないですかね」
「しかしすげぇ拘って作ってるなァ素人の仕事じゃない」
何となく芸術点の高いシェルターを壊す気にはなれなかったので周りから薪を拾ってくると、既にソーセージをフライパンに投入している姿を確認。やりたいことをやりたい人がやりたいようにやる旅です。
キャンプ飯動画。安定の水曜どうでしょう風。
— てりやき🇦🇺豪州獣医 (@happyguppyaki) September 26, 2022
パンは半分カビてると主張するてり氏 VS ごく僅かだと信じてやまないJ氏。 pic.twitter.com/OBzZgs5CI3
ここの木は適度に乾燥しており煙も出さず大変よく燃えるため焚火がとても捗った。飯を食いながら「焚火を囲みつつの暇つぶしに一番最適なのはマシュマロ以外に存在するのか」という大変学術的な議題について討論した結果、干し芋、焼きとうもろこし、チーズ、ザリガニなども焚火で調理しつつ暇を潰すのに適しているのではないかという案が出た。そうこう言っている間に周りはどんどん暗くなり、流れ星を確認した僕は「仕事に戻りたくねぇ」と願い事というよりはただの愚痴を心内に唱えながら寝袋に潜り込んだのである。
7月19日 (5日目)
のんびりと朝6時30分の起床。気温は12℃のとても平和な朝である。ゆっくりと朝の焚火を起こし、お湯を沸かして茶をしばいた後でテントを乾かしつつ畳む。最終日の行程は沿岸沿いを走るだけの単調でハプニングの期待も持てない消化試合である。
Hughendenの町に少し戻って給油。無人給油所である。そのままCharters Towerを目指して東に進路を取り、勢いでTownsvilleまで午前中で一気に抜ける。最終日なので強行で良いのです。
Townsvilleまで戻ってくるとそこにはもう文明が溢れているので、なんとなく店の名前の響きで選んだフィッシュ&チップス屋で昼食。なんというか、可もなく不可もない味であった。リピートすることはないであろう。Fried Mars Barなるチョコバーを油で揚げたヤバ過ぎる食い物は、想像通りの味であった。
この旅最後の給油。沿岸まで戻ってきたのでガソリンの値段もようやく200c/Lを切った。最終的なガソリン給油量は129.14L、総額$288.33なり。ガソリンの高騰真っ只中であった。
走行距離は2974.9㎞と、おおよそ3000kmの旅となった。当初は2000kmの予定だったので異様に増えている気もするが、誤差の範囲である()。鳥を探して頻繁に停まっていた割には燃費が20km/Lを超えていたのは流石。
内陸は楽しい。やはり一定の期間毎で行くべきである。そこには夢と過酷さと野生動物達が詰まっているのだ。